ひのとり
ひのとり
名阪間(大阪~名古屋)の都市間輸送はJR東海(東海道新幹線)と近畿日本鉄道(名阪特急)が競合関係にあり、スピード面で勝ち目のない近鉄はさらなる快適性向上を目的として新型の名阪特急用車両の開発を決定。「アーバンライナー」等の従来車両よりも車内設備をアップグレードさせた近鉄80000系が2020年にデビューした。2021年第64回鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。
「ひのとり」という名前は近鉄50000系「しまかぜ」と同様、厳密には列車名ではなく使用車両である近鉄80000系の車両愛称である。
開発にあたり、自社の利用客2700名のと他社線の利用者1200名に対してアンケートを実施。
車体デザインは先進的かつスピード感あふれる形状で、車体色は透明感のあるメタリックレッドとし、次世代特急用車両であることをアピール。車体には「火の鳥」をモチーフにしたエンブレムが付けられている。
客用扉はACE等のようなプラグドアではなく一般的な片引き戸となった。
レギュラーシートとプレミアムシートの2クラスで構成され、両先頭車2両のみプレミアム、中間車はすべてレギュラーとなっている。
どちらも競合相手のJR各社の車両に例えるとグランクラス(またはプレミアムグリーン車)とグリーン車のみで構成されたオールグリーン車編成に相当する超豪華編成である。
レギュラー・プレミアムの双方とも乗車時には普通運賃+特急料金とは別に「ひのとり」用の特別車両料金が必要(レギュラーは最大200円加算、プレミアムは最大900円加算)。名阪チケットレス割引は不適用のため、前日予約のアーバンライナーとの価格差はそれぞれ最大500~1400円となる。
これらの追加料金発生で、名阪間で追加料金を回避する利用の際に特急券売機のバグが発覚(詳細は近鉄特急を参照)した。
プレミアムシート
2013年に登場した50000系「しまかぜ」と同等の仕様で、眺望性を重視したハイデッカー構造。
客室窓・運転台窓共に大きな窓ガラスを取り入れ、快適性を重視した1+2の3列配置。
シートピッチは日本最大級の1300mmとし、座席表皮は本革を採用。
レッグレストと高さや角度を調整できるヘッドレストの付いた電動リクライニングシート。
背面はバックシェル構造で、後ろの乗客に気を遣うことなく座席を倒せる。
横揺れ防止対策としてフルアクティブサスペンションを搭載。
シートピッチや座席構造は新幹線車両のグランクラスと同一であるが、リクライニング時に座面を前にせり出す構造としたことでバックシェルの出っ張りをグランクラスの座席よりも抑えた形状となっているため、前方の視覚的な空間はグランクラスよりもゆとりのある構造となった。一方、座席幅は新幹線車両と比べて車体幅の制限があることから、従来のデラックスシートと同等の500mmという設計となっている。
レギュラーシート
ごく一般的な2+2の4列シートではあるが、JR東日本の在来線特急車用グリーン車と同等のスペックを誇る座席。背もたれの高さをより高く、シートピッチを1160mmに拡大し、こちらも背面をバックシェル構造とした。
荷物棚や仕切り扉はガラス製で、開放感のある車内となっている。
バックシェル構造のシートを導入したことによりシートを倒す際の後方への了解のやり取りや気遣いが要らなくなった反面、バックシェル自体の出っ張りにより、リクライニングをしていない状態での座面間の視覚的な空間は従来のレギュラー車両の座席と同等に映るという声もある(足元の空間には影響がないため、前述の通りグリーン車並みの余裕がある)他、通路側の座席に乗客が座っている状態で窓側の客が出入りする際に却って支障となる。
最前部となる座席前方の壁に付いているフットレストは他の座席と違って床付近まで下げる事が出来ず、やたらと高い位置のままでしか使えない。
2020年3月14日に運行を開始。2021年までに8両編成3本、6両編成8本の合計72両が投入され、主に停車駅の少ない名阪甲特急の運用に充当されている。
間合い運用で近鉄奈良線の阪奈特急、年末年始(終夜運転)や夏休み等の多客期に阪伊及び名伊特急運用にも入る。
80000系新造投入に伴い、21000系・21020系「アーバンライナー」については汎用特急として名阪乙特急及び名伊特急中心の運用に回る事となり、玉突きで12200系「スナックカー」がラストナンバー編成を除いて廃車された。
80000系は番号で大きく3種類に分けられており、おもに制御装置のメーカーと編成両数で区別されている。
いずれも車内設備は同じ。
- 0番台:HV01~04。制御装置は三菱製、6両固定編成。
- 10番台:HV11~14。制御装置は日立製、6両固定編成。
- 50番台:HV51~53。制御装置は三菱製、8両固定編成。
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