概要
ユネスコが世界遺産条約に基づいてリストに登載する「人類が共有すべき顕著な普遍的価値」をもつ不動産を指す。世界遺産条約は1972年にユネスコ総会で採択、日本は1992年に批准した。
建築物や遺跡等の文化遺産、地形や生物相、景観等の自然遺産、両者の要素を持つ複合遺産に大別される。
存続が危ぶまれる遺産は「危機遺産」リストに登録される。存続のための改善要請が全く満たされないような状況となると、登録が取り消される場合がある。
なお、俗に「世界記憶遺産」と呼ばれるユネスコ記憶遺産(Memory of the World)は、ユネスコが主催する事業の一つではあるが世界遺産とは別物。
世界遺産の登録要件
世界遺産に登録されるには10項目の要件のうち何れか一つを満たす必要がある(うち6つが文化、4つが自然遺産の要件で、両方の要件を1つずつ以上満たすと複合遺産になる)。
このうち文化遺産の登録項目「6」は単独で用いるのを出来る限り控えるべきとされており、この項目6のみで登録される遺産は人類が犯した悲惨な出来事を伝えるいわゆる「負の世界遺産」の場合が多い(原爆ドームなど)が、6の項目単独で登録されていながら「負の世界遺産」とはみなされないものもある(アメリカ合衆国の独立記念館など)
10項目全てを満たす遺産は未だ存在しない。最多は中国の泰山や、オーストラリアのタスマニア島などで、7項目を満たす。日本では「紀伊山地の霊場と参詣道」などが4項目で最多となる。
なお、日本には複合遺産が存在しないが、そもそも跨いで登録項目を満たすというやり方で登録を目指したことが一度も無い(原因として文化遺産は内閣官房と文化庁、自然遺産は環境省と林野庁と管轄が縦割りで分かれてしまっていることが考えられる)。富士山は、項目7の登録基準を満たせば自然遺産の要件も1つ満たし、日本初の複合遺産になることも可能であったが、「文化遺産登録を優先する」という理由で見送っている。
主な世界遺産
日本国内
名称 | 地域 | 種類 | 登録年 |
---|---|---|---|
法隆寺地域の仏教建造物 | 奈良県 | 文化 | 1993年 |
姫路城 | 兵庫県 | 文化 | 同上 |
屋久島 | 鹿児島県 | 自然 | 同上 |
白神山地 | 青森県、秋田県 | 自然 | 同上 |
古都京都の文化財 | 京都府、滋賀県 | 文化 | 1994年 |
白川郷・五箇山の合掌造り集落 | 岐阜県、富山県 | 文化 | 1995年 |
原爆ドーム | 広島県 | 文化(負の遺産) | 1996年 |
厳島神社 | 同上 | 文化 | 同上 |
古都奈良の文化財 | 奈良県 | 文化 | 1998年 |
日光の社寺 | 栃木県 | 文化 | 1999年 |
琉球王国のグスク及び関連遺産群 | 沖縄県 | 文化 | 2000年 |
紀伊山地の霊場と参詣道 | 和歌山県、奈良県、三重県…吉野・大峯、熊野、高野山とその参詣道 | 文化 | 2004年 |
知床 | 北海道 | 自然 | 2005年 |
石見銀山遺跡とその文化的景観 | 島根県 | 文化 | 2007年 |
平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群 | 岩手県 | 文化 | 2011年 |
小笠原諸島 | 東京都 | 自然 | 同上 |
富士山・三保の松原 | 静岡県、山梨県 | 文化 | 2013年 |
富岡製糸場 | 群馬県 | 文化 | 2014年 |
明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域 | 山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、岩手県、静岡県 | 文化 | 2015年 |
ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献- ※ | 東京都 | 文化 | 2016年 |
『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群 | 福岡県 | 文化 | 2017年 |
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産 | 長崎県、熊本県 | 文化 | 2018年 |
百舌鳥・古市古墳群 | 大阪府 | 文化 | 2019年 |
奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島 | 鹿児島県、沖縄県 | 自然 | 2021年 |
北海道・北東北の縄文遺跡群 | 北海道、岩手県、青森県、秋田県 | 文化 | 同上 |
佐渡金山 | 新潟県 | 文化 | 2024年 |
※国立西洋美術館が対象。初の外国との跨がり登録。
海外
Pixivにイラストがあるものから挙げる。地域別・順不同。負の遺産には(負)と表記。
アジア
万里の長城(中華人民共和国)
九寨溝(中華人民共和国)
シルクロード:長安-天山回廊の交易路網(中華人民共和国・カザフスタン・キルギス)
インドの山岳鉄道:ダージリン・ヒマラヤ鉄道他(インド)
ヨーロッパ
パリのセーヌ河岸:エッフェル塔・ルーヴル美術館他(フランス)
ストラスブールのグラン・ディル(旧市街)(フランス)
アントニ・ガウディの作品群:サグラダ・ファミリア他(スペイン)
リヴァプール海商都市(イギリス)→都市開発により2021年に世界遺産から登録抹消
ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂:コロッセオ・カラカラ浴場他(イタリア)
アフリカ
メンフィスとその墓地遺跡-ギーザからダハシュールまでのピラミッド地帯(エジプト)
北アメリカ
自由の女神像(アメリカ合衆国)
イエローストーン国立公園(アメリカ合衆国)
南アメリカ
ギアナ高地のカナイマ国立公園
オセアニア
複数の国に跨るもの
ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-
テレビ番組としての世界遺産
その名の通り世界遺産を紹介する、放送時間30分のミニドキュメンタリー番組。1996年4月からTBS系列局にて放送されている。
元々は日曜の深夜番組だったが、2008年4月以降は同じ日曜でも夕方6時-6時30分に放送されている。ちなみに放送時間が移動した際に「THE世界遺産」というタイトルに変更されたが、2015年4月からは、さらに「世界遺産 THE WORLD HERITAGE」と言うタイトルとなり、現在に至る。
なお、かつては秋田放送(日本テレビ系列局)やBS-TBSでも放送されていたことがある。
世界遺産検定
世界遺産についての知識を問う検定試験。世界遺産アカデミーが主催する。4・3・2・準1・1級に加え、1級よりさらに上に「マイスター」という称号を得られる試験がある。2級までの合格は容易だが、1級で難易度が急上昇し、マイスターに至っては相当難関であるため、取得者はほとんどいない。2級と1級の難易度に極端な隔たりがあったため、2024年より準1級が創設された。
各級の試験範囲は(日本の遺産全てが対象になるのは全級共通であり加えて)世界の遺産が、
4級:50件
3級:100件
2級:300件
準1級:700件
1級:全部(2000件以上)
マイスター:全部でありかつ全て記述式
よくある趣味検定のようであるが、内容は歴史・地理・英語等にも跨り、幾つかの大学では合格級によって加点対象となっていたり、科目免除が受けられる場合があるため、比較的公益性の高い民間検定試験であると言える。
- 旅行会社によっては取得が推奨されている。
- 合格すると送られてくる認定カードを国内の世界遺産関連施設で提示すると入場料が割り引かれたり、記念品の贈呈を受けられることがある。
- 第50回検定では特別会場が設けられ、鹿児島県の名勝仙巌園にて3級・4級の試験及び世界遺産アカデミーの宮澤光主任研究員による講話が行われた。以降も富士山世界遺産センターや、法隆寺のある斑鳩町などで特別会場が設けられている。
- 社会科の教員免許を持っていることで有名なあばれる君は1級に合格している。