自衛隊(じえいたい、英:Japan Self-Defence Force)は防衛省の実働部門である。
経緯
昭和29年7月1日、同日に施行された自衛隊法に基づき保安隊・警備隊を改組し、併せて航空自衛隊を新設する形で設立された。通称制服組(対して中央官庁としての防衛省官僚組織をいう場合は背広組)。日米安保条約のもと国内外でアメリカ軍と密接に協力しながら活動する。
自衛隊は日本最大の特別職の公務員組織であり、日本の国家公務員の4割は自衛官である。また、2021年グローバル・ファイヤーパワー誌による世界軍事力ランキングでの自衛隊評価は、米露中印に続く世界第5位にランクインしており、既に世界的な軍事力に成長していることは疑いない。
任務と位置づけ
自衛隊の主な任務は、日本の「防衛」であるが、災害救助・急病人の搬送などの「災害派遣」および海上での治安維持を目的とした「海上警備行動」、そして国際連合決議等に基づく「国際平和協力活動」が副次的な任務として位置づけられている。「専守防衛」を標榜しているため、長らく海外での活動は控えられてきたが、最近では海外派遣も増えてきておりソマリア沖の海賊対処活動やハイチPKO派遣等で活躍している。
自衛隊の前身の警察予備隊・保安隊は、アメリカ合衆国の占領下米軍の補完としてつくられた歴史をもち、自衛隊という組織の存在自体が米軍との連携を前提にしているという組織的・戦術的な制約がある。さらに政治的・法律的には、平和主義を規定した日本国憲法第九条とのジレンマを孕んでいる。そのため、活動には極めて多くの制約を課せられており、運用上の問題も多い。有事において日米両軍を統制する枠組みは不明確となっており、日米部隊の統合指揮がなされるのかどうかも不明である。
陸上自衛隊と航空自衛隊は北海道に重点配置されており、陸空自衛隊の部隊配置が手薄な沖縄は米軍が駐留している。海上自衛隊の装備は掃海と対潜任務に重点が置かれており、シーレーン(海上交易路)防衛は米軍とその抑止力に頼ることになる。
日本は群島国家であるため、領土と排他的経済水域の合計面積は世界10位と、世界有数の大きな広がりを持つ国である。その国土を、米軍と自衛隊が役割分担して守っていることになる。
このように、自衛隊の戦略思想は基本的に「米軍本隊到着まで敵性勢力の侵攻を遅滞する事」であり、自衛隊は米軍と一体化してはじめて完結した戦力として行動できる。その意味で「米軍基地は要らない、(現状のままの)自衛隊だけでよい」という主張はナンセンスだ。
陸海空三自衛隊の中で最も一体化の度合いが大きいのが航空自衛隊。次いで海上自衛隊、そして陸上自衛隊と言う順であり、一体化の度合いニアリーイコール政治的な枷の度合いとも見て取れる。
しかしその陸上自衛隊も海外への国際貢献任務の増加に伴い、海外派遣を総括する中央即応集団の司令部は在日米陸軍司令部所在地である神奈川県の「キャンプ座間」に移転、事実上一体化した組織になりつつある。
組織
組織は大きく陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊に分かれ、その上に制服組の最高位として統合幕僚長とその補佐をする統合幕僚監部が置かれている。指揮系統は平時と有事で大きく変わる。
平時には陸海空それぞれの自衛隊のトップ、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長がそれぞれ支援組織である陸上幕僚監部、海上幕僚監部、航空幕僚監部を従えて陸海空自衛隊の指揮を執る。主な業務は各自衛隊の訓練や整備、補給などである。このためこれらの組織をフォースプロバイダー(練度管理責任者)という。なお、平時には統合幕僚長と統合幕僚監部は大臣や国家安全保障会議への助言・補佐を任務とする。
有事の際は最高指揮官である内閣総理大臣から防衛大臣を通じて統合幕僚長に全ての命令が下る。陸海空自の幕僚長は統合幕僚監部に部隊を提供し、統合幕僚長の指揮によって部隊が活動する。このため統合幕僚監部の組織をフォースユーザー(事態対処責任者)という。これによって例えば陸自の輸送を空自あるいは海自が行うといった連携をスムーズに行うことが、このような統合運用体制の狙いである。
兵器の製造について
自衛隊は自前で武器弾薬を製造する工場、いわゆる工廠を持たない軍事組織である。よって、自衛隊の使用する装備や戦闘機・戦車などは民間企業に委託して製造されている。これ自体は特に珍しいことでも無い(世界的に見ても、かつての工廠が民間に払い下げられたり第3セクター企業となることは多々ある)が、日本は武器輸出を原則禁じていることもあって、兵器開発・製造を一手に担う軍事企業は存在しない。ために、複数の企業に事業の一つとして兵器の生産を委託しているのが特徴であり、意外な企業が防衛産業に携わっていることも多い。
日本の高い技術力と工業力あったればこそだが、問題も多い。防衛産業は平時は儲からない分野であることに加えて、海外に武器を輸出しないので市場原理や競争が起きず、新技術の開発などが積極的に行われないのである。それだけならまだしも、他に競争相手が居ないことから手を抜いた仕事をされたり、備品の製造を担当していた会社が業績の悪化等で引き上げてしまうなどの衰退が促されてしまうという無視出来ないデメリットも顕在化している。
そのため、現在は無理に国産化を図らず、海外からの輸入品なども積極的に活用するなどの方向転換も成されつつあるが、輸出国が友好関係にあれば良いものの万が一関係が拗れ禁輸措置でも取られた場合は第3国に頼るか自国で賄うかになりどちらを取るとしても一朝一夕でできる事ではなく、特に自国製造は民生品転用が多くなっている現代においてもノウハウを失ってしまえば再開するのに多大な時間と労力を要し安全保障の観点からかなりのリスクがある。その為外国産兵器でも技術蓄積のため高額なライセンス料を払う等デメリットを承知で国内生産を続けているのが現状である。
いずれにせよ、改善が促されている部分である。
関連イラスト
関連動画
日印共同訓練
日米英蘭加共同訓練
海外派遣部隊(ダヴィンチアカデミーより)
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架空の自衛隊
戦略自衛隊:新世紀エヴァンゲリオンに登場する組織。略称は「戦自」、「JSSDF(Japan Strategy Self Defense Force)」
特務自衛隊:ガサラキに登場する海外派遣用に組織された第4の自衛隊で、派遣に応じて他の3隊から集められる。略称は「特自」、「JSSDF(Japan Special Self Defence Force)」
東宝自衛隊:ゴジラシリーズなど東宝の特撮・怪獣映画に登場する組織の総称。特生自衛隊などの本シリーズで登場する自衛隊が、架空のものが多く独自の装備を保有していることからこのように呼ばれるようになった。なお、東宝自衛隊という名称は公式には使われていない。