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機動警察パトレイバー

きどうけいさつぱとれいばー

『機動警察パトレイバー』とは、企画集団『ヘッドギア』のメンバーによる、1980年代における近未来(1998年ごろを起点とした数年間)の東京を舞台にしたロボットアニメ・小説等のマルチメディアプロジェクト。漫画版の担当はゆうきまさみ。
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「レイバー」、それは、産業用に開発されたロボットの総称である。建設・土木の分野に広く普及したが、レイバーによる犯罪も急増。警視庁は特形車両二課、パトロールレイバー中隊を新設してこれに対抗した。通称「パトレイバー」の誕生である。

――初期OVA版オープニングより


注意!編集

「機動警察パトレイバー」は作中での描写、設定資料全集、ムック、雑誌によって設定の相違点が非常に多い事にご注意下さい。


概要(公式HPより)編集

大元はゆうきまさみの友人達(出渕裕高田明美伊藤和典)による「企画ごっこ」から始まった企画集団『ヘッドギア』によるメディアミックスプロジェクト。最後に伊藤が勧誘して押井守が合流し、低迷していた自身の「起死回生」のきっかけとなった。


分類としてはリアルロボット作品であるが、従来のリアルロボット作品とは一線を画した設定が多い。これは初期OVAのスポンサーが富士フイルムだったので玩具化を考えなくてよく、デザインやストーリーにかかる制約から外れる事ができたため。近未来の地球や現代とは別世界の世界観で語られることの多かったロボットアニメにおいて、現代日本に巨大ロボットが闊歩している世界を描き出したエポックメイキングな作品である。


メディアミックスを大々的に展開した先駆的作品であり、先述の通り複数のメンバーが各々独自に設定している部分が存在するため各作品での世界観のブレが大きい。主役の特車二課のメンバーも一部異なったりしている。


作品世界について編集

舞台は、1995年関東地方を襲った巨大地震の影響が残る1998年を起点とする数年間の東京に設定されている(派生作品ではその限りではない)。コメディ的な展開(劇場版等を除く)ながらも、


  • (時にはレイバーそっちのけで進む)人間ドラマに重点を置いたストーリー
  • モノトーンなカラーリングや建設機械的なデザインのレイバーが、現実の東京に近い街並みの中に登場する
  • ソフトとハードの面から見たロボット、現場やメーカー同士の軋轢、整備班の存在等、レイバーの産業機械としての設定

などがリアリティを持って受け止められた。


作品世界におけるインターネットコンピューターの進化は現実における2000年前後とほぼ同様であるが、ロボットの進化と普及は現実世界よりも著しい。また、携帯電話の浸透が遅れているという設定があり、作品世界では2002年頃になってからようやく普及しはじめている。


社会的には日本はバブル期の延長線上にあるという設定なので非常に好況感があり、西ドイツソ連が存続し、冷戦が継続しているという設定になっている。また、現実では1990年代に多くが崩壊したコングロマリット(複合企業)が盛行している、現実では普及しなかったクリスマス休暇を実施する企業が多いなどの違いがある。


初期OVAや劇場版等を手掛けた押井守は、当初「ヒーローとして活躍するロボットやパイロット」では無くその裏方で四苦八苦する整備員を主役とした作品を作ろうとしていたらしい。流石に周囲に反対されて断念したそうだが、本作に登場する非常に個性的な整備員キャラにその名残が受け継がれている。


シリーズ編集

公式HPによると、大きく分けて4つの流れがある。



  • 小説版:初期OVA~劇場版2作の間に発表された作品群。前述の作品をベースにしつつ、TVアニメシリーズの設定も混在している。

  • TVアニメシリーズ『機動警察パトレイバーONTELEVISION』-後期OVA:TVアニメと、その続編OVA。
  • 機動警察パトレイバーEZY:TVアニメや後期OVAと同じ世界線の新シリーズ。

  • その他(上記4つと重ならない)
  • 劇場版第3作『WXIII 機動警察パトレイバー』:昭和75年という架空の時代設定の、漫画版の一エピソードである『廃棄物13号』を主題とした内容。特車二課の皆は脇役。
  • ミニパト:劇場版3と同時公開の短編アニメーション。手間のかかった人形劇。全3編で構成され、それぞれ後藤隊長、シバシゲオ、南雲隊長がナレーションを務める。内容はひたすらにマニアック。
  • 機動警察パトレイバーREBOOT:2016年10月15日から1週間限定で新宿バルト9にて上映。また、BDDVDが同年10月26日に発売。

ロボットに乗るお巡りさん達が繰り広げるバラエティ豊かなエピソードが揃う一方、劇場版はいずれも他作品かと見紛うほどのシリアス路線。警察機構によるロボットの運用に際して起こり得る様々な事柄を題材としており、リアルロボットものとして必ずその名が挙がる作品。

初心者には、主人公が特車二課にやってくるところから始まる初期OVA・漫画・TVアニメシリーズがオススメである。


踊る大捜査線』に強く影響を与えており、同作の監督である本広克行は「パトレイバーは『踊る』の教科書です!」と語っている。

実際に類似点が随所に見られ、特にお台場閉鎖と橋の封鎖が重要な要素となった『THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』は、劇場版第2作の影響が強い。さらに『交渉人 真下正義』に至っては、犯人像が劇場版第1作のコピー&ペーストと言ってよく、システムハッキングにより東京全域を混乱させたばかりか、既に死人である上にシンボルがカラスと、何から何まで帆場英一とそっくりである。


原作について編集

本作はテレビ版を中心に多くの作品で原作:創作集団『ヘッドギアとクレジットされている。


旧OVA版ではゆうきまさみのみクレジットされている。これは、当時まだモノになるかもわからないローコスト・ハーフクールOVAという試みで、しかも次点の企画だった。このことから、企画を通すために“週刊少年サンデー”の人気作品の漫画家が原作であるという建前が必要であったためと思われる。

本企画はOVAでありながらスポンサーをつけて制作費の負担軽減を行う事になっており、そのためこのような建前が必要になったものと思われる。


この為、原作はコミック版だが、実質的にアニメ製作はこの段階でスタートしていた。この影響がモロに出ているのが主役機98式AVのデザインである。アニメ作品では旧OVA版が明らかに異質であるが、これが出渕が本来デザインしたもの。それに対し、コミック版はゆうきが手直ししたものになった。劇場版第1作及びテレビ版では、ゆうきの“原作”ありきの企画になったため、ゆうきデザインがほぼ取り入れられている。ちなみに、「イングラム」の命名もゆうきであり、旧OVA版にはこの呼称は使用されていない。


このような紆余曲折を経ているため、2000年代に入ってからは版権の相関関係が複雑になり、作品展開に少なからぬ混乱と停滞が生じた。


ちなみに編集

当時アニメはまだシネフィルム撮影の時代だったが、旧OVA版はローコスト・OVAとしてコストカットのため、日本のアニメ業界でデファクトスタンダードになっている富士フイルム製ではなく、コダック製フィルムを使用している。旧OVA版のいまいち彩度に欠ける発色はこのためである。なお劇場版およびテレビ版以降は富士フイルム製を使用している。

なお、BD版及び同時に発売された現DVD版はHDリマスターを行っているため、TV版以降同様に発色は良くなっている。


……にもかかわらず、皮肉にもついたスポンサーは富士フイルムだった。旧OVA版(VHS及びレーザーディスク)には当時の富士フイルム製カセットテープ『AXIA』のコマーシャルが入っていた。これはパトレイバーのアニメ作品でもあるのだが、残念ながらDVD版以降では削除されている。


なお、制作時期はまだソニーのVHS参入前だったが、既にコスト対効果の見込めないベータ版は計画されず、最後まで出なかった。


前述した通り、同時期のバンダイビジュアルのOVA作品はパトレイバーが補完的候補で、実は本命があった。担当する監督も気鋭の庵野秀明。だが、サンデーでのコミック版連載の好評を受けて、本作も晴れ舞台へと出ることになった。

「他のロボットアニメには見られない緻密な背景描写やリアリティ、生活感」と行った点で共通しながら、輝かしい未来ありきの本作に対し、あの作品が暗く陰鬱な描写が多いのは、ここにあると見るのは穿ち過ぎだろうか?


登場キャラクター編集

警視庁警備部特科車両二課(特車二課)編集

泉野明特車二課第二小隊員。一号機フォワード(操縦担当)。
篠原遊馬特車二課第二小隊員。一号機バックアップ(指揮担当)。
後藤喜一特車二課第二小隊隊長。通称「後藤隊長」。
太田功特車二課第二小隊員。二号機フォワード(操縦担当)。
進士幹泰特車二課第二小隊員。二号機バックアップ(指揮担当)。後に後方支援(輸送車)に回る。
山崎ひろみ特車二課第二小隊員。後方支援担当。通称「ひろみちゃん」。
香貫花・クランシー特車二課第二小隊員。進士に代わって二号機バックアップ(指揮担当)となる。
熊耳武緒特車二課第二小隊員。香貫花(漫画版では進士)の後任として、二号機バックアップ(指揮担当)となる。通称「お武さん」。
南雲しのぶ特車二課第一小隊隊長。通称「南雲隊長」。
五味丘務特車二課第一小隊員。一号機フォアード(操縦担当)。
榊清太郎特車二課整備班長。通称「おやっさん」。
シバシゲオ特車二課整備班員。通称「シゲさん」。
福島隆浩特車二課課長。

指揮担当者は現場において指揮車両を用いて警察用レイバーとペアで行動し、レイバー操縦担当者への周辺状況の情報提供(特に死角となる後部)や相手レイバーに対する行動の指示を行う。


シャフトエンタープライズ編集

内海「シャフト・エンタープライズ・ジャパン」企画7課課長。
黒崎内海の懐刀。
バドリナート・ハルチャンド愛称は「バド」。

その他編集

実山剛篠原重工八王子工場の工場長。通称「じっちゃん」。
松井孝弘後藤隊長の知り合いの刑事。
桜山桃子TVレポーター。自称「戦うレポーター」。

基本設定編集

人間が操縦する多足歩行型作業用ロボットの俗称。

一体で熟練労働者数十倍のマンパワーを得られる画期的な労働力であり、日本を始め世界各国で生産されている。ただし、そのサイズ、出力の強さに目を付けられ、作業現場から盗まれたレイバーが犯罪やテロ行為に使われること(※1)も多々あり、これに対応するために開発された警察用のレイバーが「パトレイバー」である。


作中で登場するレイバーは主に土木建築機械の延長線上として扱われ、法的には「特種車両」とされており、機体そのものも「各車」などと車両に準じて呼称される。原則的にレイバーには自動車のナンバープレートが取り付けられており、その操縦には操縦免許が必要となる。

行政的には旧運輸省(国土交通省)ではなく旧通産省(現経済産業省)が所管しており、レイバーOSの基本フォーマットである「LOS」等を定めている。


現実の道交法と同様、無免許操縦や飲酒操縦に対しては行政処分や刑事罰が執行され、免許拒否や免許取り消しの対象となる。(これらもレイバー犯罪に含まれる)


(※1)現実世界においても盗難された工事用重機がATM破壊窃盗等の犯罪に使用される事件が多発したことがある。


  • バビロンプロジェクト

・作中世界において1995年に発生した、東京湾中部大地震の被害で大量に発生した瓦礫の処理

・過密化が進む首都圏の人口処理と、震災後の地価高騰対策

・近い将来高い確率で起こりうる地球温暖化による海面上昇によって首都圏が水没する可能性に備える

という目的で、川崎木更津間を封鎖して東京湾全体を埋め立てて干拓し、巨大防波堤による一石三鳥を狙った国家的な巨大土木事業計画。


この大規模需要からレイバーが爆発的に発展・普及したが、首都圏に国内の大半のレイバーが集中したことでレイバー犯罪が増加して社会問題と化す事態にまで発展。また、水産業へのダメージ、環境破壊への懸念(※2)からプロジェクトに反発する声も多く、中にはプロジェクト阻止のためにテロ行為を行う「海の家」や「地球防衛軍」といった過激派(エコテロリスト)も出現している。

総じて、本作の物語展開の根底にある設定である。


(※2)レイバーの出現こそないが、諫早湾干拓事業の予言的な作品となってしまった。


レイバー犯罪に対応するために警視庁警備部内に設置された専門部署。正式名称は「特科(特殊)車両二課中隊」。

物語の中核となる組織であり、主人公達が勤務している部署でもある。


主題歌編集

オープニングテーマ編集

初期OVA編集

「未来派Lovers」(1 - 6)

歌:笠原弘子

TVアニメ編集

そのままの君でいて」(1 - 34)

作詞:森由里子 / 作曲:羽田一郎 / 編曲:船山基紀 / 歌:仁藤優子

「コンディション・グリーン 〜緊急発進〜」(35 - 47/新OVA1,2,5,6)

作詞:田口俊 / 作曲:TSUKASA / 編曲:根岸貴幸 / 歌:笠原弘子

新OVA編集

「守りたいの」(3,4,7-9)

歌:冨永みーな

「YOU ARE THE ONE」(10 - 13)

歌:DAIZO(小柴大造)

「IDLING for you」(14 - 16)

歌:谷本憲彦(現:速水けんたろう

エンディングテーマ編集

初期OVA編集

「そして、夜明け」(1)

曲:川井憲次

「メガロシティ・ポリス」(2)

曲:川井憲次

「幻影の果てに」(3)

曲:川井憲次

「Lの悲劇」(4)

曲:川井憲次

「二課の一番長い日」(5)

曲:川井憲次

「レボリューション」(6)

曲:川井憲次

「後藤喜一の事件簿」(7)

曲:川井憲次

TVアニメ編集

「MIDNIGHT BLUE」(1 - 34)

作詞・作曲:TAKE / 編曲:KISSME QUICK / 歌:KISSME QUICK

「パラダイスの確率」(35 - 47/新OVA1,2,5)

作詞:麻生圭子 / 作曲:割田康彦 / 編曲:船山基紀 / 歌:JA-JA

新OVA編集

「マイペース〜My Way My Pace〜」(3,4,6,7 - 9)

歌:冨永みーな

「100カラットの未来」10 - 13)

歌:兵藤まこ

「LONG SILENCE」(14・15)

歌:ダイナマイト・シゲ

「Wings to the Dream 」(16)

曲:川井憲次


関連タグ編集

ゆうきまさみ 出渕裕 高田明美 伊藤和典  押井守

巨大ロボット パトレイバー レイバー イングラム アルフォンス グリフォン リボルバーカノン

特車二課 第一小隊 第二小隊 帆場暎一 HOS


関連作品編集

逮捕しちゃうぞ・アニメ版の脚本家の1人が共通

踊る大捜査線とその関連作品・上記の通り本作に影響を受けたと公言。

勇者警察ジェイデッカー・同じく警察をモチーフとしたロボットアニメ。


オマケ編集

ハイパーテクノロジーの急速な発展とともに、あるゆる分野に進出した汎用人間型産業機械「レイバー」。しかしそれは、レイバー犯罪と呼ばれる新たな社会的脅威をも生み出す結果になった。続発するレイバー犯罪に、警視庁は本庁警備部内に特殊車両2課を新設、これに対抗した。通称、特車二課、パトロールレイバー中隊、パトレイバーの誕生である。


これが旧OVA版イントロダクション。The Next Generation -パトレイバー-では、これに続けて2013年の現状が付け加えられる。

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