概要
伊勢志摩方面は、近鉄の前身、参宮急行電鉄時代から目指していた地域で、「お伊勢参り」で有名な伊勢神宮の門前町・伊勢市や、志摩方面の観光基地である鳥羽など、観光地として有名な地域である。特に、鳥羽以遠は松阪~鳥羽間で競合するJR東海は乗り入れてこないため、ほぼ近鉄の独擅場となる。しかし、昔の志摩地域は、真珠養殖で有名なリアス式海岸でしかなかった。
そんな伊勢志摩地域に、近鉄はスペインの町並みやドン・キホーテの名作を中心とした遊園地「志摩スペイン村」を志摩磯部駅の近くに開園した。近鉄は、志摩スペイン村への交通手段としてふさわしい車両が必要になった。そこで登場したのが「伊勢志摩ライナー」こと23000系である。
車両
「伊勢志摩ライナー」(Ise-Shima Liner)は、いわゆる汎用の特急型車両よりも高品質のデザインを備えることとなった。1994年に3月15日に運行を開始し、近鉄では初めて130km/h運転を開始した。高速運転ができるように、200kW(新幹線級)の大出力モーターを搭載し、中間車は全車が電動車とした。また、22000系ACEと同一のGTO素子・三菱電機製のVVVFインバータ制御装置を採用した。
先頭形状はアーバンライナーの21000系をベースにしながらも、一番突き出た部分を少し上げるなど、イメージチェンジが図られている。パワーウインドウも大型のものが2枚のままだが、側面が少し変わり、サイズも縦にやや大きくなった。
6両編成中、大阪難波・京都・近鉄名古屋方先頭車は「デラックスカー」で、リクライニングシートの配列は2+1人掛け。「デラックスカー」の隣の車両は、伊勢志摩ライナーにしかない「サロンカー」で、グループ客向けの対面固定式の座席配列で2+1人掛け。シートが高くなっており、この車両だけ窓が個別窓となっている。残りの4両は「レギュラーカー」で、登場時の22000系と同じ形状の2+2人掛けのリクライニングシートが並ぶ。
リニューアル工事
製造から20年近くが経過したことと、伊勢神宮の式年遷宮を控え、リニューアル工事を実施することにした。工事内容は、全席禁煙化による喫煙室の設置(編成中に1か所)、各座席の電源コンセント設置、トイレの改良などである。
車内は座席構成内容は変更せず、シートモケット、化粧板、床材の変更、喫煙ルームや多目的手洗いの整備を行った。また21000系アーバンライナー、260000系さくらライナー、30000系ビスタEXで行われたような、座席そのものを交換する大規模な変更は行われていない。特急券発売状況表示灯(荷棚の座席番号表示横およびサロンカーでは窓柱に設置)も新設され、車掌業務の支援が図られた。
デラックスカーには伊勢志摩産の真珠を使用した装飾品が飾られた。
塗装
デビュー当初、伊勢志摩ライナーでは上半身が「サンシャインイエロー」で下半身が白という斬新な色遣いとなった。リニューアル工事実施後は、在籍する6両編成6本のうち、奇数編成が上半分を「サンシャインレッド」に変更し車体下部に「アクアブルー」の帯を追加、偶数編成が上半分を「サンシャインイエロー」のまま車体下部に「コスメオレンジ」の帯を追加とした。両者ともロゴマークが変更された。
運用
「伊勢志摩ライナー」だけに、伊勢志摩方面への特急が主体。
大阪方面
大阪難波・大阪上本町発着。
大阪難波・大阪上本町~賢島間を結ぶ特急は「阪伊特急」と呼ばれ、名阪特急同様、甲乙の二種類があり、甲のほうが速い。名阪特急とは停車駅が異なり、こちらのほうが若干停車駅が多い。
京都方面
すべて京都発着。京都線・橿原線・大阪線・山田線・鳥羽線・志摩線を経由して京都~賢島間を結ぶ特急は「京伊特急」と呼ぶ。
京都線~大阪線は、大和八木駅近くの新ノ口短絡線を通る。
名古屋方面
すべて近鉄名古屋発着。名古屋線・山田線・鳥羽線・志摩線を通って近鉄名古屋~賢島間を結ぶ「名伊特急」。
まとめると・・・
大阪難波・京都・近鉄名古屋~宇治山田・鳥羽・賢島間の一部列車で運用されるほか、京奈特急、阪奈特急での運用が一部ある。
なお、定期点検等で工場へ入場する際は汎用型特急車両による代走が行なわれる。
2001年から2009年までは名阪甲特急にも使われたことがあり、その当時の名古屋線での編成の向きが他の特急車と同じで、伊勢特急運用時に伊勢中川~賢島間で編成の向きが逆転していた。2014年9月21日のダイヤ変更で伊勢中川~賢島間で編成の向きが統一された。
関連タグ
近畿日本鉄道 近鉄 近鉄特急 アーバンライナー さくらライナー ACE しまかぜ ビスタカー 23000系
島田珠代…この列車をネタにしたギャグがある。近鉄公認かどうかは微妙。