「レーザーディスク…それは絵(画)の出るレコード」
概要
レーザーディスクとは、かつて存在したディスク型映像記録媒体およびその規格である。
1980年代から90年代前半にかけて広く利用された。略称は「LD」。
1978年、後に設立するBlu-ray事業のブルーレイディスク・アソシエーションに関わったフィリップスによって開発される。
現代の様な再生専用のメディアで、映画やアニメ、カラオケ映像の収録に利用された。
なお、商標については「レーザーディスク」及び「Laserdisc」は、パイオニアの登録商標であり他メーカーは「レーザービジョン」「レーザービジョンディスク」という名称を用いていたが、1989年に無償開放され、以後は「レーザーディスク」が一般的に使用されるようになっている。
登録商標が類似品を含めて一般名詞化するという、「セロテープ」(セロハンテープ)と同様の経緯を辿っている。
長所
- 映像が劣化しにくい
磁気テープのようにメディアと読み取り装置(駆動式レンズ)がふれあう心配がないため、繰り返し再生しても映像が劣化する心配は(適切な保管環境の場所での利用や常識的な利用の範囲なら)まずない。
これは同時期に開発・発売されたVHDに対しての大きなアドバンテージとなった。
更に、非圧縮のアナログ方式のためMPEG圧縮時に起きるノイズによる劣化がしない。
ただし、デジタル映像をアナログ映像として逆出力で記録した場合は、画質が480p(i)だとしてもこれよりも映像の画質としては劣化するが。
- データアクセスが容易
テープであれば目的の映像がある場所まで巻き取ったり送らなければならないが、ディスクのため瞬時にアクセスできる。
この利点からLDカラオケはもちろん、後のプレーヤーズゲームなるレーザーアクティブなどにおいてゲーム用途にも活用され、当時の家庭用ゲーム機では実現できなかった高画質の動画再生を売りとした「レーザーディスクゲーム」がアメリカで大ブームとなった。
欠点
ディスクや機器についてなど…
- ディスクと専用機器が大きすぎる
パッケージとなるトールケースもDVDやBDのものよりも大きく、ディスクの方は直径30センチ程も(小さい物でも20センチ)あったため、薄さと軽さというアドバンテージが隠れてしまう形になってしまっただけでなくそれと同時に片手では持ちにくいという短所も持ち合わせており、片手で持てるDVDの大きさとは違いレコードと同じく両手で持たないと記録面に指紋付いたり傷ついたりして大変な事になる。片手持ちしかできない障害を持つ人の場合、何かの拍子にうっかり落としてしまうという持つ時の取り扱いなどがアンバランスなものになっている。もはやほぼ大きさはレコード級の大判(10センチ違いは中判)である。(メイン画像の様なジャケットのサイズの専用ケース)
専用機器も今のDVD(BD)プレーヤー、レコーダーよりも全体的に大きいため広範囲な場所取りもする。
保管するにもLD専用の棚が必要不可欠だった。レコード専用の棚があると代用品として重宝したらしい。
- 一般向けの機種では録画ができない
記録型DVD、BDのように一般ユーザー側の一般向け機種(「LD-1000」他)では空のディスクに対して映像を記録することはできないため、こちらでは現代で言うプレーヤーに相当し、一般用機種は再生専用なのである。ただし、例外として製作会社に向けてPioneerなどから発売された業務用仕様モデル(「LaserRecorder VDR-V100」他)では録画可能な製造事業者向けが存在していた。(要するに業務用途限定)
- 画質があまり良くない(初期)
VHSと比べると格段に高画質(ただしDVD、BDの最低の録画モードの画質とは比較的に劣る)だが、マスターテープ仕様の高級なVHSに比べて薄く靄(もや)のかかったような印象であり、あまり鮮明ではないし、どちらかと言うとVCDに近い質感(後期の規格ではディスクの大きさはそのままだが、SVCD並にやや改善されている)。更に、経年したディスクは湿気によりノイズが混入していることが多い。劣化が報告されているので変換はお早めに。ただし、そのディスクに記録されている映像や音声が他人の著作権のあるデータだった場合は、それはディスクの保有者である本人以外の著作権のある他人のデータなので移行サービスの業者に頼むと法的にアウトになるので注意。
- コピーガードは完全非対応
データアクセスが容易と説明したが、レーザーディスク初登場時点では著作権保護技術は発展途上で開発段階の状況だったため、それを逆利用した犯罪者なる悪い輩によって国内外に海賊版(日本国内では山賊版)と呼ばれるコピー品の流通をさせてしまうという権利者にとっては「著作権的に緊急事態」な事件が連続に発生し痛い問題になった。保護技術はどうしようにも施せない状況だったという事から著作権的に脆弱性があった。この事もあってVCDとSVCDと同じ被害をもたらしてしまったと思える。
後の次世代光ディスクにて著作権保護技術の強化のきっかけとなった。
現在
レンタル(同じ頃漫画と共に)全面禁止の方針も災いし(1990年代初頭にレンタル専用ディスクに限りレンタル解禁されたが、取扱店も少なかった上に、レンタル専用ディスクのタイトルも少なかった)、結局LDはVCDと同様でDVDとBDのような映像メディアの主流にはなれなかった。
カラオケは1992年よりインターネットの更なる普及と共にカラオケデータをNASサーバ管理局へと集約する形へと移り、通信カラオケ「X2000」(タイトー製)と「JOYSOUND」が登場、1994年には第一興商の「DAM」の登場が決定打となり急速にレーザーディスクカラオケからインターネット上のサーバー内でデジタルデータとして提供するという方法へと置き換え(いわゆるデータ移行)が進んだ。
サーバーでデータとして管理する事により、わざわざ毎回レーザーディスクによる機器から出し入れするという従業員への手間(人件費)がなくなり、そのカラオケ事業は続々と最適化されていった。
1996年にLDよりも低価格で耐久性にもLDよりも優り、著作権保護(DRM、CPRM)にも対応したDVDが登場し、1998年には洋画のほとんどがDVDに対応、無駄を省いた安価ポータブルCD/DVD再生機も登場してDVD普及黎明期に発展。
2000年にはPS2の販売によって爆発的にDVDが普及し、大部分のレコード会社、映像会社がLDの製作・製造を終了。
レーザーディスクカラオケも夜の街や山奥の温泉にわずかながら残っていたが、その後自然消滅した。学校の音楽室や公民館、図書館などでも映像教材としてレーザーディスクが残っていたことが多い。
2002年には大容量で著作権保護技術の強化が施されたBlu-rayが登場し、DVDと同じく対応し始める。耐久性は後者よりもやや劣るが容量は大きいし、新世代のコピープロテクトにもなり著作権保護技術が後々パワーアップしていく事になった。2006年にはBDでの映像ソフトも登場。
2007年に最後の生産ラインが停止し、2008年にBD普及と共に2009年にはパイオニアがプレイヤーの販売を終了。30年の歴史に幕を下ろした。最後の機種はDVL-919であった。その短い生涯は「レーザーディスクは何者(物)だ?」の一言に集約されるだろう。
関連イラスト
別名・表記ゆれ
関連タグ
DVD CD Blu-ray(Ultra_HD_Blu-ray)
DVD-BOX、BD-BOX:これらに先駆けるアニオタや特撮オタターゲットの全話収録セットとしてLD-BOXがあった。大抵は需要と供給の都合上限定商法が行われた。
HD-DVD:こちらは同じく主流にはなれなかった光ディスク規格繋がり。
三洋電機 ソニー 東芝 松下電器産業 MCAレコード(※NBCユニバーサル):LDディスク規格の策定に関わった企業。
DVLシリーズ:パイオニアが最後に出し続けた、DVD再生可能なレーザーディスクプレーヤー。
レコード:こちらも本体も円盤の大きさがこれに近いのと場所取りに困ることに共通する。
バック・トゥ・ザ・フューチャー - PART2の2015年の世界では「廃棄物処理場にてレーザーディスクの残骸が大量に廃棄処分されている」シーンがあるが、現実世界のレーザーディスクは作品通りの2015年を待たずにこの時代から15年遡った2000年頃に廃棄処分され消滅したという結果になり、仮に見た人が信じていたとしたら作品の世界観と現実世界の史実とは辻褄が合っていない、いわゆるパラレルワールドの世界を映した作品と捉える見方がいいだろうか。