安倍晋三
あべしんぞう
日本の政治家。出身は東京都新宿区。本籍は山口県で、衆議院議員としては下関市及び長門市を区域とする山口4区を地盤としていた。
第90・96 - 98代内閣総理大臣、第21・25代自民党総裁(在任:2006年9月 - 2007年9月・2012年9月 - 2020年9月)。2006年に内閣総理大臣に就任。当時52歳の年齢での就任であり、戦後日本における最年少総理大臣であった。しかし、2006年時の内閣総理大臣就任は、健康問題を理由に早期に辞任。その6年後の2012年に2度目の内閣総理大臣に就任する。第2次安倍内閣は、約7年8ヶ月の長期政権となるも、再度持病が悪化したことを理由に辞任した。
2022年7月8日、奈良県奈良市で選挙応援演説中に銃撃され死去した。享年67歳。
人名 | 安倍晋三 |
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本名 | 安倍 晋三(あべ しんぞう) |
生年月日 | 1954年9月21日 |
出生地 | 東京都新宿区 |
没年月日 | 2022年7月8日 |
死没地 | 奈良県橿原市 |
出身地 | 東京都 |
本籍地 | 山口県長門市 |
職業・肩書 | 衆議院議員・元首相 |
学歴 | 成蹊大学卒業 |
持病 | 潰瘍性大腸炎 |
父は安倍晋太郎、父方祖父は安倍寛、母方祖父は岸信介、大叔父は佐藤栄作という政治家一家。同じ党に所属する岸信夫は実弟。
妻・安倍昭恵はラジオパーソナリティ等で活動。子供はいない。
政治家となるまで
東京都新宿区生まれ。中学校から大学までをエスカレーター式の私立校成蹊学園で過ごし、成蹊大学法学部政治学科を卒業。小学生の頃は平沢勝栄が家庭教師についていた。
南カリフォルニア大学への留学の後神戸製鋼所に勤務、3年後に退社して父の秘書を務める。
内閣総理大臣就任まで
1991年に父死去に伴い出馬、第40回衆議院議員総選挙で初当選。
2005年10月に発足した第3次小泉純一郎改造内閣で内閣官房長官として初入閣。麻生太郎・谷垣禎一・福田康夫と並ぶ「ポスト小泉」(麻垣康三とも)の有力候補と見なされた。
1度目の内閣総理大臣時代
小泉任期満了に伴う総裁選で麻生太郎・谷垣禎一を大差で破って自民党新総裁に選出され、2006年9月26日の臨時国会で内閣総理大臣に指名。小泉政権継承者として党内からは非常に期待が高かった。戦後最年少の首相であり、また、初の戦後生まれの首相であった。
在任中は特に教育政策を重視、中曽根康弘政権以降の「ゆとり教育」から「詰め込み教育」への回帰を図り、教育基本法を改正した。
内閣について安倍は「美しい国づくり内閣」と命名したが、マスコミからは「論功行賞内閣」「お友達内閣」とされた。以前から安倍に近い筋であった議員や、総裁選に当たって安倍当選をバックアップした人物が数多く並んだためである。
同年5月28日には光熱水費が無償である議員会館を主たる事務所としながら500万以上計上し「ナントカ還元水とかいうものを付けている」等と答弁していた松岡利勝農水大臣が自殺。現職大臣の自殺は戦後初であった。
2007年1月27日には柳澤伯夫厚労大臣が「女性は子供を産む機械」と発言。さらに後を継いだ赤城徳彦農水大臣も事務所費に1000万程計上したことなどが発覚。
この様な就任当初からの疑惑の多さや大臣の相次ぐ不適切発言も重なり政権支持率は低下。7月29日に行われた第21回参院選において自民党は30議席も減らし、結党以来守り続けて来た参議院第1党の座も失う大惨敗となった。
9月12日には持病悪化を理由に突如として辞任会見を開き、26日に総辞職した。
一般議員時代
その後自身の弱点であった健康問題(潰瘍性大腸炎)を新薬アサコールの助けで寛解し克服。
2012年9月、前任・谷垣総裁の後任として総裁選に臨み、石破茂現総理を破って再度総裁に登板。今回は野党党首としての登板となった。
2度目の内閣総理大臣時代
同年12月の衆議院選挙で自民党を293議席の大勝利に導き、再度首相登板を果たした。1度総理の職を退いた政治家が再度総理大臣となるのは、戦後史では吉田茂以来で、平成に入ってからは初のことである。
第2次安倍内閣では麻生太郎元首相・谷垣禎一元総裁を再度大臣として起用する一方、下村博文・山本一太・稲田朋美など初入閣の人材も起用。側近の官邸官僚としては今井尚哉ら経済産業省出身の官僚を重用した。
「日本を取り戻す」をスローガンに掲げ、外交面では日米同盟の元で積極的な外交方針を打ち出し、「中国包囲網」の形成を目指してアジア・アフリカ諸国との関係を強化。後述の通りイランやインドとは米国と一線を画する自主的な友好外交を展開した。政府主導のクールジャパンキャンペーンによる日本文化輸出、TPPへの参加を目指し、原発輸出等を向けた方針を推進。2020年の夏季オリンピック招致活動にも注力し、招致した。
内政面では「アベノミクス」と称した経済政策を展開。年率2%のインフレ、年率3%の名目経済成長率を掲げたが、在任中にはいずれも達成出来なかった。
2014年5月30日には内閣人事局を設立、側近官邸官僚が省庁の枠を超えて腕を振るう体制を確立。政府が指定した公文書を機密化することが出来る特定秘密保護法、市民の人権や自由を侵害するおそれが強く反対意見が根強いテロ等準備罪法(共謀罪法)、従来の政府憲法解釈に反して集団自衛権を認める安全保障関連法案といった、長年に渡り反対が根強かった法案についても圧倒的勢力を背景に成立させている。
同年にはNHK経営委員も刷新し、「政府が『右』というものを『左』という訳には行かない」と就任会見で発言した籾井勝人会長を始め、百田尚樹・長谷川三千子ら安倍肝煎りの保守的人物に固めた人選が問題視された。
2017年には首相本人が関わるスキャンダルが続発。新しい教育施設整備に係る土地売却において安倍から便宜が図られたのではないかとする森友学園問題、愛媛県への獣医学部新設において「総理のご意向」による選定が行われたのではないかとする加計学園問題(2つ合わせていわゆる「モリカケ問題」)が相次いで取沙汰され、不信が高まった。
12月26日、靖国神社に参拝。第1次安倍政権時代に参拝出来なかったことを「痛恨の極み」と発言していたことから、ようやく念願が叶った形である。なお、この靖国参拝は衛藤晟一首相補佐官がアメリカに事前に打診しており、反対を押し切って強行したものであった。米国が緊張を高める行為であるとして参拝に失望を表明したのに対し、衛藤補佐官が不満を表明したこと(後に撤回)や安倍総理自身が第1次世界大戦前の独仏関係と現在の日中関係を重ね合わせる演説をしたことなども重なって、米国などからも右傾化を危惧する声もあがった。
しかし、上記の様な国内外の波紋がありながらも、同年末突如行った衆議院解散では自民党は291議席(追加公認を含む)を獲得。与党全体では3分の2を超える大勝を収め、「安倍一強体制」を盤石なものとした。
さらにその後2017年衆院選でも勝利を収め、第98代内閣総理大臣に選出。日本国憲法下での総理4選は吉田茂元総理と並び最多。
2019年10月に予定通り消費税率を10%に引上げた。ただし、酒類・外食を除く飲食料品など一部商品については税率を8%に据置いた。2020年のコロナ禍では全国一斉休校を要請、アベノマスク配布を実施するなどの対応を実施。また、感染収束を待たず観光業界支援として「GoToキャンペーン」を開始したが、いずれも当否について評価が大きく割れることとなった。
2020年8月28日、潰瘍性大腸炎が再度悪化し始めたことを理由に2度目の首相辞任を行う意向を表明した。ただし、スムーズな引継ぎを行うため代理等は立てず、9月16日の総理大臣指名選挙まで任務を続行。後任である菅義偉への引継ぎをもって、首相在任期間にピリオドを打った。在任期間は通算3188日、第2次安倍政権発足以降だけでも2822日に及び連続・通算共に憲政史上最長である(2位は連続在任期間では大叔父・佐藤栄作の2798日、通算在任期間では桂太郎の2886日)。
内閣総理大臣退任後
2021年11月9日、自民党最大派閥である細田派こと清和政策研究会は安倍の会長就任要請を全会一致で決定し、11日に正式に就任。細田派は安倍派に衣替えすることとなった。
同年12月15日には安倍政権下2013年 - 菅義偉政権下2021年4月まで「建設工事受注動態統計」の改竄が発覚。なお、「建設工事受注動態統計」は内閣府基幹統計である国民経済計算(GDP統計)にも影響する指標である。
退陣後も、後任・菅義偉との良好な関係をアピール。その後任・岸田文雄が首相に就任後は、対立派閥である岸田への牽制の意図もあってか、台湾関係について「台湾有事は日本の有事、日米同盟の有事」であると発言したり、ロシアのウクライナ侵攻に際して「核共有の議論を進める必要がある」と発言するなど、首相時代にはしていなかった強気な言動が目立つ。
死去、その後
2022年7月8日11時半頃、奈良県の大和西大寺駅周辺で街頭演説中、背後の聴衆に紛れた40代の無職の男から手製の銃で撃たれる事件が発生。振返った際に発射された2発目で2発が命中。それぞれ左胸と首を貫通した。これにより心停止・意識不明の重体に陥り現場で医師による応急処置が施された後、ドクターヘリで病院に運ばれたが午後5時過ぎに死亡が確認された。享年67歳。奇しくも実父・晋太郎と同じ年齢であった(詳細は「安倍晋三銃撃事件」を参照)。
葬儀は7月12日に増上寺で執り行われ会場には献花台も設置された。
遺体は霊柩車で首相官邸や自民党本部などゆかりがある地を巡った後、桐ヶ谷斎場で荼毘に付された。
葬儀の際、地元・下関市を始めとする全国各地の自治体が市役所などの施設に半旗を掲げ記帳所を設けるなどして弔意を表した。また、東京都や山口県・福岡市・仙台市・川崎市・帯広市などいくつかの教育委員会が小中学校や高校などに半旗掲揚を要請したが、「教育の中立性を損なう」として物議を醸した。
日本政府は従1位に叙し、大勲位菊花章頸飾及び大勲位菊花大綬章追贈を決定。そして以前の同期にして盟友・岸田前総理が7月22日の閣議決定にて9月27日に国葬を行うことを発表した。既に葬儀は行われてはいるが功績を鑑みての決定であり、「弔意の強要はせず、無宗教形式で行う 」とのことである。戦後の首相経験者葬礼は内閣と自民党による「合同葬」が主流となっており、国葬は吉田元総理以来戦後2例目(佐藤栄作の「国民葬」を含めても3人目)と異例のことである(こちらについての批判については後述)。また、山口県も10月15日に県民葬を実施した。
2022年11月22日、下関市東大和町と長門市選挙事務所を同年12月末に閉鎖することを発表した。安倍の死に伴い、空席となった山口4区後継者探しは難航したが、昭恵らが主導して下関市議会議員を務めていた吉田真次を擁立、2023年4月の補選で対抗馬・有田芳生を下して当選を果たした。安倍の死後、"安倍派"こと清和政策研究会会長は空席となったが高市早苗支持者集会の際に安倍元総理の遺影が掲げられる、生前親しかったドナルド・トランプが大統領選挙での演説中に狙撃された際に守護霊として現れトランプを救った、という冗談が広まるなど、右派間で「偶像」としての存在感を発揮し続けている。
安倍は自民党右派・清和政策研究会に所属し、竹中平蔵をブレーンとして重用し新自由主義路線を走った保守派代表格として良く知られる。(宗教右翼を含む)急進右派をコア支持層とし、「憲法改正」や「岩盤規制の改革」を訴えてはいたものの、実際には金融緩和や女性の経済参加、「働き方改革」の推進など左派・中道のお株を奪う様な政策も推進しており、(自民党の政治家にはよくあることだが)右派とは言い難かった。また、安倍自身はナショナリストではなく、「最早、国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」と宣言、「外国人労働者の雇用」を「アベノミクス」施策に掲げるなどグローバリズムに肯定的であった。「外交の安倍」と呼ばれる程積極的な対外政策は右派であるからこそ可能であった側面もあったといえる(中道・左派的な政治家が推進すると「売国的」と見なされる恐れがあるため)。
日本国内での評価は人によって分かれる一方、海外からは保守派・リベラルを問わず評価は高い。アメリカ共和党のトランプ元大統領が盟友としてその死を深く悼んだ一方、政敵であったヒラリー・クリントン女史も「民主主義擁護者であり、経済発展には女性参加が不可欠と強く信じていました」と賛辞を送っている。西側諸国からは「自由貿易と民主主義の守護者」とみられる一方、発展途上国や欧州のナショナルアイデンティティを重視する立場からはハンガリーのオルバーン・ヴィクトルやブラジルのジャイール・ボルソナーロなどと並ぶ「反グローバリズムの旗手」の1人として扱われることがあり(上述の通り安倍はグローバリズムに肯定的であり、これは誤解に近いが)、安倍政権が見る人によって異なる姿を見せる"玉虫色"の評価を受けていることが興味深い。
実際に追悼演説でも政敵でもあった野田佳彦元首相は、天皇陛下生前退位に向けた環境整備を官邸で議論した際に、「冷静沈着なリアリストとして、柔軟な一面を併せ持っていた」と振返っている。
インド
インドのナレンドラ・モディ首相とは非常に親密的で、互いに個人レベルでも強い信頼関係があり、また、インドが日本同様中国との領土問題を抱えていることもあってか、安倍首相は日本とインドの関係を非常に重要視する傾向があるとされる。
また、2007年4月にまだ首相となる以前に訪日したモディと既に会談しており、2012年12月に第46回衆議院議員総選挙に圧勝した安倍総裁が首相に就任することが決まった際も、最初に祝福の意を伝えた海外要人の1人がモディであったという。
そのモディは首相就任後である2014年8月30日に初来日、京都市京都迎賓館で安倍首相が主催する非公式夕食会に招待されており、夕食会では東京裁判(極東国際軍事裁判)で、東條英機首相を始めとした被告全員の無罪を主張したインド人判事のラダ・ビノード・パール博士について語り合い、モディ首相は「インド人が日本に来てパール判事の話をすると尊敬される。自慢出来ることである。パール判事が東京裁判で果たした役割は我々も忘れていない」と述べ、その功績を共に称え合った。
翌日には2人は共に真言宗仏教寺院である東寺を訪れ、大日如来像前で合掌している。
9月1日の日印首脳会談では、日本によるODA(政府開発援助)を含む約3.5兆円規模の投融資実施や、原子力協定妥結に向けた協議加速、インド海軍と日本海上自衛隊の海上共同訓練定例化などを盛り込んだ「日インド特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」と題する日印共同声明に署名、両国関係を「特別な戦略的グローバルパートナーシップ」に格上げすることで一致した。
2015年12月12日には3回目となるインド訪問を行い、モディ首相との会談は5回目となった。
会談では、日本国自衛隊とインド軍の防衛装備協力推進などの安全保障協力や経済協力具体化、文化・人的交流強化について協議し、インド西部ムンバイからアーメダバード間を結ぶ、高速鉄道計画における、日本の新幹線システム導入で合意したことを受けて、「日印新時代幕開けにふさわしいプロジェクトである。他高速鉄道路線にも導入されることを期待する」と述べている。
また、平和的目的に限定する条件の下、日本からの原発技術供与を可能とする日印原子力協定締結に原則合意し、NPT(核拡散防止条約)非加盟国であるインドと、日本の歴史上初めて原子力協定を結ぶこととなり、安倍首相は「日本による協力を平和目的に限定する内容を確保した」と評価しており、モディ首相も「両国の戦略的パートナーシップの新たなレベルを示すシンボルである」と語っている。
ASEAN
安倍は第2次安倍政権発足後1ヶ月以内にベトナム・タイ・インドネシアを歴訪した他、麻生太郎副総理ミャンマー訪問など、閣僚がASEAN主要国を次々と訪問した。 「自由」「民主主義」「基本的人権」「法の支配」など普遍的価値実現と、経済連携ネットワークを通じた繁栄を目指し、日本はASEANの対等なパートナーとして共に歩んで行く旨のメッセージを各国首脳に伝達した上、2013年1月18日には、訪問先のインドネシアにおいて、「対ASEAN外交5原則」を発表した。
2015年5月27日には、太田昭宏国交相とタイのプラジン・チャントーン運輸相が国交省内で会談し、日本の新幹線方式導入を前提に高速鉄道調査を始める覚書を締結した。対象となったのはバンコクからチェンマイ間を結ぶ約670kmの路線で、総工費は1兆円(約2800億バーツ)超という規模となる。安倍政権が成長戦略で掲げるインフラ海外輸出に弾みを付けるという思惑であったが、日本企業は採算が見込めないとして後ろ向きであり、安倍政権後も進展は見られない。
他にも安倍政権は2013年7月に東南アジア諸国のビザ発給要件緩和を行っており、それに伴って東南アジア諸国からの訪日観光客は急増している。
中央・南アジア
親日的でありながら北朝鮮等の"ならず者国家"とも親交を結んでいる国が多いことを踏まえ、日本が国際犯罪を締め上げる際の根回しに奔走した。ここでは調停者としての顔を発揮している。任期が長かったこともあり、(狭い意味での)中央アジア5ヶ国全ての訪問・首脳会談を、日本国首脳として初めて行っている。
インドの大敵であるパキスタンとも友好的で、経済協力を推し進めて親交を深めながら、北朝鮮による諸問題への理解を求めたり、テロ組織対策への重要性を指摘するなど、硬軟織り交ぜた外交を展開している。
アフガンにおいても、独立記念日などの要所を押さえて親交を深めつつ、日本の立ち回りへの理解を得ていた。
そもそも一帯は日本企業による農業改革や灌漑計画、鉄道整備が進行しており、極めて日本への好感度が高く、それを生かした立回りは日本の伝統的な方針であるが、安倍首相はこれを良く守り、さらに推し進めたといえよう。
民間では、安倍首相訪問後に日本との関係を重視する国民がさらに増加し、日本語教育需要が高まるなどの影響が確認されている。
中東
トルコやサウジアラビアといった親日国に限らず、中東広域で人気が高い。中にはイランの様な「米国は無論その同盟国も敵」と公言する国もあるが、そういった反米国とも対米交渉を取り持つなど、ここでも広く調停者として信頼されていた。
2020年1月に中東歴訪した際にはサウジ側とイラン側が共に「安倍総理が我が国の味方をして相手国に釘を刺した」と報道し合うなど、強い期待の程が窺える。
中国におけるウイグル人人権救済活動も積極的に行っていたため、中近東のテュルク系諸国からも厚い信頼を集めていた。
2020年8月の辞任発表に際しては、トルコを始めとする諸国から口を揃えて「中東和平に貢献した」と賛辞が述べられた。
中国
上記の「価値観外交」や反共主義的な政治信念、台湾有事発言など反中派のイメージがある安倍だが、実際には日中関係の進展にも大いに貢献している。
安倍は首相就任後翌月の2006年10月8日に電撃訪中し、温家宝首相・胡錦濤国家主席との会談で、両氏の訪日を招請し関係修復の第1歩を踏み出した。戦後歴代首相のうち、中国を初外遊先に選んだのはこれが初めてであった。
第2次安倍政権発足時には、民主党政権の尖閣諸島を巡っての対応(中国漁船衝突事件と尖閣諸島国有化)の不味さにより、日中関係は国交正常化後最悪の状態となっていたが、安倍は2014年11月に習近平国家主席と会談。尖閣問題に関しては「対話と協議を通じて不測の事態を避ける」と合意し、一応関係修復に漕ぎ着けている。中国外交戦略である「一帯一路」に関しては、2017年5月のフォーラムに党幹事長・二階俊博と腹心の今井尚哉を派遣して親書を手渡し、条件付参画を表明。AIIB日本参加についても前向きな考えを示し、中国政府は日本政府の姿勢を歓迎した。同年12月の東京会議で、安倍総理はインド太平洋構想と一帯一路の連携を推進する考えを表明した。
また、「反日とならずに日本を知って貰う」として中国からの留学生受入には積極的であった。第1次安倍政権では公費留学生受入大幅拡充、在留資格制度見直しなどを実施し、中国人留学生を大幅に増やした。第2次政権時には中国人観光客訪日数は大幅に増加し、2019年にはビザ発給要件緩和もあって959万人とピークとなった。
安倍暗殺を受けて、習近平国家主席は「中日関係の改善を進めるために努力し、有益な貢献をした」と悼んでおり、中国側としても一定の評価をしていたことがうかがえる。
ロシア
旧ソ連時代から日本との対立関係が長く続いたロシアに対しても、中国との関係に楔を打ち込むため、関係を深めようと考えていた。また、父・晋太郎はソ連との友好条約締結を悲願としており、父の遺志を引継ぐことに強い意欲を抱いていたとも考えられる。従来の対露外交方針(1993年に細川護熙首相とエリツィン大統領(当時)が東京で「北方4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」と確認し、これが日露外交基本路線となっていた)を後退させて「歯舞・色丹の2島のみ交渉対象とする」として譲歩すると共に、ウラジーミル・プーチン大統領との個人的信頼関係を深め、併せてロシアへの大規模な経済協力を行ない、友好関係を深めて平和条約を結ぶ腹づもりであった。
2016年5月のソチで行われたプーチンとの首脳会談では、「ウラジーミル」とファーストネームで呼ぶことで親密感を演出。平和条約交渉に向け、北方領土での共同経済活動や天然ガス供給、技術協力などが盛り込まれた総額3000億円の「8項目の協力プラン」を提示した。しかし、当時のロシアはクリミア侵攻により米国との関係が悪化しており、オバマ政権からも日本の過度なロシア接近への懸念が寄せられ、プーチン大統領は「日米同盟がある限り領土問題は交渉対象とならない。2島返還もない」と明言するなど、雲行きの怪しさが漂っていた。
2016年12月に安倍・プーチンは山口県長門市温泉街にある大谷山荘で再度会談したが、そこでも領土問題に関する目立った成果は得られなかった(ロシアメディアは領土問題が棚上げされ、共同経済活動が優先されたと報じた)。この会談は「温泉外交」とメディアでは形容されたが、安倍は「夜のとばりの中で」「温泉で疲れを癒して」「突っ込んだ議論を」などと別の意味で怪しい発言を連発していた。
2019年9月にウラジオストクを訪問した安倍はプーチンに対して「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう、プーチン大統領。(中略)ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか」とこれまた怪しい発言をしているが、直接会談後は共同声明も成果文書もなしという酷いものであり。
2020年にはロシア憲法に「領土割譲禁止」条項が追加され、領土返還交渉は絶望的となった。さらに安倍退陣後の2022年、ロシアはウクライナへの全面侵攻に踏み切り、岸田文雄政権は対露制裁を行い、安倍政権時代の経済協力は完全に白紙化した(経済協力のうち支出済予算は200億円程度に留まるという)。同時に北方領土2島返還路線も破棄され、4島一括返還方針に回帰した。
功を焦る余り、全く得るものがなかった安倍の対露外交については、自身も「プーチン大統領には騙された」と失敗を一部認めている。
2022年9月26日に行われた国葬については、大きな賛否が産まれている。
批判
「国葬を行うに足る明確な根拠法令がないため」に国民からも反対意見も数多く挙げられており、一部では「国葬差し止め」を求める訴訟まで行われていたが、岸田首相はそんな国民の声に対して説得を放棄。無視を決め込んで国葬を強行したため物議を醸し、岸田政権支持率は急落した。
なお極めて近いタイミングで行われた他国の国葬である英国のエリザベス2世国葬が安倍の国葬と比較されやすい。費用に関してだけでも在任期間が70年という英国史上最も長く君主を務めていたエリザベス2世元女王の国葬費用は推定13億円といわれており、対して総理大臣の在任期間が8年8ヶ月のみという安倍の国葬費用の16億円と上回っていたことについては批判の声が大きい。
上述のように岸田は同期であり盟友であったため、「安倍の国葬を行うことによって、その同期であり盟友である岸田自身の地位を盤石にするためのプロパガンダである」という見方もある。
また安倍政権は支持率こそ50%強あったものの「モリカケ問題」に加え「桜を見る会問題」等、様々な問題が悪い意味で話題となったケースも多くあった。
国葬の理由としては「総理大臣を長く務めた」「選挙活動中に暗殺された」の2点のみが基本的に挙げられ、当然ながら後者だけで国葬となった首相及び国会議員の実例はない。
また、前者についても「明確にどれだけの期間在籍すれば国葬対象になり得るのか?またその期間は何を根拠とした長さなのか?」については明確な根拠法令がないことを含めて一切語られていない。また、政治家として本当の意味で評価されるのは歴史的に見て何十年後となるケースもあるため妥当なのかどうか、という点については明言出来ない部分も多い。
この様なことから世論調査から見ても全体として厳しい意見が多く、そういう意味でも本当に国葬を行うに足る人物であったかは現在も疑問が残る点は多い。
擁護
とはいえ、国際社会から安倍への弔問を希望する各国からの連絡が殺到しており、外務省がその対応に追われる事態となっていたことは見逃せない。
エリザベス女王はいうなれば「君臨すれど統治せず」という立憲君主に基づく元首、いうなれば国家における象徴的存在であったと考えられ、国家の執政権を担う首相との比較自体が誤りともいえる。
加えて予算についても海外からの要人及び経済界や皇室からの参列者が多かったことを考えれば、当初の予算編成である必ずしも高いかどうかを断ずることは早計であろう。
エリザベス女王は168ヵ国及び地域から約2000人の要人が参列したが、安倍は218ヵ国や地域や国際機関の代表者を含めて約4000人が参列した安倍の国葬の予算が16億円という当初の見積もりが高価かと言われると決してそうとは言い切れない側面もある。
実際にかかった国葬費用の確定値は約11億9900万円ということを考えると、多くの参列者が来訪されながらも比較的予算としても抑えることが出来たといえるかもしれない。
- Pixivのサービス開始当時の内閣総理大臣であった。
- アグネス・チャン大ファンで、夫婦ぐるみの親交があった。
- メディアではNHKと朝日新聞と中日新聞を敵視する一方、フジテレビの日枝久会長とは懇意の仲だった。首相就任後もしばしば一緒にゴルフに出かけていた。
- これが理由だったのかは定かではないが、2014年3月21日、フジテレビの長寿バラエティー番組『笑っていいとも!』に出演。この番組に現職の総理大臣が出演したのは史上初めて(というかこれが最初で最後、番組が終了したため)である。
- 平井正修住職の下で禅の修行に励んでいた。
- 秋元康との親交が深くAKB48を首脳会議に招待した。
- プロ野球は東京ヤクルトスワローズのファンで、アンチ巨人を公言していた。のちに参議院予算委員会で堀内恒夫が登壇した際に「応援しているチームが痛い目にあい、『本当に憎たらしいピッチャーだ』と思いながらも『この人はすごいな』と思った」と語っている。
- 東京・渋谷区と、地元の下関市の両方に私邸がある。下関の私邸(選挙事務所も)は韓国系パチンコ業者から譲られたもので「パチンコ御殿」の異名がある。
- 名が世間に広く知れ渡る以前から、百田尚樹の小説の愛読者であり、特に時代小説の『影法師』が好きな作品だという。
- 好物はブラックサンダー。2012年の自民党総裁選、豊橋での街頭演説で右手に掲げたり2013年1月10日の全国菓子工業組合連合会新年会の挨拶にでも名前が出てくるほどである。
- 2017年に、公益財団法人の新聞通信調査会が実施した『諸外国における対日メディア世論調査』において、アメリカ・イギリス・フランスの欧米3ヵ国及び、中国・韓国・タイのアジア3ヵ国の、計6ヶ国で『各国民が知っている日本人』の調査が行われた。その調査結果によれば、アメリカ・中国・韓国・タイでは1位、フランスでは2位、イギリスでは3位が安倍総理となっており、安倍総理の知名度だけは主要国のリーダーの中でも遜色ないものであることがわかった。
- 滑舌の悪さがよくネタにされ、安倍が2012年に使った「日本を、取り戻す。」というスローガンが「トリモロス」と茶化された。
- 政治家としては能弁な方ではなく、公の場での発表では「~は、~で、あります」といった句読点を強調するような話し方をしたり、質疑応答の際、感情を露わにしたりヤジを飛ばす対応をするといった個性がよくネタにされており、サンドウィッチマンの伊達みきおは安倍氏のこの喋り方のモノマネが得意である。
- オリンピック招致では英語プレゼンテーションを特訓し、IOC総会で「福島の放射能は完全にコントロールされている」と力説。これだけが理由ではないであだろうが、東京オリンピックの開催権を勝ち取った。
- ネット上では親しみ(と時折小ばかにする様な使われ方もしたが)を込められ「安倍ちゃん」の愛称で呼ばれることも多かった。
- 彼の命を奪った自作銃は「abe gun」と海外では呼称されている。
- Google BARD AI、ChatGPT、BingAIなど、安倍晋三と聞くと回答を拒否される。AIにまで忖度される存在でもある。
- 報道の自由度ランキングでは安倍が総理に就いていた時期が非常に低く、それらはマスコミに対する多々の圧力やインターネット工作の苛烈化などがそうさせている。安倍に批判的、あるいは安倍に意見したコメンテーターを解任させたり露骨なものも多かった。
- 「安倍総理応援歌」という珍妙な歌が、何故か中国でミームとなった。
1954年、安倍晋太郎、洋子夫妻の次男として生まれる。
1979年、神戸製鋼に入社。
1982年、外務大臣秘書官。
1999年、衆議院厚生委員会理事、自民党社会部会長。
2000年、内閣官房副長官(第2次森喜朗内閣)内閣官房副長官(第3次森改造内閣)。
2001年、内閣官房副長官(第2次森改造内閣)、内閣官房副長官(第1次小泉純一郎内閣)。
2002年、内閣官房副長官(第1次小泉改造内閣)。
2003年、自由民主党幹事長。
2004年、自由民主党幹事長代理・党改革推進本部長。
2005年、内閣官房長官(第3次小泉改造内閣)。
2006年、第90代内閣総理大臣就任。
2007年、内閣総理大臣を辞任。
2012年、自民党総裁に再任。第96代内閣総理大臣就任。
2014年、第97代内閣総理大臣就任。
2017年、第98代内閣総理大臣就任。
2020年、内閣総理大臣を辞任。
2022年、選挙応援の演説中に自作銃で撃たれ死亡。享年67歳。
政治 政治家 自民党 内閣総理大臣 山口県 長州藩 小泉純一郎 森喜朗 二階俊博 麻生太郎 竹中平蔵 甘利明 山本一太 美しい国 日本を取り戻す 安倍マリオ 安倍演説 安倍談話...スローガン・パフォーマンス関連
アベノミクス グローバリスト 消費税 日本版NSC 特定秘密保護法 地球儀外交 自由で開かれたインド太平洋...政策関連
森友学園 日本会議 統一教会 改竄 忖度...スキャンダル関連
ジョージ・W・ブッシュ バラク・オバマ ドナルド・トランプ...首相在任中の米国大統領。
安倍寛 岸信介 佐藤栄作 安倍晋太郎 岸信夫 安倍昭恵...親族。
伊藤博文 犬養毅 高橋是清 原敬 濱口雄幸 斎藤実...暗殺された総理大臣経験者。このうち伊藤、犬養、高橋、濱口、斎藤とは銃で、伊藤、原、濱口とは駅で襲われたことが共通している。
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