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ハイブリッド(英: hybrid、英語発音: /ˈhaibrid/ ハイブリドゥ)は、2つ(またはそれ以上)の異質のものを組み合わせ一つの目的を成すものを言う。


言葉の使われ始めの経緯編集

日本語としてこの言葉が使われ始めたのは1960年から1970年代のハイブリッド計算機が日本でも欧米を追い商品化された時代からで、一部の関係者はこの言葉を使った。また1964年にIBMが開発、販売した汎用コンピュータであるSystem/360の基本ハードウェアに「hybrid integrated circuit」も使われた(参照:System/360#基本ハードウェア)。当時流行したアマチュア無線機においては、真空管とトランジスターを併用した機種をハイブリッドと称した。


一方、コンピュータ分野とは別に1970年当初頃から混成集積回路(後のハイブリッド集積回路)が新たに作られ、これが電子部品として多数、また多くの分野で広く活用され始めたのは1980年代となってからであった。混成集積回路が新たに作られた時代にハイブリッド計算機は既に有り、米国では「hybrid integrated circuit」とも言われたが、日本ではハイブリッドとは呼ばず、初期には日本語の「混成」を冠した言い方が多かった。その後は混成集積回路もまた他の分野でも次第にカタカナのハイブリッドを冠するものが現われ、言葉として広く定着してきた。

概説編集

一般的には各分野の産業技術などの発展段階として別個の物がそれぞれ技術的な完成の域に達し、その後個別の物を組み合わせるという、応用段階や工夫の段階として進展の状態と捉えられる。言語におけるハイブリッドも別個の言葉がそれぞれ一般化し、さらにそれを組み合わせて新たな意味合いの一つの言葉として発展する事がある。


一方、技術の発展からの組み合わせであるだけに、そのものの出現当時は期待を担ったが、ハイブリッドコンピュータのように、より優れた他のものにとって代わられ衰退や一部の特定分野だけの利用に留まり、製造や商品、商業形態などとして継続しないものもあることは否定できない。


ハイブリッドと呼ばれるもの編集

生物学編集

交雑種 (Hybrid) または雑種 - 生物学においては、異なった種の動物・植物を特に人工的に組み合わせてできた新種のことを表す言葉で、英語では古くから使われた。日本では古くから生育された猪(いのしし)と雌豚の掛け合わせの「猪豚(いのぶた)」はハイブリッドと呼べるものである。近年ではレオポンなどもその類である。

ハイブリッドウルフ (Hybrid Wolf) - 大型犬種のひとつ。ハスキーシェパードなどの犬種と家畜化されたオオカミとを交配したものをこう呼ぶ(ウルフハイブリッドとも呼ぶ)。

ハイブリッドイグアナ (Hybrid Iguana) - ガラパゴス諸島のオスのウミイグアナとメスのリクイグアナの間で生まれ、両方のDNAを持つ雑種のイグアナ。地球温暖化の気候変動で海藻の枯渇が一部起こり、オスのウミイグアナが陸に上がり、メスのリクイグアナと交雑した結果、誕生した新たな雑種。生物は気候変動に新たな生息地を求めるが、ここでは移動ができない。移動ができなければ絶滅もあるが、ハイブリッドイグアナは新たな進化と考えられている。


コンピュータ、電気、電子工学とその関連編集

●ハイブリッドコンピュータ - アナログコンピュータのアナログ量のままでの処理できることや処理や計算速度の速さなどの利点と、デジタルコンピュータのデジタル量としての情報を一時的にも長期的にも記憶ができる、また大記憶容量にできる、複雑なプログラムで働かせることができるなどの利点を生かし、両者のこれら長所を利用する目的で、両者を接続または組み合わせ、1台のコンピューターとして働くもの。1970年代においては、まだ特定の利用分野でデジタル方式とアナログ方式の両方式が優劣を競い合い、それを組み合わせたハイブリッドコンピュータはハイブリッド計算機と呼ばれた。当時はコンピュータは計算機と呼ばれることが多かった時代。その後殆ど利用されず、デジタル方式にとって代わられた。

●ハイブリッド集積回路 - 電子部品の集積回路と抵抗器、コンデンサなどの個別部品(ディスクリート、discrete部品) を小型基板上に混載した集積回路をいう。当初は混成集積回路とも呼ばれた。ハイブリッドICや略してHICとも言われる(参照:集積回路#ハイブリッド集積回路)。

●ハイブリッドHDD(ハードディスクドライブ) - 当記事の関連商品。フラッシュメモリをキャッシュメモリとして搭載したハードディスクドライブ。OSやアプリケーションソフトウェアの起動の高速化とHDDの消費電力の低減を実現する。Windows Vistaの「Windows ReadyDrive」等のソフトウェアによりサポートされる。SSDとHDDを纏めて「SSHD」とも略される。

●ハイブリッドディスク - Super Audio CDのプレイヤーと通常のCDプレイヤー両方の再生機で再生できるオーディオディスクのことをSACD/CDハイブリッド仕様あるいはハイブリッドディスクと呼ぶ。CDとDVDを組み合わせたものも流通している。本来の規格を無視しているため一部の機器では正常に再生出来ない。

●ハイブリッド加湿器 - 2つの方式(主に超音波とヒーター加温)によって加湿する加湿器。「気化式(水を含んだ気化フィルターに風を当てて加湿する方式)」と「温風気化式(水を含んだ気化フィルターに温風を当てて加湿する方式)」を組み合わせた方式もある。

●ハイブリッドスリープ - パソコンでMicrosoft Windows Vistaを搭載した場合の電源の切断モードの一つ。Microsoft Windows XPまで使われたスタンバイと休止状態(ハイバーネート、hibernate)を兼ねたもの。オペレーティングシステムやアプリケーションソフトウェアの状態をスタンバイとしてメモリーに待避させ、また休止状態としてハードディスクドライブにも待避させる。次に電源を入れ、作業を再開するのは、メモリーから即座(2秒以内とされる)に対応する。停電やバッテリー切れの場合は、ハードディスクドライブから失われたメモリーの内容を補う書き込みをして再開する。コントロールパネルから「電源オプション」、「電源ボタンの動作の選択」、「電源ボタンを押したときの動作」を休止状態に指定しておき、画面のスタートボタンから「Windowsのシャットダウン」でスリープを選んで終えるとハイブリッドスリープとなる。


動力編集

ハイブリッドカー - 自動車などにおいて内燃機関動力(ガソリンエンジンディーゼルエンジン)と蓄電池によるモータの回転動力を組み合わせた動力源を使うもの。またこの組み合わせに限らず、2つの異なる方式をそれぞれの動力源とする自動車。

●ハイブリッド気動車 - JR東日本を中心にディーゼルエンジンと電気動力を併用するもの、燃料電池と蓄電池の電気動力を併用するものなどが研究されている。

●ハイブリッドロケット - 宇宙開発の工学において、推進燃料に固体燃料と気体または液体の酸化剤を使用するロケットをハイブリッドロケットと呼ぶ。


このほか、漁船やタンカー、飛行機など各分野において、実験段階ではあるが複数動力併用の可能性が模索されている。近年燃料の中東依存や化石燃料枯渇への懸念から、これらの動きはますます加速しつつある。


環境、エネルギー、科学、工学一般編集

機械産業の分野では、2つの個別の技術に基づく物を併用、組み合わせて構成し新たな機能を持った製品、もしくは混成部品や混成機構からなるものを多くハイブリッドと呼ぶ。


●ハイブリッドシステム(制御理論) - 制御理論では、連続時間動的システムと離散事象を兼ね合わせた考え方。近年では組み込みシステムやミドルウェアの発展において、連続時間と離散事象を一括して扱えるハイブリッドシステム論が重要な役割を担うとして、その研究はDARPAや情報社会・メディア総局などで盛んに奨められているが、日本では政府の理解がなく大きな動向は起こっていない。

●ハイブリッドシステム(エネルギー) - エネルギー分野ではハイブリッドシステム論が有り2種類以上のエネルギー発生技術・製品を組み合わせて用いることで、相補的・効率的なエネルギー運用を目指す技術の総称である。例として、高温型燃料電池をガスタービンサイクルの内部に組み込むことで、燃料電池とガスタービンの両方のエネルギー効率を上昇させ、総合効率を飛躍的に高める「燃料電池・ガスタービンハイブリッド技術」等がある。

●ハイブリッド法 - 計算物理学で、非常に大きな系で精度の高いシミュレーションをするための電子状態計算の手法をハイブリッド法と呼ぶ。分子動力学法や有限要素法などを効率的に組み合わせて行う。


語源、文化、スポーツ、商用手法、風俗、その他編集

●ハイブリッド語 - 言語学では、昨今の若者語の「写メ」、英語の「beautiful(英beauti+仏ful)」など、2種の異なる言語の単語または要素が結合して出来た言葉、混成語をいう。「かばん語」も参照。

●ハイブリッド検索 - インフォシークなどが推進する複合型検索機能をハイブリッド検索と呼ぶ。インフォシークでは、検索結果のほかにニュースやマネー、求人などインフォシークが提供する関連情報が表示されるほか、辞書(英和、和英、国語)、天気、地図などの検索項目のアイコンがページ上部に表示される。

●ハイブリッド放送 - ラジオにおいて、ストリーミング生放送(side-L)と、MP3のダウンロード放送(side-R)の2つで構成される番組の放送形態をハイブリッド放送と呼ぶ。また、これとは別に文化放送は携帯電話とラジオ放送で同じ内容の番組を配信するサービスをハイブリッド放送と呼んでいる。携帯向けにはiモーションの配信技術などを使用し、専用アプリケーションソフトウェアで再生する。

●ハイブリッド証券 - 証券取引の分野では、社債と株式の中間的特性を備えた証をハイブリッド証券と呼ぶ。劣後債、永久債、優先出資証券、利益参加社債など。日本では金融機関が多数発行してきた。通常の株式発行に対し、一株あたり利益の希薄化や新株主による経営参加のリスクを防ぐことが出来るほか、通常の債権発行に対し財務の柔軟性を高めることが出来る。一般に通常の有利子負債よりも調達金利が高くなるとされる。2006年にイオンと新日本製鐵が相次いで発行したことから注目が高まる。

●ハイブリッド掲示板 - 2つ以上の話題を取り上げたインターネット上の掲示板サイトのことをこのように呼ぶことがある。

●ハイブリッド課金 - オンラインゲームの料金形態のひとつで、定額課金制度とアイテム課金制度の2つを同時に採用してるゲームをさす。

●ハイブリッドイメージ (Hybrid image) 、2007年にマサチューセッツ工科大学(MIT)が発表した人間の視覚的錯覚をもとにした一つの画像が見る距離によって違った2通りに見える画像。全く違う2つの画像を、一つは輪郭のはっきりした画像とし、もう一つはぼかした画像とし、その2つの異なった画像を重ね合わせた画像をハイブリッドイメージと呼ぶ。これを見た場合に近距離では前者が、遠距離では後者が見えるもの。


ハイブリッドを冠する固有の商品、サービス名、名詞など編集

●ハイブリッド (バンド) - イギリスのエレクトロニック・ミュージックバンド。

●セイコー・ハイブリッド - 1970年代末に発売された腕時計。液晶によるデジタル時計が普及し始めた頃のモデルでアナログ文字盤とデジタル表示部を組み合わせたもの。なおライバルのシチズン時計では同様の商品に「デジアナ」と命名している。

●ハイブリッドカム (Hybrid CAMera) - 民生用ビデオカメラでは日立がDVDとハードディスクドライブ(マイクロドライブ)を搭載したビデオカメラ、ハイブリッドカムコーダWoooを2006年8月に発売した。特徴はビデオカメラだけでHDDからDVDに保存できる便利さにある。

●ハイブリッド・レジャーランド東武動物公園 - 東武動物公園の動物園や遊園地などが一体化した複合型レジャー施設。

●ハイブリッドめーるサービス - 郵便事業会社が運営するパソコン通信と郵便制度の双方を利用した通信文配達サービス。差出人がコンピュータで作成した通信文をインターネットを介して郵便事業会社が引き受け、郵便事業会社において印刷し、専用の封筒に納めて、全国に配達するサービス。派生サービスに同様の手段で内容証明郵便を作成・発送する「e内容証明」がある。

●ハイブリッド (パチスロ) - 山佐のパチスロ機。2つの違った出玉確率の方式を組み合わせたものをハイブリッドと呼ぶ。

●ハイブリッド携帯通信 - 1999年7月からDDIポケット(現ウィルコム)が順次投入したベストエフォート方式の新型PHS「H”(エッヂ)」シリーズの広告活動の際に付けたキャッチコピー。

●SBIハイブリッド預金 - 住信SBIネット銀行が提供する預金口座。この口座に入金された残高はSBI証券における株式等の買付代金に即時反映される。

●ぺんてる製ボールペンの商品名。

●ハイブリッドスイーツ - 二種類(或いはそれ以上)の異なるスイーツの要素を融合したもの。ドーナツとクロワッサンを掛け合わせた「クロナッツ」がブームの火付け役と言われる。


Wikipedia UTC 2011年6月11日 (土) 10:59 より抜粋

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