必ず任務を果たせ、お役に立て
任務を果たし、全員の帰還を待っている
平成23年3月15日。
東北地方太平洋沖地震で被災した福島県いわき市へと向かう部隊に対する、太田本部長(当時)からの激励の言葉より──。
概要
大分県警は、九州の東部にある大分県を管轄する警察本部である。
比較的、他県に比べると治安が良好であるとされる。数年前、2ちゃんねるのスレッドにて取り上げられた、大分合同新聞社のミニ事件簿の舞台となったのも、この警察本部である。
県警本部は、県都大分市大手町3丁目に所在する、大分県庁舎の新館に入居している。(詳細下記)
このほか、大分中央警察署の敷地内にも県警本部別館が所在している。
本部長
いわゆる、地方警察本部、小規模警察本部であり、本部長は警察庁から出向してきた、40代のキャリア警視長が務めることが慣例となっている。
令和4年(2022年)、警察庁刑事局より出向し新たに着任した種田〝おいだ〟本部長は、警察庁技官として平成5年(1993年)に入庁したキャリア技官である。
前職である、刑事局捜査支援分析管理官時代の、種田本部長のインタビューが取り上げられている。
警察庁技官(技官キャリアやキャリア技官とよばれる)は各管区警察局隷下の情報通信部(情通部)などに配置されることが多い。情報通信部は、衛星通信車やテレビ中継車、非常用通信車、保全車など様々な通信装備を活用し『機動警察通信隊』として、災害や警備の現場に出動することがある。専門的な知識が要求されるため、警察官よりも技官の配置が多くなる。
キャリア技官は警察官でこそないが、警視正、警視長へと昇進し、警務部長や県警本部長を務めることがある。種田本部長も同様、岩手県警警務部長の際は警視正、警察庁刑事局着任の際には警視長へと任ぜられている。
ちなみに、キャリア技官の上がりといえるのは、警察庁情報通信局長であった。警察庁の局長はキャリア警視監が務めるなか、情報通信局長のみは、専門性に鑑み、キャリア技官の指定席であった。情報通信局がサイバー警察局へと改編され、今後の動向が注目される。
前任の松田本部長(警視長)は、総合職採用のいわゆる警察官僚であった。1年2ヶ月間、本部長を務めたのち、警察庁刑事局刑事企画課長へと転任した。
マスコットキャラクターとイメージキャラクター
マスコットキャラクター
マスコットキャラクターは、高崎山でお馴染みサルの警察官家族である。
- 父:ピンキー
- 母:パンキー
- 長男:パット
- 長女:ロール
元々は、ピンキーのみがマスコットキャラクターとして平成4年(1992年)に制定されたのがキッカケであるが、現在のイメージとはやや異なるものであった。
余談であるが、フジテレビ系列で放送されていたトリビアの泉内にて、一瞬だが登場したことも。
しかし、かつてのピンキーはただのサルに白抜きでPを記しただけの意匠で、ひと目見て警察のマスコットとわかるモノを何ひとつ携帯していなかった。
たとえば、先述した警視庁のピーポくんも、裸に近い意匠ではあるが、制定当時(昭和62年、1987年)の警察官制服(いわゆる旧制服)のうち、男子警察官の冬服・合服と同様、帯革と負革を身につけている。
そこで、平成21年(2009年)にリニューアルをし、現在のデザインに様変わりした。素っ裸(元々、サルだから当たり前だが……)ではなく、警察の制服を纏い、制帽も被り、革靴も履いて、ひと目で警察と分かる見た目に進化。
奥さんと子ども二人を育てる大黒柱に……と、プロフィールも更新されている。
現在では、着ぐるみによる街頭での広報活動のほか、Twitterの公式アカウント内での活動などもみられる。
イメージキャラクター
イメージキャラクターには、一時期、大分市出身のアイドル指原莉乃さんを起用していたこともあった。
不名誉な記録ではあるが……。
令和元年(2019年)に、日本自動車連盟(JAF)が、全国でこのような調査を行ったことがあった。横断歩道に歩行者がいた場合、一時停止をする運転者がどれほどいるか、というものである。
信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2019年調査結果)
これによると、全国トップは長野県で68.6%、全国平均は17.1%。大分県は15.0%と、全国平均を下回る結果であった。特に大分県下でも横断歩行者が巻き込まれる死亡事故が相次いでおり、歩行者妨害の取締や、運転者への啓発が急がれることとなった。
ラグビーW杯を前に『思いや〝りの〟運転県』をキャッチコピーとしたポスター・動画作成などの広報活動が積極的に行われた。終了後、石川本部長(当時)から感謝状が贈られている。
本部組織
幹部警察官
部長はいづれも警視正が着任。大分中央警察署長と含め、地元採用のノンキャリア警察官にとって上がりやゴールともいえるポストである。
各部には、総括参事官(警視)が置かれるほか、警務部には参事監(事務職員)が、警務・生活安全・交通部には参事(事務職員)が置かれる。
また各課には、警視や警部の警察官が、対策官や指導官、管理官として配置される。このうち、警務課のみは、人事管理監と組織管理監として『管理監』が配置される。
執行隊
本部直轄の部隊である『執行隊』は次のような構成である。
- 生活安全部:3隊(地域課隷下)
- 刑事部:1隊
- 交通部:2隊
- 警備部:2隊
自動車警ら隊
無線警ら車(パトカー)を用い、警ら活動(パトロール)を行う部隊である。元来、大分県警では、所轄署の地域課ないし地域交通課に編成される『自動車警ら班』が、警ら活動を担っていたが、所轄署の枠を超えた、広域的・機動的な運用を目的として、令和2年(2020年)に新たに発隊。現在は所轄署の自動車警ら班と共に活動に当たっている。自ら隊員は九州管区機動隊の隊員を兼任しており、災害や大規模警備の際には管機隊員としての任務に当たる。
(同様の形を宮城県警や、福井県警嶺南機動隊〈現・原子力施設警備隊〉でもとっている)
- 自動車警ら1係
- 自動車警ら2係
の二つの係で構成。赤色を基調とし、旭日章が記された腕章が目印となる。
このほか、生活安全部地域課・地域指導室(室長は警視。地域指導官は警部)には、職務質問指導班が編成されている。
(イラストは、警視庁鉄道警察隊員。大分県内の鉄道路線図)
鉄道警察隊
JR大分駅の構内に所在。改札口を出て右に進み、南口(上野の森口)に出て、再び右折。高架下の歩道をしばらく進み、車道とぶつかる角に鉄道警察隊本隊は位置している。
大分駅が高架化される以前は、現在地より少し北西側にあった。
鉄道用地内での犯罪、事故等の対処を目的とした部隊であり、事案が用地外まで及ぶ場合は、管轄の所轄署と共に対応する形となる。
目印となるのは、左襟に着用する記章(全国の鉄道警察隊にて同一の意匠。旭日章にレール断面、RPの刻印)と、紺色の腕章である。
自動車警ら隊長と鉄道警察隊長は、それぞれ警視の警察官が着任する。しかし、実際には専任ではなく、地域課次席や機動警察管理官、地域指導室長(いづれも警視級)や、地域指導官(本来は警部)との兼任であることも多い。
山岳遭難救助隊
本部地域課の雑踏警備・山岳・水難係に編成されている部隊。その名の通り、山岳救助活動を担うレスキュー隊(山岳救助隊)である。
隊長を地域課長が、副隊長を地域課次席がそれぞれ兼任する形となる。常設部隊ではなく、山岳救助の通報が入り、所轄署では対応できない場合、指定隊員が出動する形となっている。
隊員は機動隊のほか、大分南署、別府署などの山岳地帯を抱える所轄署から指定される。
所属と人数は、下記の通りである。
所属 | 人数 |
---|---|
機動隊 | 15 |
大分南 | 7 |
別府 | 7 |
玖珠 | 3 |
竹田 | 3 |
豊後大野 | 3 |
佐伯 | 5 |
航空隊
大分空港に基地がある。配備されているのは、アグスタA109型中型ヘリ『ぶんご』である。現在の機体は2代目。
先代の機体はベル206L型『ぶんご』で、昭和63年(1988年)に、大分県警航空隊が発隊して以来、21年もの長きに亘り活躍を続けた。
かつては、生活安全部の地域課隷下の執行隊として編成されていたが、航空隊を地域部から警備部へ配置換えするとの警察庁の方針に基づき、警備部警備企画課隷下に配置換えされた経緯がある。
航空隊員は、オレンジ色を基調とした飛行服を着用する。
(警察官の服制に関する規定第7条より)
余談であるが、先代『ぶんご』が就役した際には、記念テレカが発行されたこともあった。公衆電話を使う機会が減って久しい現在、なんとも懐かしく、時代を感じるものである。
機動隊
大分市福宗の警察学校の敷地内に所在。
以前は、城址公園(旧・文化会館)のすぐ東側・大分市城崎2丁目に隊舎を構えていた。旧隊舎は、昭和37年建築の鉄筋コンクリート2階建であったが、老朽化と狭隘化が進行したため、平成10年度に警察学校と共に現在地(当時:大分郡野津原町)へ移転した。跡地はマンションやビル等に様変わりしている。
なお、この事業は建設省による官庁営繕『大分県警察学校・機動隊整備事業』として行われた。
県機動隊(県機)のマフラーは紫色であるのに対し、九州管区機動隊(管機)のマフラーは赤色であることで区別することができる。なお、九州管機大分小隊は自ら隊員が兼務する形となっており、制服左下襟に円形の記章をつけているのが目印となる。
【機動隊の車両】
管機の車両には孫悟空のマーキングが施されており、第一小隊は青色、第二小隊は赤色基調のステッカーをしていることが外見的な特徴である。
県機に配備されている車両としては、全国の機動隊と同様、大型輸送車や爆発物処理筒車、投光車などがあげられる。
近年では、令和2年に福岡県警から配置換えとなったウニモグ『高性能救助車』が配備されている。このほか、ユンボと搬送車のセットや、ジムニーシエラをベースとした『多目的災害対策車』も国費配備されている。
特筆するのは『被災地活動用車』である。
この車両は、トヨタランドクルーザーをベースにスノーケル装置やウィンチなどを取り付けた特別仕様となっており、水深60センチメートルまでの渡河能力を有している。国費では酷似した仕様の災害活動車(災害活動用高床バン型車)が配備されるが、汎用性を重視しているため、ここまでの装備品は後付けされておらず、県警ならではの車両といえる。
被災地活動用車は全国で大分県警と熊本県警にのみ配備されている。大分県警では元々機動隊に被災地活動用車を1台配備していたが、平成30年度予算で新たに2台を購入し、合計3台の体制となっている。
なお、余談であるが、岐阜県警や国交省大分河川国道事務所には、メガクルーザーをベースとした車両も配置されている。
東日本大震災における活動
東日本大震災に際しては『広域緊急援助隊』が派遣され、活動にあたった。この広域緊急援助隊は、鮮やかな青色と黄色の救助服で活動にあたる部隊であり、阪神淡路大震災を教訓として発足した部隊である。
大分県警は発災当夜〝別大国道〟ともいわれる国道10号をはじめ、豊後水道沿岸部の警戒にあたった。その後、高速道路(九州・中国・名神・東名・首都高・常磐道)を経由し17日に福島県いわき市へ到着。以降、交通対策や治安警戒(警ら活動)、捜索活動などに従事した。
県警の嘱託警察犬と訓練士は、緊急車で広域緊急援助隊到着よりも前に現着し捜索活動を行なった。
最終的に、県警からは述べ518名の警察官が被災地へ派遣されることとなった。
また、発災翌年には、4名の大分県警察官が岩手県警へ特別出向し、宮古警察署(署員2名が殉職)へ配置されている。
派遣部隊に対する、太田県警本部長(当時)による激励の言葉
人として生まれ
男として育ち
自ら警察官の困難な道を選んだ
その諸君だからこそ
預けられた任務である
現場は困窮している
助けを求めている
必ず任務を果たせ
お役に立て
現地では自活を第一とし
被災者以上の処遇を求めてはならない
そして全員無事に帰任せよ
任務を果たし、全員の帰還を待っている
各部・各課の構成
- 警務部
- 総務課
- 公安委員会補佐室
- 取調べ監督室
- 総務課
- 広報課
- 音楽隊:音楽隊長は広報課長と兼任がほとんど。(階級は警視)
- 犯罪被害者支援室
- 総合相談室
- 広報課
- 会計課
- 会計監査室
- 会計管理センター
- 会計課
- 施設装備課
- 施設管理室
- 警察装備開発改善委員会
- 施設装備課
- 警務課
- 情報室
- 採用・育成企画室
- 警務課
- 厚生課
- 共済・年金対策室
- 職員健康管理室
- 厚生課
- 監察課
- 訟務室
- 監察課
- 留置管理課
- 情報管理課
- 情報セキュリティ対策室
- 照会センター
- 生活安全部:他警察本部における地域部の業務を本部地域課が分掌。
- 生活安全企画課
- 安全・安心まちづくり推進室
- 許可等事務管理室
- 生活安全企画課
- 人身安全・少年課
- 大分っ子フレンドリーサポートセンター:センター長(次席兼少年事件指導官)は県警初の女性警視が務めている。
- 人身安全・少年課
- 保安課
- サイバー犯罪対策課
警察署など
本部関係
- 警察本部
- 警察本部別館
- 大分県警察鑑識科学センター
- 大分県運転免許センター
- 大分県警察学校
- 所在地:大分市福宗2301
- 大分市街地より、車で30分程度。機動隊も同じ敷地内に所在する。
- かつて、警察学校は大分県立大分西高等学校(当時は、大分女子高等学校)のすぐ南側、現在の大分市王子山の手町に、警察学校射撃場も市道を挟む形で所在していた。だが、旧校舎は昭和38年に建築されたものであったため、老朽化や実習施設の狭隘化が進行しており、機動隊と共に平成10年度に移転した。
- 大分交通の志手バス停の目の前が警察学校。高尾台入口バス停や、王子山の手公園前バス停の目の前に射撃場があった。学校跡地は住宅街に、射撃場跡地は公園となっている。元々は旧陸軍大分連隊や大分練兵場の射撃場の土地を警察学校用地とした形である。
- 警察学校内には模擬家屋や模擬交番、火災実験場などが設置されている。
警察署(署長は中央署を除き警視)
- 大分中央警察署
(JR大分駅)
- 大分東警察署
- 大分南警察署
(由布院駅)
- 別府警察署
- 杵築日出警察署
- 国東警察署
- 豊後高田警察署
- 宇佐警察署
(宇佐神宮)
- 中津警察署
- 玖珠警察署
(豊後森機関庫)
- 日田警察署
(日田市豆田町)
- 竹田警察署
(滝廉太郎ゆかりの地である竹田市の、廉太郎トンネル)
- 豊後大野警察署
(東洋のナイアガラこと、原尻の滝と、地元を走る大野竹田バス)
- 佐伯警察署
- 臼杵津久見警察署
警察署の規模により、AからGまで7区分され、それに応じ、課や係が組織されている。
規模 | 警察署名 |
---|---|
A | 大分中央 |
B | 別府 |
C | 大分東、中津、日田 |
D | 大分南、佐伯 |
E | 杵築日出、宇佐、臼杵津久見 |
F | 豊後高田 |
G | 国東、玖珠、竹田、豊後大野 |
エンブレムやシンボルマーク
大分県警察としてのシンボルマーク
シンボルマークは、アルファベットのOとPを組み合わせたものである。Oは、大分〝OITA〟の頭文字から、Pは、警察〝POLICE〟や、平和〝PEACE〟の頭文字から取られている。
色は、青と白の二色を基調としたもので、制服右上腕部のエンブレムや、本部庁舎通行証にもあしらわれている。
機動隊
管区機動隊大分小隊のエンブレムには、高崎山のサルに由来して孫悟空が用いられている。一方、広域レスキュー車には、豊後梅に機をあしらったシンボルマークが貼られている。
交通機動隊
交通機動隊員の制服(交通乗車服)左上腕のエンブレムは、黄色台地に交通腕章(緑地に白2条線)、旭日章をあしらい〝交機隊・大分〟と記されている。
一方、交通機動隊としてのシンボルマークには〝WHITE OWLS〟『白フクロウ』が制定され、白バイなどにステッカーが貼付されている。
参考)大分県警の公式ツイッター
特別警戒部隊
毎年、年の瀬になると、各所轄署毎に年末警戒部隊を発隊させ、警戒にあたっている。この際、警察署の玄関部分には、赤線2条とともに『特別警戒中』と墨塗りされた提灯が設置される。
このほか、花見シーズンにも『特別警戒部隊』を発隊させて盛場近辺での警戒にあたる。各部隊には各所轄署毎に愛称が定められており、揃いの腕章などに見ることができる。
警察署名 | 部隊名 |
---|---|
大分中央 | 桃太郎部隊 |
大分中央・女性警察官 | さざんか部隊 |
大分東 | 臨海部隊 |
大分南 | ななせ部隊 |
別府 | 湯けむり部隊 |
杵築日出 | 双城部隊 |
国東 | くにさき六郷部隊 |
豊後高田 | 桂部隊 |
宇佐 | 八幡部隊 |
中津 | 箭山『ややま』部隊 |
玖珠 | やまなみ部隊 |
日田 | 若杉部隊 |
竹田 | 岡城部隊 |
豊後大野 | 月の輪部隊 |
佐伯 | 城山部隊 |
臼杵 | 石仏部隊 |
津久見 | オレンジ部隊 |
機動隊 | 金太郎部隊 |
参考)朝日新聞社の記事
余談)警視庁の第二自動車警ら隊も、桃太郎のロゴマークを採用していたりする。その理由も、大分中央署の『犬は優しさ、猿は知恵、雉は勇気』と似て、『厳しくも、優しく悪に対峙するから』というものだそう。
関連タグ
佐々淳行(元・大分県警本部警務部長。在任中、監察官として数多くの幹部警察官を処分した。氏が通ったという居酒屋『平和』は現在も県警本部のすぐそばで営業している)
西部警察(『博多港決戦‼︎』にて、当時の大分市内が映り込む。なお、パトカーは劇用車である)
名探偵コナン(『恋の地獄めぐりツアー』にて、コールサインこそ異なるものの、一瞬だけ、大分県警のパトカーが映り込む。
また、県立美術館OPAMにて開催された、『名探偵コナン・科学捜査展』のイベントに、大分県警が参加したこともあった)