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地域部

ちいきぶ

地域部は、一部の警察本部に設置される、部のひとつである。もっぱら地域警察を担当する。
目次 [非表示]

概要

地域部は、日本の警察の中でも、地域警察を担当するおまわりさんが所属する部門のこと。


警察部内では、地域に根差した外勤活動のことを地域警察と呼称するため、地域部と呼ばれ、地域住民にもっとも密接した部である。

(かつては外勤警察と呼称していた。詳細下記)


おそらく、多くの方がおまわりさんといって、イメージされるような、交番駐在所などに詰めたり、白チャリやパトカーなどで、地域の警ら(パトロール)や登下校する子どもたちの見守りに当たったり、事件が発生するや真っ先に現場に急行したりするのが、もっぱら地域部に所属する警察官である。


小規模警察本部では、地域部を設置しない代わりに、必置である生活安全部内に地域課を設置し、地域警察活動を行なうことも多い。


所轄の警察署でも、地域課が置かれ同様の業務を行なっている。

警察のなかでも、特に地域社会と密接であるため、その活動は多岐にわたる。


普段から交番・駐在所およびパトカー・白チャリ・交番バイクなどでの警ら活動や、巡回連絡、金融機関等々に置かれる警察官立寄所への訪問、学校近辺での交通安全活動や横断歩道での警戒といった活動を行い、本部からの110番急訴が届けば即座に現場へ急行。


凶器を持った被疑者との対峙・交通事故現場での救護活動や交通整理・夜間帯の駅頭警戒や始発警戒(駅周辺での警戒活動)・指名手配者や行方不明手配者等に対する警戒などがその例。あるいはタクシー内で寝込んだ客や運賃トラブル・酔っ払いの保護、あるいは痴話喧嘩の仲裁まで様々。


短い仮眠時間も、110番通報が入れば帳消し。マシになったとはいえ、超勤手当は雀の涙。書類記入は、勤務終了後の残業がほとんど。


歳末ともなれば、北風吹き荒ぶなか、涙や鼻水を流しつつ街頭に立つ。夏場ともなれば、日差し照りつけるなか、ワイシャツを汗で染めながら勤務する。

かつて目黒警察署に警部補として勤務した佐々淳行は、著者『目黒警察署物語』にて眇たる警察官耐繁耐忙耐貧と称した。


地域部への改称

かつて、全国の警察において地域部は警ら部、生活安全部(当時は防犯部と呼称)地域課は警ら課もしくは外勤課と呼称されていた。


警らと聞くと馴染みがない方も多かろうが、平たくいえば『パトロール』の意味と同じである。たとえば、現在でこそパトロールカーと呼ばれて久しい車両も、GHQの指導により登場した昭和23年当初は『移動警察車』や『移動警邏車』と呼ばれていた。余談だが、当時のパトカーは現在のソレと大きく異なるものであった。半導体を用いる無線機と異なり真空管式であったことや、アンテナがかなり長大であったこと、道路状況が劣悪であったことなど様々な理由が挙げられるが、国産車全般、あまりに非力であったため型落ちの占領軍払下げシボレーを使ったほどである。

なお、現在、警視庁の所轄署パトカー乗務員が身に付ける記章は、このシボレーパトカーを模したものである。


現在でも、パトロールのほか『警ら』は頻繁に使われており、所轄署地域課に配備されるパトカーの正式名称は『警ら用無線自動車(無線警ら車)』であるし、交番に配備されるミニパトカーも『小型警ら車』である。

何となれば、都道府県単位でパトカーを用いてパトロールする部隊も自動車警ら隊と呼ばれている。


所轄署の警ら課において、実際に派出所(当時)や駐在所に勤務する警察官は外勤警察官と呼ばれていた。警ら課内での内勤に対し、外に出て勤務することから外勤と呼ばれていたわけである。このため、署によっては警ら課ではなく、外勤課と称するところもあった。


平成5年1993年)、それまでの警ら部は地域部、警ら課や外勤課は地域課と呼称されるようになった。


地域警察の再編

平成の世に入り多発する犯罪や、相次ぐ警察不祥事を受け、警察活動に対する一般市民の方々からの視線は厳しいものとなった。

(参考:『平成16年警察白書。特集:地域社会との連帯』)


クローズアップされたのは交番に関する問題である。

地域部への改称理由として探りやすいのは、上記の統計であろう。

改称から10年後になる、平成16年の警察庁による統計であるが、近所の交番の存在に対する認知度はおよそ85%と比較的高い一方で、対照的に交番の勤務員の"顔や名前を知らない"と答えた方もほぼ同じ数値(83%前後)となっている。


交番の勤務員(交番員)の対応に対する満足度も『どちらともいえない』が57.3%と大半を占めるなど、その認知度に課題があることが窺える。


『地域の安全に対しては、警察のみならず地域と連携して活動すべき』と答えた方も多く、警察と地域社会とがより密接に連携することの重要性が改めて感じられる。


警察においても地域社会との連携を重視し、遡ること10年前、それまでの警ら部から、現在の地域部へと名称を変更したのは先述の通り。外勤警察官でなく地域警察官と呼称を変更した。


地域警察再編の実例

実態としての課題は山積みであり、警察庁をはじめとする各警察本部では地域警察の再編に腐心している。


空き交番の対策としては、従来より交番相談員の配置が行なわれていた。警察官の増員は各自治体の条例や法令に基づくため簡単にできないことから、交番相談員として定年退職後の警察官を交番に配置することで、地理指導(道案内)や立番にあたることを目的とする。だが、その実態を知る方は少なく『私服を着た不審者が交番にいる』と誤解されることや、『刑事が勤務している』と敬遠されることもあった。

このため、一部警察本部では、警察官の活動服にも似た制服を支給するなど、遠目にも警察職員と認知されやすいようにする対策がとられた。


自動車警ら隊の発隊も進められている(例:大分県警察のツイート)。埼玉県警が先例となり、効果的があったため、あちこちの警察本部でも進められている一例を紹介する。

事案の多い所轄も少ない所轄も、同じような平均的に配置するなど、パトカーの配置に偏りがみられることがある。このため、所轄署に配置する台数は減少させ、警察本部直轄の自動車警ら隊配置とすることで、複数の所轄署範囲で活動し、機動的な運用を行なう方策が挙げられる。

近年の例として大分県警においては、所轄署地域課・自動車警ら係が対応していたが令和2年2020年)、生活安全部地域課に自動車警ら隊を50人規模で発足。所轄署地域課・自動車警ら係とともに機動力を生かした活動を行なっている。



また、交番の統廃合・再配置も行なわれている。一例として、勤務員も少なく小規模な交番複数箇所を統合し中規模交番に再編。こうすることで『空き交番』とはなり得なくなる。空いた箇所に関しては、パトカーでの重点警らに切り替えたり、『地域安全センター』を設置したりとの対策を行なう。



近年では、先のアンケート結果にもみられるような『顔の見えるおまわりさん』が重視され、駐在所の再配置なども行なわれている。

高層マンション街の一角に位置する警視庁月島警察署・リバーシティ駐在所や、警察官夫婦が勤務する夫婦駐在所も実例のひとつといえよう。

世界遺産白川郷の安全を担う岐阜県警高山警察署鳩ヶ谷警察官駐在所では、二世帯の警察官が勤務するなど、駐在所の形態は様々である。



交番においては手話のできる手話警察官を配置した手話交番を設置する本部もある。手話警察官は、制服(活動服)の襟部分に手腕バッジ(円形。黄色を基調)を着用し、手話警察官が勤務している際には、垂れ幕を出すなどの対応を行なっている。

ちなみに警察官を表す手話は、右手の親指と人差し指で丸を作り、おでこの部分にかざすものである。手話警察官は、全国手話検定2級(およびそれと同等)以上の取得が求められる。


編成

警視庁においては、地域部長を筆頭に参事官以下、2つの課、1つの附置機関、6個の執行隊が編成されている。

部長は、有資格者(キャリア)ではなく、警視庁採用の叩き上げ(ノンキャリア)警視長が務めるのが慣例となっている。これは、地域警察の運営において、長い警察活動における経験が重要視されるためである。

  • 地域総務課
  • 交番・駐在所の設置や、駐在所勤務員の家族に対する家族協力謝金、公衆接遇費支払いなど、地域警察全般の運営を担当する。課長は警視正である。
    • 遊撃特別警ら隊
    • 地域総務課の執行隊。都内全域をパトカーで警らし、不審車両や不審人物に対し、職務質問などを行なう。下記する自動車警ら隊内で、実績を上げた隊員が配置されることが多い。

  • 地域指導課
  • 地域警察官に対する、警察活動全般の指導や、泥酔者の保護などを取り扱う。かつては、都内4ヶ所に設置された泥酔者保護所"トラ箱"も管轄であった。
    • 職務質問指導班
    • 地域指導課直轄のパトカー部隊。赤い腕章が目印。コールサインは『地域指導』
    • 地域総務課長は、基本的に警視正が務めるが、時折、課長を置かず、代わりに参事官が課長を兼任(事務取扱という)することもある。この場合、人事において"地域総務課長事務取扱"と発令される。
    • 階級毎の警察官の定員は、都条例によって定められており、改変する際には、都議会の承認が必要となる。このため、人員が不足した場合、参事官が事務を取り扱う形をとる。


通信指令本部(附置機関)

  • 指令計画課:通信指令本部における庶務、統計を担当。
  • 第一指令課:通信指令センターの運用を担当。
  • 第二指令課:同上。
  • 第三指令課:同上。

通信指令本部は、都内に2箇所設置されている。

  1. 本部指令センター:千代田区霞が関の警視庁本部庁舎内。第1〜第7および第10方面本部担当。
  2. 多摩指令センター:立川市の警視庁多摩総合庁舎内。第8・第9方面本部担当。

都区部および、島しょ部からの110番通報を本部指令センターが受理し、三多摩地域からの110番通報を多摩指令センターが受理する形をとっている。(東京消防庁でも同様)


無線指令に関しては、都内を10個に分けた方面本部毎の方面系(基幹系)でパトカーや各所轄署、地域警察官の携帯する受令器に送信する形をとっている。



執行隊

執行隊とは、部直轄で運用される部隊の総称である。いづれも、地域総務課・機動警ら係の隷下である。

  • 自動車警ら隊
  • 無線警ら車(パトカー)での警らを担当する。所轄警察署毎ではなく、方面単位で活動し、広域的・機動的な運用を目的とする。いづれも隊長は警視。遊撃特別警ら隊同様、左襟につける記章が目印である。
    • 第一自動車警ら隊
    • 第二自動車警ら隊
    • 第八方面自動車警ら隊
    • 第九方面自動車警ら隊

  • 鉄道警察隊
  • 鉄道用地内での警察活動を担当する。隊長は警視。昭和の終わり頃より、副隊長は女性の警視が務めることが慣例となっている。目印として腕章や、左襟の旭日章型記章が目印だ。ちなみに、十津川警部はここの所属ではない。

その他の執行隊には以下がある。

  • 水上警察隊
  • 警視庁以外の一部警察本部においては、地域部・生活安全部隷下の執行隊として編成されている例がある。(千葉県警滋賀県警など)
  • 警視庁や大阪府警福岡県警などでは、本部直轄の執行隊ではなく、所轄署単位で編成されている。
    • 警視庁では、第一方面本部の警察署である東京湾岸警察署水上安全課が設置され、水上での警察活動を行なっている。その名の通り、東京港やお台場、中央防波堤など、臨海部を管轄するため、水上警察部隊である警備艇を運用している。
    • かつては、東京水上警察署として運用されていたが、平成19年2007年)に、東京湾岸警察署として組織改変がなされた。現在、フラッグシップである『ふじ』以下『あおみ』など、大小様々な船舶が運用されている。


【かつて設置されていた執行隊】

  • 警視庁航空隊
  • 昭和34年1959年)、当時の警備部(地域部の前身、警ら部が発足していなかったため)に発隊。
  • 警察用航空機(ヘリコプター)を用い、空から警察活動を行なう。被疑車両追跡や、山岳救助、災害発生時の救難活動、特殊部隊SATの輸送などを担任する。近年では、地域警察としての活動より、警備警察面での活動が重視されるようになったため、令和2年に地域部より警備部へと移管された。
    • かつては、ヘリコプターのほか、飛行船『はるかぜ』も保有していた。現在では大型ヘリ『おおぞら』級、中型ヘリ『おおとり』級、小型ヘリ『はやぶさ』級あわせ、合計14機の陣容である。

参考文献

『目黒警察署物語』(文春文庫)著佐々淳行

『平成16年警察白書』(警察庁・国家公安委員会)


関連イラスト

【迷子とお巡りさん】Happy birthday!両さん新刊サンプル。


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