概要
本州の南東側にある地域。日本列島が折れ曲がる蝶番の位置にあり、ちょうど太平洋に張り出しているように見える。略して関東ともいう(pixivではこちらのタグのほうが多い)。
「関東」の由来は関所の東であることから。ここでいう関所は、東山道の「不破関」、東海道の「鈴鹿関」、北陸道の「愛発関」の三関を指す。このことから、本来は伊勢国・美濃国以東を関東と呼んだが、鎌倉時代以降現在の区域のことを指すようになった。古くは「坂東」「関八州」という呼び方もされていた。
地域
約4000万人が居住し、日本の人口の3人に1人が関東地方に住む。人口が日本最大の東京都区部を中心に、市としては日本最大の人口を擁する横浜市など大都市が多い。東京は横浜・千葉などと事実上一体化した都市圏を形成しており、世界的にみても最大の都市圏である。
経済規模はもちろん日本最大であり、世界的に見た都市圏の経済規模でも、2位のニューヨークの10倍以上と圧倒的な世界一。物資の一大消費地であるとともに太平洋ベルトの東端に連なる一大工業地帯でもあり、生活用品から巨大タンカーまであらゆるものを大量に産出する巨大な生産力を誇る。日本最大の平野である関東平野を背景に農業が栄えており、農業出荷額も北海道と一二を争う。
実は地下資源にも恵まれており、関東平野の地下には莫大な天然ガスを埋蔵している(しかし、地盤沈下の懸念から天然ガスはわずかしか採掘されていない)。金、銀、銅、マンガン、鉄なども豊富に埋蔵しており、過去には世界各地に輸出されていた時代もあるが、いずれも環境問題で採掘ができず、現在はもっぱら石灰石や石英が盛んに採掘される。利根川流域は水力発電所が多く、銚子沖は世界有数の豊かな漁場。
首都圏の地位が余りにも突出しているので、首都圏への交通網が整備されるにつれ(製造業の強い東海地方を除く)他の地方が年々寂れ、東京一極集中が問題になっている。
ただしこれは治水と灌漑の技術が発達した近世以降だからこそ言えることであって、中世までの関東平野は隅田川や中川、利根川など大河の流路が入り組み水害に悩まされ、一方で台地上は水資源に恵まれないため「武蔵野」と言われる荒れ地が広がり開発が遅れていた。江戸時代に関東地方の開発が劇的に進み江戸という巨大都市が生まれたのは、利根川東遷事業や玉川上水開削のような巨大プロジェクトを実現できる土木技術が発達したからである。
歴史
古代の関東地方は、都のあった畿内からすれば東の果ての僻地でしかなかった。このためか朝廷がこの地に渡来人を多く配置した記録が残っている。
平安時代に入ると、都から関東に下った下級貴族らが地域の豪族と結んで武家として力を増す。その一人である平将門は自ら天皇と称し、関東の独立を目指したが藤原秀郷に討伐される。平安末期の関東は源平藤原の武家を棟梁として頂く武士団が割拠した。そしてついに、「鎌倉殿」の地位についた源頼朝が東日本の武士を御家人として配下に置いた。だが鎌倉殿の地位は朝廷から与えられた「征夷大将軍」「日本国惣地頭」「日本国惣追捕使」といった立場によって担保されており、都からすれば田舎者の酋長でしかなかった(征夷大将軍の「夷」は「東の野蛮人」のこと)。承久の乱で朝廷の軍事力が剥奪され、西日本の武士の大半も御家人に組み込まれ、鎌倉方の政治的優位が決定的になってからも、関東に対する畿内の文化・経済面での優位は揺らがなかった。
関東地方が政治・軍事面のみならず文化・経済的にも畿内を上回る日本の中心地になったのは、やはり江戸幕府の功績が大きい。幕府の手により上記の利根川東遷や玉川上水開削のような大規模な土木工事がなされた結果、江戸時代中期までに荒川や利根川下流の低湿地や武蔵野の大半が耕地化され、当初は大坂からの移入に頼っていた物産(酒、木綿、醤油など)の多くも関東の地場生産品で賄えるようになり(江戸地廻り経済圏の確立)、江戸には天明文化や化政文化の華が開いた。
災害リスク
関東地方は4つのプレートがぶつかりあっている世界的にも稀有な地域(関東地方自体は北日本から連なるオホーツクプレートの上に乗っており、東から太平洋、南からフィリピン海、西からアムールの3つのプレートに押されている)で、日本国内でも特に地震や津波の被害を受けやすい。日本震災史上最悪の被害をもたらした関東大震災の悲劇は、被災から100年近く経った現在でも語り継がれている。
さらに関東の西には富士山・箱根山・浅間山などの火山がある。これらが噴火すれば東京都市圏も火山灰が降り積もる大きな被害を受ける恐れがある(他の大都市圏である京阪神や中京都市圏は西に活火山がないため、このような被害は受けにくい)。
東日本大震災では、直接津波の被害を受けたのは茨城県・千葉県の一部だけだったが、関東地方の交通網は完全にマヒして多数の帰宅難民の発生、電力不足による計画停電などにより関東地方のみならず日本全土にその影響が出た。
こういった事態に備えて、首都機能の壊滅による国全体の危機を防ぐため、首都機能の一部を東北、中京、近畿に振り分ける必要性を訴える論者も多い。
関東地方を構成する都県
※上記に山梨県を加えて首都圏という。
※うっかり忘れがちだが、伊豆諸島と小笠原諸島は東京都に属するので、関東地方の一部である。こう考えると関東地方はだだっ広い海を持つ地方であるともいえる。