皇室守護、絶対予防
概要
警察庁の附属機関の1つ。天皇や皇族護衛とその住居等(皇居・御所・正倉院等)を警護する警察組織。所属員のほとんどは「皇宮護衛官」と呼ばれる国家公務員である。トップは本部長(階級は皇宮警視監)で、宮内庁職員を兼務する。
音楽隊や騎馬隊など皇室関連行事を彩る部隊も所属しており、正規軍が存在しない日本では近衛兵のような役割も持っている。
警備部では、警察組織で唯一消防活動も行っている。また、皇宮警察の消防車は「警防車」と呼ばれ火災予防を徹底している。皇居正門の儀仗勤務は、勤務成績が優秀でなおかつ容姿端麗な護衛官が選抜されることで、ネット上では「国家公認のイケメン」と言われている。
また、警察組織の中で女性職員の比率が最も高い組織で、これは女性皇族も護衛しなければならないため、一定数の女性護衛官が採用されている。とくに、近年の皇室構成は女性皇族が多いため、その傾向が強い。
任務
- 天皇・皇后・皇太子等の皇族護衛
- 皇居・御所・御用邸・離宮・正倉院等の警備
- 国賓が皇居に来る場合や大使・公使信任状・解任状捧呈式の際の護衛
- 護衛・警護に関する司法警察事務として、天皇・皇后・皇太子等の皇族の生命・身体や皇室用財産に対する罪または皇居や御所・御陵等の皇室用財産内における罪の取り締まり
年表
- 明治19年(1886年):宮内省主殿寮に皇宮警察署が創設。これが、皇宮警察の起源とされている。
- 明治41年(1908年):主殿寮警察部となる。
- 大正10年(1921年):宮内大臣官房皇宮警察部となり、主殿寮が廃止。
- 昭和16年(1941年):宮内省警衛局が新設。皇宮警察はこの一部門となる。
- 昭和20年(1945年):宮内府に禁衛府が新設。禁衛府は皇宮警察部と皇宮衛士総隊(旧近衛師団)で編制。
- 昭和21年(1946年):禁衛府廃止。
- 昭和22年(1947年):警視庁に皇宮警察部が移管。
- 昭和24年(1949年):国家地方警察本部外局として皇宮警察本部が新設。
- 昭和29年(1954年):警察法施行と共に警察庁に移管、現在に至る。
歴史
宮内省皇宮警察
明治維新を経て近代化を進める中で新たな皇室護衛体制作りに着手した。旧来は律令体制下の六衛府(形骸化し、形式的なものとなっていた)と時の政権下の武士達が宮中警備をしていた。そこで政府は時の政権に左右されないため「宮中・府中の別」とされていた宮内省側に警衛部門を任せた。そして、明治19年(1886年)、宮内省主殿寮に皇宮警察署が創設。これが皇宮警察起源とされている。皇宮警察は旧陸軍近衛師団とは異なり、徴兵によって頻繁的に近衛兵が入替わっていたのに対し、皇宮警察側は宮内省管轄下であったため、宮中との意志疎通が取れていた。
職員官職名は皇宮警察官と現在とは異なるが、任務に違いはほとんどない。しかし、当時は「聖域に犯罪なし」という考えがあったため、犯罪捜査権等の司法警察権がなかった。また、消防活動も「消防夫」という別途職員を配置した。階級は組頭>小頭>消防夫の3階級制であった。
皇宮警察官の最終的な階級は、皇宮警察長(奏任官)>皇宮警視(奏任官)>皇宮警部(判任官)>皇宮警手(判任待遇)。
禁衛府
戦後、武装解除される中で近衛師団解体は避けられず、皇室安全を確保するため、皇宮警察と近衛師団が統合、昭和20年(1945年)に禁衛府が組織。英訳は「Imperial Police Guard」と警察組織を強調していた。禁衛府は旧皇宮警察皇宮警察部と旧近衛師団皇宮衛士総隊で構成されており、ここで初めて女性職員も採用された。短期間であるが、職員募集・採用・教育を施し後に皇宮護衛官や宮内庁職員となった者もいた。しかし、GHQ側に再軍備化の温床となると警戒、翌年には解散させられた。
皇宮衛士階級は、
衛士監(勅任官・奏任官)帝国陸軍将校に相当
衛士長(判任官)帝国陸軍下士官に相当
衛士(判任官待遇)帝国陸軍兵に相当
となっていた。
警視庁皇宮警察部
禁衛府解散後、昭和22年(1947年)に皇宮警察部が警視庁に移管。ここで、官職名が皇宮護衛官となる。その後、警察庁に移され、現在に至る。
皇宮警察本部の内部部局
警務部門
皇宮警察事務職で、組織内の連絡調整や事務処理を任務とし円滑な運営を支える。かつては警務部であったが、平成21年(2009)に警務部長ポストを廃し、「副本部長」を新設した。
- 警務課:採用・人事等の組織運営を担当。
- 監察課:監察情報管理を担当。
- 教養課:教養計画・武道訓練を担当。
- 会計課:物品調達・施設管理を担当。
- 厚生課:健康管理・福利厚生を担当。
警備部
皇居や赤坂御用地等、皇室の重要拠点を護り、平穏な日々を確保することを任務とする。皇居正門の儀仗勤務、警防(消防)勤務も行う。
- 警備第1課:大規模な皇室行事の警備体制を企画。機動隊に相当する特別警備隊を所管。
- 警備第2課:警戒勤務指導・御用邸・御料牧場警備。
護衛部
天皇や皇族の生命・安全を1番身近で護ることを任務とする。そのため、護衛部皇宮護衛官は特に「側衛官」と呼ばれ、花形任務である。信任状捧呈式の際は、儀装馬車を護衛する騎馬隊や白バイ、側車が編成される。各課に1人ずつ設置されている「侍衛官」は課長と共に指揮に当たる。
護衛署
- 坂下護衛署:正門・坂下門・乾通り・東御苑・桔梗門・平川門・北桔梗門を管轄。
- 吹上護衛署:御所・宮中三殿を管轄。
- 赤坂護衛署:赤坂御用地を管轄。
- 京都護衛署:京都御所・大宮御所・仙洞御所・桂離宮・修学院離宮・正倉院を管轄。
皇宮警察学校
皇宮護衛官として必要な心技体を学ぶ機関。採用後、皇宮巡査として任官された新人護衛官が入校する。他警察学校とは一部カリキュラムが異なり、皇室に関する法律・歴史等の知識・和歌]]・華道・茶道の日本文化(情操教育)・英会話・馬術などを学ぶ。
不祥事
皇宮警察の歴史でも過去には不祥事があったが、2020年には未成年者飲酒を始め、組織的な不祥事が発覚。翌2021年には警視正が知人を無断で赤坂御用地を招いたりしたことが発覚して依願退職した。さらに、翌2022年には皇族方に対する悪口や誹謗中傷が発覚。国民達の不満が爆発し、宮内庁や首相官邸を始め、関係機関に苦情や抗議のメールが殺到、対応に追われる有様に。その影響か定かではないが、天皇陛下が皇宮警察の現場にご視察、異例のお言葉を述べられる事態となった。