解説
所属は、各都道府県警察の警備部となる。
例えば、市街地で暴動が発生した時に、紺色の出動服(別名乱闘服やワッペン服という)に身を包み、ジュラルミン製の大盾(ライオットシールド)を担いで出動する集団。
それが一般的に知られる「機動隊」である。
主な任務は、治安警備や災害警備、人が集まった時の雑踏警備、警衛警護(ボディーガード)、そして集団警ら(パトロール)及び各種一斉取締りである。
基本的に各警察に基幹隊1隊と特別機動隊、管区機動隊が置かれる。
管区機動隊(管機)とは、指定された警察署に小隊単位で設置され、警察署員として勤務しながら定期的に訓練を行い、大規模警備や災害救助の際に召集され、基幹隊の補助を行う部隊である。
北海道や警視庁を除いて7管区に大分した管区警察局ごとに編成され、もっぱら、各管区管内の警察本部に採用された若手警察官らが配属される。
輸送車に記された4ケタの数字が外見的な特徴となる。
- 管区警察局:東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州の方面(管区)にある、各警察本部を連絡・調整する警察庁の機関。
北海道には、北海道警自体が大規模なため、管区警察局が存在しない。
警視庁も、大規模なため、関東管区警察局の管轄ではない。
皇宮警察本部は、警察庁附置機関のため警視庁と同じく、関東管区警察局管轄ではない。
特別機動隊(特機)とは、警察署の各課で勤務する警察官の中から機動隊経験者を指名した臨時編成の部隊であり、練度は基幹隊や管区機動隊よりは劣る。
警視庁においては、基幹隊1個大隊が6個中隊で編成されるが、このうち第5・第6中隊が特別機動隊員によって構成される。
方面機動隊(方機)とは、警視庁など一部本部にて編成される臨時機動隊のことである。重大事案発生時、特別機動隊員が基幹隊内に編成されるのに対し、方面機動隊員は基幹隊内には編成されず、もっぱら隊舎や重防(重要防護施設)の警備に当たる。
警察本部毎の編成
警視庁は基幹隊10隊(第1~第9機動隊と特科車両隊)を編成している。
北海道警察は管区機動隊の代わりに「北海道警察警備隊」が存在する。
(北海道警察自体の規模が大きく、”北海道管区警察局”が存在しないため。)
千葉県警では成田空港に関する諸問題を抱えているため、常設の機動隊の他に千葉県警に限らず、日本各地から出向してきた警察官から成る「成田国際空港警備隊(空警隊)」を設置している。
成田闘争が激化していた頃、千葉県警に採用された警察官は全員、警察学校卒配後、問答無用で空警隊に配属されていた時期もあった。近年では成田闘争がある程度沈静化したこともあって、そのようなことはなくなり、空警隊自体も縮小化・専門化がなされている。
(なお、東日本大震災発災以降、福島・岩手:宮城からの出向は停止されている。)
歴史
60年代中頃は機動隊の象徴とも言える大盾は導入されておらず、羽田闘争において多数の負傷者を出したため迅速に配備された。
かつてヘルメットの周囲に白線で大きく階級表示をしていたが、それが仇となって指揮官を特定され犯人に射殺されるという悲劇を招いたため、以降はヘルメットの後部に小さく階級章を取り付けている。
2002年以降は装備を一新し、出動服の中に着用していた旧型防護装備に加え出動服の上から着用する新型防護装備を使用している。大盾もジュラルミンではなくポリカーボネート製の透明なものが導入された。
現在でこそ機動隊が出動するのは元旦の初詣やハロウィンなど大きなイベントの雑踏警備や右翼、左翼団体のデモの警備などだが、今から50年前の1960年代後半から1970年代前半は学生運動全盛期であり、日本各地で暴徒化した極左暴力学生によるデモや大学のバリケード占拠が連日のように発生しており、機動隊は休む間も無く治安維持のために出動していた。
警備活動の中で犠牲になった警察官も多く、学生運動や成田闘争、あさま山荘事件など過激派によるテロ事件の警備において11人もの隊員が殉職し、2万名を超える警察官が負傷した。
編成
上記の基本編成部隊の他、
機能別部隊として、
特殊部隊(SAT)、銃器対策部隊、レンジャー部隊、爆発物処理班、広域緊急援助隊、水難救助隊、山岳警備隊ないし、山岳救助レンジャー部隊、化学防護隊、機動隊自動二輪部隊(MAP)、儀じょう隊、スカイマーシャルなど、
様々な部隊が編成されている。
また警視庁の指揮下には類似部隊として羽田空港警備に就く東京国際空港テロ対処部隊と総理大臣官邸警備に就く総理大臣官邸警備隊(SPと同じく警護課隷下)がある。
ちなみに、2013年のブラジルサッカーW杯アジア予選にて、日本代表が勝利した時に、渋谷駅前で大勢のサッカーサポーターが集まり、騒然とした事態になったことがあった。
その際にその状況を治め、「DJポリス」の通称、及び愛称で有名になった人物は、「機動隊広報係」に所属している。
装備・資器材
被服類
- 制服・活動服:通常の警察官と基本的に同じ。
制服は3つボタン背広型。
活動服は4つボタンブルゾン型。
本部によっては襟部分に機動隊記章を着けていることや、機動隊腕章で判別できることがある。
警視庁や大分県警の場合、機動隊記章は、円形の金色バッジである。
- 出動服:別名乱闘服・ワッペン服とも。
旧型出動服は隠しボタン、開襟シャツ型。左上腕部に西陣織でできた旭日章(警察章)ワッペンが着いていたことから「ワッペン服」と呼ばれていた。
(現行制服と異なり、旧制服の場合、右上腕部のワッペンがなかったため。)
色は藍色。麻製の防炎出動服と、綿・ポリエステル混紡の防水出動服の2種類。
帽子は「略帽」と呼ばれる戦闘帽型。階級によって綾竹紐の周線が増えたり、金モールに変化したりする。
新型出動服は隠しボタン、立ち襟型。旧型出動服と異なり、右上腕部にワッペンが着けられている。このほか、肩章がついたり、より強度のある素材が採用されたりした点にも差異が見られる。
もっとも目立つ変更点は訪日外国人増加を考慮し、背部に“POLICE”と記したことである。
色は濃紺。
帽子はキャップ型。階級線は後頭部に小さく記されている。
(活動帽と同様)
- 広域緊急援助隊服:読んで字の如く、全国一円で活躍する機動隊のレスキュー隊広域緊急援助隊として活動する際に用いる服である。
かつて、広域緊急援助隊が発足する以前は、全国警察本部ごとにレスキュー服はまばらであったが、発足以降、広域緊急援助隊としての被服はこれに統一された経緯がある。
災害現場において目立つよう、鮮やかな水色を基調とし、両上腕部や、ズボン大腿部ポケットなどに黄色いアクセントが入っている。
同様のデザインの雨衣も配備されている。
また、国家公安委員会委員長の防災服も同様の意匠である。
- 階級章:階級章は制服のものと異なり、桜花をあしらったものである。巡査から警部補までは桜花が1つから4つ。警部以上は桜花を金ないし銀色モールであしらったものとなる。
帽子(制帽を除く)の階級線は白色綾竹紐ないし、金モールである。
参考までに:
- 巡査。桜花1つ。白細線(以下、巡査長を除き5ミリ)1条。
- 巡査長。桜花2つ。白細線(7ミリ)1条。
- 巡査部長。桜花3つ。白細線2条。
- 警部補。桜花4つ。白太線(10ミリ)1条、白細線1条。
- 警部。黒台地銀色モール桜花。白太線2条。
- 警視。黒台地金色モール桜花。白太線2条、白細線1条。
- 警視正。黒台地銀色縁取り金色モール桜花。白太線3条。
- 警視長。黒台地金色縁取り金色モール桜花。金モール太線1条、金モール細線1条。
- 警視監。赤台地金色モール桜花。金モール太線2条。
- 警視総監。警視監よりひと回り大きな階級章。金モール太線2条、金モール細線1条。
個人装備
- 新型個人装備(外着型個人装備):基本的に出動服の外側に装着するため、着脱が容易となった。黒々とした見た目のデザイン。旧型より軽量化され、背部に“POLICE”と記されている。
ヘルメットのバイザー(防護面)は、旧型と異なり、ヘルメット内に格納されている。
頚椎を守る防護垂れに関しては、旧型よりやや小さいものの、角が丸くなり機能的となっている。
- 旧型個人装備(内着型個人装備):基本的に出動服の内側に装着する。出動服と同じく、紺色をしている。プロテクターはジュラルミン製。新型より重く機能性にやや、難はあるものの、部隊によっては依然として併用されている。
ヘルメットはSB-8型と呼ばれ、バイザー(防護面)は外部に装着され、格納はできない。
頚椎を守る防護垂れは、横幅が広く、角張っているのが特徴。
- 大盾:ジュラルミン製とポリカーボネート製の2種類。衝突が予想される現場においては、ポリカーボネート製よりもジュラルミン製の方が威力を発揮するため、こちらも依然として使用されている。
- 小盾:隊長付の伝令が使用する。
- 隊長旗・伝令提灯:同じく、隊長付の伝令が携行する。夜間帯においては小型の提灯が使用される。
車両
国費導入される車両に関してはハイライトブルーとホワイトの2色塗りが基本となる。
かつては、濃淡ある灰色の塗装をした車両が配備されていたが、平成4年頃から、現在の塗色へと更新されている。
(これに合わせ、現行塗装とは別の、クリーム色に水色を基調としたデザインも試験配備されたが、本採用とは至らなかった。)
NBCテロ対策車(化学防護車とも。)やゲリラ対策車(遊撃車III型)などは、濃紺の一色塗りである。
(なお、ゲリ対車に関しては、近年、機動隊カラーのものが配備されている)
警視庁では、都費導入した車両(特に災害警備用)は、緑色に白帯を入れたデザインを採用している。
(千葉県警や佐賀県警にも一時期、同様の塗装をしたレスキュー車が見受けられた。)
神奈川県警では、県費導入したフォークリフトやホイールローダー、多目的災害対策車(ウニモグにドーザを取り付けた独自仕様。警視庁や大阪府警にも似たような車両が配備されていた。)に関しては、国費車両よりも明るい水色を基調とした塗装となっている。
このほか、各警察本部が都道府県費で導入した車両(主としてレスキュー車や水難救助車など。)は、独自のデザインをした車両が配備されることもある。
主な車両
- 人員輸送車:バス型の車両。おそらく、もっとも見かける機会が多い機動隊車両であろう。
なお、誤解されがちだが護送車ではない。大型・小型・中型の3種類ある。
- 現場指揮官車:4WD型の車両。車両上部に折り畳み式の櫓とラウドスピーカーがあり、指揮官が部隊の統率を執る際に用いる。ご存知、DJポリスが乗っていたのもこの車。
- ゲリラ対策車:ワンボックス型の車両。機動力を活かし、各種警戒警備など、なんでも重宝される。かつては濃紺塗装だったが、近年では機動隊カラーのものが配備されている。
- 投光車:ハロゲン投光器を車両上部に搭載した車両。夜間、数百メートル先でも新聞が読めるほどの明るさである。基本的にワンボックス型だが、トラック型の「災害用投光車」が配備される本部もある。
- 爆発物処理筒車:爆発物や不審物が発見された場合に出動し、この車両で安全な場所まで搬送される。車両後部に円筒形の格納容器があり、万が一、搬送途上において爆発しても被害が出ないような設計となっている。
(余談だが、名探偵コナンアニメ580話あたりの劇中にて作画されたことがあった。)
- 爆発物処理用具運搬車:同じく、爆発物処理の際に出動する。重機を改造した車両と思われ、装甲板越しの運転室から処理班員がマニピュレーター(アーム)を操作し、爆発物を移動させたり、処理筒車に格納したりする。
- 特型警備車:警察用装甲車の一種。4WDのトラックをベースに、防弾装甲を取り付けた車両。側面に銃眼と、上部にハッチがある。窓ガラスは防弾仕様なうえ、防弾装甲板が取り付けられている。
- 広域レスキュー車:読んで字の如く、レスキュー隊(広域緊急援助隊)が使用する車両。投光器やクレーン、ウィンチを装備しているほか、空気ボンベの充填装置も搭載している。
- 高性能救助車:メルセデスベンツ社製の高機動車「ウニモグ」に赤灯・サイレンを搭載した車両。水深:1.2メートルなら渡河できるし、斜度45度までなら乗り越えることが可能。令和4年現在、警察庁では、更新した車両の玉突き転配を進めており、各地の警察本部に配備されつつある。
- 災害活動車:SUVに赤灯・サイレン・サーチライトを取り付けた車両。山岳部の警察署に配置され、山岳警備隊(山岳救助隊)が使用することもある。
似たような車両として、
岐阜県警ではトヨタメガクルーザー(自衛隊用の高機動車を民生化したもの。)にウィンチを取り付けた「高機動救助車」を。
大分県警や熊本県警では、同じくトヨタのランドクルーザーをベースに吸気口を高くし、渡河能力を持たせた「被災地活動用車」を配備している。
(特に、九州北部豪雨災害では活躍した。)
航空自衛隊那覇基地公式ツイッターより。
その他
また、日本の警察には他にも、
「機動隊」に名称が似ている様々な部隊がある。
関連リンク
関連タグ
機動隊員:機動隊に所属している構成員の通称。
特車二課:「機動警察パトレイバー」シリーズ
…機動隊の「特科車両隊」内の組織の一つ(小隊)という設定がある。
また、ゆうきまさみの漫画版では、「太田功」が過去に機動隊員であった、という描写がある。
「攻殻機動隊」
…架空の組織「公安9課」の俗称、及び同組織が登場する作品の名称でもある。
現実の「機動隊」とは関連性が無く、あくまで俗称である。