概要
石破茂とは、日本の政治家。衆議院議員(自民党所属)。防衛庁長官、防衛大臣、農林水産大臣を歴任。第28代自民党総裁、第102・103代内閣総理大臣。愛称は「ゲル」。
政治家としてのスタートは自民党であったが、改革の会、自由改革連合、新進党と転属を繰り返し、また自民党に復帰したという「政界渡り鳥」である。
プロテスタントの教会で洗礼を受けたキリスト教徒でもある。
人物
石破二朗の長男として、昭和32年(1957年)2月4日に東京都で生まれた。育ちは鳥取県。
鳥取県知事も務めた父の二朗は田中角栄の盟友であり、「田中のためなら死んでもいい」と語っていたほど。二朗の死去の際には田中が葬儀委員長を務めた。
兄弟姉妹は姉が二人。末っ子長男である。
鳥取市を中心とした鳥取1区選出で小選挙区制導入以降、議席を守り続け対立候補に比例復活さえ許さない強固な地盤を築いている。なお、同区はもっとも有権者数の少ない選挙区としても知られる。石破の選挙の出馬には角栄からの説得もあったという。
強面に似合わず、穏やかでねっとりした声と話し方が特徴で、慶応大学在学中に全日本学生法律討論会で優勝した経歴もある論客である。話し方こそ穏やかだが、理詰めで相手の反論を封じていくため、論争相手としてはある意味一番えげつないとも言える。
2010年代は安倍晋三への叛意を隠さず、安倍政権の政策への批判を公言。自民党では慣例的に「出戻り」の総裁就任を許しておらず、このままでは首相就任の目がないため、反安倍勢力を糾合することで首相の座を狙っていたと見られる。
安倍が健在だった頃の党内及び支持者間では「味方を後ろから撃つような行為」として快く思わない者も多かった。しかし自民党の歴史からすると党内対立は珍しいことではない。党内対立が珍しいと思われた背景には、派閥政治で公然と党内闘争を展開していたかつての自民党と、総裁とその側近らによる"統制"、"上意下達"色が濃くなっていた郵政選挙後の自民党とのイメージの違いがあると考えられる。
石破が所属していた平成研究会は宏池会とともに旧自由党の流れをくむ"保守本流"と言われ、安倍が所属していた清和政策研究会などの属する日本民主党の流れ"保守傍流"に対し優位に立っていた時期が長かったのだが、保守本流は加藤の乱が不発に終わって以降すっかり弱体化してしまい、宏池会出身の岸田文雄が総裁に就任するまで長らく清和会一強が続いていた。
自民党の総裁選には2008年、2012年、2018年、2020年と過去4度に渡り出馬したが、いずれも落選。2021年の総裁選には出馬せず、河野太郎陣営についたが河野も岸田文雄に破れ派閥ともども冷遇された。
2024年の総裁選では、今回がラストチャンスと宣言して出馬を表明。運命の9月27日の投開票では他8人の候補者との激戦の末、1位の高市早苗候補との決戦投票となった。結果、石破が215票、高市が194票を得た事から、同日付で念願の自民党総裁に就任。同年10月1日に臨時国会で指名をうけ、第102代内閣総理大臣に就任。鳥取県出身者としては初の内閣総理大臣となった。内閣の顔ぶれは総裁選で首相を支えた推薦人や、石破に近い「国防族」議員が並んだ。
就任から僅か8日後の10月9日。臨時閣議において衆議院の解散を閣議決定し、同日に衆議院を解散した。就任から解散総選挙に踏み切るまでの期間は、戦後の首相で最短。
しかし、前任の岸田政権から続く裏金問題や物価高などが影響し、第一党は維持したが連立与党の公明党とあわせても議席は過半数には届かず、大物議員の落選が相次ぎ、立憲民主党など野党勢力の躍進を許す結果となった。
自身の進退については国政を停滞させるわけにはいかないとして辞任を否定、続投の意向を示したが厳しい政権運営を強いられることになった。
その後11月11日の臨時国会の首班指名選挙で与党の議席減により1回目の投票で過半数に届かなかったため、決選投票にて野田佳彦を破り、第103代内閣総理大臣に選出。
政策・主張
原子力 | 推進 | 核武装の能力を担保するため。段階的縮小は否定しない |
外国人参政権 | 反対 | |
夫婦別姓 | 賛成 | |
天皇特例会見問題 | 批判 | 時の政府の意向で左右されることであってはいけない |
愛国心教育 | 反対 | 愛国心は強要される物ではない |
北朝鮮問題 | 問題意識が強い | 平成4年の合同訪朝でかなり衝撃を受た模様 |
総理大臣の靖国神社参拝 | 反対 | A級戦犯を分祀すべき |
徴兵制 | 反対 | 心理的意義は認めるが現在は軍事的価値はないという合理的理由から |
防衛庁長官・防衛大臣を務め、安全保障政策に造詣が深い国防族議員の重鎮としての一面が強調されるが、本来は農水族議員である(現に農林水産大臣を麻生内閣時代に経験している)。自民党の農政の主流は減反などの生産調整と輸入管理による「高米価政策」であったのだが、石破は減反政策を撤廃してプロ農家の生産意欲を高め、低コストで質の良い農産物を供給できるようにして日本農業の競争力を高めたいという考えであった。
農水大臣時代にはこの考えで減反政策の方向転換に全力を注いだものの、族議員らの猛反発により実現しなかった。当時の民主党が主張した農産物自由化と戸別所得補償政策は石破の考えと近かった…のだが、民主党政権の農政については、野党という立場上もあってか財源面などで否定的であった(後に「民主党が戸別所得補償を出した時にさんざん罵倒したのは私たちなので」と反省するような弁を述べている)。結局、減反政策が撤廃されるのは第4次安倍内閣時代の2018年になった。
縁戚者
父親:石破二朗
姉二人
妻:石破佳子
息女:娘が二人
余談
- 上記の通り、最も心血を注いできたのは農政なのだが、農林水産問題を語ってもメディアが報じてくれないという。一方で、防衛問題に造詣が深いことはよく知られており、「軍事オタク」や「防衛オタク」と揶揄されることもある。議員会館にある部屋には軍事関連書籍が並んでおり、ミニ軍事図書館と称されたこともある。プラモデルが趣味である。
- 世間的なイメージと異なり、軍事オタクや防衛産業界隈での石破の評価は総じて低い。国産兵器の信頼性やコスパを疑問視し、外国製の兵器に置き換えたがる傾向があるからである。防衛庁長官時代に「費用対効果が低い」としてF-2を調達中止に追い込んだ張本人である。また、(首相就任後は主張を封印しているが)「アジア版NATO」などの持論も「非現実的」として異論が目立つ。
- 防衛大臣在任中、UFO襲来時の対応について「UFOやそれを操る生命体が存在しないと断定しうる根拠はない」個人的な意見を記者会見で述べたことがある。なお、日本政府の公式見解としてUFOの存在意義は「『地球外から飛来してきたと思われる未確認飛行物体』の存在を確認したことはない」とされており、ほぼ石破が発言したことと同様のことが政府の公式見解となっている。
- 一部での愛称は「ゲル(ゲル長官)」。これは防衛庁長官時代、「いしばしげるちょうかん」を変換すると「石橋ゲル長官」と誤変換しがちだった事が由来。仮面ライダーのゾル大佐と語感が似ている上、顔がややコワモテの部類に入る事もあいまって2ちゃんねるの政治スレなどではこの渾名が微妙に定着していたりする。
- 丸顔で頬・鼻にテカリがあることから「人相の悪いアンパンマン」とも呼ばれる。目つきの鋭さからチベスナとも。2013年の参議院選挙では幹事長として選挙を仕切り、猛暑の中を全国応援に回ったため日焼けで真っ黒になり、ネット上では「焦げたアンパンマン」などと言われ話題になった。
- 本人はブルートレイン属性の鉄道ファンだが、トラック業界の政治団体から献金を受けている。ちなみに鉄道ファンつながりで国民民主党の前原誠司とテレビ番組で共演したこともある。また、キャンディーズのファンで当時コンサートにも行っていた。
- 「宇宙戦艦ヤマト」の熱烈なファンでもある。2013年にはガールズ&パンツァーのイベントにもビデオメッセージを寄せている。