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曖昧さ回避

漫画「火の鳥」概要

手塚治虫が漫画家として活動を始めた初期の頃から晩年まで手がけられており、手塚治虫のライフワークであると認識されている。中編連作でありながら大長編作品という構想で執筆されている。一つ一つの編は独立しているため、どのような順序で読んでも楽しめるが、全編を読むと永遠の命を持つ火の鳥の壮大な過去から未来までの長編として読める。

1954年、『漫画少年』(学童社)に「黎明編」が連載されたが、出版社の倒産により未完となった。後の『COM』(虫プロ商事)に連載された黎明編と設定が異なり、現在ではほとんど顧みられることはない。

1956年に雑誌『少女クラブ』(大日本雄辨會講談社)に連載され、エジプト編、ギリシャ編、ローマ編が執筆されたが、他の作品とはつながりがない。

上記の構想が確立され本作が大長編としての体裁を整えたのは、1967年、手塚が自分自身で創刊した漫画雑誌『COM』に掲載した「黎明編」からである。以降、1988年に完結する「太陽編」まで次々に執筆され、手塚の代表作の一つとして見られるようになった。

内容は古代から超未来まで、地球(主に日本)や宇宙を舞台に、生命の本質・人間の愚行・が、手塚治虫自身の思想を根底に壮大なスケールで描かれる。この作品に多くの漫画家が影響を受けた。何回か映像化も行われた。

「黎明編」(COM版)以降の連載作品では、最も過去が「黎明編」、最も未来が「未来編」である。時間軸で考えた場合の物語は「未来編」で物語の全てが完結するが、「未来編」は「黎明編」へと続くため永久に漫画の中で時間が繰り返されるようになっている。

しかし、「黎明編」(COM版)以降のすべてが上記の構成に沿った内容になっているわけではなく、「復活編」と「太陽編」は物語の中で複数の時間軸が交錯する変則的な構成である。

朝日新聞の140周年記念に、大地編のプロットをもとに桜庭一樹が小説化、黒田征太郎が挿絵を担当し、連載することが決まり、その後、大幅な加筆を経て上下巻で刊行された。特設ページでは黎明編と大地編コミカライズ第1話が無料公開されている

朝日新聞【『火の鳥』特設ページ】

各編

  • 黎明編 - 古代の日本(3世紀頃)を舞台に後に日本の神話の元となった人々の物語
  • 未来編 - 数千年後の未来、衰退していた人類は世界大戦により地球生命のほとんどと共に遂に絶滅してしまう。荒廃した地球の再生を余儀なくされた男の孤独
  • ヤマト編 - 古墳時代、歴史を書き換えようとする者とそれをよしとしない者の対立
  • 宇宙編 - 数百年後の未来、26世紀。流刑の星に流された牧村五郎、彼に下された罰とは
  • 鳳凰編 - 奈良時代我王と茜丸の2人の仏師の物語
  • 復活編 - 25世紀が舞台。事故死より蘇生したレオナ、自分を殺した犯人とは?ロビタの誕生が描かれ、「未来編」へと繋がる
  • 羽衣編 - 平安時代、過去の時代へと舞い降りた天女と呼ばれる未来人の悲しい恋の物語
  • 望郷編 - 25世紀。辺鄙な星に取り残されてしまった主人公ロミと恋人のジョージの物語。手塚本人によってなんども書き直されており、未完の『COM』版のバージョンもある
  • 乱世編 - 平安時代末期、源義経ら源平の世の背景に、火の鳥の争奪が関わっていた....
  • 生命編 - 22世紀を舞台に、クローン人間による「殺人ショー」が展開される物語
  • 異形編 - 室町時代、男として育てられた女性、左近介に下された罰と呪い
  • 太陽編 - 狼の顔を持つハリマ、近未来(21世紀)の破壊工作員スグルと飛鳥時代の剣士。二つの時代が交差する物語

バージョン違い

火の鳥は同じ編でも、雑誌掲載時と単行本で内容が大きく変わっていることがある。さらに単行本は70年代の朝日ソノラマ版と80年代の角川書店版の二種類があり、角川版は朝日ソノラマ版からさらなる修正が加えられている。つまり「雑誌掲載版」「朝日ソノラマ版」「角川書店版」の3バージョンが存在する。

  • 黎明編(雑誌掲載版(漫画少年)) - 火の鳥の初出。南の島が舞台
  • 羽衣編(雑誌掲載版(COM)) - 子供が奇形
  • 望郷編(雑誌掲載版(COM)) - 上記の羽衣編の続編
  • 乱世編(雑誌掲載版(COM)) - 主人公のまきじと妹のおぶうが、兄妹なのに淫らな関係。
  • 乱世編(朝日ソノラマ版) - 猿と犬が義経と清盛の生まれ変わり。
  • 乱世編(角川書店版) - ラストシーンの大幅加筆。
  • 望郷編(雑誌掲載版(マンガ少年)) - ラストシーンが単行本とぜんぜん違う。
  • 望郷編(朝日ソノラマ版) - ブラック・ジャックの亜種が登場するなど大幅加筆。
  • 望郷編(角川書店版) - ノルヴァはいらない子。
  • 生命編(雑誌掲載版(マンガ少年)) - 主人公がテレビ番組内で殺される。
  • 生命編(朝日ソノラマ版) - 火の鳥の子供の顔が火の鳥じゃなくなった。
  • 太陽編(雑誌掲載版(野性時代)) - お茶の水博士が登場する。

上記以外

  • エジプト編ギリシャ編ローマ編 - 『少女クラブ』に連載。他の編とは繋がりがない。
  • 火の鳥東洋編 - 「ブッダ」の企画段階時における仮題。元々「ブッダ」は「火の鳥東洋編」として描く予定だったが、いろいろあって独立した作品となった。猿田がでるのはこの名残。
  • 大地編 - 手塚が『太陽編』の次作として連載予定だったもの。手塚本人による構想メモが残されていて、日中戦争が舞台で主人公はロック・ホームとその弟となっている。構想メモは今では広く公開されているが、手塚プロによると角川の雑誌編集部の要請で物語の舞台を明治初期に変えることになり、手塚もそれに合わせてシノプシスを組み直したので、残されている構想メモは初期案に過ぎないということ。前述の通り、組み直される前のシノプシスをもとに桜庭一樹が執筆した小説版が朝日新聞にて連載された。
  • 再生編(仮) - 手塚は「いつかはアトムも火の鳥の世界観に組み込む」ことを各所で発言していた。「ASTRO BOY鉄腕アトム-アトムハートの秘密-」や「ブラック・ジャック・火の鳥編」や小説「火の鳥アトム編」などにはこの手塚の言葉からイメージを膨らませたアイデアが活かされている。
  • 火の鳥2772 - 手塚が原案・構成・総監督を務めたアニメ映画。火の鳥の結末の1つが描かれている。
  • 火の鳥(第二部) - 1978年に公開された実写映画『火の鳥』の続編になる予定だったがお蔵入りになった企画。手塚治虫が執筆したシナリオが残されており、きっちり完結している。「手塚治虫絵コンテ大全⑥ 火の鳥2772」に収録。火の鳥の結末の1つが描かれている。
  • 舞台劇版火の鳥 - 手塚治虫が病院のベッドで執筆した舞台劇用のシナリオ。手塚治虫の死ぬ前日に講演された。幾つかの書籍に収録。火の鳥の結末の1つが描かれている。
  • 休憩 - 2種類存在するがCOM版の「休憩」は現代編の伏線が張られている。
  • 現代編 - 手塚治虫が臨終の際に1コマの『現代編』を描き、死と同時に完結するという構想があった。手塚が今際の際に描こうとしていたのはこれではないかという推測もある。

各編の繋がり

◯「未来編」の猿田博士とロビタの出会いが「復活編」で確認できる。

◯「宇宙編」の主役・牧村五郎、「望郷編」で彼の若き頃の姿がみられる。

◯「ヤマト編」に登場するクマソの長老は「黎明編」の最後に登場した崖を登り切った青年。

◯「乱世編」に登場する鞍馬天狗は「鳳凰編」の主役・我王の晩年の姿。

◯「太陽編」で妖怪の傷を癒やしたのは「異形編」の主役。

◯「未来編」のムーピーは「望郷編」にも登場。

◯「復活編」のチヒロも「望郷編」に登場。

登場キャラクター

CVは2004年のテレビアニメ版のもの

黎明編

復活編

異形編

太陽編

未来編

アニメ

  • 2004年に「黎明編」・「復活編」・「異形編」・「太陽編」・「未来編」がNHKで放送された。

主題歌

オープニングテーマ

「火の鳥」

作曲 - 内池秀和 / 編曲 - 野見祐二 / 演奏 - チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、チェン・ミン、諫山実生

エンディングテーマ

「火の鳥」

作詞 - 湯川れい子 / 作曲 - 内池秀和 / 編曲 - 冨田恵一 / 歌 - 中島美嘉

各話リスト

話数サブタイトル
第1話黎明編 その一
第2話黎明編 その二
第3話黎明編 その三
第4話黎明編 その四
第5話復活編 その一
第6話復活編 その二
第7話異形編
第8話太陽編 その一
第9話太陽編 その二
第10話太陽編 その三
第11話太陽編 その四
第12話未来編 その一
第13話未来編 その二

ゲーム

「ブラック・ジャック 火の鳥編」と題してセガから発売された。

ブラック・ジャックとのクロスオーバーゲーではあるが、登場人物は『ミッドナイト』他、ややマイナーな作品からもゲストが登場する。一方、前作の「ASTRO BOY・鉄腕アトム -アトムハートの秘密-」には知名度の高い手塚キャラクターが参戦し、実質的にこの作品も火の鳥の番外編と言える内容になっている。(後者の第二部のタイトルはなんの因果かボツになった「再生篇」である。)

ちなみに、鉄腕アトムも火の鳥の系譜に位置する作品だという構想があった事が証言として残されており、将来的には手塚作品のキャラクターが総登場する予定だったとか。あらゆる手塚作品は火の鳥という壮大なサーガの一部なのかもしれない。

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