「南紀」の愛称を冠した列車は以下の3つがある。この記事ではそれぞれ触れる。
1.1953年に天王寺駅〜白浜口駅(現在の白浜駅)間で運行を開始した気動車準急。のち急行化され1968年に急行「きのくに」に統合。
2.1974年に「南紀」の愛称を付帯された天王寺駅〜新宮駅〜亀山駅〜名古屋駅間を運行する夜行客車普通列車。のち「はやたま」に改称し1984年2月に無名となる。
3.1979年10月から運転を開始した名古屋駅〜新宮駅・紀伊勝浦駅を結ぶ気動車特急。
1の概要
「南紀」という愛称が最初に付与された列車でキハ55系が使用された。天王寺駅〜白浜駅間の準急「南紀」は1966年に急行に格上げされるも、1968年10月ダイヤ改正で急行「きのくに」へ愛称が統一されて消滅した。
なお、1961年10月改正から南海電気鉄道キハ5501系により南海本線難波駅から和歌山市駅を経由し、和歌山駅で天王寺発着の基本編成に併結され紀勢本線を直通していた。「きのくに」に改称されてからも運行されていたが「きのくに」が特急「くろしお」に全て格上げされ全廃された1985年3月改正で廃止された。
2の概要
1974年、天王寺駅〜名古屋間を運行する寝台車を連結する普通列車へマルスシステムでの寝台券管理・発券の都合上、休眠していた「南紀」の愛称を付与した。この夜行普通列車は後述の特急「南紀」の運転開始後、愛称を「はやたま」に改めた。はやたまの愛称は熊野速玉大社に由来する。
牽引機は天王寺駅〜新宮駅間はDD51(のちEF58)、新宮駅〜亀山駅間はDF50、亀山駅〜名古屋駅間はDD51であった。
1982年の関西本線名古屋口電化で亀山駅まで短縮となって以降、運転区間は短縮を続け、1984年2月には新宮駅で系統分断され、寝台車の連結もなくなり「はやたま」の名称も使われなくなり「新宮夜行」の通称で呼ばれた。1986年3月には牽引機がEF60 500番台に変更され奇しくも往年の東京口ブルトレ牽引機同士のバトンタッチになった。
しかし、国鉄民営化直前の1986年11月ダイヤ改正で客車から電車化され新宮方面への片道だけの運行となった。民営化後は新大阪駅発着となり東海道新幹線や山陽新幹線に接続するようになったが1999年からは新大阪駅→紀伊田辺駅間までとなり実質夜行列車としては終焉を迎えた。現在ではさらに縮小され京橋駅〜大阪駅〜御坊駅間を結ぶ22時15分発の紀州路快速となっている。
夜行として運行されていた時代には大阪方面から早朝に紀伊半島沿岸で釣りを楽しむ太公望に愛用された「釣り列車」として知られていた。
3の概要
特急「南紀」の誕生
1965年3月ダイヤ改正で名古屋駅~天王寺駅間に関西本線・紀勢本線・阪和線経由で結ぶ特急「くろしお」が誕生。これが現在の「南紀」の直系の先祖にあたる。
紀勢本線西部が電化された1978年10月のいわゆるゴーサントオのダイヤ改正で「くろしお」の運転系統が新宮駅で分割され、新宮駅~名古屋駅間を走る列車に「南紀」という愛称が付与された。「南紀」は3往復が設定され、1985年には1往復が増発されるとともに、1本が紀伊勝浦→新宮間で普通列車として運転されるようになった。
民営化後
国鉄が分割民営化されると「南紀」はJR東海の受け持ちとなり、1989年には最多の5往復が設定される。ただし利用者数がイマイチだったのか翌年には4往復に減便され、1往復が紀伊勝浦駅発着の「快速みえ」となる。
運転開始当初はキハ80系が使用されたが、1992年3月改正からはJR東海が開発した新型気動車キハ85系「ワイドビュー南紀」が運行開始した。
通常は4両編成で多客時には6両まで増結。所要時間が42分短縮され、5往復へ増便された。
奇しくも紀勢本線は「くろしお」としてキハ81形か最後を迎えた地であり、「南紀」もまた後継の登場によってそれがそのままキハ80系最後の地となった形である。
2001年3月改正よりグリーン車の連結が通年から多客期のみに変更となり、同時に全区間特急列車で運行されるようになった。2009年3月ダイヤ改正から半室グリーン車のキロハ84が通年連結されると同時に通常の編成が4両になる。しかしCOVID-19の影響による需要激減のためか2020年11月1日よりグリーン車廃止の2両編成となった(一応多客時の増結及び最大増結数は維持とは言っている)
2022年3月ダイヤ改正で列車名からワイドビュー表記が削除され30年ぶりに単なる「南紀」表記に戻った。
2023年7月1日にキハ85系からハイブリッド方式の新型特急車両HC85系に置き換えられた。
2024年3月16日より新宮駅~紀伊勝浦駅間がワンマン運転を開始した。
基本的には名古屋駅と紀伊勝浦駅を往復する運行であるが、夕方の名古屋発は新宮止まりとなり、それが折り返しで朝の新宮駅発名古屋駅行となっている。
需要に応じ全車普通車の2両編成(自由席・指定席各1両)又は全車普通車の4両編成(1号車のみ自由席)が用いられる。
近年の状況
並行する紀勢自動車道の延伸や沿線の観光需要の低迷や自治体住民の過疎化の進行による利用減により劣勢に立たされている。同じく並行する道路整備で苦境に立たされている。「ひだ」同様、観光面でのテコ入れを図るため、HC85系を投入したが世界遺産に登録された『合掌造り』や小京都と呼ばれている高山市への外国人観光客が多い「ひだ」とは異なり、前述通り観光需要減や過疎化のスピードが速く紀勢自動車道の更なる延伸により、苦境に立たされている「南紀」がそこまで保てるかと心配する声も聞かれる。
停車駅
名古屋駅 - 桑名駅 - 四日市駅 - 鈴鹿駅 - 津駅 - 松阪駅 - 多気駅 - 三瀬谷駅 - 紀伊長島駅 - 尾鷲駅 - 熊野市駅 - 新宮駅 - 紀伊勝浦駅