直通運転
ちょくつううんてん
主に私鉄⇔地下鉄、JR⇔地下鉄、など別の鉄道会社同士が互いの車両を相手の会社の路線へ乗り入れる「相互直通運転」を指す。どちらか一方だけの場合は「片乗り入れ」とも言う。その歴史は古く、昭和初期には東京地下鉄道と東京高速鉄道が相互乗り入れを行なっている(これは今の東京メトロ銀座線であり、両者は後に合併し同じ路線となった)。
東京メトロを除く大手私鉄同士による直接の相互乗り入れは少なく、1967年に京阪と近鉄との相互乗り入れが廃止されてから、2008年に近鉄と阪神が相互乗り入れ開始まで40年近くなかった時期があり、それ以外では相鉄と東急の計2例だけである。
日本で現在のような都市の地下鉄と郊外との私鉄による相互乗り入れが始まったのは、1960年の都営地下鉄浅草線と京成電鉄押上線との相互乗り入れが始まりである。
首都圏では前述の浅草線と京成とその後さらに乗り入れるようになった京浜急行電鉄のように、郊外の私鉄同士の中間に地下鉄を建設して両者を繋ぐという形態が多く、地下鉄はその大部分が他社との相互直通運転を行っている。
一方、首都圏以外の都市では、阪神電気鉄道が山陽電気鉄道と神戸高速鉄道を介して乗り入れする、名古屋鉄道の犬山線と豊田線とを名古屋市営地下鉄鶴舞線が結ぶなど僅かしか見られない。大阪などではOsakaMetroと郊外私鉄との集電方式が違う(OsakaMetroでは5路線が第3軌条方式による集電である)ため、最初から相手の仕様に合わせて建設された堺筋線(阪急電鉄と相互乗り入れ)を除けば、事実上地下鉄の延長みたいな御堂筋線と北大阪急行電鉄等の私鉄側が仕様を合わせる形での相互乗り入れのような例が多い。
JRの東海道新幹線⇔山陽新幹線、山陽新幹線⇔九州新幹線、北陸新幹線、東北新幹線⇔北海道新幹線の場合は互いに違う会社同士の路線による相互乗り入れで、東海道・山陽の場合はもともと国鉄の路線だったものが、分割民営(JR)化したことによる。逆に前述の銀座線のように、会社の合併により同じ路線となり相互乗り入れの形式が解消されたパターンもある。2025年にも泉北高速鉄道が南海電気鉄道に、新京成電鉄が京成電鉄にそれぞれ吸収合併、同一会社化されることで、会社同士としての直通運転が解消されることが決まっている。
また双方の経営状態が思わしくなく、相互乗り入れが廃止されてしまった例(JR四国牟岐線⇔阿佐海岸鉄道)も。
メリットとすれば、乗り換え無しに目的地まで一本の電車で行けるという点があり、反面デメリットとしては運賃は互いの会社同士で区切って計算するため、(若干の割引はあるが)割高になる事が挙げられる。
例えば、浅草線浅草駅から京成押上線京成曳舟駅間は距離にして2.6キロ、2駅間ながら運賃は280円かかるなど、利用客の立場的には利用しにくいコストパフォーマンスとなる。
また、ダイヤが乱れた際の被害範囲も広大になる。
- 首都圏における最悪のパターンは横須賀線が絡んだ場合で、ともすればJR路線で平常運転なのは中央快速線と中央・総武緩行線と常磐緩行線だけ、なんてことにもなりかねない。従来は他に常磐快速線と成田線(我孫子~成田間)が独立していたものの、上野東京ラインの開通により巻き添えの範囲内となった。さらに、埼京線が相鉄線との直通を開始したため、巻き添え範囲は更に広大となった(その相鉄は東急や東京メトロなどと直通を開始している)。
- 間接的に線路が繋がっているととばっちりを喰らう例もある。例えば東武東上線が遅延した場合直通先の東京メトロ有楽町線・副都心線が遅延し、2線のもう一つの直通先である西武池袋線系統に遅延が波及する例など(逆も然り)。この系統の酷い例として、西武池袋線の遅延が副都心線と東急線を介して都営三田線に波及したことがある。超広域ネットワークは、それだけ遅延時の影響も大きくなりかねないのだ。
こうした理由から、特に私鉄と地下鉄の相互乗り入れでは、人身事故等でダイヤが乱れた場合には即座に直通運転が中止される傾向が強い。
前述したJR同士の場合は元が同じ国鉄だった関係上、分割民営化にあたっては運賃割高になるという理由で反対され、当時の政府が分割しても運賃を区切らないことで分割に納得してもらったという経緯があり、私鉄同士とは違って運賃は区切っていない。(JRグループ間での運賃計算になる)
直通運転は都会だけではなく、地方にも存在する。この場合、第3セクターかJRのローカル線がJRの代表駅まで区間的に乗り入れる場合が多い。第3セクターでは若桜鉄道が郡家を経由しJR因美線の鳥取まで直通、JR同士だと左沢線が北山形から奥羽本線で山形まで直通、などがある。
逆に言うと都会とは異なりローカル線が本線の全区間を直通する例は少ない。またJRとの直通相手が地方私鉄より第3セクターに見られるのは、支線がかつて本線と同じ旧国鉄かJRという同じ鉄道会社の管轄で、線路の繋がっていた路線が第3セクター化されたものが多いためである。
日本の全ての鉄道の直通運転を挙げるときりがないので、ここでは一部を挙げる。他にもいろいろあるので、できれば順次追記いただきたい。
また、以下の例のほかに、東武鉄道と野岩鉄道・会津鉄道(東武6050系)、阪急電鉄宝塚線と能勢電鉄線(能勢電鉄は阪急の子会社であることから、同社の中古車の払下げである。塗装も同じマルーン色)、JR西日本とJR四国のマリンライナー、同じくJR四国の土讃線と土佐くろしお鉄道(2000系)、IRいしかわ鉄道とあいの風とやま鉄道、青い森鉄道とIGRいわて銀河鉄道のように、車両使用料の相殺のために同一タイプの車両を保有するケースもある。
東北
- IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道
- JR東北本線と仙台空港鉄道
- JR東北本線とIGRいわて銀河鉄道
首都圏
- 東武東上線および西武有楽町線経由で西武池袋線/西武球場前/西武秩父線と東京メトロ副都心線/有楽町線と東急東横線とみなとみらい線/東急新横浜線と相鉄新横浜線/相鉄本線/いずみ野線
- JR常磐緩行線と東京メトロ千代田線と小田急小田原線
- 東武伊勢崎線/日光線と東京メトロ半蔵門線と東急田園都市線
- 東武伊勢崎線/日光線と野岩鉄道と会津鉄道
- 東京メトロ日比谷線と東武伊勢崎線/日光線
- JR東日本と東武日光線(特急「日光」)
- 埼玉高速鉄道と東京メトロ南北線と都営三田線と東急目黒線/東急新横浜線と相鉄新横浜線/相鉄本線/いずみ野線
- 鹿島臨海鉄道とJR鹿島線
- 東葉高速鉄道およびJR総武緩行線と東京メトロ東西線とJR中央緩行線
- 北総鉄道と京成本線/押上線と芝山鉄道と都営浅草線と京浜急行電鉄京急本線/空港線/久里浜線
- 都営新宿線と京王線/相模原線
- JR赤羽線/川越線と東京臨海高速鉄道りんかい線
- JR山手貨物線と相鉄本線/相鉄新横浜線
- 西武秩父線と秩父鉄道本線
北陸・中京圏
関西
首都圏
JR東日本
中京圏
- JR東日本の特急列車がJR東海三島駅経由で伊豆箱根鉄道へ直通/快速「中央特快」・特急「踊り子」
- JR東日本の特急列車が富士急行に直通/特急「富士回遊」
- 新京成線の列車が京成電鉄千葉線に直通
- 小田急電鉄小田原線の列車が箱根登山鉄道に直通
- 小田急電鉄の特急車両がJR東海御殿場線に直通/特急「ふじさん」
- JR東海の特急列車が篠ノ井線に直通/特急「しなの」
- JR東海の特急列車が富山方面・紀伊勝浦方面に直通/特急「ひだ」・「南紀」
- JR西日本の特急列車が名古屋に直通/特急「しらさぎ」
- 京阪電気鉄道京津線の列車が京都市営地下鉄東西線に直通
- 智頭急行の特急車両がJR西日本東海道本線・因美線に直通/特急「スーパーはくと」
- 北越急行の列車がえちごトキめき鉄道妙高はねうまラインに直通
- 南阿蘇鉄道の列車がJR九州豊肥本線に直通
- JR東日本中央線と八高線(ワンマン化のため)
- JR東日本横浜線と相模線(同上)
- 北越急行ほくほく線とJR東日本信越本線経由でえちごトキめき鉄道妙高はねうまライン
- 東京地下鉄日比谷線と東急東横線(直通先変更のため)
- 東京メトロ千代田線と小田急小田原線経由で小田急多摩線(複々線化完了のため)
- JR東海の特急車両による小田急電鉄小田原線への直通(車両更新のため)
- JR東海名松線と紀勢線と参宮線(同上)
- JR東海東海道線と飯田線
- 名鉄岐阜市内線と揖斐線(路線廃止のため)
- 名鉄各務原線と田神線と美濃町線(同上)
- 名鉄西尾線と蒲郡線(のりかえ改札設置のため)
- 近鉄名古屋線と湯の山線(特急廃止のため)
- JR西日本大和路線とおおさか東線と学研都市線とJR東西線(ホームドア設置のため)