私はコーチにオリンピックにいかせてくださいってお願いしたよ
はやくいのりちゃんと大会で一緒になれたらいいな!
(score2より)
概要
CV:市ノ瀬加那
漫画『メダリスト』に登場するキャラクター。
女子フィギュアスケートの選手である11歳で、全日本ノービスB大会を2連覇した天才少女として知られる。
表向きはかつてのオリンピック銀メダリストである鴗鳥慎一郎が経営する名古屋の名港ウィンドFSCに所属しているが、実は密かに鴗鳥のライバルであった元・金メダリスト夜鷹純に師事している。
現在は鴗鳥慎一郎の自宅に下宿しており、その息子である鴗鳥理凰とは幼馴染である。
主人公の結束いのりとは初対面で意気投合し、全日本大会という大舞台で雌雄を決することを誓い合ったライバル関係にある。
字面からして、オオカミがモチーフであると思われる。
人物・実力
小5にして、フィギュア最難関技の一つであるトリプルアクセルを含めた6種類のジャンプすべての三回転を跳び、降りる(=実際に成功させる)ことができる。
なんなら、三回転を跳んだ直後にさらに三回転を追加で跳ぶ(通称『三回転+三回転』)こともできる。これはノービスからさらに上位のシニア選手でも困難なテクニックである。
当然、他のスケーティング技術も隔絶しており、いのりのコーチである明浦路司をして「エッジの傾斜…指先…腕の運び方…ノービス選手のレベルじゃない」と言わしめるほど。
今まで出場したすべての大会で金メダルを獲得しているとされる。その実力は同世代の選手と完全に隔絶しており、事実上トップ独走状態となっている。小学生でありながらTVで特集が組まれるなど半ば時の人となっていて、周囲からは羨望と畏怖を一身に集める。光の圧倒的な実力を前に「自分には才能が無い」と絶望したリンクメイト6名が一気にクラブを辞めるという事態にもなった。
その一方で光をライバル視する同世代の選手も多く、同じく名港ウィンドFSC所属の八木夕凪、京都の名門蓮華茶FSC所属の鹿本すず、そして本作の主人公結束いのり……といった面々から挑戦を受けることになり、結果的に世代全体の実力向上に寄与している。
作中で彼女たちは狼嵜光世代と俗称されており、すでに存在自体が時代の基点となっている。
ただし、本人はコミュ力も高く相手を思いやれる優しさを持つ人物で、少なくとも性格面でトラブルを起こすキャラではない。
上記のような大量離脱者を出したものの、残ったチームメイトとの関係は比較良好(夕凪が多少隔意を抱いているなどまったく問題が無いわけではない。)。牛川四葉から趣味で作ったクッキーのお裾分けを貰って喜ぶ場面もある。
チームメイトにして同居人である理凰からは好意を寄せられている。四葉をして「忠実な執事の振る舞い」と言わしめるほど甲斐甲斐しく接されているが光自身には色恋沙汰への興味がないらしく普通にスルーしている。
しかし……師匠の夜鷹の教えである「勝利に一番必要なものは犠牲」というロジックをかなりストイックにこなそうとするきらいがあり、練習時間確保のために小学校を途中帰宅は当たり前、大会直前で夜鷹からの「リハーサルの曲かけで1度でも転倒したらもうスケートを辞める」という鬼畜レッスンを平然と受け入れる……といった具合でもはや自分がやっている競技に人生も生活もすべてを注ぎ込んでいる状態にある。
これを間近で見ている理凰は戦慄を覚えると同時に、これを光に課して平然としている夜鷹の人間性を疑うに至っている。
逆に、他のフィギュア関係者がなぜ必要以上にストイックにしていないかを疑問に思っている節もある。
score32にて、上述の犠牲うんぬんの議論を『いのりちゃんの先生』である明浦路司にぶつけた際に、「いのりさんに犠牲を払わせるつもりはない」と返された時にはなんともいえない顔をしながら「みんな結局そうだなあ……」と呟いている。
(この場面は、『勝ち続ける』ことが大前提になっている光・夜鷹コンビと、『敗けてきた』からこそ這い上がろうとしているいのり・司コンビの究極の対比となっている。)
同作は一般的な少女(=いのり)が基本から身に着けながらフィギュアスケートの高みを目指す物語だが、このようにライバルキャラの狼嵜光に関しては主人公補正が半端ないことになっている。
その生い立ちは謎に包まれていて、関係者によって注意深く秘匿されていることが作中で示唆されている。
score2においては、その時は母親からフィギュアに深入りすることを窘められていた結束いのりに対して「私お母さんいないからわかんないけど」と答えている。
ちなみに、色々と規格外である光ちゃんだが、お年頃だけあって後述のようにそれなりにおしゃれには気を使っている様子。
だが、ミステリアスな来歴ゆえか時折強めの野生がにじみ出ることがある。
具体的には、ゴ●ブリを素手で殺せる。
親友にしてライバル・結束いのりとの出会い
狼嵜光という天才は、自分とはキャリアや実績でかなりの格下である結束いのりをライバルに認定し、同時に親友として扱っている。
その出会いは、いのりがスケートを習い出して2週間目。バッジテスト初級を受験するために、会場であるいつも光が本拠地にしているスケートリンクを訪れたことにはじまる。
緊張でしょうがないいのりは、心を落ち着けるためコーチや保護者の傍を離れ、リンク外の茂みの中でしゃがみ込みライフワークであるミミズ採集(?!)に勤しんでいた。
その最中、雑木林の向こう側から一人の少女と四つん這い状態でバッティングする。誰だお前。
非常によく分からない出会いであったが、いのりがその服装を「服がお姫様のドレスみたい」と褒めたことで物憂げな表情が一転して喜色満面になり「仲良くしよう」と言い出す。普通に嬉しかったらしい。
しかし直後、少女を迎えに来た理凰が「オマエどこの馬の骨だ?(意訳)」「スケートが出来ない奴が話しかけてくるな」といのりを威嚇。少女は「なんで私の友達にいつも意地悪するんだ!」と激昂するが、理凰に有無を言わさず連れ戻されてしまう。
これが、結束いのりにとって天才少女・狼嵜光との運命の邂逅であり、その相方である理凰との最悪の出会いであった。
その一月後、本拠地にしているリンクが点検に入るため、光は別地域の大須スケートリンクを訪れていた。
そこで、更衣室の中でひとり泣き崩れているいのりを発見する。
この時、廊下では期待の新人としてコーチ陣から持ち上げられているいのりを他生徒の保護者がねたみ、「なんであんな出遅れた子を可愛がるのかしら」「どうせ今だけよ」「あの歳で1回転もできないなんて論外」「今頃始めている時点で才能なんてないわよ」と声高に陰口を叩いていたのであった。まさに自分の夢の実現と劣等感を克服するために遅ればせながらフィギュアの世界に飛び込んできたいのりにとって、それは人格否定にも等しい暴言であった。
事情を察した光は「自分は滑れないくせに何が簡単だよ」と吐き捨てる。そして、いのりの手を引いて更衣室を飛び出し、これ見よがしに悪態をついていたその大人たちが自分に気が付いて「こんどウチの子と滑って~」と黄色い歓声をあげるのを無視。その面々を無言で押しのけていのりと二人でリンク入りした。
「氷に乗れない人の言葉なんて信じなくていいよ!」
いのりを元気づけると、慣らしで滑走しはじめる光であったが、今度はこちらが驚愕する番であった。
なんと、初心者であるはずのいのりが自分のスピードに付いてくるのである。面白がってスピードアップしてもなお食らいついてくる。実はいのりは既に自転車とほぼ同じ時速20キロメートルでリンク上をかっ飛ばすことができ、この段階で初心者の領域を大きく逸脱していたのであった。
さらに面白がった光は、いのりの目の前で得意のジャンプを繰り出した。
いのりが内心で焦がれ、さっき大人たちに自分が出来ないことをなじられたジャンプを、である。
とても可憐に、軽々と。
「アハハッ!」
「もぉ~ビックリした!」
「めっちゃキミついてくるじゃん」
「ほんとに初心者?」
光からすればほんの戯れだったのであろうが、自分の至らなさと比して、同年代であるはずの光との圧倒的な技量差を見せつけられたことで、いのりは今までため込んでいた感情を爆発させる。
「どうすればそのジャンプが跳べるの?」
「この歳で(自分が)跳べなきゃ光ちゃんに勝てないよ」
「光ちゃん教えて」
ストーリーが進むにつれて徐々に明らかになっていくことだが、実のところ狼嵜光という少女は、その圧倒的な存在感ゆえに、少なくとも同年代の中では半ば孤立した状態にあった。
チームメイトはいるが、隔絶した実績から心なしか遠巻きにされているのが実情で、自分に次ぐ№3の八木夕凪とも心理的な距離が生じてしまっている。光へ敵愾心を滾らせていて実力も拮抗している京都の鹿本すずとも、その実コンタクトをとっている形跡が見当たらない。とある大会では、試合後の関係者席にて光の周囲にだけポッカリと空白ができてしまっている。誰も彼女の傍によろうとしないのだ。
常にそばにいる鴗鳥理凰とは、仲間というよりは家族と思っている節が強く、実力面でも自分が大きく引き離してしまっていて、並び立つ存在とは言い難い。
狼嵜光は絶対的な実力をもつがゆえに、王の孤独ともいうべき状態に置かれているのである。
羨望や畏怖、敵意を向けられることはあっても、本当の意味で向かい合う相手はいなかったのだ。
そんな中、結束いのりだけが光を雲の上の存在ではなく一人の個人として見据え、明確に挑戦の意思を示してきたのである。そして彼女は無視できない才能の片鱗を見せていた。
光は、いのりが自分へ向けるある種の強烈な渇望に感激し、一瞬だけ獰猛な笑みを浮かべた。
この瞬間、結束いのりは少女のふりをした獣(byレオニード)に完全に魅入られたのである。
「光ちゃんのようになりたい」「同い年なのに」「練習時間が足りない」とこぼすいのりに対して、光は保護者やコーチを説得して自分が上のステージに行きたいと説得するよう発破をかける。
この段階で彼女は、いのりが這い上がってくることを確信していた。
そしていつか必ず、お互いに同じステージで競い合うことを約束して、その場を後にしたのであった。
いのりは、その約束を胸に自分のコーチである司へ「金メダルを獲れる選手になりたい」と打ち明け、目標は狼嵜光であると伝える。司は彼女の意志の強さに心を震わせ、必ず高みへ導くことを決意するのであった。
作中における、いのりと司の快進撃はここからはじまったのだった。
だが光は、この後に自分の師である夜鷹純が、いのりと司に対して「一生かけようが君が光に勝てる事はないよ」と言い放つことになるとは知らない。
これに対して司は「貴方が可能性を否定することは呪いになる」と抗議する。
これに夜鷹はこう返答した。
「僕は狼嵜光のコーチだ」
「この子(いのり)が光に勝つというのはキミ(司)が僕に勝つっていうことだよ」
前述にあるように、司が光と邂逅した際に彼が構えた態度をとったのは、彼女の背後で糸を引く夜鷹純を意識せざるを得なかったからでもある。
すでに2人の少女の関係は、周囲の大人たちによって大小の影響を受けつつある。
なお、後に全日本ノービスAで3位入賞を果たすことになるスターフォックスFSCの胡荒亜子は、いのりに対する光の態度がほとんど執着の領域に達していることを見抜くことになる。
前項にもある通り、光は人見知りするようなタイプではない。同世代の実力者なら自分や鹿本だっている。だのになぜ”結束いのり”だけを光はロックオンし続けるのか……
後にその理由が、光の師である夜鷹純が後継者である彼女に向ける期待ーーーーそれとまったく同じ狂気に近しい感情を光自身がいのりに対して向けていることが原因だったことが明かされる。
関連タグ
お前のような小学生がいるか:作中で周囲からよくされるリアクション。
全日本ノービスA大会編
いのりちゃん
待ってたよ
(score28より)
当時、フィギュア初級の検定を受けていた初心者でしかなかった結束いのり。彼女と光が同じ舞台で戦うことを誓い合ってから約1年後ーーー。
その後、いのりはフィギュア6級に合格し、ノービスA中部ブロック大会を1位通過。さらに超大技である4回転サルコウを引っ提げて全日本ノービス大会の開会式に臨んでいた。天才・狼嵜光を打ち破るかもしれないダークホースとして。
ついに自分に追いつき、雌雄を決することになった親友を前に、光は嬉しそうに語りかけるのであった。