概要
首都 | モスクワ |
---|---|
面積 | 2240万2200平方キロメートル |
人口 | 2億9304万7571人(1989年1月) |
国歌 | ソ連国歌 |
存続期間 | 1922年12月30日 - 1991年12月25日 |
公用語 | ロシア語 |
政体 | 一党独裁制 社会主義連邦共和国 |
ソビエト社会主義共和国連邦(ソビエトしゃかいしゅぎきょうわこくれんぽう、ロシア語:Союз Советских Социалистических Республик、読み:サユース・サヴェーツキフ・サツィアリスチーチェスキフ・リスプーブリク、ラテン文字:Soyuz Sovietskikh Sotsialisticheskikh Respublik、略称:ソビエト連邦、ソ連、ソビエト、ソ連邦)は、ユーラシア大陸北部に存在した社会主義連邦共和国。1917年11月にボリシェヴィキによるロシア革命を経て建国され、2240万2200平方キロメートルの国土・11の時間帯(標準時)に跨る世界最大の連邦共和国であった。
ソビエト連邦は1945年9月に第2次世界大戦が終結すると、アメリカと並ぶ世界の超大国として君臨し、1991年12月に崩壊するまでその地位を維持していた。ソビエト帝国とも呼ばれ、軍事力・経済力・代理戦争・発展途上国に対する影響力・宇宙技術と兵器を中心とした科学研究に資金を提供するなどで、東部・中央ヨーロッパを初めとして世界的に覇権を行使していた。
ソビエト連邦は世界第2位の経済力と世界最大の常備軍を有していた。国際連合安全保障理事会常任理事国であり、公式核保有国の他にもワルシャワ条約機構の加盟国であった。1949年8月に核実験を成功させ、ヨーロッパ初の核保有国となった。名目上15カ国の共和国で構成されている連邦共和国であったが、実際には末期まで高度に中央集権的な政治・経済が実施されており、1990年3月に民主化が実現する以前は共産党による一党独裁制であった。
歴史
1917年3月に2月革命が発生し、当時の皇帝だったニコライ2世は退位を余儀無くされ、ここに臨時政府が樹立された。しかし同年11月に10月革命が発生して打倒され、同月にソビエト・ロシアが成立した。1922年12月にソビエト連邦が成立してからはその構成共和国になり、1928年10月に5か年計画を実施した結果、1929年10月に世界恐慌が発生した時は何の影響も受けなかった。
1939年9月に第2次世界大戦が発生した時は、ナチス・ドイツと共謀してポーランドとバルト3国を分割・併合し、同年11月にフィンランドを侵略して国際的な非難を受けた。連合国に属して1945年5月に大祖国戦争に勝利し、同年8月に日本に宣戦布告してアジア方面も攻略した。同年9月に大戦が終結した後は、ドイツの東部分と東ヨーロッパ諸国を支配下に置いた。
1947年3月に東西冷戦でアメリカと対立し、朝鮮戦争・ベトナム戦争などの代理戦争の他にも、核兵器と宇宙ロケットの開発でも競争を繰り返した。共産党の一党支配で現在のロシアよりも遥かに国民の権利などが制限されており、大韓航空機撃墜事件・チェルノブイリ原発事故など、他の国を巻き込んだ事件に当初は「やっていない。」とシラを切るなど中々極悪非道な事をやっていた。
1953年3月にスターリンが死去し、同年9月にフルシチョフが最高指導者になると、1956年2月にスターリン批判を展開した。フルシチョフは雪解けとして西側諸国との国家関係の改善を図ったが、これを契機に毛沢東が率いる中国と対立状態になった。しかし途中で米ソ関係の改善は暗礁に乗り、1961年8月にベルリンの壁が建設され、1962年10月にキューバ危機が発生する事となった。
1964年10月に最高指導者となったレオニード・ブレジネフは、西側諸国との緊張関係を緩和させると共にスターリン時代への回帰を進めた。1968年8月にチェコスロバキアの民主化に干渉してこれを潰した事で、フルシチョフの時代から進んでいた西側の共産主義勢力のソ連に対する幻滅・離反は決定的になった。1970年代頃からソ連の国家経済は硬直化し、莫大な軍事費の支出と宇宙開発計画のような国威高揚プロジェクトによって疲弊する一方だった。
1979年12月にソ連・アフガン戦争が発生してソ連が泥沼に喘ぐ中、1985年3月に最高指導者となったミハイル・ゴルバチョフは経済を立て直す為にペレストロイカ(ロシア語で「改革」の意味)を実施し、統制を緩めて情報公開(グラスノスチ)を推進した。しかしこれによってブレジネフ政権で進んでいたソ連の国家システムの硬直化が一気に表面化して崩壊の道を歩む事になり、同時に連邦を構成していた各共和国のナショナリズムが高揚する。
1991年8月19日に各共和国の権限を拡大して事実上の国家連合システムに移行する事で、崩壊しつつあった連邦を立て直す事を目的とした新連邦条約を締結しようとしたゴルバチョフに反発する保守派グループが、ゴルバチョフを監禁して軍部隊の一部を出動させてモスクワ各地の施設を占拠するソ連8月クーデターが発生した。
結局市民の抵抗に遭ってクーデターは失敗に終わり、関与した保守派が逮捕されて一応事態は収束したが、結果的に共産党の権威の失墜を招いて同月20日と21日にバルト3国が独立した。共産党も同月24日にゴルバチョフが党書記長を辞任すると共に中央委員会の解散を勧告し、28日に最高会議が共産党の活動を全面的に禁止する決議を可決して事実上解体された。
共産党が解体された後、連邦の実権は大統領職に留まっていたゴルバチョフと、各共和国の元首で構成される国家評議会に移行した。なおも連邦制の維持を図るゴルバチョフによって見直された新連邦条約を締結する動きが進められ、一時は成立する寸前にまで至ったが、同年12月1日にウクライナが独立を問う国民投票を実施した。この投票は圧倒的な多数で独立に賛成となった事で、連邦制の維持派だったロシア連邦が独立を決定し、連邦の崩壊は確定的なものとなった。
同月8日にロシア・ウクライナ・ベラルーシの3か国が連邦から離脱して独立国家共同体(CIS)を創設し、残りの構成共和国もCISに加盟したのを受けて、ゴルバチョフは17日に連邦政府の活動停止を宣言した。21日にグルジアとバルト3国を除く11か国の構成共和国の元首が、CISの発足とソ連の解体を決議したアルマ・アタ宣言を採択した。この宣言から4日後にゴルバチョフは大統領を辞任し、翌26日に最高会議もソビエト連邦の解体を宣言してソビエト連邦は崩壊した。
国際関係
アメリカ合衆国
1933年11月に外交関係を樹立し、1947年3月に冷戦が開始されてからは対立した。1991年12月に崩壊するまで、地政学・イデオロギー・経済での闘争を長引かせた。
日本
1925年1月に外交関係を樹立して日ソ基本条約が締結された。1936年11月からは両国関係が悪化したが、1956年10月に日ソ共同宣言を締結し、外交関係の回復・戦争状態の終結を実現させた。
国家機構
ソビエト連邦の国家機構は官僚制の悪しき典型とも呼ばれ、国家崩壊に至った原因は省庁再編・共産党統治機構・民主主義導入の改革の失敗などがある。歴史的にロシアはアジアのように官僚ピラミッドを構築する訳では無いようで、ソ連が例外的に官僚国のようになったらしい。
行政単位
- ソヴィエト(勤労者代表ソヴィエト)
ソ連政府(当局)
元首相当
- ソビエト連邦大統領(1990年3月 – 1991年12月、初代・最後:ゴルバチョフ)
- ソビエト議長(1938年1月 – 1989年5月、初代議長:カリーニン)
国会相当(憲法での最高権力)
両院制(上院の連邦会議・下院の民族会議)にして任期は5(4)年で、各共和国に一院制のソビエト議会が存在した。
- 一党独裁制の国だが、連邦共和国のような要素も多い。
- 一院制では無く両院制であるので、こんな無意味な両院制は無いと思う。
- 構成共和国は一院制ではある。
- 党と連邦を構成する15共和国の共産党が存在したが、相互関係は一概に明確では無い。
- 人民代議員大会(1989年5月 – 1991年9月)
ソビエト自治体側の機関である。
- 最高ソビエト(1936年12月 – 1991年12月)
内閣相当
- 閣僚会議議長
首相に相当し、初代の議長はレーニンである。
- 閣僚理事会
かつての最高権力機関で、人民委員会議と呼ばれていた。構成共和国にも存在する。
中央省庁
- 航空産業省
- 自動車・農業機械省
- 原子力産業省
- 対外経済関係省
- 総務省
- 地質省
- 民間航空省
- 衛生部
- 外務省
- 情報報道省
- 文化省
- 素材資源省
- 冶金省
- 海洋省
- 石油・ガス産業省
- 防衛産業省
- 防衛省
- 一般機械建設(ビルティング)省
- 自然・環境省
- 運輸省
- ラジオ産業省
- 漁業省
- 交通部
- 農業・食品省
- 特殊構造と事業省
- 造船産業省
- 貿易省
- 交通建設省
- 労働社会問題省
- 石炭産業省
- 財務省
- 化学・石油産業省
- 経済産業予測省
- 電子産業省
- 電気電子業界機器省
- エネルギー・電化省
- 法務省
ソビエト連邦共産党(実際上最高権力)
- 党大会
党の最高意思決定機関で、理論的には党綱領(鉄の規律)を変更できる。しかし実際には鉄の規律は全く変更できないまま第28回大会で終わり、上記の最高ソビエトと一緒にされている感じもある。
- 書記
1953年9月にフルシチョフが最高指導者になった時に党第一書記になったが、1966年4月に後継のブレジネフが党書記長に戻した。
- 政治局
通称はポリトビューロで、レーニン一派が社会主義労働党員を制御するのに使ったのに始まる。共産党世界ではここが最高政治決定機関になり、閣僚理事会のメンバーである。ちなみに日本共産党にはこの機関は存在しない。
- 中央委員会
かつては中央執行委員会と呼ばれており、通称は中央委員会だが大会の代行として党を運営する。ただしソ連とその他の社会主義共和国の場合は中央省庁・国家機関も含まれる。
- 書記局
中央委員会の書記業務な扱いだが、実質中央委員会を統率する局であり、実際は中央委員会よりも上である。閣僚理事会(内閣)関連だが、実質は中央委員会の直属である。
- 国家保安委員会(略称:KGB)
かつてはGPUの他にもチェーカーと呼ばれ、秘密政治警察の代名詞的存在であった。KGB以前の名称の時代の方が遥かに危険な組織で(独自軍保有・拷問・即処刑・不逮捕特権など)、初代の議長はジェルジンスキーであった。
- 食料資源調達国家委員会
- 森林国家委員会
- 建設国家委員会
- 公教育国家委員会(通称:教育委員会)
- 科学技術国家委員会
- 国の問題国家委員会
- 中央統計局
- 建設投資国家委員会
- 生物工学・化学委員会
ソ連の政党
- ソビエト連邦共産党
行政
ソビエト共和国の共産党
- ウクライナ共産党
- ベロルシア(ベラルーシ)共産党
- ウズベク共産党
- カザフ共産党
- グルジア共産党
- アゼルバイジャン共産党
- リトアニア共産党
- モルダビア共産党
- ラトビア共産党
- キルギス共産党
- タジク共産党
- アルメニア共産党
- トルクメン共産党
- エストニア共産党
ソヴィエト(勤労者代表ソビエト)
- ソヴィエト共和国
- 自治共和国ソヴィエト
- 自治州ソヴィエト
- 民族自治ソヴィエト
- 市ソヴィエト
- 町ソヴィエト
- 村ソヴィエト
経済
- 社会主義的所有
国家統制計画社会で、貨幣価値が非常に低い社会であった。
- 社会主義的計画経済(五カ年計画)
農業
- ソフホーズ
- コルホーズ
経済運営設定
- ゴスプラン(国家計画委員会)
労働組合
- 全ソビエト労働組合中央ソビエト
ソ連の労働組合で、労働者の国なのに労働組合がある。
中央銀行
- ゴスバンク(ソ連邦国立銀行)
新聞(2誌のみ)
- プラヴダ(『真理』、党中央委員会機関紙兼一般大衆紙)
- イズヴェスチヤ(『報道』、最高ソヴィエト機関紙兼一般大衆紙)
テレビ(1社のみ)
- タス(ソ連電報通信社、海外クレジット『イタル・タス』)
航空機(1社のみ)
鉄道
国名
ソ同盟という訳語があるが、原語のсоюз(サユース)が英語・ドイツ語のunion(ユニオン)に当たる語である事を考えると不正確では無い。しかしスターリン本人が「連合では無く連邦を求めている。」とソ連が成立した時に発言した事があり、連邦の訳語が適切で無いとも決して言えない。ソ連は自らを連邦制の国と位置付けており、サヴェースキイ・サユースという国名はどう訳せるかという議論については、日本のソ連史研究者では塩川伸明先生などが詳細に論じている。