概要
世界史的には市民革命と産業革命により近世が終わりを迎え、近代に移り変わった時代である。
19世紀の世界
18世紀末のフランス革命とアメリカ独立戦争により、世界は市民革命の時代を迎える。ナポレオン戦争で欧州制覇を目指したナポレオン・ボナパルトにより自由主義やナショナリズムの思想が広められ、長らく分裂していたドイツやイタリアは統一へと向かう。また、1810年代から1820年代にはナポレオン戦争による混乱に乗じてラテンアメリカ諸国が次々と独立した。
資本主義経済を膨張させた欧米列強は帝国主義による海外進出を強め、特にアジア・アフリカ地域では激しい植民地争奪戦が繰り広げられた。極東に位置する日本もそのあおりを受け、黒船来航をきっかけに時代は幕末に突入。江戸幕府は瓦解し明治維新を迎えた。
イギリス(英国)は世界初の工業化である産業革命真っ只中で、中盤から後半はその繁栄の絶頂期であるヴィクトリア朝である。世界の3分の1を植民地として支配する大英帝国として一強体制を築いていた英国だったが、世紀末にはアメリカ合衆国やドイツ帝国などの新興国が台頭したことで、その覇権に陰りが見え始める。資本主義の発達により激化した貧富の格差の是正を目指す社会主義運動が活発化し、カール・マルクスは共産主義社会が到来する必然性を説いた。
東欧から北アジアを征服していたロマノフ朝・ロシア帝国は、帝国主義勢力の空白地帯だった中央アジアを制してインド洋方面への進出をうかがい、清国の外満洲や新疆の一部を併合、内満洲や華北、東トルキスタン、太平洋方面への勢力拡大を目指した。中央アジアの覇権を巡るイギリスとロシアの対立はチェスに見立てて「グレートゲーム」と呼ばれた。極東方面のロシアの脅威は、日本が富国強兵を目指す大きな動機であった。日本は清国の利権を巡ってロシアと対立し、20世紀初頭の日英同盟締結と日露戦争へ繋がることとなる。
技術・文化
外燃機関であるレシプロ蒸気機関の最盛期である。定置式蒸気機関に加え蒸気機関車・蒸気船・蒸気自動車といった乗り物が普及した。一方で、都市ガスが普及し始めるとこれを燃料とする内燃機関の開発が活発化し、1860年にルノアールがガスエンジンを実用化する。19世紀末になると石油を燃料とするガソリンレシプロエンジンや蒸気タービン機関が実用化される。19世紀に鉄道レールや建造物の構造材料として主に利用されたのは錬鉄であったが、19世紀後期ににそれまでは高価であった鋼鉄の大量生産が実用化されると、金属材料の主役の座を譲った。
19世紀半ばには都市ガスや電力網の整備が始まったことからガス灯やアーク灯が街を照らし、夜の都市はそれまでよりも格段に明るくなった。工業化と人口集中により大都市の住環境は劣悪を極めたが、公衆衛生の考えが生まれたことにより上水道や下水道などのインフラ整備にも着手された。1880年にはトーマス・エジソンが白熱電球の特許を取っている。
自然哲学が自然科学として分離し、制度としての科学が確立、技術への応用が進展した。進化論や微生物学といった生物学、電磁気学や熱力学などの物理学をはじめ、電気学、機械工学、農芸化学、医学などの応用科学を発展させた。
木材パルプを原料とした紙の大量生産が始まり(それまでの紙は主にボロ布が原料)、書籍や新聞や雑誌といった印刷物が大衆に普及。写真や映像といったカメラによる新たな記録手段が生まれ、絵画の社会的位置付けが大きく変わった。ジャポニスムの流行もあいまって、それまでの西欧美術のスタイルにとらわれないビジュアルアートのスタイルが広まった。文芸でも推理小説やSFなどのジャンル小説が確立。未知への探究は心霊学やオカルト方面も膨らませた。
17世紀から19世紀半ばは、世界的に寒冷な小氷期であった。人口が集中していた西欧や東アジア(日本を含む)では、手近な山林資源は利用し尽くされ、人家に近い森林は失われてはげ山となっていたが、この時代に石炭や石油などの化石燃料を積極的に活用することで、森林破壊にブレーキをかける手段が得られた。一方でエネルギー消費の増大に歯止めがかからなくなり、人類は地球温暖化への引き金を引くことになる。
19世紀生まれ最後の人物
2018年に117歳で死去した1900年生まれの日本人女性「田島ナビ」が記録が確かな範囲では、人類最後の19世紀生まれとなっている。
関連タグ
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