M1910
えむいちきゅういちぜろ
ブローニングM1910は、銃器設計者ジョン・ブローニングが設計し、ベルギーのFN社(現・FNH社)で製造された自動式拳銃である。
主として民間における護身用に設計され、服の中から取り出す際に引っかからないように突起物を減らし全体的に小柄で丸みを帯びた形状になっている。
世界で初めて量産された自動式拳銃であるFN ブローニングM1900の改良型として開発された。
作動方式はストレートブローバック。撃発機構はハンマーを用いないストライカー式とすることで、突起物であるハンマーは存在しない。
使用弾薬は32口径ACP弾と38口径ACP弾で、マガジンは前者が8発、後者が7発入りであった。
民間人が携行することを考慮して安全装置は徹底化され、マニュアルセーフティの他に、グリップを握らないと撃発されないグリップセーフティ、マガジンを抜くと作動するマガジンセーフティを加えた3重の安全装置を備えていた。
外観上の特徴は、スライド上面に溝を彫り、その内側に照星と照門を備えた構造で、これによりスライド上には一切突起物が無い。
民間向けに開発された銃ではあったものの、廉価かつ優秀な性能を備える自動式拳銃として、ヨーロッパ諸国の軍や警察組織で制式ないし準制式とされた。
第一次世界大戦の引き金となったサラエボ事件でオーストリア皇太子夫妻を狙撃したのもこの銃である。
大日本帝国においては、銃砲店が民間向けに販売していたほか、陸軍では将校が自弁購入する軍装品として人気であった。
これは国産の南部大型拳銃が大型で高価だったためともされている。弾丸の32口径ACP弾も七.六五粍拳銃実包として国産されていた。
第二次大戦時には国産モデルである浜田式自動拳銃も生産された。また九四式拳銃も本銃を意識して開発したとされる。
また、警視庁特別警備隊(機動隊の前身組織)が32口径モデルを制式採用していた。
戦後は、私服警官などが携行する事があった。