概要
「東京地下鉄株式会社」の公式愛称。地下鉄事業者としては珍しく私鉄(大手私鉄)扱いされている。他に私鉄扱いされている地下鉄事業者には、大阪市高速電気軌道株式会社(Osaka Metro/大阪メトロ)がある(こちらは中小私鉄扱い)。
東京都の地下鉄路線のうち、帝都高速度交通営団(営団地下鉄)から承継した8路線(銀座線・丸ノ内線・日比谷線・東西線・千代田線・有楽町線・半蔵門線・南北線)と民営化後に開通した1路線(副都心線)の合計9路線を管理・運営する。営団時代から丸ノ内線に方南町支線、千代田線に北綾瀬支線が存在する他、副都心線の一部を有楽町新線として運営していた過去もある。2024年12月時点での総営業キロは195.1km。
歴史
2004年4月1日、それまで東京都の地下鉄事業を担ってきた帝都高速度交通営団(営団地下鉄)が行政改革の一環として民営化・特殊法人化する形で誕生した。地下鉄の運営には莫大な資本が必要なため、民営の地下鉄事業者は世界的にかなり珍しい。ただし、現在も東京都が大株主であり、事実上の第3セクター路線ともいえる。
これは元々営団の前身(東京地下鉄道・東京高速鉄道)が民間資本であったため。昭和初期の日本はインフレ経済とは無縁で人件費が低く、人海戦術を使っても建設費が安かったため。民間資本でも比較的容易に地下鉄事業に参入することが出来た。
完全民営化に伴い、2024年10月より上場した。
都営地下鉄との関係
東京都交通局が運営する都営地下鉄とは古くから事業提携をしており、路線図デザインの統一や駅ナンバリング制度などの同時実施、南北線と三田線における線路共用など連携がみられる。しかし、料金体系は異なっているため、原則として両者路線間乗換には改札を通る必要があり、乗換すると初乗り料金がかかる。
東京都は東京メトロ側に対し、都の財政健全化、利用者への経済的・物理的負担低減を目的として都営地下鉄線を東京メトロに移管することを求めているが、東京メトロ側は都営路線不採算性を理由にこれを拒否しており、実現の見通しは立っていない。
トリビア
- 銀座線は日本最初の地下鉄であるが、鉄道要覧における東京都地下鉄路線番号では3号線である。これは、同路線が純粋に民間によって計画されたもので、東京都都市計画に基づかない路線であったためである。関東大震災発生とその復興のために都市計画が制定された際、1 - 5号線は皇居から見た位置関係でり振られ、結果として銀座線は偶然3号線に割当てられたが、土地も資金も確保済であったため、最初に完成した。
- 日比谷線以降に建設された路線では、地上線規格大型車両を使用。私鉄やJRなどの他社線と広範囲な乗入を行っているが、既存地上線との直通運転を前提とした地下鉄システムは世界的にはかなり珍しい。海外では、日本技術を導入した韓国などでのみみられる。これは東京都(東京市)が以前都電テリトリーであったJR山手線内側に私鉄を入れなかったからという事情がある。
- 銀座線と丸ノ内線は地上鉄道との乗入を考えていないため他路線とはシステムが根本的に異なり、運転系統は全く分断されている。また、この2路線は受電方式が第三軌条式で、1990年代まで使用されていた古い車両では駅間に1つ以上あるデッドセクション(給電が途切れる地点)通過時に室内灯が消灯し、一時的に非常灯に切り替えられていた。他地域地下鉄では発生しないものであったため、地元でない利用者が驚くこともあった(同じく第三軌条式大阪市営地下鉄(現・大阪メトロ)では開業当初から電動発電機の搭載でこのような問題を解決していた)。このことは漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」でも「東京人かどうかを見分ける方法」としてネタとされた。現在の銀座線1000系特別編成(最終増備車2編成)は、機構上本来発生しない(編成内主回路引き通しがあるため)このデッドセクションでの瞬間消灯を、わざわざ再現させるというギミックを有している。
- 発車メロディー導入に積極的で、かつてのシンボル営団ブザーはどんどん廃止されている(現在残っているのは丸ノ内線茗荷谷駅や千代田線北千住駅、日比谷線中目黒駅等)。その駅に合わせてオリジナル曲をつくる手の込みようであるが、逆に様々な場所で使い回しをするJR東の発メロのような知名度が無いという欠点もある。
- 地下鉄事業者としては日本で唯一(直通する私鉄事業者との直通列車ではあるが)座席指定列車を運行しており、千代田線で運行されるメトロはこねなどの多種多様なロマンスカー、有楽町線と副都心線で運行される平日と休日で運行系統が切り替わるS-TRAIN、日比谷線で運行される通勤用列車THライナーが存在する。
- 一時期は部外者による撮影を容認していなかった時期があり、Nifty-Serveの鉄道フォーラムでは2012年までメトロ施設内での写真投稿が禁止されていた。尤も、対外的に撮影を「禁止」する告知がなされたことはなく、鉄道雑誌の読者投稿欄にもメトロ管内での写真が普通に掲載されていたほか、当のメトロも営団時代から撮影イベントなどを実施していた。
- 都内を縦横無尽に走る影響からか出版社、特に講談社の広告の割合が非常に多い。
路線一覧
現有路線
記号 | 路線名 | 区間 | 駅数 | ラインカラー | 営業キロ | 相互直通(※1) | 路線番号(※2) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
G | 銀座線 | 渋谷〜浅草 | 19 | オレンジ | 14.3 | - | 3 |
M | 丸ノ内線 | 荻窪〜池袋 | 25 | レッド | 24.2 | - | 4 |
Mb | 方南町支線 | 方南町 - 中野坂上 | 4 | 同上 | 3.2 | - | 同上 |
H | 日比谷線 | 中目黒 - 北千住 | 22 | シルバー | 20.3 | 東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)/日光線 | 2 |
T | 東西線 | 中野 - 西船橋 | 23 | スカイブルー | 30.8 | JR中央・総武緩行線(両端接続)・東葉高速鉄道 | 5 |
C | 千代田線 | 代々木上原 - 綾瀬(※3) | 19 | グリーン | 24 | JR常磐線(常磐緩行線)・小田急小田原線(/江ノ島線・小田急箱根) | 9 |
C | 北綾瀬支線 | 綾瀬 - 北綾瀬 | 2 | 同上 | 2.1 | - | 同上 |
Y | 有楽町線 | 和光市 - 新木場(※4) | 24 | ゴールド | 28.3 | 西武池袋線/狭山線/西武有楽町線・東武東上線 | 8 |
Z | 半蔵門線 | 渋谷 - 押上(スカイツリー前) | 14 | パープル | 16.8 | 東急田園都市線・東武伊勢崎線/日光線 | 11 |
N | 南北線 | 目黒 - 赤羽岩淵(※5) | 19 | エメラルド | 21.3 | 東急目黒線/東急新横浜線・埼玉高速鉄道・相鉄新横浜線/相鉄本線/いずみ野線 | 7 |
F | 副都心線 | 小竹向原 - 渋谷(※4) | 16 | ブラウン | 20.2 | 西武池袋線/狭山線/西武有楽町線(/西武秩父線)・東武東上線・東急東横線/東急新横浜線・横浜高速鉄道みなとみらい線・相鉄新横浜線/相鉄本線/いずみ野線 | 13 |
線路軌間は銀座・丸ノ内線が1,435mm(標準軌)、それ以外が1,067mm(狭軌)。
集電方法は銀座・丸ノ内線が直流600V・第3軌条方式、それ以外が直流1,500V・架空線方式でそれぞれ統一されている。銀座線・丸ノ内線電気方式は数年内に直流750Vへの昇圧が予定されており、対応する新型車両統一が完了した。
※1:()内は有料座席指定列車のみの直通。
※2:国交省監修『鉄道要覧』における東京都の都市計画上の地下鉄路線番号で、都営地下鉄と共通。
※3:北千住 - 綾瀬間はJR常磐線との重複区間であり、この区間のみJRの運賃が適用されている。
※4:和光市 - 小竹向原間は有楽町線・副都心線が線路・駅・施設を共用している。都市交通審議会の路線番号区間においてはこの区間は副都心線、『鉄道要覧』ではこの区間は有楽町線と記載されており、定まっていない。実際のところ、東京メトロはこの区間をどちらかの路線に指定することなく共用区間としており、どちらの路線も始発駅は和光市である。
※5:目黒 - 白金高輪間は都営三田線と線路・駅・施設を共用している。運賃は利用者に有利となる様に設定される。
建設予定路線
(注)現時点の情報であり、今後変更される場合があります。
※:路線名は決定しておらず、各媒体で表記が異なっている。現在使用休止中の有楽町線豊洲2・3番線(ホームに転用されており、現在閉鎖中)・半蔵門線住吉で使用中の電留線をそれぞれ使用する予定。現在は有楽町線支線・分岐とされているが、実際にどの様な運行形態となるかは不明。
保有車両
全路線合計で約2,700両もの車両を保有している。
各路線規格や接続する他鉄道事業者の都合もあり、路線ごとにラインカラーの他、構造や機能が異なっているのが大きな特徴。また、同じ路線でも製造時期によって設計思想が大きく異なっている。
このため、多種多様な車両は東京メトロの大きな魅力といえ、鉄道ファンに人気の要素である。
車両番号には、営団時代から独自のフォントが用いられている。
営団時代から車両技術開発に積極的であり、他鉄道会社と比べて先進的なものや初採用、初の車上試験・量産が多く見られる。また、運用の上で合理性があると判断されれば、どんな技術でも積極的に設計に導入すること傾向が強い。軽量化へのこだわりも強く、アルミ車体やボルスタレス台車早期採用からも窺える。
代表例としては、
- 世界初の回生ブレーキ付電機子チョッパ制御方式を実用化した6000系
- 初の高速電車用軽量ボルスタレス台車量産採用8000系
- 走行機器・ワイドドア・変則ドア配置・車体構造等時代に合わせ設計変更を繰返した05系
- 高周波分巻チョッパ・IGBT適用VVVFインバータ制御実用化・永久磁石同期電動機量産採用等、走行機器技術革新
- 急曲線を静かに通過出来る自己操舵台車採用(1000・2000・13000系)
がある。
ただし、車両冷房については導入がどの鉄道事業者よりも遅く、1980年代中盤まで自社車両冷房率は0%という驚異的な数字を記録していた(既に一部大手私鉄では車両冷房100%達成が始まっていた時期である)。これは廃熱処理問題から車両よりも駅構内とトンネルの房化を推進していたためで、直通先各社の冷房車も営団内では冷房スイッチを切るという徹底振りであった。
しかし時代の趨勢に合わなくなったため、1988年から冷房車導入及び従来車両冷房化を開始。1996年までに達成した。
また、前述したボルスタレス台車についても2000年に発生した日比谷線脱線事故の影響から一部を除いて新車での採用を廃止、輪重調整や管理が容易なボルスタ付台車を採用している。
製造や機器類はあらゆるメーカーに発注されており、設計も様々であるが、台車や車両制御伝送装置等、一部機器はメーカー指定がされている。
営団時代の6000系登場時、車両設計において「耐用年数40年以上」「10年で小規模更新、20年で大規模更新、30年で小規模更新、40年で廃車」という目標を掲げていた。そのため、古い車両を時には大規模な改造を行い、長く使用することで定評があった。
しかし老朽化に加え、ホームドア整備に伴う車両側の対応、将来の第3軌条路線昇圧等といった事情が重なったことで、2010年代よなると0シリーズ淘汰も次第に始まりつつある。
現役車両
導入年は1次車のもの。
運用路線 | 形式 | 導入 | 所属数 | 備考 |
---|---|---|---|---|
半蔵門線 | 8000系 | 1981年 | 10両編成7本(2025年度までに全廃予定) | 東西線での使用実績あり |
丸ノ内線 | 02系0番台 | 1988年 | 6両編成1本(撤退中) | 方南町支線用80番台(3連)は撤退済 |
東西線/北綾瀬支線 | 05系 | 1988年 | 10両編成30本/3両編成4本 | 初期車一部撤退済 |
南北線 | 9000系 | 1991年 | 8両編成1本/6両編成22本 | 一部8連に増結中 |
東西線 | 07系 | 1993年 | 10両編成6本 | 元有楽町線車両 |
半蔵門線 | 08系 | 2003年 | 10両編成6本 | |
有楽町・副都心線 | 10000系 | 2006年 | 10両編成36本 | 一部8両化可能 |
東西線 | 15000系 | 2010年 | 10両編成16本 | 全車ワイドドア |
千代田線 | 16000系 | 2010年 | 10両編成37本 | - |
銀座線 | 1000系 | 2012年 | 6両編成40本 | 最終増備車2編成は特別仕様車 |
日比谷線 | 13000系 | 2017年 | 7両編成44本 | - |
丸ノ内線 | 2000系 | 2019年 | 6両編成52本 | - |
有楽町・副都心線 | 17000系 | 2021年 | 10両編成6本/8両編成15本 | - |
半蔵門線 | 18000系 | 2021年 | 10両編成12本(増備中) | - |
過去の車両
ここでは東京メトロ移管後に運用された車両のみ記載。営団時代に引退した車両はこちらを参照。
元運用路線 | 形式 | 導入年 | 引退年 | 最大所属数 |
---|---|---|---|---|
東西線/北綾瀬支線 | 5000系 | 1964年 | 2014年 | 10両編成8本/3両編成2本 |
千代田線 | 6000系 | 1971年 | 2018年 | 10両編成35本/3両編成1本 |
有楽町・副都心線 | 7000系 | 1974年 | 2022年 | 10両編成34本 |
銀座線 | 01系 | 1984年 | 2017年 | 6両編成38本 |
日比谷線 | 03系 | 1988年 | 2020年 | 8両編成42本 |
千代田線 | 06系 | 1993年 | 2015年 | 10両編成1本 |
保存車両
東京メトロでは引退した車両の一部を保存しており、それぞれの形で大切に保管されている。
技術継承の役割を持つ他、乗務員訓練に使用される場合もある。
ここでは東京メトロ管内で保存されている車両のみ記載。営団時代に引退した車両も含まれる。
元運用路線 | 形式・編成 | 運用期間 | 保存場所 | 状態 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
銀座線 | 1000形1001号車 | 1927 - 1968年 | 地下鉄博物館 | 1両・静態 | 重要文化財 |
〃 | 100形129号車 | 1938 - 1968年 | 地下鉄博物館 | 1両・静態 | ドアのみ可動 |
丸ノ内線 | 300形301号車 | 1954 - 1995年 | 地下鉄博物館 | 1両・静態 | |
〃 | 500形584・734・752・771号車 | 1958 - 1995年 | 中野検車区 | 3両・動態 | 752号は予備車・部品取り |
日比谷線 | 3000系3001・3002号車 | 1961 - 1994年 | 千住検車区 | 2両・動態 | 一度長野電鉄に譲渡、運用終了と共にメトロに買い戻された |
東西線/北綾瀬支線 | 5000系5951F | 1967 - 2014年 | 綾瀬検車区 | 3両・動態 | アルミ車・北綾瀬支線仕様 |
北綾瀬支線 | 6000系第1次試作車 | 1968 - 2014年 | 和光検車区新木場分室 | 3両・動態 | 訓練センター車両として稼働中 |
千代田線 | 6000系6102F | 1971 - 2018年 | 和光検車区新木場分室 | 10両・動態 | ラストラン仕様のまま |
有楽町・副都心線 | 7000系7101F | 1974 - 2021年 | 和光検車区新木場分室 | 10両・動態 | 10号車の一部のみ営団仕様に復元 |
銀座線 | 01系01-101F | 1984 - 2017年 | 中野検車区 | 3両・動態 | |
〃 | 01系01-129号車 | 1991 - 2016年 | 地下鉄博物館 | カットモデル | 前面のみ |
日比谷線 | 03系03-101F | 1988 - 2020年 | 和光検車区新木場分室 | 3両・動態 |
キャラ
メトポン
ドアステッカーなどで使用される狸。
駅街かける
2020年7月から使用を開始したキャラで、東京メトロが大好きな小学1年生の男の子。
駅乃みちか
2013 - 2020年まで使用されていたキャラで、東京メトロサービスマネージャー。
鉄道むすめにも登場予定であったが、イラストが炎上騒ぎを起こしてしまい、お蔵入りとなってしまった。
関連タグ
直通会社・路線
()内は直通するメトロ線。
JR東日本 中央・総武緩行線(東西線) 常磐緩行線(千代田線)
東武鉄道 伊勢崎線(東武スカイツリーライン)/日光線(日比谷線/半蔵門線) 東上本線(有楽町線/副都心線)
小田急電鉄 小田原線(千代田線) 江ノ島線(千代田線・ロマンスカーのみ)
西武鉄道 西武有楽町線/池袋線/狭山線(有楽町・副都心線) 西武秩父線(副都心線・S-TRAINのみ)
東急電鉄 田園都市線(半蔵門線) 目黒線(南北線)東横線(副都心線) 東急新横浜線(南北線・副都心線)
相模鉄道(相鉄) 相鉄新横浜線/相鉄本線/いずみ野線(南北・副都心線)
埼玉高速鉄道(南北線)
小田急箱根(旧・箱根登山鉄道)(千代田線・ロマンスカーのみ)
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1000系 2000系 5000系 6000系 7000系 8000系 9000系 10000系 13000系 15000系 16000系 17000系 18000系