概要
一般的には、暴力的な手段の行使によって引き起こされる政変のことを言い、主に支配階級の内部における権力移動の中で、支配勢力の一部が非合法的な武力行使によって自分より上位の者達を政権から駆逐または抹殺し、政権を奪うことを指す。
革命や反乱、テロと同義語にされやすく、似てはいるが微妙に違いがある(後述)。
"You can make a throne of bayonets, but you can't sit on it for long." - Boris Yeltsin
銃剣で王座を作ることはできる。だが長くは座っていられないだろう。 ―― ボリス・エリツィン
19世紀~20世紀にかけてはアジア・アフリカ・ラテンアメリカ等、応分に中央集権化がされているが民主主義的なプロセスが失敗または未成熟であり、軍部が当該国家においてエリート的地位を占めている(高等教育を上層階級以外が受けて立身する手段が軍以外にない)状況下で多発した。
21世紀に入ると国際関係上暴力を関与させた政変への風当たりが厳しくなっていることや社会構造の複雑化により軍事力のみで国内全体を制圧することが困難になっていることもあり南北問題の北側では減少傾向にある。
革命・反乱・テロとの違い
革命は、イデオロギー(社会観念)の根本的な改革を行い、政治権力や社会制度などの体制全てを変革させることを指す。
反乱は、政治的な暴力の行使であり、政治的支配の変更を達成するために行われること指す。
テロは、政治目的達成のため直接的な恐怖手段に訴える主義で必ずしも権力者を直接相手取る訳ではない。
クーデターはいわば内部の権力闘争の一環である。
また、最高権力者が独裁を敷く目的で障害になる人物や制度を排除するために自らクーデターを起こす場合があり、自己クーデターと言われる(例:毛沢東が引き起こした文化大革命、1992年のペルーにおけるフジモリ大統領の『アウトゴルペ』等)。
カウンター・クーデター
クーデターが起きて間もなく、さらに別の勢力がクーデターを起こし、先のクーデターで成立した政権を追い落とすこと。先のクーデターで邪魔な勢力が一掃されていたり、先のクーデターを起こした者にすべての責任を押し付けることができるため、時折発生する。
先のクーデターで放逐された政権と考え方の近い勢力が、逆転を狙って引き起こすことも。
タイ式クーデター
東南アジアの王国・タイでは1932年の立憲革命により立憲君主制に移行してからも軍幹部等によるクーデターが10年未満の間隔で頻発した。近年でも1991年・2006年・2014年にクーデターによる政権奪取が行われている他、1992年と2010年には反政権デモと軍隊の衝突をきっかけに政権が崩壊している。
タイ式クーデター式次第
- 開会
- 決起部隊による首都制圧
- 国王陛下に対する忠誠の誓い
- 決起部隊指揮権の奉還
- 国王陛下のお言葉
- 総選挙の布告
- 閉会
おおむね1から7まで1~2年のシーケンス。
2014年クーデターではクーデターを起こされた側のタクシン元首相支持派と起こした側の軍部等の反タクシン派の対立が根深くなったこと等もあり、上記式次第の6)がようやく2019年に行われる状態となっている。
比喩として
企業等で強権的であったり放漫経営を行っている経営者やトップを放逐(しようと)することを「クーデター」と呼ぶ場合がある。つまりお家騒動とほぼ同義。
(1982年に百貨店・三越で岡田茂社長が取締役会で解任された三越事件、2000年の自民党において内閣不信任決議案をきっかけに森喜朗首相(党総裁)を退陣させようとした加藤の乱など)
関連タグ
日本におけるクーデターの例
大化の改新 本能寺の変 明治維新 五・一五事件 二・二六事件