概要
一つの中国(ひとつのちゅうごく、簡体字:一个中国、繁体字:一個中國)は、中国大陸・香港・マカオ・台湾は不可分の中華民族の統一国である「中国」でなければならないとする政策的立場・主張である。特に中華人民共和国政府はこれを自らの核心的利益であると主張し、「全中国を代表する唯一の合法的政府である。」との意味合いで用いる事が多い。
ここまで中華人民共和国が一つの中国に固執する理由としては、台湾の独立を認めるとドミノ式にチベットやウイグルの独立のきっかけになってしまうのを防ぐのと、防衛線の拡大(太平洋への進出)を狙うためとされている。
歴史
1945年10月に国際連合安全保障理事会常任理事国となった中華民国は、1949年10月に成立した中華人民共和国と「中国唯一の正統政府である。」との立場を互いに崩さなかった。同年11月に中華人民共和国が国際連合総会に中国代表権問題を提起して長らく否決されてきたが、1971年10月にアルバニア決議が採択された後に中華民国が国際連合を脱退し、安保理常任理事国を交代した中華人民共和国が提唱する「一つの中国」の概念が国際社会に宣布された。
- 中国大陸に存在する政権は世界でただ1つだけあって、台湾は中国の一部分であり、中華人民共和国政府が全中国を代表する唯一の合法的政府である。
- 中国大陸と台湾島は1つの中国であり、中国の主権と領土の分割は許さない。
- 現在まだ統一が達成されていない事に双方は共に努力すべきで、一つの中国の原則の下で対等に協力して統一を協議する。
- 1つの国として主権と領土の分割は認めず、台湾の政治的地位は1つの中国を前提として1国2制度の適用を検討する。
外交関係の樹立
2005年3月に共産党政府は台湾の独立を阻止する事を念頭に反分裂国家法を成立させ、2023年12月現在はこの原則によって、中華人民共和国・中華民国と正式な外交関係を樹立する時はどちらか一方でなければならない。つまり韓国・北朝鮮のように片方または両方を承認しても良いシステムはここでは通用せず、一方と正式な外交関係を樹立すれば、もう一方とは断交する事になる。
蒋介石時代の中華民国も「漢賊不両立」のスローガンのもとに「一つの中国」を主張し、中華人民共和国と外交関係を樹立する国との断交を継続した。その結果中華民国と外交関係を樹立する国は減少し、ついには国際連合からも脱退して台湾が世界から孤立する原因となった。