概要
生活安全部は警察本部に必置の部のひとつである。少年事犯や生活環境犯罪、女性や子ども関連の事案、風俗関連、防犯広報、サイバー犯罪などの捜査を担当する。
また、小規模警察本部など、地域部が設置されていない警察本部においては、地域部の業務も分掌している警察署においては、同様の業務を担当する生活安全課が設置されている。
警視庁において、生活安全部の分掌業務はかつて防犯部と保安部として二つの部に独立していた。
(現在の新警察法が成立する以前、旧警察法下の自治体警察としての警視庁時代。戦中・戦後動乱期の文書等に保安部や保安交通部の記載が見られる)
この二つの部は、昭和29年(1954年)に乱闘国会に代表される難産の末に施行された新警察法に基づく現在の警視庁発足に合わせ、防犯部に合併、新たな道を歩むこととなった。
のち、交通部の発足に伴い警察部内では以下のように称されるようになる。
- 防犯部門:警ら部(現・地域部)や少年事犯、環境犯罪、防犯広報
- 保安部門:風俗関連事犯や、銃器薬物の取締
その後、安寧なる市民生活を脅かす犯罪件数が著しく増加し、体感治安や犯罪不安が次第に増大する中、防犯部の名称を変更し、より社会にアピールすることとなった。
これを受け、現在の生活安全部に改称されたのが、平成7年(1995年)のことである。同時に、防犯総務課も生活安全総務課へと名称も変更された。
余談だが、警ら部もより地域社会に根差し、地域と共に警察活動を行なうとの姿勢から、生活安全部より先立つこと2年、平成5年(1993年)に地域部へと改称されている。
ちなみに、警らとは、正式には『警邏』と記し、パトロールを指す警察部内用語である。"邏"の字が常用漢字外であったため混ぜ書きにされていたのもあるが、警ら(パトロール)活動のみならず、地域との密着を高める警察の変化の現れでもあった。
生安部と組対部の分割という転機
転機が訪れたのは、ミレニアムを越えた2000年代である。
依然として、減少するどころか、さらに増加する犯罪発生件数。
東京・八王子において発生した『八王子スーパー強盗事件』(ナンペイ事件)や、同じく東京・南千住において発生した『警察庁長官狙撃事件』にも代表される、けん銃を使用した殺傷事件が相次いで発生。
それまでの日本において、予想のしなかった銃器犯罪の多発が懸念された。
また、覚せい剤や大麻など違法薬物に関連した少年事犯も増加の一途を辿る。かつて少年による薬物事犯といえばシンナーや、タバコなどが主であったため、警察や学校などの姿勢を変化することが求められた。
折しも、暴力団による犯罪も激化していたこともあり、警視庁では警察庁とともに、再度の防犯部門・保安部門の分割を検討することとなった。
これは銃器や薬物の密売に関連し、暴力団が絡むことが多いため。
警視庁を一例として挙げると生活安全部内の保安部門(薬物銃器対策課)と、刑事部内の暴力団対策部門(暴力団対策課、捜査第四課)および、国際犯罪対策部門(国際捜査課)を合併させることとなり、平成15年(2003年)に部である組織犯罪対策部として独立した。
余談だが、刑事ドラマ・相棒のレギュラーキャラクター。杉下右京警部や、亀山薫巡査部長をはじめとする特命係の面々に情報を与えつつ、都合よくコーヒーを強奪し、愛用のパンダマグカップに注ぐことでお馴染み、角田課長こと角田六郎警視の率いる課も、当初の生活安全部・薬物対策課(のち、薬物銃器対策課)から、組織犯罪対策部・組織犯罪対策第五課に変更されている。
編成
※地域部の置かれていない小規模警察本部においては、生活安全部地域課として、地域部の業務を分掌する課が設置される。
警視庁の場合、生活安全部長の下に参事官が置かれる。
部長は、ノンキャリア警視長が務めることが慣例となっている。
- 生活安全総務課
- 生活安全警察の統計や課内庶務、盛り場警戒、防犯活動の指導、質屋・警備・探偵業の開業許可などを担当する。
- 警視庁生活安全相談センター
- 警視庁ストーカー対策室
- 【執行隊】
- 生活安全特別捜査隊:生活安全総務課・生活安全企画係隷下の執行隊。風俗事犯の摘発や非行少年の補導を行なうため、活動を行なう。
- 生活経済課
- 悪質商法(マルチ商法やねずみ講など)の捜査、経済犯罪(捜査第二課の分掌ではないもの)の捜査を担当。
- 警視庁金融犯罪対策室
- 生活環境課
- 銃刀法に基づく銃砲刀剣類所持の許可や、危険物対策、環境衛生事犯の捜査に係ること。
- 保安課
- 風俗営業の許可、風俗事犯、外国人労働者の雇用事犯の捜査を担当。
- 少年育成課
- 非行少年の補導、学校への防犯指導などを担当。
- 少年事件課
- 少年事件の捜査、少年院や家庭裁判所との連絡調整を担当。
- サイバー犯罪対策課
- サイバー犯罪対策や、不正アクセス禁止法違反などの捜査を担当。
- 警視庁ネットワーク捜査指導室