概要
その名の通り、警察のなかでも、鉄道における犯罪抑止などの公安維持や、事故防止などの安全確保にあたる部隊のこと。
沖縄および皇宮警察を除いた、全国46警察本部の地域部(小規模警察本部など、地域部の設置されていない本部では生活安全部)隷下の執行隊である。
なお、沖縄県警に鉄道警察隊が設置されていないのは、管内を運行する鉄道路線が沖縄都市モノレール(ゆいレール)のみであり、独自に部隊を発隊させるより、所轄警察署で対応する方が効率的なためである。
活動
もっぱら、鉄道用地内での犯罪抑止や検挙、事故防止など乗客の身体・生命・財産の保護にあたる。
鉄道用地内での犯罪として、スリ(列車専門のスリハコ師など)や置き引きなどの窃盗犯、盗撮や性犯罪、付き纏いなどの迷惑行為。
酔っ払い同士での喧嘩や、乗客トラブルなどが挙げられる。
私服捜査員で構成される特務係の活動はテレビ番組の警察24時などでもお馴染みであろう。
制服での警ら(パトロール)活動や、列車に乗車しての警戒警乗"けいじょう"も行なわれる。制服の場合、上衣の左襟に記章を着けていることや、腕章などが目印となる。
記章は、全国統一として、警察章である旭日章の中心に、工部省の工マークにも似たレールの断面、鉄道警察の英語"Railway Poice"の略称であるRPをあしらった意匠である。
腕章は各警察本部毎に独自の意匠となっている。
各都道府県の中心駅に本隊が置かれ、主要駅やターミナル駅に分駐所や分遣所、連絡所、派遣所などが置かれることが多い。
(本部によって名称は異なる)
例えば、警視庁では、東京駅構内に鉄道警察隊本隊および東京分駐所が置かれ、東京駅構内の複数箇所に連絡所を設けている。
このほか、新宿駅に新宿分駐所、上野駅に上野分駐所、立川駅に立川分駐所が設けられている。
変遷
かつて、1987年4月に国鉄が分割民営化されるより前は、鉄道警察隊は存在しなかった。
国鉄の用地内は、国鉄独自の警察組織ともいえる鉄道公安職員が管轄し、私鉄・民鉄線内では各警察本部が管轄するという線引きがなされていた。
しかし、1978年5月、成田空港開港に反対する過激派が起こした京成スカイライナー放火事件をきっかけとして、鉄道用地内での警察活動について議論がなされることとなった。
前述したように、当時の鉄道公安職員は、私鉄である京成線内は管轄外。また、千葉県警察でも、鉄道警察活動に関するノウハウが不足していた。
京成線や千葉県警に限らず、全国の私鉄・民鉄および警察本部でも同様のことであったのは、言うまでもない。
実情として、事件を覚知したのち、警察が初動するという形であったため、防犯上、非常に問題があるとの指摘がなされた。
また、折しも、国鉄から、現在のJRグループへの分割民営化が進む時代。株式会社に勤める、いわば一般人が、警察活動を行なうのみならず、けん銃を携行するのは如何なものかとの声も上がった。
これを受け、現在の鉄道警察隊が発隊することとなった。
全国の警察本部を行政面から調整・指揮・監督を担当する警察庁では、分割民営化に際し、警察職員の定員を増やすことを決定。
国鉄の鉄道公安職員から、改めて発隊した、各警察本部の鉄道警察隊員(警察官)へと転属する職員も多かった。
(国鉄マンでありたい、鉄道職員でありたい、との理由から、警察官採用試験を受けなかった職員もいたそうだ。)
なお、その後はパトカー乗務や所轄署勤務、刑事として被疑者を追いかけたり、警務部門で会計や事務作業に当たったり───など、異動により鉄道警察隊を離れることがほとんどだそう。
(原則として、異動は数年単位のためでなされるため。)
従来の鉄道公安職員(国鉄職員)の職務を継承することから、両者間では人員上での繋がりも深い。
また、分割民営化以前から、鉄道公安室と各警察本部との間では人事交流などが積極的になされていた。
このため、被疑者が鉄道用地の外に逃亡した場合、また逆に、被疑者が鉄道で逃走する場合などの連絡体制は、綿密に築き上げられていたとされる。
現在、沖縄県を除く46都道府県の警察本部に置かれ、鉄道施設(駅、車内等)での安全と秩序の維持にあたっている。
関連タグ
門田さくら(「鉄道むすめ」):警視庁鉄道警察隊所属の巡査。2012年6月現在、Pixivタグとしての鉄道警察隊は彼女の専用タグ状態である。