解説
日本の私鉄のうち、特に規模の大きいものを指す。現在16社存在するが、設立の経緯から現在でも株式の半数が公的資本(国、東京都)で占められている東京メトロを含めず15社とすることがある。JR旅客6社も「私鉄」ではあるが、国鉄から民営化された経緯から、大手私鉄には含めない。
大手私鉄のうち、一番歴史が古いのは1884年大阪堺間鉄道として開業した南海電気鉄道で、創立自体が一番古くて会社名を一度も変えていないのは1897年創立の東武鉄道である。
現在のように鉄道事業者を「大手・中小」と分けるようになったのは戦後になってからで、その発端は1950年代の春闘であった。1953年の春闘における賃金交渉調停案で「大手」と定義されたのは東武、京成、京王、東急、京急、名鉄、近鉄、阪神、阪急、京阪、南海、西鉄の12社で、これに(当時春闘を行っていなかったため含まれなかった)西武と小田急を加えた14社を「大手私鉄」と呼ぶ慣習が労組以外の分野でも定着した。
この14社は特に基準が定められることなく成り行きで大手私鉄となったため、後述する大手クラスの鉄道事業者より経営規模が小さくても、大手としての扱いが疑問視されることはない。一方、現在では日本民営鉄道協会(民鉄協)が大手私鉄や準大手私鉄の認定要件を定義しており、事実上これをクリアしなければ大手・準大手と見做されないため、新たに加わるには相応の事業規模が必要となる(民鉄協の定義により後から大手私鉄に加わったのは相模鉄道と東京メトロの2社)。
日本の大手私鉄一覧
関東
- 東武鉄道(東武):営業キロ数は全国第2位、関東地方では第1位。創立は大手私鉄の中で一番古い
- 西武鉄道(西武):西武ホールディング傘下
- 京成電鉄(京成)
- 京王電鉄(京王)
- 小田急電鉄(小田急):創業は大手私鉄の中で一番新しい(東京メトロの創業を東京地下鉄道にまで遡った場合)
- 東急電鉄(東急):東急(株)傘下。連結売上高第1位
- 京浜急行電鉄(京急電鉄、京浜急行、京急)
- 東京地下鉄(東京メトロ):2004年民営化。株式の半数が公的資本
- 相模鉄道(相鉄):営業距離最短、相鉄ホールディングス傘下。準大手より昇格
東海
近畿
- 近畿日本鉄道(近鉄):営業キロ数日本一、近鉄グループホールディングス傘下
- 阪神電気鉄道(阪神電鉄、阪神):阪急阪神ホールディングス傘下。日本最初のインターアーバン
- 阪急電鉄(阪急):阪急阪神ホールディングス傘下
- 京阪電気鉄道(京阪電鉄、京阪):京阪ホールディングス傘下
- 南海電気鉄道(南海電鉄、南海):純民間資本としては現存する日本最古の私鉄
九州
大手クラスの鉄道事業者
上述のように現在では民鉄協による認定が事実上の大手私鉄の加入条件となっているため、協会非加盟の事業者は規模に関わらず大手とされないことが多い。
- 遠州鉄道:静岡県西部を基盤とする私鉄。売上高は2138億円、従業員数も1626人と他の中小私鉄各社を大幅に引き離して中小私鉄第一位、南海や相鉄など一部の大手私鉄各社とも互角の規模であるが、資本比率が少ないこと、営業キロ数が短いことから大手私鉄はおろか準大手私鉄からも除外される。
- 静岡鉄道:静岡県中部を基盤とする私鉄。売上高は1762億円、従業員数も4803人と、遠州鉄道と同様に他の中小私鉄各社を大幅に引き離して遠州鉄道に次ぎ中小私鉄第二位の規模であるが、遠州鉄道と同様、資本比率が少ないこと、営業キロ数が短いことから大手私鉄はおろか準大手私鉄からも除外される。
- 大阪市高速電気軌道(OsakaMetro):大阪市が100%出資した株式会社。資本金は2500億円とJR東日本を上回り日本一であり総営業キロは小田急を超え、売上高も1000億円超であるが、2018年12月時点では日本民営鉄道協会に加盟していないため中小私鉄に分類されている。
- 首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス) - 事業規模は比較的大きいが、日本民営鉄道協会に加盟していないため中小私鉄に分類されている。なお、同社は第三セクターであるため私鉄ではない。
- 東京都交通局:公営事業であるため私鉄ではない。
- 名古屋市交通局:同上。なお、大阪市交通局の民営化により、同局の東山線が日本一黒字の公営路線となった。
五大私鉄
鉄道黎明期の明治時代では以下の5社を五大私鉄と呼ばれることがあった。
この5社を含む当時の長距離私鉄は東武、南海など一部の例外を除きほとんどが鉄道国有法によって国有化された。
スポーツ活動
プロ野球
かつてプロ野球の球団を経営・保有していた会社が多かった。
- 現在保有。
西武・・・埼玉西武ライオンズ
阪神・・・阪神タイガース
- かつては保有
京成・・・東京巨人軍(1947年まで筆頭株主)
東急・・・東急フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)
名鉄・・・名古屋ドラゴンズ(現・中日ドラゴンズ)
阪急・・・阪急ブレーブス(オリックスブルーウェーブを経て現・オリックスバファローズ)
南海・・・南海ホークス(現:福岡ソフトバンクホークス)
近鉄・・・近畿グレートリング(のち南海ホークス)、大阪近鉄バファローズ(オリックスブルーウェーブに吸収)
サッカー
名鉄・・・「名古屋グランパス」にも出資。
小田急・・・「FC町田ゼルビア」のスポンサー企業の一つ。
野球以外
西武・・・アイスホッケー(後に分離独立の形で「国土計画アイスホッケー部」が設立、コクドと改名後の2006年に再統合され「SEIBUプリンス ラビッツ」に改名したが2008年-2009年シーズンを最後に廃部。現在は女子部「プリンセス ラビッツ」・ジュニアチーム「ホワイトベアーズ」が活動中)
近鉄・・・ラグビー(1929年に大阪電気軌道ラグビー部として設立された「近鉄ライナーズ
」が活動中。OBに阿修羅・原こと原進などがいる。)
小田急・・・バレーボール(1986年に女子バレーボール部「小田急ジュノー」が設立、「Vリーグ」の創立メンバーとなったが13年で活動を終了。)
関連タグ
百貨店:多くが傘下に持っていたが、西鉄(井筒屋)と西武(西武百貨店)は現在は系列から離れた。南海・相鉄・東京メトロは百貨店を運営していない。