概要
法律が国民の権利と義務を定めたものであるなら、憲法とは国家の権利と義務を定めたものということができる。
国家は法律を作ったり変えたりして国民の生活を縛ることができるが、その国家は憲法によって縛られている。日本国が奴隷を合法化したり拷問をさせたりできないのも、憲法で禁じられているから。
立憲主義において、この憲法は政府の権威や合法性の法的な源泉とされる。そのためこの法律は国家の最高法規であり、憲法に反する法律の制定は認められない。
詳細な意味
憲法とはもともとconstitution(構成、構造)の訳語として作られた言葉で、法規範ではなく国家の政治的統一体の構造や組織そのものを指す場合も存在する(事実的意味の憲法)。たとえばイギリスなどでは明文化された憲法が存在しない(不文憲法)。
また、一部のイスラム教国(具体例を挙げればサウジアラビアなど)においてはイスラム教の教典であるクルアーンなどが憲法の位置づけとされる場合が存在する。
ちなみに、ワイマール憲法(ドイツ国憲法、近代憲法から現代憲法の転換点となった憲法であり、各国の憲法がこれに習って記述された)が有名であるドイツであるが、意外なことに第二次世界大戦後のドイツ連邦共和国には明文化された憲法というものは存在しない。代わりにドイツには基本法というものが存在し、第146条にて「ドイツ国民によって憲法が施行される日に効力を失う」とされている。
基本法制定時にはドイツ社会主義統一党により憲法が制定されていた東ドイツとの統一後に憲法を改めて制定するつもりであったが、東ドイツを吸収する形で統一した際なし崩しに東ドイツの憲法が廃止されてしまい、再統一がなった現在もそのままになっているのである。
憲法の重点
近代憲法では表現の自由や思想の自由など、自由権の規定、国家権力の制限に重点が置かれてきた。しかし、第一次世界大戦後に制定されたドイツのワイマール憲法以降、日本を含む多くの国の憲法では国家権力が積極的に自由を保障する事を前提とした社会権( 生存権や幸福追求権など )の規定も置かれるとともに、国民の義務の規定も置かれるようになっており、現代憲法と呼ばれるものとなっている。
日本の状況
現代日本においては自由民主党など保守的な立場において、日本国憲法は国民の採択を一切行っていない上で成立された憲法であり、日本の自前の憲法を持つべきであると主張している(押し付け憲法論)。
なお、これに反発する憲法学者の多数派によると、日本国憲法は大日本帝国憲法の改正という形で完全に合法的に採決されたものであり、また日本国憲法を現在まで運用し、膨大な判例や法律によって実のあるものにしてきたのは日本人であり、押し付け憲法論はあたらない(むしろ自民党の主張する改憲の方向性自体が、アメリカによる押し付けではないか)としている。
憲法と天皇
- 憲法改正……憲法改正が発議された場合、衆議院および参議院の議決でそれぞれ2/3以上の議員の賛成を得て、初めて憲法改正の賛否を問う国民投票が行われることおよび国民投票の過半数を得ることでようやく憲法改正がかなうことが日本国憲法96条で定められており、天皇は国民の意思に従ってこれを「公布」することを定められている。
- 憲法の遵守……天皇又は摂政(および国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員も)は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふと第99条において定められている。
大日本帝国憲法
大日本帝国憲法における天皇の憲法上の地位は、統治権の総攬者であり、天皇の意思は憲法の範囲内において国家意思であるとされていた。
一方当時の外国においては君主と議会とが共同して統治をなすイギリスや、君主と議会とが共同して統治権を総攬するものとし且つ統治権は国民にありとするギリシャやベルギーのような国も存在したが、この憲法は厳にこの種のものと区別しなければならない( 憲法4条 )と決められている。
また天皇はいかなる行為についても何等の責任を負うことなく、また法律によって処罰を受けることがあってはならない( 憲法3条 )とされていた。
天皇は、議会の協賛を経ない御親裁の権利を有する。この権利は憲法第5条乃至第16条に掲げられていた。また、皇位の継承はこれを辞することを許さず、男系の男子に限り皇位の継承を許すが故に、男系の女子および、女系の男子および女子は継承権を有しなかった( 憲法2条 )。
日本国憲法
現在施行されている日本国憲法は条文全体を通して国民主権を明記し、「憲法前文」においては平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において崇高な理想と目的を達成することを明記しており、「憲法」の名のもとに国民に「言論の自由」、「報道の自由」、「信教の自由」、「結社の自由」、「思想の自由」、「学問の自由」などを保証することを明文化している。それゆえに「立法」・「行政」・「司法」の三権は国民に帰するものであり、国民が普通選挙で選んだ議会が憲法に基づいて法律を作り( 立法 )、作られた法律を施行して内閣をはじめとする行政機関が国を統治し( 行政 )、司法は「憲法」と[法律]に基づいて裁判を行うこと( 司法 )が憲法で定められている( 三権分立 )。
この憲法はまた、天皇が国民の総意により「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と定めている( 憲法1条 )。法学的には日本国の存立と性格は天皇によって「日本国の象徴」として体現され、天皇以外の国民が、互いを結びあい一体をなす姿が天皇によって表されていることが「日本国民統合の象徴」であるとされ、その真意は天皇に主権があるのではなく国民に主権があることがはっきりと規定されたものであった。
pixivにおいては
憲法という言葉は主として日本国憲法という意味で用いられる場合が多い。これは主たるユーザーが日本在住であると推測されることが関係する。
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大日本帝国憲法……明治22年公布、昭和21年改正
日本国憲法……昭和21年公布
十七条憲法……近代立憲主義的な意味での憲法ではない。