かばん語
かばんご
かばん語(鞄語)、または混成語とは、合成語の一種である。
この単語は、1871年に発表されたルイス・キャロルの児童小説『鏡の国のアリス』の作中の一説に由来している。その第6章、登場人物の一人であるハンプティ・ダンプティは“旅行カバン”(portmanteau)の例を引き合いに出しながら、自身が持つ「言葉に好きな意味を込めて使う(=元の性質を保持した新しい「意味」を与える)」能力について主人公アリス・リデルに講義を行うのであった。
「かばん語」という名称は英語の“portmanteau word”を訳出したもので、その語源は英語のporter(カバン)+フランス語のmanteau(外套)+フランス語のporte-manteau(衣装掛け)の組み合わせで構成されている。
このように、一般的な合成語である複合語が「2つ以上の単語をつないで熟語を構成する」のに対し、かばん語は「ある単語の綴りの中に別の単語の綴りを織り込むことで、元の単語の意味を内包した新しい単語を生成する」ことに主眼がおかれているのが特徴である。
アリスシリーズの作者ルイス・キャロルは『マザー・グースの詩』に範を得た“言葉遊び”を非常に得意としており、 彼の作品にはみずから創作したかばん語がしばしば登場する。
なお、近年ではカバンそのものや旅行形態も多様化し、技術革新が進んで軽量かつ丈夫な繊維素材や樹脂が用いられるようになったため、19世紀以前のような姿の旅行カバンは次第に廃れつつある。それに伴ってか、今日におけるportmanteauは「portmanteau wordの省略形」としての用法が一般的だ。
上述のように、かばん語の構造は「複数の単語が癒着または入れ子のように合成される」という特徴を持っている。また、新しく生成される言葉は「合成元の単語の姿(シニフィアン)と意味(シニフィエ)を保持している」=「一目で単語の由来や意味を一意的に認識・理解できる」ものでなくてはならない。
したがって、一般的なかばん語の作り方としては下記の各方法の通り。なお、各方法の名称は便宜的なものである。
混合法
原型となる各単語成分の発音の一部が、各語の意味のほとんどを保存したまま混合される。この手法はルイス・キャロルの好むところであり、他の手法はほとんど使用していない。
(例) lithe(滑らかな) + slimy(ねばねばする、粘性のある) = slithy(粘滑)
連結法
「第一の語の前半」と「第二の語の後半」が連結される。この手法は混成語を作成する最も基本的な手法である。
(例) breakfast(朝食) + lunch(昼食) = brunch(ブランチ:遅めの朝食)
ちなみにタイトル下の概要文「KAWANGO」も、見ての通り「KADOKAWA」と「DWANGO」のかばん語であり、先日経営統合が発表されたKADOKAWA DWANGO(株式会社KADOKAWA:旧角川書店グループ + 株式会社ドワンゴ)に対するネタである。と同時に、この単語自体も実は「かばん語」とのかばん語というメタワードにもなっている。