トルコ
とるこ
首都 | アンカラ |
---|---|
人口 | 8527万9553人(2022年12月) |
面積 | 78万3562平方キロメートル |
公用語 | トルコ語 |
国家元首(職) | 大統領 |
通貨 | リラ |
政体 | 大統領制 共和国 |
トルコ共和国(トルコきょうわこく、トルコ語:Türkiye Cumhuriyeti、読み:テュルキイェ・ジュムフーリイェティ、英語:Republic of Türkiye)は、西アジアに位置するアナトリア半島(小アジア)と東ヨーロッパに位置するバルカン半島南東端の東トラキア地方を領有する共和国。黒海、地中海に面し、気候は乾燥地が多いが、沿岸部を中心にある程度の降水量を保っている。
日本における「トルコ」という名称はポルトガル語が由来、2021年12月にトルコ政府は国名の英語表記をTurkey(ターキー)からTürkiye(トゥルキエ)へ変更する事を決定した。
アジアとヨーロッパの2つの大州に跨り、北はギリシャ、ブルガリア、東はジョージア、アルメニア、イラン、南はイラク、シリアと国境を接する。
元々アジアと言う語はトルコ主要部のアナトリア(小アジア)を指していた為、トルコはアジアの国とされるのが一般であるが、ヨーロッパの国とされる事もある。ヨーロッパとして見た場合はNATOに加盟しているが、EUの加盟申請に難航している。
起源
歴史と言ってもアナトリア・東トラキア地方という地理的区分の歴史と、そこの現在多数派として居住するトルコ系民族の歴史は大分異なる。アナトリアは紀元前はヒッタイト王国などの諸王国が栄え、特に早くから鉄器を用いていた事で知られる。東トラキアは概ねギリシャ人の諸都市が領有し、ギリシャ人の一部はアナトリアにも拠点を築いていた。その後この両地域は、東方のペルシア系帝国と西方のマケドニア王国・ローマ帝国などとの争奪が続いていく。
セルジューク朝
1176年9月までビザンツ帝国が両地域を支配する大国として君臨するが、その領土は徐々に東からやってくるイスラム系の政権に浸食され、その中でトルコ系民族の移住が始まる。トルコ系(チュルク系)民族は本来シベリアから中央アジアにかけて居住し、類似した言語と文化を持つ遊牧民族の総称である。(現在のカザフスタン・キルギス・ウズベキスタン・トルクメニスタンは、これら諸民族が主要民族として建国したもの)彼らは東方に移動してテュルクなどの遊牧民族として漢民族の帝国と抗争し、1038年6月に西方に移動した一派はセルジューク朝を建国する。
セルジューク朝がアナトリアを征服した事により、現在の「トルコ」の領域にトルコ系住民の政権が発足する。これ以降もギリシア系の住民は沿岸部を中心に居住し続け、商業や政治を中心に参加し続けた。モンゴルが侵略した後に成立したオスマン帝国は、1453年5月に完全にビザンツ帝国を滅ぼすと、東ヨーロッパ・北アフリカまでを領土とする一大帝国を築き上げた。しかし領土拡大が止まると共に、1829年9月にギリシャ・1918年12月にセルビア・1878年3月にブルガリアとして分離独立し、エジプトが勢力圏から外れるなど衰退が進んでいった。
成立
1923年10月にトルコ共和国が成立し、ムスタファ・ケマル大統領の強力な指導で西洋化を進めた。エーゲ海沿岸部・イスタンブール(コンスタンティノープル)はギリシャの歴史上重要な地域である為、ギリシャとはこれらの地域の領有をめぐって争った歴史があって現在も対立が激しい。
中東として見た場合はシリア・イラクなどの近隣国の情勢悪化などが指摘され、治安は安定しない。以前からのクルド人組織との対立に加えてISILなどのテロ組織の跋扈・クーデター未遂なども発生している。
一方でエルドアン政権で盛んに行われているオスマン朝時代劇の配信により、中東のイスラム諸国における民間の好感度は高まっている。オスマン帝国から独立して以来トルコと険悪関係にある国であっても、トルコドラマが高い視聴率を記録する事は珍しく無く、複雑な関係が窺える。
古くからヨーロッパと関係が深く、宗教・人種の異なるトルコはヨーロッパ人から恐れられてきた。トルコはヨーロッパ連合の加盟を目指していた事があったが、宗教と法の価値観の相違・海洋資源を巡る対立で現在は事実上棚上げ状態である。
アメリカ合衆国
冷戦時代から北大西洋条約機構(NATO)を通じて、アメリカと軍事的な同盟関係を結んできた。しかし近年の外交ではアメリカと距離を置く動きが見られ、政府とは険悪関係というねじれ状況にある。このため相互に査証の発給を停止しあうなど不穏な空気が続いており、アメリカはトルコの政界の要人に対して経済制裁を実施している。トルコは依然としてアメリカとの安全保障上の協力関係を重視しているものの、それには今後も不確定な要素が存在し続ける事が予測される。
ロシア連邦
歴史的には対立を続けてきており、君主制時代に戦争を繰り返したほどであった。しかし、現在ロシアはトルコにとって必要不可欠な国となっており、ロシアとの友好関係を維持している。元々トルコはロシアに天然ガスの供給を依存し、観光の収入はロシアの割合が大きい。プーチン政権ともミサイル・軍事ドローンを融通しあうなど良好な関係であった。
しかし2015年11月に領空侵犯したロシアの爆撃機を容赦無く撃墜し、脱出したパイロットと救出に駆けつけたロシア連邦軍兵士が、シリアの武装勢力に射殺されるという最悪の結末を迎えた。ロシア側は操縦ミスで領空に入っただけで非はトルコにあると主張し、報復としてトルコへの経済制裁を実行。両国関係は急速に悪化していく。
2016年6月にトルコ政府が撃墜事件について公式に謝罪し、それを経て小康状態を維持していたが、2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を実行した事で再び関係が悪化した。トルコはロシアを糾弾し、反露諸国がトルコ経由でウクライナ軍に補給するのを黙認するなど、緊張化の一途を辿っている。
ただしロシアへの経済制裁は実施しないなど硬軟を織り交ぜており、2022年3月にイスタンブールでロシアとウクライナの代表団が停戦交渉を開始し、仲介国としての役割が注目されるようになった。
日本とは一貫して友好関係にあり、政権の右左を問わず両国は交流を続けている。1980年9月に発生したイラン・イラク戦争では、トルコ航空機でイランに在住する日本人を救出した。2019年3月に両国の友好年を祝し、東京・京都でトルコ至宝展が開催されている。2020年4月に日本の協力で、国内最大規模の病院が設立された。名称はエルドアン大統領の提案で、日本を象徴する「桜」とトルコを象徴する「チャム(松)」が冠され、チャム・サクラ都市病院と命名された。同年5月に開催された開院式には、安倍首相が祝辞を述べている。
2013年9月にトルコで日本人殺害事件が発生した際には、トルコ国民による前代未聞の日本へ謝罪するデモが発生している。
自衛隊とトルコ軍は友好関係にあり、報道こそされていないが、PKOで窮地に陥った自衛官がトルコ軍将校に助けられた逸話は数多い。日本人にとってもトルコは昔から人気の渡航先であり、かつては両国の国際結婚も珍しいものでは無かった。トルコとの交流を促進するユヌス・エムレ財団は2国間の交流を深めようと、日本で映画の上映会・観光地の説明会を開催するなど日夜腐心している。
親日国となった歴史的経緯
世界有数の親日国として知られているが、その要因は過去の絆に端を発すると言われている。1890年9月にエルトゥールル号遭難事件が発生した際に日本人が無償援助を実施した。現場の和歌山県には慰霊碑が建設されており、5年に1度追悼式典が執行されている。この事件を皮切りに、日本各地からの寄付金を携えてトルコに渡った山田寅次郎による日本語教育・交流が対日観に大きな影響を与えた。ちなみに山田の門下生には、トルコの民主化の英雄であるムスタファ・ケマルがいたと言われる。
ロシア帝国からの圧力を受けていた時代が長い為、1904年2月に発生した日露戦争の時、連合艦隊がバルチック艦隊を破った際は自分達の如く喜んだ。その後は列強入りを目指す日本から不平等条約を打診されるなどして両国関係が拗れ、第一次世界大戦では敵・味方に分かれてしまう。
しかしここでもシベリアから復員するオスマン兵を日本軍艦の平明丸が死守した例があり、「日本人は我々トルコ人同様、困っている者を助ける習慣があるのだ」と大きな共感を産んだ(トルコは元が遊牧騎馬民族であることから、互助精神が発達している)。この平明丸事件はエルトゥールル号事件に比してマイナーであったが、2019年6月以降様々な理由で知名度が上がった。艦長であった津村諭吉中佐の名前は、2020年2月に「ツムラ・ユキチ通り」という地名になっている。
ただし、現在のトルコの若者は日本の事をよく知らないらしい。トルコに詳しくない日本の若者が増えているのと相同である。
政体は大統領制の共和国である。1982年11月に制定された憲法で世俗主義が標榜されており、三権はほとんど完全に分立している。大国民議会は一院制の議会であり、議員は定数550名・任期は5年である。国家元首である大統領(任期は7年)は議会によって選出されるが、首相の権限が強い議院内閣制に基づく。
2007年10月の憲法改正で大統領は国民投票で選出される事となり、任期が7年から5年に短縮された。2010年9月の憲法改正を経た後、2017年4月の憲法改正で大統領の権限の強化と首相が廃止され、議院内閣制から大統領制に移行した。2012年6月以来上海協力機構の対話パートナー参加国の1国であり、2013年11月と2015年7月に正式な加盟を申請している。
人口
2022年12月の推計では8527万9553人であった。
民族
一般的にテュルク系が連想されるものの、異民族にルーツを持つトルコ人は多い。代表的なのが東部のクルド人やアルメニア人、地中海沿岸部に多いギリシャ人・ブルガリアと国境を接する地域にはバルカン半島の緒民族をルーツに持つ住民がおり、テッサロニキにて誕生したムスタファ・ケマルはダークブロンドに明るい碧眼の持ち主であった。生活様式も地域・ルーツごとに多種多様で、山岳部には現在も昔ながらのテント生活を送る遊牧民が生活している。
なおトルコ人の間ではモンゴル民族は同胞であるという認識が根強い。一般的に、テュルク民族とモンゴル民族は共に匈奴から枝分かれした兄弟とされるが、現地のトルコでは更に同一視の傾向が強く、観光案内でもモンゴル帝国の進撃をトルコ民族史として語るガイドは珍しくない。チンギス・ハーンもトルコ系の偉人だと解釈されており、今も「ジンギス」という人名として影響が残っている。
宗教
国民の99パーセントがイスラム教を信仰している。トルコにおいては身分証で帰属宗教を記入する為に正確な統計が可能となっているが、宗派については大多数がスンニ派と目されるものの、シーア派の一派とも目される独特の信仰体系を持ったアレヴィー派が全体の2割ほどとされる。
1923年10月の建国以来厳格な政教分離を国是としており、それは憲法で改正・改正の提案も不可能であると明記されているほどである。敬虔なイスラム教徒であるエルドアン政権においてはいくらかの過剰な政教分離政策が見直されているものの、エルドアンは国是としての政教分離については尊重する態度を取っている。
トルコにおける政教分離とは政府の統制下に置かれた宗教という性格が強く、例えば本来資格でも無いイマームなどの地位は、宗教庁によって認められた人物でなければ就任できない事になっている。この為国民の宗教に対する態度は個人に任され、戒律を堅持する敬虔な信者もいれば、礼拝や断食を行わずに飲酒を楽しむライトな信者までおり(ただし、敬虔なムスリムが多かったというオスマン朝時代にも、国父たるスルタンを筆頭に「飲酒するムスリム」というものは珍しくなかった)、理神論者や無神論者も少なくない。
ビューティ&ヘルスケア
プレート境界に位置する火山国である事から、国中の至る所に温泉が湧いており、古くから湯治が盛んであった。その歴史からトルコには美容大国という一面がある。近代化も相俟って医療技術の高さは中東では断トツで、分野によっては日本・ドイツと競うほどである。
トルコの男性は体質的に頭髪が薄い傾向にあるため、植毛技術については世界最高峰であり、欧米諸国からトルコに植毛に行くツアーが盛んである。近年は日本でも植毛ツアーの行き先として認知され始めている。なお、かつてのトルコではハゲ頭と太鼓腹は男らしさの象徴とされていたが、近年は価値観の変化も相俟って、ハゲを恥と考えるようになっている。そのため、イスタンブールの街で頭に植毛手術のバンドを巻いた男性を見かける事は珍しくない。
分野によっては東洋と美意識が逆転する事に注意が必要である。多くのトルコ人は顔立ちがはっきりしている事から、細い目と低い鼻を美形と考える傾向にあり、術式もそれを目指すものが発達している。従って美容ツアーと言っても、東洋人が目鼻の整形を目当てに訪れるのはオススメできない。
産業
広大な国土は起伏に富み、地域ごとに様々な気候風土が見られる事から、多種多様な農業が盛んである。特にブドウとオリーブは最古の生産国の1国と見られており、これらの生果あるいは加工製品はトルコの主要産業の1つとなっている。
その他、質の高いオレンジジュースで知られる。
1980年代以降は急速に工業化が進み、製造業も盛んである。特に自動車産業に力を入れており、ルノー・フィアット・トヨタ・ホンダなどと組み、中東からヨーロッパ方面にかけての販路を強力に開拓している。現在ではこれら世界企業に負けない国産自動車の開発を目指し、日夜研究が進められている。このような製造力は軍事面でも発揮され、特に軍事ドローンの一大製造拠点として世界的に存在感を放つ。ウクライナ紛争でもトルコ製のドローンが猛威を振るっている。
査証免除取極により3ヶ月以内の短期滞在は査証は不要だが、滞在許可証無しで滞在できるのは180日以内で合計90日を超えない範囲。さらにパスポートの有効残存期間が150日以上必要。
日本の外務省によるとシリア方面は非常に危険なので絶対に近づかないようにと勧告。
イスタンブールでは2022年に爆弾テロが発生。さらに、パレスチナ情勢をめぐりデモや抗議が突発的に発生しているため十分注意。危険情報がない地域でも暴行・窃盗・詐欺に注意してほしいとのこと。
神話において
今でこそイスラム教国であるが、アジアとヨーロッパの境目に位置する地域である為か、古来から様々な神話の舞台として登場している。この地域ではアナトリア半島近辺の国々の神話体系の神々を取り入れて発展したヒッタイト神話が伝承されており、上述の成立経緯から古代メソポタミア神話やウガリット神話の神々の説話が登場する事がしばしばあった(例えばウルリクムミと対決したエア神など)。
地理的にギリシャと近い国である為、ギリシャ神話でも頻繁に登場する。キマイラが暴れたリュキアーやトロイア戦争が起こったとされるトロイアもこの国にあり、ギリシャ神話の女怪メドゥーサも本来はアナトリア半島で信仰されていた女神だとされており、現地ではメドゥーサが魔除けのお守りとして建造物に掘られていたり、お土産として売られている事がある。
一神教においては、いわゆるノアの方舟がたどり着いた最有力候補地とされている。国の東端にあるアララト山は世界中のキリスト教徒から神聖視されており、しばしば「ノアの方舟と見られる木片発見!」のニュースがゴシップ紙を賑わしている。
コメント
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