概要
横72mm、縦68mm、厚さ5mmのカートリッジに封入された音楽用光ディスク。または、その録音や再生を行う装置を言う。再生専用MDは構造そのものはCDと同様の構造であるが後述の理由と音楽MDレンタルサービスが無かった事により普及しなかった。
録音可能MDは磁界変調オーバーライト方式により記録される光磁気ディスクである。記録には寸法の小さいディスクにCDと同程度の時間の楽曲や音声を収めるため音声帯域ごとに分割し、圧縮し符号化して記録する。
しかし、MDに使われる圧縮は非可逆圧縮といって、再生される音声は元の音声に比べると劣化している。さらに、初期の圧縮規格ではエラー制御に容量を割いてしまい音質が悪かったため、MDは音質が悪いというイメージを植えつけることになってしまった。
MDへのデジタルオーディオデータコピーはコピー制限がかけられ、デジタルコピーは1世代のみとなっている。
MDはデジタルデータを記録することから、録音した音声の編集や文字入力、日時記録といったことができる。(ただし、文字の入力・表示に制限のある機種がある)
また、MD-DATAというものがあって、当時の光磁気ディスクに並ぶ容量で大きさも小さかったが、専用ディスクでないとデータ記録ができず、転送速度も遅かったため(150KB/秒)、普及せずに終わった。
他にもNet MDやHi-MDといった規格ではパソコンとの親和性の強化や音声の非圧縮録音、パソコン用ストレージ機器としての動作などが追加されている。
1994年に安価な録音/再生機登場によって普及期に入った事や2000年前後に最盛期を迎え、携帯電話と共に中高生の憧れのアイテムとされたが、間もなくiPodに代表されるデジタルオーディオプレイヤーが普及。容量、サイズに劣るMDは急速に姿を消していった。
2013年に開発元であるソニーが撤退。他社のほとんどは前年までに撤退しており、事実上消滅、したかと思われた。
しかし2018年に入ってTEACが純正ピュアオーディオ用のCDプレーヤー一体型デッキ 「MD-70CD」を投入。思わぬカーテンコールにオーディオ市場を沸かせた。
TEACのコンセプトは「録音を諦めない」。
録音には単純なオーディオ以外の知識を必要とする半導体デジタルオーディオに一石を投じるものである。なお同社は、同年にピュアオーディオ用カセットデッキも投入している。
だが、テープや可搬型機がいまだ大量生産されているカセットテープと異なり、孤立した規格になっていたMDを世界中にTEACただ1社で支え続けられるわけがなかった。2021年、“同僚” WD-1200(オートリバース付ダブルカセットデッキ)にTEACスピリットを託して生産終了した。
だが、MDを追い詰めたiPodも、デジタルプレイヤーとしては汎用機たるスマホやPCに追われ、2014年以降一気にシリーズを縮小、長く「iPod touch」だけがラインアップに残っていたが、2022年5月を以って販売終了。
iPod登場以降は追われ続けていたかに見えたMDだったが、TEACの意地で最後にiPodを道連れにし、ソニーの生み出した一方のブランドであるWALKMANの花道をつくって消えていった。