開発経緯
第二次世界大戦、冷戦が終結するも世界は新たに「テロリズム」「ナショナリズム」「宗教戦争」という新たな戦争に悩まされる事になる。
また、それに対して対テロ部隊が数多く発足するも、防弾チョッキが普及し、一般の人間にも手に入れられる様になった現在、既存の拳銃弾では威力不足という事が結論づけられ、短小化されたアサルトライフルなどが使われる様になった。
しかし、アサルトライフルの弾頭は非常に貫通力が高く、外した弾頭や犯人を貫いた弾頭が跳弾し人質などにまで被害を与えてしまうという懸念が示された。また、反動が大きかったのも問題の一つであった。
同時に、同時期にPMSCsつまりは民間軍事企業が発達し彼らの任務において車両の乗り降りは必須であり、車内での取り回しも重要視される様になった。
次世代の銃器は、これらの諸問題を対応できる性能が求められることになった。
要は「威力が高く」「小さくて動きやすく」「跳弾せず」「反動が小さい」銃が求められたということである。
この無理難題極まりない要望を達成するため、80年代末にFNH社がローエンフォースメント向けに開発したのが本銃のプロジェクト90、通称P90である。
本来は冷戦時代、自動小銃を装備しない、装備し辛い環境の兵士が後方浸透してきた敵兵に対し自衛するための火器という、M1カービンと同じコンセプトで開発されていた。
(初期型の使用弾薬であるSS90は樹脂弾芯の高速軽量弾であった事から当時主流のソフトアーマーのみ貫通できることを求めていると思われる)
アメリカ軍自体はD/296文書により新機軸のPDWを定義したものの、冷戦終結による予算不足やM4カービンの登場もあって、採用はキャンセルしている。
初期は威力は距離10mでSS109 5.56mmNATO弾に近い威力を持ち、長い有効射程を持つSS90(弾芯はポリマー)が使われていたが、貫通力や命中精度に優れたSS190(弾芯は鉄とアルミニウム)の方が優位であるとしてSS190に変更された。
SS90とSS190の見た目の主な違いは弾頭部の長さであり、SS190は約3mm短くなっている。
運用状況
開発国のベルギーの特殊部隊を始め世界中の特殊部隊や特別な機関の職員が使用している。
登場当初は表に出ることが少なく、一部のマニアのみが知る程度のキワモノ銃に近い扱いだったが、
在ペルー日本大使公邸占拠事件のチャビン・デ・ワンタル作戦において(協力関係にある英SASが訓練を施した)軍・警察の特殊部隊が使用していたのもあり今では優秀な対テロ装備として知れ渡っている。
装弾数の多さから車両や航空機のクルー用PDWとしても使用されていると言われる。また、採用国は2016年の時点で40ヶ国を超えているとされる。
そしてイラストを見ても分かる通り非常にSFチックな見た目から多方面から人気があり無論二次元でも大人気である。
ヨーロッパのロリ部隊も使うし、CoD:MWシリーズ等のFPS作品でも人気である。
あるゲームではB.O.W.と戦ったり、MGSシリーズでは天狗兵、及びヘイブン・トルーパーの標準装備となっているほか元大統領はガンスピンまでする。
昨今ではVRMMOFPSゲームの凄腕のプレイヤーキラーの獲物として有名か。
その特殊性から民間向けに販売されることは考えられていなかったが、フルオート機構の排除、銃身の延長が行われた民生型のPS90が販売された。
同時に弾頭構造をHP弾に変えることで貫通力を抑えた弾薬が民間用として販売されている。
現在では法執行機関専用の5.7mmFMJを含むPDW用弾薬を防ぐセラミックプレート(ハードプレート)も存在しており、一昔前と違いPDW専用弾薬自体の優位性は減少している。(ソフトアーマーの貫通は現在でも可能)
性能
口径 | 5.7mm |
---|---|
使用弾薬 | 5.7×28mm弾 |
装弾数 | 50 |
全長 | 500mm |
重量 | 2,540g |
有効射程 | 約200m |
※wikipediaより概値
そのSFチックな見た目とは裏腹に、人間工学に基づく人の身体にフィットする形である為非常に構えやすく、マガジンチェンジを除けば非常に扱いやすい銃であると言える。
50発というハイキャパシティマガジンを備え、突起物も少ないために服などに引っかかることは少ない。
元々自衛用火器として開発されたためにマガジンチェンジに煩わされないよう大容量マガジンを備え、ロングマガジンのような邪魔になる突起物とならないようなデザインを優先しているためにマガジン交換のしやすさはあまり考えられておらず、マガジンチェンジにおいては銃の上にスライドさせる形で挿入する為、熟練するまでに長い時間を要し、採用が一定数以上に伸びない事の要因となっている(これに目をつけたMP7などの登場は脅威である)。
なお、初期のプロトタイプでは機構の検証に必要な最低限の構造しかなかったためか、Vector SDPのストックと下半部を切り取って上下逆にしたかのような非常に独特のシンプルなデザインだった。
また弾が高価であり、マガジンを落した際に弾がマガジン内で暴れて使用不能になる事があるなどの問題もあり、採用されたものの銃本体及び弾薬の追加注文がないという状況もある。
本銃の為に独自開発された5.7×28mm弾を用い、前述のアサルトライフル弾の欠点を克服している。
弾芯が前部が鉄、後部がアルミニウムで構成された通常弾頭及び曳光頭は防弾チョッキやコンクリートのような堅い物体にぶつかるとそのまま貫通しようとし、人体などの柔らかい物体にぶつかると内部で乱回転を起こし周辺を複雑に傷つけるという。
また、弾頭の重さと火薬量から反動は9mmルガーよりも軽いとされフルオート時の制御を容易にしている。
FNH社は両手に持ち、フルオートで人間大の的に全弾命中させるデモンストレーションを行ったこともあった。
低反動により構造が単純で故障が少ないストレートブローバックのボルト、樹脂を多用した機関部が採用されている。
簡易式バックアップサイトと集光・トリチウムによりレティクルが発光する(光源によりレティクル形状が変わる)英リングサイト社製ダットサイトが標準搭載されているがレイルやレイル+調整式アイアンサイトが搭載されているモデルも存在し、拡張性も高い。(レイルのみ搭載のTRではバックアップサイトが無い)このダットサイトは一般的なダットサイトと異なり内部に不活性ガスを充填するのではなく一体となったガラスブロックを用いる事で内部の曇りを防止している。社外品のダットサイトを搭載したモデルもあり、リングサイト社のものからC-More製マウントとSTS2サイトに変更したモデルも販売されている。
また、内蔵型レーザーサイトを備えたモデルも存在しており、可視光・不可視光のレーザーモジュールが選択できる。(不可視光レーザーは法執行機関のみ)
排莢口にはダストカバーがあり、ボルトの後退と同時に開く構造になっている。
開く方向にばねの力がかかっているため、カバーを閉じる際には手で閉じる。
本来想定されている使い方では無いため推奨は出来ないが、ハンドルを操作しボルト後退させた状態でカバーを閉じることでボルトストップ代わりにもなる。
このように要求された無理難題を完璧に克服しその形状から50発という脅威の装弾数を誇るリアルチート武器とも考えられるが、そのブルパップという形状から射手に若干の負担をかけるなど問題も残ってはいる。
また、薬莢が真下に落ちるため、他の銃と比べて射手が踏んで足を滑らせやすい。(対策として標準でカートキャッチャーの装着が可能となっている)
使用弾薬
SS90 | 旧通常弾。弾芯はポリマー。SS190の登場により廃盤 |
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SS190 | 通常弾。フルメタルジャケット。 |
SS191 | 曳光弾。性能はSS190と同じ。 |
SS192 | ホローポイント弾だがジャケットに隠れて先端の凹みはない。弾芯はアルミニウム。開発は中断 |
SS193 | サブソニック弾。 |
T194 | 練弾弾薬。現在は製造終了 |
SS195LF | 鉛非使用のホローポイント弾。弾芯はアルミニウム。 |
SS196SR | 民間用弾。先端にポリマーのキャップがされている。現在は製造終了。 |
SS197SR | フィオッキ社製民間用弾。 |
SS198LF | 鉛非使用弾。SS195LFの強装弾。 |
エアソフトガン
当時登場したばかりのP90はトイテックにより外部エアソースエアソフトガンとして販売された。(後に電動化)
当時は今ほど情報が伝わっていない事もあり、SF架空銃扱いされることも度々あった模様。
後に東京マルイが電動ガンとして発売。
トイテック製では素通しの簡易アイアンサイトとなっていたリングサイトを、電池駆動のエレクトロダットサイトとして再現し、2段階のみとは言え輝度調整機能も搭載。
バリエーションとしてTRと民間型のPS90が発売されたが、TRはそれ自体の知名度が高くなかった為にマルイお得意の架空モデルと勘違いされることもあった。
当時流行のレイルシステムが存在せず、MP5やM4カービン等に比べて拡張性が低い銃となっていた。
そのため、あるサードパーツメーカーがレイルシステムを発売し、更に専用マガジンではなくM16/M4系のマガジンを使用可能とするパーツを出したことからサバイバルゲーム特化に異形化し、宇宙戦艦と呼ばれるようなものまで登場するようになった。
そのレイルシステムのコピー品が実銃用として登場し、(さすがにマガジンまでは無理だが)リアルに宇宙戦艦が存在するような事態となっている。PS90は規制の為に銃身長が長くなっており、レイルシステムを付けても銃自体の全長にさほど影響はない事が普及の後押しとなったのか、本家のエアソフトガンより実銃用の方がバリエーションが豊富となっている。
MadbullAirsoftからは英リングサイト社のダットサイトが販売されている。ライセンスを取得したレプリカではなく、エアソフトガン仕様としてトリチウム発光機能を除去した本物である。
価格は東京マルイ製のもので3万円前後と、平均して5万円近くかかる長物としては破格に安い。更に装弾数も多い(68発もしくは300発)ため、無駄撃ちをしてしまっても余裕が持てる。また、通常モデルであれば多くの銃では別売オプションとなるダットサイトが標準搭載となっており、初心者でも比較的狙いやすい。欠点として挙げられる薄い拡張性もライトを付ける程度であれば通常モデルのものでも十分であり、より多くのレールが欲しいのであればTRモデルや上記のレイルパーツ、ダットサイト置き換えのマウントレール等を購入すれば十分にカバーは出来る。(拡張性の低さから初心者が陥りやすい不必要な装備を付けたがる事を抑える事も出来るという面もある)本来は金属製であるレシーバーが樹脂製となっているが、リアルさを崩さずに軽いというのも初心者向けとなっている。また電動ガンとしてはメカボックスが袋状のボディ内に収まる構造と、モーターがグリップ内臓ではなくメカボックスに固定される構造からから比較的に消音性に優れている。
そのため、サバゲ初心者が初めて持つ長物としてオススメされる場合も多々ある。
社外の金属製レシーバーや、先に挙げたリングサイトなど、社外のカスタムパーツを用いてよりリアルにすることも可能となっている。
ただし、実銃にも存在するブルパップ式や独特なマガジン配置故の射手への負担などは健在な上、通常モデルはレールが無い関係でドットサイトが被弾して割れてしまうと、中身を交換しての修理、もしくは社外マウントへの換装や実物リングサイトへの交換が必要になるのでその点は留意すべきだろう。
また、後にアニメの反響を受けてか、例のデザートピンク一色のP90が公式コラボレーションモデルとして東京マルイから限定販売されたのだが、生産数の少なさが災いしあっという間に転売ヤーの餌食になってしまった。その反省を生かして以降の限定コラボモデルは期間限定に変わり一定期間中は何度も出荷されるようになり、P90+のレンバージョンではまだ発売未定ではあるものの、こちらも再出荷ありの期間限定となっている。
現在はTRモデルの内部メカとプラスチック感が強かった外装をリニューアルしたP90+が発売している。
海外製品ではS&T等から東京マルイの電動のコピー品が販売されているが、東京マルイが出さなかったTacticalといったバリエーションが展開されている。
WE-TECHよりガスブローバックが登場し、後に正規ライセンス品がCybergunより販売された。(物はWE-TECHと同じ)
同じくマルイコピーのCYMAからは同じCybergunの正規ライセンス品となった電動ガンが販売されている。
KRYTAC社からも正規ライセンス品の電動ガンが発売されているが、こちらはアッパーレシーバーが金属となっており、非常に実銃を忠実に再現しているモデルだがマルイの二倍ほどの定価である。
他作品あったら追記求
関連イラスト
関連タグ
サブマシンガン 個人防衛火器 Five-seveN F2000
戦闘妖精雪風:深井零がバンシーⅣへと赴いた際に自衛火器として携行していた。
人造人間ハカイダー:ジーザスタウンの親衛隊、重武装兵の主兵装。殆ど白に統一されている。
SAOAGGO:主人公のメイン武器(メイン画像参照)。本人の趣味でピンク一色に染められている。また、アニメ版ではリアルでも東京マルイ製の電動ガンと思わしき実物を所持していた(こちらは黒カラーのまま)。
ゴールデンアイ007:「RC-P90」の名で登場。銃声が大きくすぐ敵を呼んでしまうものの、装弾数が多い、貫通力が高い、威力が高い、と作中最強クラスの銃として登場。
ヒーローシューター: 2代目のデザインは本銃をモデルにしている。こちらはボディが黄色で、マガジンの代わりにプリンターのカートリッジが取り付けられている。
HELLSING: ヤン・バレンタインがヘルシング邸襲撃時に二梃持ちで使用。ただしグリップからストックにかけてかなりアレンジされた外見となっており、カスタムモデルというよりもモチーフにしただけの架空銃という代物。