スチームパンク(Steampunk)とはSFのジャンルのひとつ。レトロフューチャーの一ジャンルという側面もある。
意味合いとしては「産業革命の原動力となった蒸気機関が、現実の歴史における絶頂期のありようを超越して発展した技術体系や社会を前提としたSF作品」などと形容することができる。
スチームパンクの特徴
蒸気機関が主要な動力源として普及している世界観を描く。よりコンパクトな内燃機関や大出力の電動機などが発展・普及した現実の技術史を参考にしながらも、制約の大きな動力である蒸気機関をどのように発展させ、またそれらによって成立する社会をどう描いていくのかがスチームパンク作品の面白さの一つと言える。
電気を動力とする機械は、一般家庭にもあるものでは電話やラジオ、軍隊の施設や科学研究所などにしか無いものではコンピューターが関の山か。
蒸気機関が身近だった時代は、石炭に起因する(注1)煤煙による大気汚染が深刻な問題(注2)となっていた事から、発展を追い求めるほどに世界は暮らしにくい場所になっていくという、大きな矛盾を内包しながらも形作られる歪な理想郷の姿を描く側面も持つ。
時代背景はおおむね19世紀から20世紀初頭(1914年以前)にかけて、産業革命から世界大戦頃までの社会、またはその頃の時代をモチーフにした世界を舞台にする作品が多い。
モチーフとしては
などが登場する。
なお、「スチームパンク」という名称は、1980年代後半に「サイバーパンク」をもじって作られた派生語であるが、それ以前にもスチームパンクに相当する作品は世に出ている(その頃のジャンルを説明する際「ラピュタとか犬のホームズみたいな」ということが多いが、それらはプレスチームパンクに属する)。
また、19世紀から20世紀初頭にかけてのSF作品に見られるような、「当時の未来予想」に基づく、今日から見れば時代錯誤的な未来像(レトロフューチャー)を表現した作品も、スチームパンクと見なされる場合がある。
英国ヴィクトリア朝時代の古典的な服飾に、多くは真鍮製の各種ガジェットを組み合わせたスチームパンク的ファッションスタイルは、ネオヴィクトリアン(Neo-Victorian)と称され、海外のイベントではコスプレの定番モチーフとなっている。もちろん絵の題材としてもたいへん魅力的で、pixivにおいてもそういったイラストにつけられるタグとして定着している。
「亜種」もいろいろ
SFの浸透と拡散に伴い、「まずガンダムはSFじゃねえし」などの偏狭な原理化-先鋭化-細分化が暴走する中で誕生したこのジャンルは、皮肉なことに「単にそのスタイルのみを模倣しただけの作品」が名乗ることもあり、現在ではスチームパンクを標榜していながら作中に内燃機関や電力が登場するなど、単にレトロ風の技術やスタイル・デザインを表す記号として用いられる例も少なくない。そこに「スチーム」が一切登場しなくてもである。
大雑把に纏めてしまうならば、産業革命期からヴィクトリア朝をモチーフにした技術社会を描いた作品群を指し、さらに言えば、単に19世紀の西欧風の雰囲気を漂わせる世界観を描いたものも含まれ得る。
非常に広汎な題材を扱うSFの一ジャンルであるため、定義の厳密化も一筋縄ではいかないというのが実際のところだろう(例えば、ウィキペディアの「スチームパンク映画」カテゴリーには、今川泰宏監督版『ジャイアントロボ』が入っている。シズマドライブと呼ばれる機関で機械が動く近未来を描いたこの作品なら「テックパンク」にカテゴライズする方が正しいのだが、入っちゃってることからも分類が一筋縄ではいかないことがうかがえる)。
日本の漫画やアニメ、ゲーム作品では、スチームパンクの世界観をベースとしてさらに様々な味付けが施され、蒸気機関のみならず「古代超文明の残した超技術」や、科学の一部として発達した「魔法などを下地に発展した近代~近未来世界」を描いたものも多く見られる(『ファイナルファンタジー6』『鋼の錬金術師』など)。
これらは「ファンタジー的スチームパンク」とでも呼ぶべき別種のジャンルとして定着しており、とりわけ魔法と機械文明が密接な関係にあるものは「マジックパンク」とも呼ばれている(とはいえ『幻世』『ギア・アンティーク』『ハウルの動く城』など、スチームパンク世界では、魔法の共存がデフォルトである風潮すらある。19世紀後半~20世紀初頭の英国がオカルティズム・スピリチュアリズムの全盛期だったことに影響されているのかもしれない)。
なお、同じサイバーパンクから派生したジャンルで、エルフなどの亜人が現代を闊歩する「エルフパンク」、歯車機関(水車だったりばねだったり)が登場する「クロックパンク」、ディーゼルエンジンでいろいろする「ディーゼルパンク」などはスチームパンクに含まれる可能性が高いものの、同じ派生ジャンルで神話の神々が出る「ミスパンク(Mythpunk)」(たぶん『女神転生』とか『聖☆おにいさん』あたりを連想しときゃいいはず)は除外される。
……とまぁ、アレコレ小難しいことを書いてきたが、あくまで作品を鑑賞する側がどう定義付けるかの話であって、こういう話が作り手の創造性を阻害するべきものでない点には留意しておきたい。百回の議論よりも一つの作品が生まれることのほうがはるかに価値のあることなのだ。
またスチームパンクに似た意味の言葉としてアトムパンク、サイバーパンクという語がある。アトムパンクは蒸気ではなく原子力で全てが動き、銀色で丸みを帯びた建物が多く登場する世界観(例としてドラえもんの22世紀や鉄腕アトムなど)で、サイバーパンクはインターネットやAIなど情報科学が高度に発達した近未来的世界(例として攻殻機動隊やサイバーパンク2077など)または近未来的なディストピアを表す。
関連イラスト
記事のあるスチームパンク作品
小説、原作小説
- 海底二万里
- ジキル博士とハイド氏
- フランケンシュタイン
- シャーロック・ホームズ
- 上記四作は「スチームパンクの着想元となったヴィクトリア朝(および他国での同時代)に発表された作品」であり、それ自体はスチームパンクではない。一方でこれらはその出自から数々のスチームパンク作品でモチーフ元とされており、また翻案される際にスチームパンク的な要素が付け足されることも多い。
- ディファレンス・エンジン
- 屍者の帝国
- スチームパワード
漫画、原作漫画
アニメ
アニメ映画
TVアニメ
映画
ゲーム、原作ゲーム
- アサシンクリードシンジケート
- ギア・アンティーク(TRPG)
- グランディア
- サクラ大戦
- スチームパンクシリーズ
- シャイニングシリーズ
- スカイガンナー
- ファイアーエムブレムヒーローズ(ニザヴェリルが該当)
- ファイナルファンタジー6
- ぷよぷよ!!クエスト(蒸気都市が該当)
- LUNAR
- 倫敦精霊探偵団
- Frostpunk
その他
- ムジカ・ピッコリーノ(TV番組)
- 仮面ライダーサーベラ(特撮『仮面ライダーセイバー』のキャラクター)
- 文豪とアルケミスト(キャラクターの衣装や装飾デザインの一部に要素が見られる)
- カービィと夢幻の歯車(『星のカービィ』のアートワーク)
- ラスティフロント(フリーシェアワールドの一つ)
- 鉄翼蒸気奇譚(『ウマ娘プリティーダービー』のイベント)
別名・表記ゆれ
関連タグ
SF ファンタジー SFファンタジー レトロフューチャー
エンターテインメント作品のジャンル一覧
機械羽 ゴーグル 都市 歯車 飛空艇 錬金術
pixivスチームパンク(2010年に行われた企画)
【Rif】(2014年からの企画)
蒸機公演クロックワークメモリー(デレマスのイベント)
絢爛なりし灰燼世界(FGOの宝具)
5分18秒ショック(ヘタリアの二次創作)
スチームパンク松(おそ松さんの二次創作、へそウォ含む)
東方蒸気世界、東方蒸機関(東方Projectの二次創作)
外部リンク
まとめサイト
pixivision
- 【もう一つの未来の形】スチームパンク特集(2015年4月4日)
- 蒸気にけぶる歯車世界。スチームパンクな街のイラスト特集(2016年3月16日)
- 【蒸気機関の不思議なアイテム】スチームパンクな道具特集(2016年3月24日)
- 【ヴィクトリアンに蒸気機関がアクセント】スチームパンクな部屋特集(2016年4月15日)
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