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概要編集

長い銀髪と黒の眼帯が特徴的な医者で、主人公ブラック・ジャックこと間黒男のライバルにしてアンチテーゼ的存在。またそのブラック・ジャックと共に「ふたりの黒い医者」と称される。

実は「ブラック・ジャック」全242話中登場したのはわずか9回であるのだが、その強い存在感から読者の記憶に刻み込まれることになった。

 

詳しい過去や経歴は不明だがかつては軍医だったようで、戦場で満足に医療品もない中で瀕死の重傷に苦しんでいる兵士たちを安楽死させ感謝されたという。

その経験から「治療の見込みのない患者は苦しませるよりも静かに息を引き取らせた方が良い」との信念を持つようになり、死に神化身というおよそ医者らしからぬ異名(悪名)を取りながら法律に触れないように安楽死を請け負うようになる(作中世界でも安楽死は殺人行為=違法であるとされているため)。


安楽死の方法は数種類あり、特殊な機器を用いた超音波によって呼吸中枢を麻痺させ死なせる方法や、毒物注射、飲み薬等がある。

安楽死の値段についてはあまり描写されないが「いかに気持ちよく死ねるか」で値段が前後する他、一度だけ描写された呼吸中枢を麻痺させる方法では患者に(連載当時の通貨価値で)100万円を要求していた。

 

「死に神」の安楽死観編集

こんな男だが決してマッドドクターではなく、むしろ医者としての責任感や倫理観はしっかりと持ち合わせている。

そのため自身の口から「治せる患者は治す」と明言し、誤って安楽死薬を服用してしまった患者に対しても嫌味を垂れつつも救命に尽力しているなど、助かる見込みのある患者はきちんと助けようとする。


ある意味本間先生に近い意見を持っており「生き物は死ぬ時には自然に死ぬもんだ…それを人間だけが…無理に生きさせようとする。どちらが正しいかね ブラック・ジャック」と口にしている(彼は生き死にのうち"死"を自由にしているのだが)。

 

一方本誌掲載時の初登場回では「自殺したがっている奴も殺した」と発言している辺り、安楽死を請け負うだけに「当人が死にたがっているのならそれを尊重すべきだ」と捉えている様子(まして精神科医やカウンセラーではないキリコにとって「精神面」のことなど完全に範囲外であり、その上自ら死を選ぼうとする程「生きようとする意思がない」相手をわざわざ説得・思いとどまらせる義理もないだろう)。


しかし仮にも医者でありながら自殺に肯定的(場合によっては自殺幇助までする事になる)というのはさすがにまずいということか、後に「"安直な自殺"には否定的」と設定され、軽々しく自殺したがる少年を追い返そうとしたことも。


このように彼は安楽死を「生きようとする意志が既に無く、医学的にも手の施しようのない患者への救済行為」として行う最終手段としており、怪我人や病人をロクに治療もせずに(あるいは興味本位で)見捨て、死へ追いやるなどということはしていない。

後付けや設定変更が多い作品ではあるが、初登場時に口にした「なおせる相手ならなおすよ。やせてもかれても一応は医者だからな」というスタンスはどの媒体でも最後まで一貫している。


「死への1時間」では安楽死用の毒薬を間違えて飲んでしまった患者をブラック・ジャックと共に治療。「殺すのと助けるのと気分はどっちがいい?」と問われた際には「ふざけるな おれも医者のはしくれだ いのちが助かるにこしたことはないさ…」と語り、「浦島太郎」ではBJが治した患者(※)が老衰で死んだと聞かされた際には愕然としながら「おれたちはばかだっ!」と項垂れていたり。


※55年前(当時15歳)の炭鉱事故で昏睡状態になり、それ以来15歳相当の肉体で眠り続けていた"少年"。キリコが安楽死させる手筈だったが、「その日の深夜12時までに意識が戻らなければ予定どおり安楽死の処置を行う」という条件でブラック・ジャックが手術を引き受けた。結果として手術「は」成功し、意識が回復したものの、直後に急速な老化が起こり死亡した。遺言は「何故起こした、何故そっとしておいてくれなかった」

 


出崎版OVA「拒食,ふたりの黒い医者」では、作品冒頭でブラック・ジャックが診ていた患者が、安楽死を選ぶために依頼した形で初登場。

その後、偶然出会った原因不明の拒食症に苦しむ女優ミシェールに点滴と応急処置を施し、その主治医のブラック・ジャックより早く拒食症の原因を突き止めた際には彼に情報と事実を提供。

また、ちょっと遠くに行くもので...とミシェールに別れを告げる際、精神的に参っていた彼女から「安楽死を請け負ってくれるお医者さんを教えてほしい」と言われた際には苦い顔をしながら「お金がかかるんでしょう?それじゃあダメだ(=ブラック・ジャックに手術費を払うのだから、自分に払う分は残らない)と返し、遠まわしに安楽死を拒否した。

これも彼女を「治せる患者」と判断したゆえの拒否であり、お金が無い~も方便で「生きろ」という彼なりの優しさである。


家族編集

キリユリ(2020 work)

容姿の良く似た(それでいて美人の)妹「ユリ」がいる。こちらは優しく常識的な人物で、こんな兄に対しても深い愛情を持っている。初登場時には着替えでヌードを晒している。


また父親も登場したが、原因と治療法が判明した矢先一瞬早く病に苦しむ姿を見かねたキリコに安楽死させられてしまった(しかしながら安楽死の決意に至るまでは、数年に渡り血眼になって治療法を探した事を告白している)。

 

アニメ版で父親は「Dr.ジョルジュ」という医師だったことが明かされ、嘗てある重要なプロジェクトに関わっていたことが判明する。こちらでの死因はキリコでは無く(実行したが失敗した)、感染した未知のウィルスによって身体機能の全てが停止し命を落としてしまう。


手塚スターシステム編集

火の鳥 乱世編』では大夫房覚明役で登場。粗暴な木曽義仲に仕える軍師の役を担う僧侶であり、義仲に火焔鳥を手に入れる事を唆した。

『プライム・ローズ』にはキリコ殿下として登場。

池原しげと版『海底超特急マリンエクスプレス』ではFBI捜査官として登場。

 

派生作品編集

山本賢治によるリメイク漫画『ブラック・ジャック 黒い医師』では、まるでピノコに対抗するかのことく、メイド服を着た三白眼の少女を連れ歩いている(容姿は同作者の漫画『カオシックルーン』に登場していた「朽葉ユラ」という登場人物に酷似している)。

どうやら助手を務めているらしく、キリコが襲撃された際には(殺しは有料なので)電極からの高圧電流で気絶させるなど活躍しているが、名前は不明台詞も一切無く、何者だったのかは語られていない。

「99.9パーセントの水」リメイク回では前述のユリと一緒に水浴び(ヌード)シーンを披露している。


田畑由秋大熊ゆうごによる漫画『ヤングブラック・ジャック』では、若き日の軍医キリーとして登場。エキセントリックな言動が目立つものの、未だ医者としての使命感に燃えていた頃の姿が描かれた。

この時点で、ベトナムに赴いたブラック・ジャックと出会っており、共に手術に臨む姿が描かれている。

とはいえ当時は眼帯すらしていなかったため、後に再会したブラック・ジャックが「キリコ=キリー」だと気づかなかったのも、無理からぬことだと言えるだろう。

逆にキリコの方もブラック・ジャックには気づかなかったが、あんな特徴的な顔立ちの彼に気づかないのもやや無理があるようにも思えるが……


別冊ヤングチャンピオン2016年5月号から2018年12月号までキリコが主役のスピンオフ作品『Dr.キリコ 〜白い死神〜』(脚本:藤澤勇希 作画:SANORIN)が連載された。


主な出演作品編集

  • 漫画版

「恐怖菌(死に神の化身)」1974年10月28日

「ふたりの黒い医者」1975年1月6日

「弁があった!」1975年6月30日

「浦島太郎」1976年1月12日

「最後に残る者」1976年6月21日

「99.9パーセントの水(限りなく透明に近い水)」1976年11月8日

「死への1時間」1977年6月20日

「小うるさい自殺者」1977年11月21日

「人生という名のSL」1978年9月18日


  • 映像作品

TVアニメ版 『ブラック・ジャック21』2006年

TVアニメ版 『ヤングブラック・ジャック』2015年

劇場版 『ブラック・ジャック ふたりの黒い医者』2005年12月17日公開

OVA版 『カルテIV:拒食、ふたりの黒い医者』1995年

インターネットアニメ版 『ブラック・ジャック』

※ドクター・キリコは安楽死を扱うため、最初のTVアニメでは登場が見送られた。


演者編集

声優編集


俳優編集

  • 草刈正雄(1996年Vシネマ版)
  • 森本レオ(2001年TBS版)
  • 小澤征悦(2011年日本テレビ『ヤング ブラック・ジャック』):直接描かれているわけではないが、桐生直樹という医師がその後キリコになったと示唆されている。
  • 石橋静河(2024年テレビ朝日版):プロデューサーの意向で性別変更されて女性の設定となっており、自殺幇助しようとするなど、キャラ設定が原作とはかけ離れている。


関連イラスト編集

「お前さんの生は死の上に成り立っている」死の華キリコ


関連タグ編集

ブラック・ジャック 死に神の化身 ドクターキリコ(表記揺れ)


滑皮秀信…こちらも実写版で男性から女性へと性別変更されたライバルキャラ。

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