国際連合
こくさいれんごう
国際連合(こくさいれんごう、英:United Nations、読み:ユナイテッド・ネイションズ、中:联合国)は、1945年10月に第二次世界大戦の戦勝国(連合国)を母体として発足した国際機構。
本部はニューヨークにあり、国際連合憲章に基づいて運営されているが、あくまで独立主権国家による国際機構であり、世界政府ではない。その証拠に国際連合は固有の軍事力を保有しておらず、軍事力を行使する場合は安全保障理事会に発議して多国籍軍を編成する事になる。1920年1月に創設された国際連盟とは全く別の組織だが、関連する機関の一部を国際連盟から継承している。
国際連盟の「民主的」ではあるが、それ故に有効に機能しなかった失敗に反省し、連合国の主軸となったアメリカ合衆国・ソビエト連邦・イギリス・フランス・中華民国に特別な権限を与えて責任を自覚させる事で、紛争を解決する事を意図して制度が設計されている。一方でこうした制度は、安保理常任理事国の主導による世界秩序を守るための組織という側面も与えている。
かつて枢軸国とされる日本・ドイツ・イタリア・ハンガリー・フィンランドなどは当初は排除されていたので加盟が遅れていたが、1955年12月にフィンランドは国際連合に加盟して日本など他の国も後に続いた。1960年9月からは発展途上国(第3世界)の加盟が増えた為、全世界が参加する国際連合総会における安保理常任理事国の主導権は低下し、世界の多極化をもたらした。なお2023年9月時点で国際連合に加盟している国と地域は193カ国に及んでいる。
冷戦時代から指摘されていた事だが、拒否権を有する安保理常任理事国の利害が衝突した時は国際連合は力を発揮できなくなる。冷戦時代は大国の利害が対立する紛争が国際連合の場に持ち込まれる事が少なかった為、表面化する事はあまり無かったが、1989年12月に冷戦が終結して以降は国際連合が本来の紛争を解決する機能を発揮する場面が増加するに従い、安保理常任理事国が対立する場所として議論が立ち往生する事例が目立っている。
国連憲章の第1条には、国際連合の4つの目的が示されている。
- 世界の平和と安全を維持すること
- 諸国間の友好関係を発展させ、世界平和を強化するための措置をとること
- 貧困や飢餓、病気、非識字などの国際問題の解決と、すべての人の人権と基本的自由の尊重を促進するために協力すること
- 各国がこれらの目標を達成できるよう、国際連合が中心的な役割を果たすこと
- 総会
- 全ての加盟国が投票権を持ち、ここでの決議は法的拘束力を持たない。他の主要機関の理事国の選出はここで行う。
- 安全保障理事会
- 10カ国の非常任理事国と5カ国の常任理事国で構成され、ここでの決議は法的拘束力を持つ。国際連合の最高意思決定機関であり、非常任理事国の任期は2年で再選が禁止されている。
- 経済社会理事会
- 貿易・輸送などの国際的経済事情と、人種・性差別と言った各種の人権・社会問題を取り扱う。理事国は54カ国で常任は無く、任期は3年である。
- 事務局
- 事務を行う。
- 信託統治理事会
- 1994年10月にパラオが独立した事で機能を停止した。
- 国際司法裁判所
- 国家間の法律的紛争について裁判を執行したり、総会・安全保障理事会などの要請に応じて勧告的意見を与える。
以下の5か国は全て核保有国であり、NPT(核拡散防止条約)によって承認されている。現在では日本・ドイツ・インド・ブラジルなどが新たな安保理常任理事国になるべく運動を展開しているが、未だに実現の目処は立っていない。
国名 | 政体 | 備考 |
---|---|---|
アメリカ合衆国 | 大統領制 連邦共和国 | 無し |
中華人民共和国 | 一党独裁制 社会主義共和国 | 1971年10月25日以前は中華民国 |
イギリス | 議院内閣制 立憲君主国 | 無し |
フランス | 半大統領制 共和国 | 無し |
ロシア連邦 | 半大統領制 連邦共和国 | 1991年12月25日以前はソビエト連邦 |
特権
非常任理事国を含む他の加盟国に無い特権として「拒否権」が付与されている。これは動議が発議された場合は1カ国でも拒否権を発動すれば否決される。この場合は文言を弱めて新たな動議を発議する事で何とか妥協を取り付ける事になるが、最近では決裂・動議が何の拘束力も無い文言に修正される事が多くなるなど、安保理常任理事国の間の対立が深刻化しつつある。ただし国際連合総会緊急会合を開催する是非についての採決に関しては、例外として拒否権を行使できない。
多大な欠陥を抱えたシステムではあるものの、そもそも国際連合が設立されるに当たって安保理常任理事国が「それぐらいの権利が無ければ自分は加わらない。」とゴネたので致し方ない部分がある。ちなみに国際連盟のシステムはもう少し健全で、紛争を調停する際に当事国は議決に参加できないシステムになっていた。
その結果アメリカなどの有力国が干渉を嫌って加盟を拒否し、日本・ドイツなど国際的に孤立した国が脱退する事態が相次いだ為、結局第2次世界大戦を完全に阻止できなかった。たとえ形骸化を招くとしても、常設の国際会議というシステム自体が崩壊するよりはいくらかマシという事で、国際連合は敢えて健全では無い状態を維持している。
以下は国際連合と提携を結んでいる国際組織であるが、下部組織では無い。従って国際連合未加盟国・地域が関連団体に加盟している事もあり、例えば日本はユネスコに国際連合に加盟する前から参加している。なお以下の組織などがある。
国際連合が創設される前から独立主権国だった国は、2002年9月にスイスが加盟してからはバチカンを除いて全て加盟し、それ以降に独立した国(例えば2006年6月のモンテネグロと2011年7月の南スーダンなど)は独立してすぐに国際連合に加盟するのが普通となっている。現在国際連合に加盟していない国は以下のような国で、国際連合が定義する国際連合非加盟国と、国際連合に加盟していない国は厳密には異なる(下記の「オブザーバー」欄を参照)。
該当国の自主的な判断で加盟を見合わせている国
該当する国はもはや世界中でもバチカンぐらいしか存在せず、バチカンは中立として国際連合の加盟を見合わせているが、オブザーバーとして参加している。この地位はバチカンを含めたいくつかの国家組織と、国際的な地域連合組織などが該当している。かつてはスイスも同じ理由で加盟を見合わせてオブザーバーに居続けたが、2002年3月に国民投票で加盟が決定した。
独立主権国であると同時に外交関係を外国に委託又は連合を組んでいる国
例えばニュージーランドと自由連合を組むクック諸島・ニウエがある。こうした国は連合相手の国に外交権・軍事権などを委託し、自らの弱いシステムを補填する関係にあるが、一方で自由連合の場合は国家間の地位が対等と見做されている。
他にもアメリカの自由連合相手であるパラオ・ミクロネシア連邦などがあるが、これらは国際連合に加盟している。一方でクック諸島・ニウエの国際連合での代表権はニュージーランドが付託されたまま掌握しており、国際連合からは独立主権国と見做されていない事が、依然として非加盟国であり続けている原因である。
国際連合自体が一方で両国の「条約を締結する権利」つまり独自の外交権を認めるという矛盾した対応も採っており、2000年代以降両国とも独自の外交関係を築きつつある。国際連合の原加盟国であるウクライナとベラルーシは、独立した外交権をソビエト連邦に掌握され、その一地域としか見做されていなかった。しかしソ連の強い主張で加盟国となったが、そうなったのはソ連が国際連合から脱退しないようにする為だったと言われ、独立したのはそこから後の1991年12月である。
事実上独立しているが、国際連合加盟国との深刻な係争により加盟出来ない国
殆どの「非加盟国」はここに該当する。以下はいくつかの国を個別に紹介する。下記以外にもミクロネーションなどの自称国が世界中に存在するが、外交関係が存在しないような国・そうとは認識されていない事が多く、それらの国は当然国際連合に加盟していない。
136か国の加盟国が承認しており、この中でも特別な地位にある。いくつかの国と外交関係を樹立し、国際連合からもオブザーバーの権利を付与されているが、未だに加盟できていない。原因はもちろん領土を巡って係争関係にあるイスラエルがあるが、その裏で友好関係にあるアメリカが支持していない事がこの地位に留まる最大の要因であろう。
- 台湾(中華民国)
19か国の加盟国が承認しているが、今も安保理常任理事国の1国である大陸部分の中国(中華人民共和国)と地位を巡って係争状態にある。1945年10月からこの地位にあったが、1971年10月にアルバニア決議で大陸部分と交代した。両岸とも1つの中国を主張して相互に国として承認しておらず、両方を承認するのは不可能で、故に台湾が再び国際連合に加盟するのを難航させている。
107か国の加盟国が承認し、こちらは独立元のセルビアと、その裏に付く安保理常任理事国のロシアが反対して加盟できていない。1991年3月にユーゴスラビア紛争が開戦し、1999年3月にNATOに空爆された後、同年6月に安保理決議で暫定的に統治された。この後平和的にセルビアと統治問題が解決出来たら良かったが、2008年2月に交渉が決裂する形で独立した。故にロシアとセルビアは承認する気が無く、今もセルビアの自治区の1つと見做し、オブザーバーに加盟出来ていない。
47か国の加盟国が承認しており、西サハラと呼ばれるこの地は、日本の世界地図ではアフリカ北西部の白で表記されている帰属が分からない場所である。1975年11月までこの地はスペインに統治されていたが、国際社会の同意も無しにモロッコがここの大半を実効支配する現状にある。モロッコが支配していない内陸地域を同じ名前の国が統治しているが、ほとんどが砂漠でろくな都市・インフラが無い。上の3カ国に次いで承認する国が多いが、国際連合に加盟する道は未だ遠い。
4か国(ロシア・ニカラグア・ベネズエラ・ナウル)の加盟国が承認し、他にベラルーシが独立を支持している。沿ドニエストル共和国・アルツァフなど(この2カ国は両国を含めた相互間でしか国家承認されていない。)と共に旧ソ連・東側諸国地域の国々であり、未だロシアの強い影響力を有する。要はソ連から独立した国の中でロシアが気に入らない行動・主張をする国から、ロシア系住民に独立を主張させているような国も多い。ただしアルツァフはアゼルバイジャンの一部地域をアルメニアが占領した傀儡国であるが、当然殆どの国ではこれらの国は承認されていない。
1か国(トルコ)の加盟国が承認しており、1974年7月にキプロスの北部をトルコ軍が占領し、1983年11月に北キプロス・トルコ共和国として一方的に独立を宣言した。ギリシャ系住民が多く残った南部分の方は、国際連合加盟国としてトルコと北キプロス以外の国から国家承認を受けてヨーロッパ連合に加盟したが、対する北キプロスを承認するのはトルコのみである。
- その他の国
1960年6月にソマリランドはソマリアから事実上独立した状態にあるが、そもそも他の国から全く承認されていない。
国家条件を満たしていない国
外交権の委託による自由連合国の他にも、国民・領土を持たないとかで国としての基本的な資格を喪失している国がある。その1つがマルタ騎士団で、この国には領土が存在しない。しかしながらかつては国としての体裁を維持していた事から主権団体として外交関係を有している国があり、国際連合もオブザーバーとしてマルタ騎士団を扱っている。
オブザーバーの地位は正しくは「オブザーバーとして参加するために招待を受ける実体あるいは国際組織」であり、要は「国際連合が総会に招待する。」としている国・団体である。
同じオブザーバーでも国際連合の認める範囲内で行使出来る権限は異なっており、最上位と見做される国際連合非加盟国は国際連合が独立主権国と承認するが正式に加盟していない国で、安全保障理事会の決議があれば正式な加盟国となる権利を有する。国際連合非加盟国は現在バチカンとパレスチナだけで、汎用的な意味での非加盟国はこの場合の国際連合非加盟国とは見做されていない。
国際連合非加盟国以外はヨーロッパ連合などの地域連合や、イギリス連邦など旧植民地諸国によって形成される緩やかな国家連合などの機関がオブザーバー団体と見做されている。
コメント
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