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概要編集

レジェップ・タイイップ・エルドアン(トルコ語:Recep Tayyip Erdoğan、1954年2月26日 - )は、トルコの政治家。同国第12代大統領(2014年8月28日 - 現職)。1923年10月にムスタファ・ケマルらはオスマン帝国のようなイスラム教による統治を撤廃し、世俗国としてトルコを建国した。しかしトルコが成立した後も、国内では世俗主義とイスラム教がせめぎ合い続けてきた。イスラム主義政党である「公正発展党」の政治家のエルドアンが大統領に選ばれたという事実そのものが、イスラムの潮流がトルコ国内に強く存在してきた事を示している。


経歴編集

1954年2月26日にイスタンブールのベイオール区カセンパシャに誕生した。1973年10月にイマーム・ハティップ高校(イマーム養成学校)を卒業した後、マルマラ大学経済商業学部に入学した。在学中に親イスラム主義政党の国民救済党にて政治活動を開始し、1981年2月に卒業した。1980年9月のクーデター後の軍政下で国民救済党が非合法化されると、1983年6月に後継である福祉党に入党して政治活動を再開する。1991年10月にイスタンブールの第6地区で、福祉党の最初の候補者として総選挙に参加した。


1994年3月にイスタンブール市長に当選し、1998年11月まで務めた。在任中の1997年12月に政治集会でイスラーム教を賛美するズィヤ・ギョカルプの詩を朗読した事が、宗教感情を利用した「国民の分断」を煽動したとして告発された。1999年3月に投獄され、同年7月に釈放された。


首相編集

2003年3月に首相に就任し、当初は公約通り改革に取り組んだ。在任中の2007年6月に爆弾テロ未遂事件が発生したが、捜査当局はこの事件を地下組織である「エルゲネコン」がクーデターを計画したものと断定し、大々的な摘発に乗り出した。2011年6月の総選挙に勝利して第3次内閣を組閣したが、政権に批判的なジャーナリスト・政治家・企業に対して圧力が強まって国際社会におけるエルドアンの評価は下がり、2013年5月の反政府運動では国内からも矛先を向けられる。


大統領編集

2014年8月に大統領に就任し、首相にアフメト・ダウトオール外相が就任した。2015年6月に公正発展党は総選挙で敗北し、過半数を割り込んだ。背景には強権化を進めるエルドアンへの拒絶感があったとされるが、人々が安定を求めた結果として支持は広がり、2015年11月の再選挙で過半数を獲得した。2017年4月の憲法改正で大統領権限の強化と共に首相が廃止され、当時就任していたビナリ・ユルドゥルムは最後の首相となった。新設された副大統領には2018年7月にフアット・オクタイ首相府次官が就任した。


国内方針編集

イェニチェリ

エルドアンは自身に批判的な人々・クルド人に対して強権的な姿勢に出ている。言論の自由への弾圧も行い、シリアの反体制派勢力に武器密輸をした疑惑を報じた新聞の編集長と支局長を禁固刑にしたりと、ジャーナリストに対する弾圧を堂々と行っている。他のトルコ人に対しても、国家によってインターネット上の国民の閲覧情報を政府に押さえさせる事を認めさせたり、任意のウェブサイトの閉鎖も可能とするプライバシーや表現の自由の侵害も容認している。


ただし強権的である事が必ずしも不支持にはつながらず、実行力があるとして一定の支持も獲得している。特にイスラムの美徳である弱者救済を重視した政策は内外に評価が高い。老病者への福祉を拡充し、開発の遅れた地方への援助を積極的に行うなど、積極的に格差の是正に取り組んでいる。このため貧困層は言うに及ばず、伝統的・宗教的価値観の強い住民たちの支持をも獲得している。こうした背景からしばしば独裁者や懐古主義者と揶揄されながらも、大統領選挙・議会選挙では勝利を収め続けている。


宗教弾圧への反発編集

morning

エルドアンの人気を語るに当たって、世俗主義に対する反発は欠かせない要素である。トルコでは元々世俗主義の側が強権的な手法を使っており、国祖のケマル元大統領はイスラム主義を抑え込む名目で様々な弾圧を行ってきた。国民の心の拠り所であったモスクの国営を停止・ムスリマスカーフヒジャブ)の公の場での着用禁止などの文化排斥も数多く行われ、現在に至るまで非難が大きい。イスラム諸国で愛用されるトルコ帽(フェズ)を当のトルコで全く見かけないのは、この時代に禁止された為である。


ケマルは成り上がりの革命家では無く、元よりオスマン帝国最強の将軍であった。その為宗教に回帰しようとする政治家たちに対しては、自ら軍隊を率いて武力での鎮圧を行った。後継者もその強硬姿勢を踏襲したため、信仰を公言するのは身の危険を伴うという状況が長年続いた。宗教的な詩を政治集会の場で読み上げただけで、批判や注意でなく逮捕までされるというのは、日本やアメリカでは考えられないだろう。


こういった武力による宗教弾圧を国民の98パーセントがムスリムのトルコで実行してきたのである。トルコ国民の怨嗟は募り、伝統的・保守的価値観への希求は徐々に膨れ上がっていった。2003年3月にエルドアン政権が発足した時、全国の往来はコーランの聖句を朗唱する群衆で溢れかえった。


その後ケマルの意思を継ぐ世俗政党の共和人民党でも宗教の必要性を認め、イスラム保護政策を掲げる・ウグイス嬢にヒジャブを着用させるなど、歩み寄りの姿勢を見せている。しかし当のウグイス嬢がヒジャブを脱いで飲酒している風景を撮影されてしまって顰蹙を買うなど、付け焼き刃による詰めの甘さも指摘されている。敬虔な国民たちのエルドアン支持はまだまだ続きそうである。


外交方針編集

アメリカ様を怒らすな

ロシア連邦編集

プーチン大統領との良好な関係の維持を進めていたが、2015年11月に発生したロシア連邦軍の軍用機撃墜事件で撃墜した犯人と見なされた挙げ句、ISILを支援した疑惑が浮上した。2016年7月にトルコで発生したクーデターでアメリカが関与した反動からなのか、プーチン大統領に謝罪して両国関係を改善し、それ以降はロシアとの関係は良好である。


2022年2月にロシアがウクライナに対して軍事侵攻を実行した時、ヨーロッパ諸国と違ってロシアに対する経済制裁を実施しなかった。同年6月にロシアのヴャチェスラフ・ヴォロージン国家院議長が提唱した新G8の1国に含まれ、同年7月にBRICSへの参加を決定した。


クルド人編集

高圧的なだけで無く、クルド人への迫害に対して謝罪・独立派のリーダーと和平交渉を進めたりと硬軟織り交ぜた対応を取っている。こうしたクルド人との融和の模索や、ISILに対しての敵対・対決姿勢を明確化したことで国民に安心感を与えて支持率を高めた。


イスラエル編集

パレスチナを全面支援しており、人道支援と共に難民の受け入れを幅広く行っている。ただしヨーロッパ連合のそれとは異なり、不良難民・不法入国者には断固たる姿勢を取っており、違反者は容赦無く強制送還している。


日本編集

国同士の古くからの親交もあって関係は良好で、天皇陛下や安倍首相との親密な会話が知られる。日本を災害が襲う度に真っ先にお悔やみと復興支援の意を表明している。


欧州各国(EU加盟国)編集

ワールドカップで欧州大会に入るなど、かつてはかなり外交では有効な側面があったが、現在は移民問題などで関係が悪化している。特にヨーロッパが移民を規制しようとしてもトルコは放置して移民を相次いでヨーロッパに送り込み、その行為にヨーロッパは批判の対象となっている。しかしそれがトルコの関係を悪化させ、トルコをロシア・中国と接近させる要因にもなっている。


中国編集

基本的にBRICSに加盟を要請するぐらい、近年は関係が良好となっている。


イラン編集

シーア派とスンニ派の関係であまり仲が良いとは言い難いが、サウジアラビアとイランの関係に比べれば良好である。


対外的評価編集

トルコとの友好絵(Freeicon)

反イスラムの欧米諸国・汎アラブ主義の湾岸諸国でも極めて評判が悪い。該当国では公共放送でエルドアン政権を批判し、落選への働きかけが行われる。パレスチナを全面支援していることから親イスラエル諸国とも折り合いが悪く、批判論はアメリカにまで波及した。一方で敬虔なイスラム教徒には人気が高く、特に直接的利害の対立に乏しい北東アフリカや東南アジアでは支持の声が多く聞かれる。オスマン時代を賛美した映像作品の作成を奨励しており、中でも「復活」シリーズの人気が世界的に高い。


人物編集

エルドアンは敬虔なムスリムであり、コーランの知識が深い上に朗唱も上手い。政策面でも保守的なイスラム文化への回帰志向が見られ、姦通罪を復活させようとしたり、「新たなオスマン帝国」の憧憬を語りもする。過去には政治集会においてイスラム教を賛美する詩を読み上げたことで、「イスラム原理主義の扇動」のかどで逮捕されたこともある。


家族編集

1978年7月にエミネ・グルバランと結婚し、4人の子女が誕生した。


関連タグ編集

トルコ クルド人

ISIL

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