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概要編集

 保安官はアメリカにおける法執行官(日本で言えば警察)の役職であるシェリフ(sheriff)やマーシャル(marshal)の訳語である。


シェリフ編集

 「保安官」という言葉はほとんどの場合アメリカシェリフを指す。sheriffという語はイギリスでは州知事、郡代、代官といった地方行政のトップを指す語であり、アメリカでは大まかには郡(カウンティ)の警察長官や警察署長のことを指す。建国前の十三植民地あるいは建国後の州は複数の郡に分割して統治され、それぞれの治安責任者としてシェリフが置かれた。

また、シェリフが管轄する警察人員がシェリフ補佐(deputy sheriff)という肩書になっている場合もあり、末端の警察人員も略してシェリフやデピュティと呼ぶことがある。郡の中には人口増加に伴ってさらに細かい自治体が整備されていったが、特に人口が多くなった市には独自の警察組織がつくられた。これがポリス(police)であり、通常警察官と和訳される。

 なお、上記の語源からも判るように、現代アメリカにおいてシェリフという役職が残っている場合は、シェリフ補佐ではなく単なるシェリフと呼ばれる警察官(法執行機関職員)は地方警察の警察署長クラス、最低でも管理職の場合がほとんどである。


 ただしアメリカは州の独立性が高く、上記の一般論とは別に様々な各州の歴史的経緯から保安官の法的地位は州ごとに異なる。アメリカの伝統ではシェリフは有資格者の中から選挙で選ぶ仕組みとしている自治体が多いが、知事市長による任命制となっているところもある。警察全体が「シェリフ事務所」と呼ばれている自治体もあれば、選挙で選ばれた警察署長をはじめとする背広組がシェリフで現場の制服組の警察官がポリス(police)といった役割分担となっている自治体、あるいはシェリフが廃止されポリスだけとなっている自治体など、様々なケースがある。


 西部劇の時代には、フロンティアの地域では人口が少なく警察署というほどの規模が組めない自治体も多く、法執行官が選挙で選ばれたシェリフとその数名の補佐で構成されているといったケースも少ないものではなく、この時代の保安官はパトロールや逮捕劇まで自らこなすことも珍しくなかった。特に治安の悪い地域では強盗団やガンマンに対抗するために、同じような命知らずのゴロツキ、ガンマンが選挙で選ばれることもあった。ワイアット・アープやパット・ギャレットがその例である。このような西部劇のシェリフ像は一つの典型的イメージになっており、現代の保安官もパレード等では西部劇風のガンマンスタイルで姿を見せることがある(普段は警察官と変わらない制服姿である)。

 なお、西部劇ものの映画・ドラマの日本語字幕・吹き替えでは上記のシェリフ補佐(保安官補)も「保安官」と訳される場合が有る。例としては1969年製作の西部劇映画「勇気ある追跡」やそのリメイク版である「トゥルー・グリット」(2010年製作,ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン監督)の登場人物であるルースター・コグバーンは英語のセリフではdeputy sheriffだが、吹き替えや字幕では「保安官」となっている。


マーシャル編集

 アメリカの司法省に所属する(州から独立した)連邦法執行官職の一つに連邦保安官局に属する連邦保安官(マーシャル、United States Marshal)がある。州から独立した法執行官としてはFBIが有名だが、FBIが逮捕するまでが仕事であるのに対して、連邦保安官は逮捕された被告人を扱う役割となっており、裁判中の監視、裁判所の警備などを行っている。また、証人保護プログラム、連邦令状の執行、連邦受刑者の移送、脱走犯の再逮捕なども行っている。映画「逃亡者(The Fugitive)」「追跡者(U.S. Marshals)」などに登場している。また、州ごとの経緯により、他州でいうシェリフがマーシャルと呼ばれているなどの例外も多い。


その他編集

 これらとは別に、かつて日本に存在した「保安隊」の隊員を指す事もある。現在の陸上自衛隊所属の自衛官に相当する。


関連タグ編集

警備員 シェリフ カウボーイ ガンマン  ピストル

ワイアット・アープ パット・ギャレット

ドラ・ザ・キッド 保蛮官チラカシズキー

スティーブン・セガール:テキサス州西部ハズペス郡の保安官代理

保安官エヴァンスの嘘:架空の西部劇世界で活躍する保安官を主人公とする漫画

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