鳥も翔らぬ大空に
かすむ五重の塔の影
四天王寺はあれかとよ
概要
大阪府大阪市の南側エリア(ミナミ)を代表する重要な駅の一つであり、JR西日本の関西本線(大和路線)・大阪環状線・阪和線、大阪市高速電気軌道(Osaka Metro、旧・大阪市営地下鉄)の御堂筋線・谷町線が乗り入れる中核駅。近畿日本鉄道南大阪線の大阪阿部野橋駅と阪堺電気軌道の天王寺駅前停留場が隣接しており、大阪市南部の大ターミナルとなっている。
近鉄の駅については大阪阿部野橋駅の記事を参照。
JR西日本 天王寺駅(JR-O01、JR-Q20、JR-R20)
JR西日本の関西本線(大和路線)・大阪環状線・阪和線の接続駅。天王寺ミオ本館・プラザ館がある。
大阪鉄道時代の1889年5月14日に開業。大阪鉄道(初代)は当時奈良~湊町(現在のJR難波)間などの路線を持っていた鉄道会社で、関西鉄道への合併を経て、鉄道省、後に日本国有鉄道の路線となった。
その間1929年の阪和電気鉄道開業時に、鉄道省の天王寺駅に被せる形で阪和線の天王寺駅(現在の1~9番ホーム)が建設された。
どうしてこんな構造になったかというと、阪和電気鉄道の建設認可に際して鉄道省から付けられた条件の一つに、「大阪方の起点を省線に接続する」というものがあったため。
JRののりばは1番のりば~18番のりばまで存在。かつてはくろしおなどの紀州方面の特急の始発駅だったが、JR化以降新大阪駅、京都駅発着の電車が増え、地下ホームの15番・18番のりばの発着となっている。同様に、特急以外で大阪環状線と阪和線方面を直通運転する電車は、阪和線の地上ホームではなく地下ホームの15番・18番のりばの発着となっている。
1桁番号のホーム(地上ホーム)は元々は阪和電気鉄道の始発駅だった為頭端式となっている。
大阪環状線のりばの発車メロディーとして、大阪市天王寺区出身の和田アキ子のヒット曲「あの鐘を鳴らすのはあなた」が使用されている。
駅構造
阪和線のりば(1-9番のりば)は櫛形ホーム5面5線の地上駅。2・3番のりば、4・5番のりば、6・7番のりば、8・9番のりばが同じ線路を共有しており、3・4・7・8番のりばが乗車用、2・5・6・9番のりばが降車用となっている。かつて1・2番のりばは特急用ホームで、中間改札があったが撤去され、早朝の関空快速やきのくに線直通電車などに使われた。現在1番のりばからは臨時の「くろしお」81号が発車するほか、朝晩には降車専用ホームとして、またダイヤが乱れて大阪環状線へ直通しなくなった際に関空快速が1番のりばで折り返す。
環状線のりば(11-14番のりば)は掘割部の島式ホーム2面3線の地上駅。ホームの長さは8両編成分。12・13番のりばは同じ線路を共有し、12番のりばは当駅始発の内回り電車のりば、13番のりばは降車用である。天王寺で終着となる電車は、14番のりばから一旦引き上げ線に入り11番のりばに入線する場合(日中は大和路快速がこのパターン)と、12・13番のりばで直接折り返す場合(日中は関空・紀州路快速がこのパターン)がある。日中の周回電車は時間調整のため3分ほど停車する。
当駅では内回り線の列車は、大阪止めを除き、阪和線・関西本線(大和路線)・桜島線乗り入れ列車を含め、環状運転の普通列車として案内されている。これは、各種快速も大阪までは各駅に停まることに加え、阪和線・大和路線乗り入れの各種快速は、天王寺から大阪環状線を1周し、もう一度天王寺に着いてからそれぞれの路線に出て行く(大阪環状線に来る時はその逆)「6の字運転」を行うからである。
最初から本来の行先を表示すると、天王寺から大阪環状線を1周する列車(11・12番乗り場)と、天王寺から阪和線・大和路線に出て行く列車(15・16番乗り場)の区別が紛らわしいため、前者は天王寺を発車するまでは環状運転の普通として扱われ、発車直後に本来の行先・種別に切り替わる仕様になっている(列車番号上は、京橋または大阪まで普通列車で、以遠で各種快速に切り替わる)。
大阪までの各駅に行くにはどれに乗っても問題無いが、慣れない客が寝過ごして阪和線や大和路線(列車によっては紀勢本線(きのくに線)や和歌山線まで)に連れて行かれる事例が時折発生する。
本来の環状運転を利用したければ、「ロングシートで女性専用車のある列車」、具体的には323系に乗ればよい。これも西九条から桜島線に乗り入れる列車が混じっているが、乗り過ごしても3駅なので比較的簡単に引き返すことができる。
大和路線のりば(15-18番のりば)は掘割部の島式ホーム2面4線の地上駅。ホームの長さは一般電車が8両編成分、特急電車が9両編成分。15番のりばの一番後ろ、「はるか」の1号車及び「くろしお」の9号車は、車掌室から客席部分にかけては柵でガード、柵の切れたところが最後の扉である。1989年7月22日に阪和線を結ぶ短絡線が設けられ、大阪環状線と阪和線の直通ができるようになった。短絡線は当初単線で、大和路線と平面交差し、阪和線直通電車が16・18番のりばに発着していたため、ダイヤ上のボトルネックとなっていたが、2008年3月15日に短絡線が複線化され、大和路線を平面交差しなくなった。同じダイヤ改正より阪和線直通電車は15・18番のりば、大和路線の電車は16・17番のりばの発着となっている。15番のりばから発車する「くろしお」は車両形式によりドア位置が異なるため、天井に設置されている行灯式号車案内で確認する。「はるか」はホーム上に乗車口案内がある。
阪和線のりば東側に1本、環状線のりば西側に2本の引き上げ線がある。14番のりばと15番のりばの間にはホームがない線路がある。環状線の引き上げ線から奈良方面への回送やJR難波への回送のため環状線の引き上げ線に入りきらない時に使われる。
のりば | 路線 | 方面 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 臨時ホーム | 朝に天王寺止まりの電車の降車ホームとして使用 | |
2 | 降車ホーム | ||
3・4 | 阪和線・きのくに線 | 鳳・日根野・和歌山・御坊・紀伊田辺方面 | 快速・区間快速。一部の区間快速は7番のりばから発車 |
関西空港線 | 関西空港方面 | 天王寺始発の関空快速 | |
5・6 | 降車ホーム | ||
7・8 | 阪和線 | 杉本町・鳳方面 | 普通電車 |
9 | 降車ホーム | ||
11・12 | 大阪環状線(内回り) | 鶴橋・京橋・大阪方面 | 12番のりばは天王寺始発電車のみ |
13 | 降車ホーム | ||
14 | 大阪環状線(外回り) | 新今宮・西九条・大阪方面 | 京橋・鶴橋からの普通電車 |
15 | 阪和線 | 鳳・日根野・和歌山方面 | 大阪環状線から直通の快速・紀州路快速 |
関西空港線 | 関西空港方面 | 関空特急「はるか」・関空快速 | |
きのくに線 | 御坊・紀伊田辺・白浜・新宮方面 | 特急「くろしお」・紀州路快速 | |
16 | 大和路線 | 王寺・奈良・加茂・高田方面 | 朝の一部は15番のりばから発車 |
17 | 大和路線 | 新今宮・JR難波方面 | 朝の一部は18番のりばから発車 |
大阪環状線(外回り) | 新今宮・西九条・大阪方面 | 大和路線から直通の大和路快速・区間快速 | |
18 | 大阪環状線(外回り) | 新今宮・西九条・大阪方面 | 阪和線(一部は大和路線)から直通の快速 |
JR京都線 | 新大阪・京都方面 | 特急「はるか」「くろしお」 |
2・5・6・9・13番のりばは降車ホーム。
2011年前後まで11番のりばからの高架に喫茶店や軽食レストラン、洋菓子が軒を連ねていたが、駅の耐震補強工事に伴い、購買店舗である「駅ファミ」を残して全て撤退した。東改札につながる高架には、2018年4月27日に「麺家 みちくさ」、7月31日に「セブン-イレブン ハートイン」、10月31日に「デリカフェ・キッチン天王寺」がオープン。
11 - 18番のりばのホーム東側にエレベーターがあり、歩く距離が長いが、中央改札からは阪和線9番のりばを歩くことで利用できる。関空快速で関西空港に向かう場合も同様。
案内上ののりばと運転取扱い番線は以下の表の通り。
案内のりば | 運転取扱い番線 |
---|---|
1番のりば | 阪和5番線 |
2・3番のりば | 阪和4番線 |
4・5番のりば | 阪和3番線 |
6・7番のりば | 阪和2番線 |
8・9番のりば | 阪和1番線 |
11番のりば | 1番線 |
12・13番のりば | 2番線 |
14番のりば | 3番線 |
のりばなしの線路 | 4番線 |
15番のりば | 5番線 |
16番のりば | 6番線 |
17番のりば | 7番線 |
18番のりば | 8番線 |
10番のりばがない
天王寺駅は、3路線をまたぐ駅のため、のりばが多く、なんと18番のりばまである巨大な駅だ。その中で肝心の10番のりばがなぜか見当たらない。国鉄が買収した時に、のりばの番号を地上ホームと地下ホームを区別しやすくするために、通し番号ではなく1~9番のりばと11~18番のりばとしたのが有力。
隣の駅
大和路線
- 大和路快速・快速・区間快速
- 普通
- 東部市場前駅(JR-Q21) - 天王寺駅(JR-Q20) - 新今宮駅(JR-Q19)
大阪環状線
- 普通
- 新今宮駅(JR-O19) - 天王寺駅(JR-O01) - 寺田町駅(JR-O02)
阪和線
- 関空快速・紀州路快速・快速
- 新今宮駅(JR-Q19) - 天王寺駅(JR-R20) - 堺市駅(JR-R28)
- 直通快速(環状線外回りのみ)
- 新今宮駅(JR-Q19) ← 天王寺駅(JR-R20) ← 堺市駅(JR-R28)
- 区間快速
- 天王寺駅(JR-R20) - 堺市駅(JR-R28)
- 普通
- 天王寺駅(JR-R20) - 美章園駅(JR-R21)
関連動画
Osaka Metro 天王寺駅(M23・T27)
1938年(昭和13年)4月21日に大阪市営地下鉄の駅として開業。2018年にOsaka Metroへ移管。
御堂筋線と谷町線の乗換駅。御堂筋線のホームがJRの駅の南側にあるあびこ筋の地下、谷町線のホームがJRの駅の西側にある谷町筋の地下にあり、両路線のホームはJRの線路の下をくぐる長い地下通路で連絡している。
御堂筋線
- 所在地:大阪市阿倍野区阿倍野筋一丁目1-48
上述の通り、1938年(昭和13年)4月21日、難波~天王寺の延伸時に開業、1951年(昭和26年)12月20日に当駅から昭和町駅まで延伸するまで、13年の間終着駅であった。
御堂筋線のホームは地下2階にあり、ホームドア設置済み。なかもず方面行きは片面ホーム、千里中央方面行きは島式ホームの2面3線。1番のりばに入ってきた天王寺止まりの列車はここで乗客を降ろした後、なかもず方にある引き上げ線に入り、折り返して2番のりばへ入線し客を乗せる。
なかもず発の終電は当駅止まりだが、到着後は引き上げ線に入らず、夜間停泊のため大国町駅へ回送される。
東西の改札付近、および谷町線寄りの改札外は、駅ナカ商業施設「ekimo天王寺」となっている。
谷町線
- 所在地:大阪市天王寺区茶臼山町5-12
1968年(昭和43年)12月17日、谷町四丁目駅~当駅の延伸時に開業。1980年(昭和55年)11月27日に当駅~八尾南駅まで延伸するまでの約12年間、終着駅であった。
地下3階に相対式2面2線のホーム。ホームドアは未設置。
地下2階の改札は南北1か所ずつ。改札から階段を上がったところに地下街「あべちか」がある。南改札天王寺公園寄りの通路からも「あべちか」の地下2階に直結し、天王寺公園へエレベーターで行くこともできる。
隣の駅
御堂筋線
動物園前駅(M22) - 天王寺駅(M23) - 昭和町駅(M24)
谷町線
四天王寺前夕陽ヶ丘駅(T26) - 天王寺駅(T27) - 阿倍野駅(T28)
阪堺電気軌道 天王寺駅前停留場(HN01)
所在地:大阪市阿倍野区阿倍野筋一丁目
阿倍野区のあべの筋中央部にあるが停留場名は「天王寺駅前」とした。上町線の起点。開業は1900年。
堺市に乗り入れる浜寺駅前行きと、大阪市内で完結する我孫子道(案内上は「あびこ道」)行きが発着する。
ホームは2面1線であるが2列車まで発着可能としている。
当駅と隣の阿倍野停留場では2015年夏より駅舎移設工事を行っている。2016年12月3日に軌道の移転と駅舎の移転が実施された。新しい軌道敷は関西の路面電車で初めて芝生による緑化が行われている。
隣の停留場
天王寺駅前停留場(HN01) - 阿倍野停留場(HN02)
南海電気鉄道 天王寺駅(廃止)
1900年〜1993年。
ホームは1面2線の島式で、天下茶屋駅発着だった頃は、国鉄の続き番号で19・20番線になっていたが、1984年の今池町~天下茶屋間の部分廃止・単線化の際に番号のない単線ホームへ移設。この際天王寺支線は南海本線・高野線(以下、文中では後述の汐見橋線との区別のため「高野本線」と呼ぶ)と完全に分断され孤立路線化されたため、使用車両の1521系モハ1524・1526(いずれも両運転台車)の検車設備が設けられた。
1992年度末の廃止後、ホームは撤去されたが、当駅付近の路盤が一部残されている。ホーム跡地には「天王寺ミオ(現在は天王寺ミオ本館)」が建てられた。
廃止後、検車設備は汐見橋駅へ
また当駅にあった検車設備は、廃止直後に汐見橋駅に移転した。折しも、岸里玉出駅では高架化工事が中盤に差し掛かり、この高架化工事で高野本線と分断された汐見橋線が、一時的とは言え南海本線とも分断され、使用車両3編成6両のねぐらである住ノ江検車区への出入庫が不可能になるための措置で、汐見橋駅2番線にこの検車設備を移転させ、4月18日から使用。フェンスで覆って乗客が全景を眺められないようにしてあったが、改札口付近に立てばその検修用車庫に停まっている車両を眺めることができた。
1995年8月25日に南海本線と線路がつながり、再び住ノ江検車区に出入庫が可能になったことで、汐見橋駅の検車設備は役目を終え廃止になった。
この当時の汐見橋線は高野本線とは異なり、前述の1521系を使用していた(分断前は高野本線と同じ6000系の2連を使用)。
利用状況
JR西日本
Osaka Metro
- 2023年(令和5年)度の1日平均乗降人員は238,194人である。
年度別利用状況比較表
事業者名 | JR西日本 |
| |
---|---|---|---|
年度 | 乗車人員 | 乗降人員 | 乗降人員 |
2008年(平成20年)度 | 139,279人 | 278,558人 | 266,286人 |
2009年(平成21年)度 | 133,741人 | 267,482人 | 251,535人 |
2010年(平成22年)度 | 132,066人 | 264,132人 | 246,491人 |
2011年(平成23年)度 | 134,728人 | 269,456人 | 248,413人 |
2012年(平成24年)度 | 134,028人 | 268,056人 | 246,463人 |
2013年(平成25年)度 | 139,138人 | 278,276人 | 249,579人 |
2014年(平成26年)度 | 141,463人 | 282,926人 | 259,317人 |
2015年(平成27年)度 | 143,202人 | 286,404人 | 261,639人 |
2016年(平成28年)度 | 145,100人 | 290,200人 | 256,959人 |
2017年(平成29年)度 | 148,254人 | 296,508人 | 269,620人 |
2018年(平成30年)度 | 147,871人 | 295,742人 | 265,276人 |
2019年(令和元年)度 | 146,163人 | 292,326人 | 264,481人 |
2020年(令和2年)度 | 108,718人 | 217,436人 | 221,570人 |
2021年(令和3年)度 | 113,905人 | 227,810人 | 223,050人 |
2022年(令和4年)度 | 127,748人 | 255,496人 | 230,570人 |
2023年(令和5年)度 | 238,194人 |
バス停は「あべの橋」
当駅最寄りの大阪シティバスの停留場は、市営交通時代から地下鉄とは異なり「あべの橋」を名乗る。これは亡き市電の停留場名を引き継いだもので、当駅を跨ぐ同名の陸橋「阿倍野橋」に由来する。
同バス停を跨ぐバス路線は【62】住吉車庫前〜あべの橋〜上本町6丁目〜天満橋〜大阪駅前のみで、それ以外は同バス停を起点に東成区・生野区・東住吉区・阿倍野区・西成区方面へ向かう。
近鉄バスの停留場は「あべのハルカス」で、現在は大阪上本町駅への路線が発着するが、過去には「阿倍野橋」を名乗り、駅北側より巽北4丁目を経て近鉄八尾駅へ向かう路線、南側より国道25号線を経て志紀車庫前(近鉄バス八尾営業所)へ向かう路線が発着していた。2000年代に入り、志紀車庫への路線、近鉄八尾駅への路線とも相次いで廃止になった結果、近鉄バスは天王寺駅から一旦は姿を消したものの、あべのハルカス開業にともない再進出している。