概要
機動警察パトレイバーの漫画版のシリーズの一つで、2002年3月30日公開の劇場版第三弾はこれを題材にしている。サブタイトルは「WXⅢ」(ウェイステッドサーティーン:訳『廃棄物13号』でそのまんま)。映画第三弾の制作はマッドハウス。
本エピソードの映像化はすでに1995年頃に企画があり、当初はOVAシリーズとして制作される予定だった。
隕石に付着していた未知の物質と人の癌細胞を合わせたことで生まれた生物と、その周囲の人間達を描いたもので、映画版ではオリジナルのキャラクター(ベテランと若い男の刑事2人)が主役を務め、第二小隊の皆さんは脇役に回るという、ファンの度肝を抜く演出も話題になった。
劇場版「WXⅢ」登場キャラクター
()内はキャスト。
刑事
劇場版のみに登場するキャラクターで、『城南署』という架空の警察署に勤める。
- 秦真一郎 (平田広明) 趣味は野球で背番号は8番。この映画の主人公。左利き。なのでマウス操作も左手で行う。只今、禁煙中。
- 久住武史 (綿引勝彦) 事故後の不養生で片足が悪い。クラシック音楽が好きなのだが、昭和75年なのに聴くのはレコード一色。その割に、オーディオ関係への関心はぞんざい。ただ、『音』に関する知識、感覚は凄いものがある。
研究者
- 岬冴子 (田中敦子) 怪獣を造った人物。美人。漫画版では「井森みゆき系」の美女「西脇冴子」だったのが、諸事情により改変。私立大学に勤め、いろいろあって秦と付き合う。
研究所の所長である栗栖に父親(西脇博士)の研究成果『ニシワキセル』を盗用され、一応は怒っている(漫画ではこの辺が強調される)が、劇場版ではマッドサイエンティスト的なママとして登場する。
- 栗栖敏郎 (穂積隆信) アメリカの軍関係者と共同で、1979年に南極で採取された「ニシワキセル」を研究。心臓が悪い。
- 宮ノ森静夫(拡森信吾) 栗栖博士と南極5号の研究をしている。非常に気弱でヘタレな男。
自衛隊の人
- 石原悟郎 (森田順平) 劇場版オリジナルキャラ。研究所にて、怪獣への対抗武器を調達する。
その他
- バッケンジー アメリカ人の大佐で廃棄物13号を捜索しに日本へ来日、栗栖所長と話をする。流暢ではないものの、日本語が話せる。
- 監督 劇場版オリジナルキャラ。マイケル・ムーアそっくりの外国人監督で、ある音楽バンドのPV撮影を行う為に来日。PV撮影に使用するスタジアムを自衛隊が怪物退治の為に使う事を知って反発、彼等と対立してしまう。言動がかなり粗暴で、自衛隊や警察達に「ファッキン!」や「何とか答えろこのブタ野郎!!」(意訳)といった暴言を吐くほど。
- 監督の通訳 劇場版オリジナルキャラ。名の通り外国人監督の通訳を務めている女性。常に冷静沈着で暴走しがちな監督の抑止力として頑張っている。自衛隊側の対立を深めないように、監督の不遜な発言をマイルドに(「誠に遺憾である」等)訳している。
特車二課
- 第二小隊の面々。
今回は(も?)脇役。後藤隊長は久住と親しいという設定で少し出番が多い。なお、香貫花と熊耳武緒は登場しない。
怪獣
- 廃棄物13号 映画版ではベイカーズダズン(英語での13の婉曲表現)とも。「南極に落ちていた隕石から採取されたアミノ酸をいじる」までは原作の原案OVA「四億五千万年の罠」、そこへ「人の癌細胞を入れる」までは漫画版と同じである。劇場版では癌細胞は岬の娘、一美(「ひとみ」から転じて「13」にもなった)から採取したという設定。原作の「シャフトのレイバーが出す音が好き」という設定は一応踏襲している。おっぱいぽろりがある。妊娠線もある。なお漫画では、OVAで「やめとこうよ」と言われた怪獣撃退案が一応、大体採用されている。漫画版と劇場版では容姿がそれぞれ異なっている。なお、漫画版では水上施設でレイバーと一戦交えているが、劇場版では水上施設の警備員を捕食しながら久住を追いかけまわした。
設定とか
- 劇場版において、岬は、原作にもあった、お父さんの研究をパクった人への復讐劇の方向で行く案を却下しつつも、その方向で考えていた。結婚して「西脇」→「岬」姓を名乗る設定は採用。娘との関係へアレするため秦真一郎と「桜の園」を見る。なお観る劇は、後藤隊長のモデルが仲代達矢なので「リチャード三世」という案があったが却下されたそうである。
- PHSが出るが、あまり普及しておらず、刑事も通信は主に固定電話で行い、電話ボックスも登場する。同時に光ファイバー経由のブロードバンドで、インターネットが普及し、2ちゃんねるのような巨大掲示板(パソコン通信のチャットみたいなものだが)も登場する。
- オーディオコメンタリーで、「警察の捜査会議を劇中に出すのは、パトレイバーのが先」という発言と、「会議は黒澤明の「天国と地獄」から」という発言が出る。なおゆうきまさみそのものが、事件に関する捜査をどうするか悩んでいる。(普通 パトレイバー以前のお話だったら特車二課が警備部のくせにやる)
- 映画化の際はコンセプトの鉄則で、「廃棄物13号の話をやる」と「特車二課を主役にしない」というものが原作者と監督から出ていたが、諸般の事情でタイトルは「WXⅢ」の次にパトレイバーが付くことになった。
- ミニパトでのハゼの干物のパロディのようなものとして、「お化けハゼ」が登場する。なおフィルムコミックでは、この作品の後に「ミニパト」が収録されている。
- 脚本のとり・みきは、ゆうきまさみと親密な関係である以外に、原作漫画の掲載時、とりが少年サンデーで連載していた「てりぶる少年団」(全一巻)で、下がる人気を盛り上げるためにそのキャラクターが「人気作へ入って宣伝すると同時に作者がアシスタント料をもらう」という話があり、実際に人気作の脇に登場していたのであった(デモの時に「SAVE THE てりぶる」て書いてあるプラカード掲げてる人)んだなこれが。奥が深い。
- 総監督は名作と名高い『機動戦士ガンダム0080』の高山文彦(TVアニメ38話「地下迷宮物件」のダンジョンキングのモデル)で、拘りのために製作が遅れたために監督自体は遠藤卓司に変更させられてしまった。
- 制作は元々トライアングルスタッフが担っていたが、本作の製作の遅れを起因に経営が行き詰まり解散したため、上記のようになった。トライアングルスタッフはマッドハウス出身のプロデューサーが設立したので、古巣が制作を引き継いだ格好である。
漫画版では…
ゆうきまさみによる漫画版では、映画版での爬虫類や両生類を思わせる姿かたちとは大きく異なる姿をしている。
- 蜘蛛のように並んだ目、松かさ状の体表組織に虫やエビのような足を持ち、右主腕はザリガニを思わせる形状で左腕は節の付いた触腕、身体のところどころから触手が生えた、他に例えようのない独特の形状。
爬虫類めいた頭と脊髄らしきもの見えるが、全体のシルエットは紙魚のようでもある。
食性は肉食で、特定の音波に誘引される性質を持つ。強い光を忌避し夜行性と思われる描写がある。生命力も強靱で、切り離された触手の細胞は生存しており、本体も頭を半分吹き飛ばされても生命維持に影響は無かった。
その正体は西脇順一博士が「南極5号」と呼ばれる隕石に付着していた有機物から培養した新種細胞「ニシワキ・セル」を東都生物研究所の所長・栗栖が生物兵器に転用した「廃棄物」シリーズの1体。
グリフォンが東京湾に墜落直後、13号を運んでいた輸送機が墜落し東京湾に解き放たれ、漏れ出た培養液を食って巨大化した魚や人間を食いながら成長、工区内のメンテナンスベースに上陸したことを契機にその存在を認知された。
- 直接の描写があるのはASURA回収に差し向けられたダイバーのみ。直接は描写されていないものの、輸送機の乗員の遺体の損壊やバビロンプロジェクト作業員の失踪、釣り船の転覆事故等も13号の捕食行動の結果と思われる。
肉片から再生する可能性がある事が判明して以降は銃撃等はほとんど行われず、電磁警棒といった電気攻撃がメインとなった。
- 劇場版においては回収された肉片の分析中にニシワキトロフィンを与えてしまい急成長、人を襲うまでとなり爆弾処理用の液体窒素により凍結され、倒されている。
メンテナンスベースでの撃退直後にASURA回収のため企画7課が繰り出したTYPE SL-8 サイレンを襲撃し、レイバーのカウルを着込むような形で成長、通称「怪物レイバー」と呼ばれる形態へ成長した。
その後荒川河口付近から上陸、自衛隊の設置した放電フェンスで新木場の貯木場に封じ込められるも、西脇冴子(映画版での岬冴子に相当する人物)の敢行した妨害によって1度は包囲を突破する。
音波で特車二課の敷地内に誘導され激戦の末に再度逃亡するが、撃ち込まれた「T細胞」入りの弾丸、「時限爆弾」が発動、壊死した状態での死体が、後日発見された。
この『怪獣事件』は漫画版においてはグリフォン編を除けば最も長いスパンで連載された。