平成時代の大量に行われた市町村合併。一般的には合併特例法の適用期間に行われたものを指す。
1999年の篠山市(現在の市名は丹波篠山市)から始まり、2010年3月の合併特例法期限までに行われた市町村合併が該当する。
合併のきっかけは財政難や人口減少など。そのため人口の多い地域では合併があまり進まなかった。合併協議がこじれて歪な形になったり巨大な飛び地が生まれたりしたところもあった。合併後の市町村名で合併が合併協議がこじれることも多かった(後述)。
平成の大合併前はだいたいJRの駅間で一駅違うと別の市町村なことが多く、1999年に3232(特別区を除く)あった市町村は1727までに減った。現在はさらに合併が進み1718まで減少している。すべての都道府県で1件以上の市町村合併があった。
市町村合併すれば合併特例債を発行できる、人口3万人以上で市になれる(通常は人口5万人以上で人口以外の要件も必要)などの特例が設けられた。人口70万人以上で政令指定都市になれるという特例もあったが、これは法律には記載されていない。そもそも政令指定都市の要件は法的には人口50万人だが、実際にははっきりした規定がなく80万人以上でないと指定されないと言われている。
都道府県ごとのデータ
都道府県 | 合併件数 | 市町村数(前) | 市町村数(後) | 減少率 |
---|---|---|---|---|
北海道 | 22 | 212 | 179 | 16% |
青森県 | 17 | 67 | 40 | 40% |
岩手県 | 13 | 59 | 34 | 42% |
宮城県 | 10 | 71 | 35 | 51% |
秋田県 | 15 | 69 | 25 | 64% |
山形県 | 3 | 44 | 35 | 20% |
福島県 | 13 | 90 | 59 | 34% |
茨城県 | 25 | 85 | 44 | 48% |
栃木県 | 12 | 49 | 27 | 45% |
群馬県 | 18 | 70 | 35 | 50% |
埼玉県 | 17 | 92 | 64 | 30% |
千葉県 | 12 | 80 | 54 | 33% |
東京都 | 1 | 40 | 39 | 3% |
神奈川県 | 2 | 37 | 33 | 11% |
新潟県 | 24 | 112 | 30 | 73% |
富山県 | 6 | 35 | 15 | 57% |
石川県 | 10 | 41 | 19 | 54% |
福井県 | 10 | 35 | 17 | 51% |
山梨県 | 17 | 64 | 27 | 58% |
長野県 | 21 | 120 | 77 | 36% |
岐阜県 | 17 | 99 | 42 | 58% |
静岡県 | 22 | 74 | 35 | 53% |
愛知県 | 18 | 88 | 57 | 35% |
三重県 | 16 | 69 | 29 | 58% |
滋賀県 | 13 | 50 | 19 | 62% |
京都府 | 7 | 44 | 26 | 41% |
大阪府 | 1 | 44 | 43 | 2% |
兵庫県 | 19 | 91 | 41 | 55% |
奈良県 | 4 | 47 | 39 | 17% |
和歌山県 | 12 | 50 | 30 | 40% |
鳥取県 | 10 | 39 | 19 | 51% |
島根県 | 15 | 59 | 21 | 64% |
岡山県 | 18 | 78 | 27 | 65% |
広島県 | 23 | 86 | 23 | 73% |
山口県 | 13 | 56 | 19 | 66% |
徳島県 | 10 | 50 | 24 | 52% |
香川県 | 10 | 43 | 17 | 60% |
愛媛県 | 18 | 70 | 20 | 71% |
高知県 | 11 | 53 | 34 | 36% |
福岡県 | 20 | 97 | 60 | 38% |
佐賀県 | 12 | 49 | 20 | 59% |
長崎県 | 16 | 79 | 21 | 73% |
熊本県 | 18 | 94 | 45 | 52% |
大分県 | 12 | 58 | 18 | 69% |
宮崎県 | 10 | 44 | 26 | 41% |
鹿児島県 | 22 | 96 | 43 | 55% |
沖縄県 | 5 | 53 | 41 | 23% |
合計 | 640 | 3232 | 1727 | 47% |
特筆のある事例
唯一の事例
山口村
長野県の村であったが、長野側への交通手段が乏しく、岐阜県側にある中津川市の文化圏であった。平成の大合併で中津川市と合併協議を行なったが、当時の長野県知事はこの合併を議会に提案しなかった(当時の県議会では知事のみが議案を提案するのが慣例になっていたが、当時の知事はそういった慣例を嫌ったためしなかったとされる)。このままだと合併そのものが成立しないため、慣例を破って議員が提案したことにより可決され、ようやく唯一の越県合併が成立した。また、この合併により昭和中期に北関東で小規模な変更があって以来、久々に県境が変更されている。
上九一色村
山梨県にあった村で、元々北部と南部の文化圏が異なっていたうえ、この宗教絡みで名前を消したいとの思惑から北部は甲府市へ、南部は富士河口湖町へそれぞれ編入された。平成の大合併で唯一の分割合併となった。
埼玉県の浦和市、大宮市、与野市の3市によって2001年に誕生。当初は「埼玉市」が最有力であったが、これに埼玉発祥の地である行田市が反発。揉めることで合併そのものが頓挫することを避けたい3市は行田市の主張を受け入れ、埼玉市に次いで候補に挙がっていたさいたま市とした。これにより政令指定都市唯一のひらがな市名が誕生した。2005年に岩槻市を編入している。
峡西6町村によって合併協議を行なわれたが、市名を決める際「峡西市」や「巨摩野市」という候補に加えて地域内に南アルプスがあるからという理由で南アルプス市が追加され、住民投票により南アルプス市となり、唯一のカタカナ市名が誕生した。
合併頓挫例
市名が原因
合併後の新名称で揉めて破談になった例はこれ以外にも大量にある。
中央アルプス市
長野県駒ヶ根市を中心とした合併協議で「駒ケ根市だと吸収合併の意味合いが強い」という理由から挙がった市名であるが、由緒ある駒ケ根の名前がなくなることや、上述の南アルプス市の二番煎じであるとの理由から合併そのものに反対する住民が続出し、結局合併そのものがなくなった。
南セントレア市
愛知県の知多半島南端2町によって合併協議が行われた際、「中部国際空港(愛称・セントレア)の南にあるから」という理由で公募で1位だった南知多市を覆して採用した。この公募無視の決定に住民が反発し「合併しないほうがいい」という投書が中日新聞に掲載され、結果合併協議は解散された。
白神市
秋田県の能代市と他6町村によって元の名前を使用しない前提で協議が行われ、世界遺産にもなっている白神の名を冠した市名が最有力であった。しかし白神はもともと青森県の地名であるため青森側が反発、これを受けて能代市が住民アンケートの結果も踏まえてやっぱり能代市にしようとしたところ他の町村からおめーの席ねぇから!という扱いを受け能代市が離脱。そのまま協議会は解散した。その後個別に協議会を結成し、それぞれ合併している。
不一致が原因
湘南市
神奈川県の藤沢市や茅ヶ崎市、平塚市など湘南6市町によって協議が行われ、成立すれば神奈川県に4の政令指定都市をようすることになっていた。しかし藤沢、茅ヶ崎、平塚の3市は元々仲が悪く、政令指定都市化以外のメリットが見いだせないまま各自治体で合併反対派が躍進し、合併協議会は解散した。
燕三条市(仮称)
新潟県の三条市と燕市によって行われた協議。元々上越新幹線燕三条駅を中心とした一体感が強く、実現すれば両市がそれぞれ合併した町村域も全て含めて上越市に匹敵する市が誕生するという構想であった。但し三条市と燕市は元々仲が悪く(前述の駅名や高速道のIC名についても帰属を含め非常に拗れたほど)、燕市で行われた住民投票の結果反対派が多数を占めたため、正式に御破算となった。