表題になっているアナログ計算機の一種「階差機関」についてはこちらを参照。
概要
ディファレンス・エンジン(The Difference Engine)とは、作家ウィリアム・ギブスンとブルース・スターリングの共著による歴史改変SF小説である。
チャールズ・バベッジの階差機関が完成し、蒸気機関が史実以上に発展した世界における1855年の英国を舞台として、革命家の娘シビル・ジェラードと古生物学者エドワード・マロリー、そしてジャーナリストローレンス・オリファントの冒険を、「モーダス」と呼ばれる謎のプログラムが記された一揃いのパンチカードを軸に描き出す。
スチームパンクの古典として知られる一方、両著者が得意としたサイバーパンクの性格も併せ持つ点が特徴的である。
主要登場人物
- シビル・ジェラード:処刑されたラッダイト運動の指導者ウォルター・ジェラードの娘。現在は娼婦に身をやつしている。国外脱出のために元テキサス大統領サミュエル・ヒューストンのカウンター・クーデター計画に関わったことで、「モーダス」を手にすることになる。
- エドワード・マロリー:この世界におけるブロントサウルスの発見者であり、そこから”巨獣(レヴィヤタン)”の渾名で呼ばれている。暴漢に絡まれていたエイダ・バイロンを救ったことで、彼女から「モーダス」を託される。
- ローレンス・オリファント:著述家・旅行記作家、その裏の顔は英国政府御用達のスパイ。マロリーに接近し「モーダス」の謎を追おうとする中で「正体不明の「眼」に見られている」という感覚を抱くようになる。実在の人物。
作中世界
英国:1830年代に起きた革命で急進派が勝利し、階差機関とその発展形である解析機関の完成で史実以上の繁栄に突入する。バベッジやチャールズ・ダーウィンなど著名な碩学が能力によって列せられる「新貴族」として政界を支配しており、史実では詩人だったバイロンが首相となっている。
フランス:ナポレオン3世がメキシコを獲得している。英国とは蜜月関係にあり、「オルディナトゥール」と呼ばれる独自の解析機関を保有する。
アメリカ:南北戦争によってアメリカ合衆国とアメリカ連合国が分立し、テキサス、カリフォルニアがそれぞれ独立している。さらにニューヨークではマルクス率いる共産主義者がコミューンを作り上げ、マンハッタン島を占拠している。
日本:アメリカではなく英国によって開国させられた。福沢諭吉や森有礼が英国に秘密留学している。