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NATO

なとー

1949年4月にアメリカ合衆国・カナダ・ヨーロッパ諸国によって結成された軍事同盟。
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概要

北大西洋条約機構(英語:North Atlantic Treaty Organization、NATO、フランス語:Organisation du traité de l'Atlantique nord、OTAN)は、1949年4月にアメリカ合衆国カナダ・ヨーロッパ諸国によって結成された北大西洋理事会を統括組織とする文民機構と軍事機構からなる軍事同盟。集団防衛・危機管理・協調的安全保障の3つを中核的任務としており、加盟国の領土及び国民を防衛する事が最大の責務とされる。
同機構の旗はダークブルーの地に羅針盤を模した模様を描き込んだものである。加盟国は名前の通り、北大西洋を挟んだ北アメリカヨーロッパに所在する各国(後述)である。

歴史

設置と冷戦期

初代事務総長ヘイスティング・イスメイの『アメリカを引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む』という言葉に象徴されるように、第二次世界大戦後に拡大する共産圏(ソビエト連邦とその衛星国)に対抗し、さらにヨーロッパ諸国を長年に亘って悩ませ続けていたドイツ問題を解決するため、ヨーロッパにおける共産主義諸国の筆頭である当時のソビエト連邦に対抗できる国力を有するアメリカを引き込み、12か国の原加盟国によって1949年4月4日に北大西洋条約が締結されて同年8月24日に発効し、フランスパリに本部が設置されて活動を開始した。

1952年2月にギリシャトルコ、1955年5月に西ドイツが加盟した。
このとき、特に西ドイツの加盟に反発したソビエト連邦は東ヨーロッパ各国(モンゴルを除くソビエト連邦の衛星国)を集め、西ドイツのNATO加盟から7日後の1955年5月14日にワルシャワ条約機構を結成して対抗した。NATOとワルシャワ条約機構が並立するようになってから、NATOはワルシャワ条約機構を公式に名指しで『NATOの敵』として扱うようになり、1990年7月のロンドン宣言において『ワルシャワ条約機構を敵視するのは止める。』という発表がなされるまで続いた。

1966年7月にフランスが軍事機構を脱退したため、1967年4月に本部がベルギーブリュッセルへ移動した。
1982年5月にスペインが加盟し、冷戦の終結まで続く16か国体制が完成した。

1991年7月1日にワルシャワ条約機構の根拠となるワルシャワ条約の効力が停止され、同年12月にはワルシャワ条約機構の盟主であったソビエト連邦が崩壊した。こうしてNATOと同機構を支えた国々の正義が勝利したのである。

冷戦終結後

1989年12月に冷戦が終結し、1991年12月にソビエト連邦が崩壊するとNATOの役割が大きく変わった。NATOは当初の目的の他、域外における紛争の予防と危機管理も行う組織を標榜するようになったのである。

1999年3月以降、旧ソビエト連邦のヨーロッパに所在する衛星国の多数と、同国を構成していたバルト三国がNATOへ加盟するに至り、ソビエト連邦の影響下からの脱却を望む東ヨーロッパ各国の加盟申請が相次いだ。ワルシャワ条約機構の盟主を務めていた旧ソビエト連邦の後継国であるロシアが「今度は北アメリカとヨーロッパ諸国の全てが加盟したNATOが敵になるのではないか。さらにスウェーデンフィンランド日本オーストラリアニュージーランドといった協力関係を結ぶ後ろ盾もいる。これでは全世界を敵に回す事になりかねない。」と危惧して抗議活動を展開し、最終的にNATOとロシア連邦政府の間において『NATOはロシアを敵視しない』という内容の基本文書を交わし、ロシアを準加盟国として扱うことで解決した。

冷戦時代は機構軍による実戦の無いまま終わったが、冷戦終結後は現在に至るまでいくつかの紛争に介入している。最近の事例を挙げれば、2011年2月にリビアで発生した内戦だが、結果としてカダフィ政権を崩壊へ追いやったことは後々響いてくる。現在も続いているシリア問題への介入もこれによって疑問視されたために実現していない。

ソビエト連邦の後継国であるロシアは先述の通り準加盟国扱いだが、関係を断絶・修復したりと未だに険悪な状況である。他にもロシアは、ヨーロッパに所在するバルト三国を除く旧ソビエト連邦構成国(ウクライナベラルーシグルジアアゼルバイジャンモルドバアルメニア)の加盟を嫌って妨害するため、なかなか加盟できない国もある。

日本とはアメリカとの同盟関係のもと、グローバル・パートナーという位置づけで提携しているが、アジア地域にはNATOに相当する組織は無く、各国が相互にアメリカ合衆国と安保協力(日米安保条約もその一つ)を締結している。アジア版NATOとして東南アジア条約機構(SEATO)というものもあったが、1977年6月に解散した。

新たな国の加盟には、北大西洋条約第10条に基づき、全加盟国の賛同が必要である。

構成国

2023年4月4日現在において、31か国が加盟している。

原加盟国

1949年4月4日の設立時に加盟した国。
以下は英語名におけるABC順で表記する。

国名備考
ベルギー(Belgium)
カナダ(Canada)
デンマーク(Denmark)
フランス(France)1966年7月に軍事機構から一旦離脱した後、2009年4月に復帰した。なお軍事機構からの離脱後も文民機構には継続して加盟していた。
アイスランド(Iceland)
イタリア(Italy)
ルクセンブルク(Luxembourg)
オランダ(Netherlands)
ノルウェー(Norway)
ポルトガル(Portugal)
イギリス(United Kingdom)
アメリカ合衆国(United States)

発足後に加盟した国

加盟時期順。
加盟時期が同じ国は英語名におけるABC順で表記する。

国名加盟備考
ギリシャ(Greece)1952年2月18日1974年8月にキプロス問題を理由として一旦脱退した後、1980年10月に再加盟した。
トルコ(Turkey)1952年2月18日
ドイツ(Germany)1955年5月8日加盟当時は西ドイツであった。1990年10月のドイツ再統一によって東ドイツの領域へ拡大した。
スペイン(Spain)1982年5月30日同国の加盟によって、1989年12月の冷戦終結まで続くNATOの16か国体制が完成した。
チェコ(Czech)1999年3月12日
ハンガリー(Hungary)1999年3月12日
ポーランド(Poland)1999年3月12日
ブルガリア(Bulgaria)2004年3月29日
エストニア(Estonia)2004年3月29日バルト三国の一国である。
ラトビア(Latvia)2004年3月29日バルト三国の一国である。
リトアニア(Lithuania)2004年3月29日バルト三国の一国である。
ルーマニア(Romania)2004年3月29日
スロバキア(Slovakia)2004年3月29日
スロベニア(Slovenia)2004年3月29日
アルバニア(Albania)2009年4月1日
クロアチア(Croatia)2009年4月1日
モンテネグロ(Montenegro)2017年6月5日
北マケドニア(North Macedonia)2020年3月27日
フィンランド(Finland)2023年4月4日

加盟手続中の国

加盟議定書を締結済み

加盟申請中

加盟検討中


北大西洋条約

NATOの設置に係る根拠である前文と14か条からなる条約。締結地はアメリカ合衆国のワシントンD.C.
おおまかな内容は次のとおり。

  • 前文 - 北大西洋条約が目指す理想が書かれている。概要は『この条約の締約国は、北大西洋地域の安定と幸福を促進すべく、国際連合憲章の目的と原則に対する信頼と、すべての国民およびすべての政府と平和に暮らしたいという願望を再確認し、民主主義、個人の自由、および法の支配の原則に基づいて、自国民の自由、共通の遺産、文明を保護することを決意するとともに、集団的防衛と平和と安全の維持のために努力を結集することを決意し、この北大西洋条約に同意する。』というものである。
  • 第1条 - 条約加盟国が負う総合的な義務に関する条文。概要は『締約国は、国際連合憲章に定めるところにより、自らが関与する可能性のある国際紛争を、国際の平和及び安全並びに正義が危うくされないような方法により平和的手段により解決し、かつ、国際連合の目的と矛盾する方法による武力による威嚇又は武力の行使を国際関係において慎むことを約束する。』というものである。
  • 第2条 - 条約加盟国が負う経済的な義務に関する条文。概要は『締約国は、自由制度を強化し、これらの制度の基礎となる原則の理解を深め、安定と福祉の条件を促進することにより、平和で友好的な国際関係の更なる発展に貢献する。また、国際経済政策における紛争の解消を追求し、一部または全部の間の経済協力を奨励する。』というものである。
  • 第3条 - 条約加盟国が個別に負う軍事的な義務に関する条文。概要は『この条約の目的をより効果的に達成するため、締約国は、自己の能力の開発及び相互扶助を通じて、個別及び共同で、継続的かつ効果的な方法で行動し、武力攻撃に抵抗する個人的及び集団的能力を維持し及び増加させる。』というものである。
  • 第4条 - 条約加盟国が個別に負う政治的な義務に関する条文。概要は『締約国は、いずれかの締約国の領土の一体性、政治的独立又は安全が脅かされるときはいつでも、相互に協議する。』というものである。
  • 第5条 - 条約加盟国のすべてが負う集団安全保障に関する取扱いに関する条文。NATOが集団安全保障に係るものであることの根拠となるものであり、概要は『締約国は、欧州又は北米において発生した1つ以上の自国に対する武力攻撃は、すべての当事国に対する武力攻撃とみなされることに同意し、当該攻撃が生じた場合には、国際連合憲章第51条によって認められる個人的又は集団的自衛権の行使において、各当事者が、 北大西洋地域の安全を回復し、確保するために、武力の行使を含む、他の締約国と合意の上、直ちに、個別に、かつ、他の締約国と合意して、攻撃を受けた締約国を支援する。』となっており、事後の処置として『この種の武力攻撃及びこれに従ってとられたいかなる行動も、直ちに安全保障理事会に報告されるものとする。これらの措置は、安全保障理事会が国際の平和と安全を回復し維持するために必要な措置をとったときに終了する。』とされている。
  • 第6条 - 条約加盟国が負う第5条に基づく集団自衛権の行使が行われる武力紛争の発生地の要件に関する条文。この部分に関し、1952年にトルコが加盟した際に修正された他、NATOを統括する北大西洋理事会がフランスの旧アルジェリア県に関して1962年7月3日以降において適用不能になったと指摘している。現行において適用される第5条に基づく集団自衛権の行使が行われる武力紛争の発生地に係る要件は次のとおり。
    • ヨーロッパまたは北アメリカのいずれかの締約国の領土、フランスのアルジェリア県、トルコの領土、または北回帰線(一般的には北緯23度26分22秒)以北の北大西洋地域のいずれかの締約国の管轄下にある島々。
    • いずれかの締約国の軍隊、船舶、または航空機、これらの領域、または条約が発効した日にいずれかの締約国の占領軍が駐留していたヨーロッパのその他の地域、または地中海または、北回帰線の北にある北大西洋地域。
  • 第7条 - 北大西洋条約が安全保障理事会に直接的な影響を与えるものではないということを宣言する条文。
  • 第8条 - 条約加盟国が個別に負う、この条約と相反する条約を締結することに制限を課す条文。
  • 第9条 - 北大西洋理事会を設置し、加盟する各国は速やかに理事会の会合を行えるようにしなければならないとする条文。この条文には必要によって補助機関を設置できるとされており、第3条及び第5条に関するものについては防衛委員会を設置することが規定されている。
  • 第10条 - 条約の推進と、新たに加盟を要請し、新たに加盟を希望する国が現れた際の処理に関する条文。この条文において新たな加盟国の承認にあっては全会一致の合意が要求されている他、加入書の寄託をもって条約への加入が成立するとともに、加入書の寄託先が明記されている。なお、加入書の根拠として全加盟国及び新たに加盟する国による代表の署名がされた加盟議定書が事前に締結されており、この議定書の署名国のすべてで批准が成立した時に新たな加盟国から加入書が提出され、加盟が正式に成立する。
  • 第11条 - 原加盟国における条約発効の条件等についての条文。署名したすべての国のうち、批准書を寄託先に寄託した国が過半数に達した時、条約が発効する旨が規定されている。
  • 第12条 - 条約の修正に係る協議の実施に関する条文。1952年のトルコの加盟に伴う第6条の修正は、この条項を根拠に行われた。
  • 第13条 - 条約の有効期間と条約からの脱退に関する条文。この条文では、20年間の有効期間の後、いずれの締約国も条約破棄の通知を寄託先に行うことで破棄通知から1年後に脱退することができる旨が規定されている。また、寄託先が脱退の通知を受け取ったときは、加盟する各国へ通知しなければならないことも規定されている。1966年にフランスが完全に脱退できなかったのは、この条文による縛りがあったためである。
  • 第14条 - この条約において公式に使用される言語が英語及びフランス語である他、英語とフランス語によって作成された原本はアメリカ合衆国に寄託され、条約の署名国には寄託先の認証がされた正式な写本を送付することが規定されている条文。

東方拡大問題

冷戦体制崩壊以降、NATOにはポーランドをはじめとする旧東側諸国の加盟が相次いだ。これについて、NATOはロシアと協議を重ね、「加盟はNATOの無理強いではなく当国の希望によるもの」と確認をとり、バルト三国には強力なミサイル兵器などを置かないことを約束して加盟国を広げていった。
NATOの東方拡大問題については、冷戦末期に両者の間で「ドイツから東には拡大しない」という約束があったのではとする指摘があるものの、現時点での一般的な研究結果では、少なくともはっきりと文書にして確約されたものではないとされている。

旧東側諸国のNATO加盟には賛成したロシアだが、同じ東スラブ人国家でありロシアとの長大な国境線を有するウクライナの加盟には強く難色を示していた。2008年に加盟問題が議題に上がった時もこれに抵抗を示し、大量の核兵器を所有するロシアに対する配慮と、元々ウクライナが政治経済面でNATOに加盟できる水準にないこともあってウクライナの加盟問題は棚上げ状態が続いていた。
2022年に、ロシアはウクライナへ軍事侵攻を開始した。ロシア政府は戦争を始めた名目の一つにウクライナのNATO加盟問題に満足な回答が得られなかったことを挙げている。
この影響によってNATO加盟論が各国で高まり、中立的な立場をとっていたスウェーデンフィンランドが同年5月17日に相次いで加盟申請を行った。
加盟国であるトルコが難色を示していたことから、全会一致が必要な加盟条件の特性上難航するものとされたが、加盟申請より1ヶ月ほどで当事者間の会談でスウェーデンとフィンランドがトルコにクルド人問題に関して譲歩することで支持を取り付けることができ、2022年7月5日に加盟議定書が締結された。
その後、フィンランドに関しては2023年3月31日にトルコ議会で加盟議定書の批准が成立、2023年4月4日に加盟の手続きを完了させた。

STANAG

NATO加盟国の間で技術・弾薬・装備などの共通性を持たせる為の規格で、STANdardization AGreementが定められている。


NATO旗について

NATOの旗はダークブルーの地色に白抜きの円形で囲まれたコンパスローズと、東西南北の全方向に伸びる白線から成る。
ダークブルーは北大西洋・円は加盟国の団結・コンパスローズは平和への道を示すとされる。

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