※この項目は『メダリスト』単行本9・10巻分とアニメ未放送のネタバレ情報を含みます。 |
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こんばんわ
いのりちゃんの先生が走ってる姿が窓から見えたから・・・
会いにきたの
いのりちゃんのステップシークエンスレベル4
すごかったです
わたしはレベル4狙ってたのに取れなかった
いのりちゃんは私に一つ勝ったんです
あーあ がっかり
勝てる試合だったのになんでいのりちゃんメダル獲れなかったのかなあ
残念 残念 残念だな~
・・・ねえ先生
いのりちゃんに犠牲を払わせないことはできたんですか?
その結果が表彰台落ちなんですか?
貴方は責任を取れないじゃないですか
いのりちゃんを生ぬるい場所に置いてダメにしないで
あの子が勝つために何かを失うのを止めたりしないで
score36
全日本ノービス大会―――。
突如現れたダークホースである結束いのり、希代の天才少女として名を轟かせる狼嵜光。2人の最初の激突が終わった。
その結果は――――――
- 四位:結束いのり(表彰台落ち)
光がジョーカーとしてクワドラプル(4回転)トウループを隠し持っていたこと、鹿本と胡荒までもがトリプルアクセルを習得していたこと。
加えて、いのりの敗北の原因は彼女が逆転のために仕掛けた秘策のいくつかが失敗したことだが、もっともなものは純粋な不運と実力不足にあった。
勝利を賭けた演技開始――――――。
いのりは必殺技である4回転サルコウは初手においてコンビネーションも含めて2回連続で成功させたことで会場全体をどよめかせた。
実は4回転サルコウは魚淵翔との取引でこのジャンプの習得を”捨てる゛対価として得たものであった。逆転を期すための試みの一つはここで失敗してしまう。
しかし気を取り直し、レイバックスピンと3回転フリップを連続で成功させる。
そして、隠れた難関として知られるステップシークエンスをホームラン級の加点であるレベル4の獲得に成功する。
そして演技終了間際でルッツ転倒の挽回を期してぶっつけ本番で自身もトリプルアクセルを敢行。転倒することなく降りることができた。
会場は緊張に包まれた。特に最後のトリプルアクセルが本当に成功していれば、フィギュアとは演技後半の成功加点が多くなるシステムであるため、いのりは首位である光の得点を超えることができるからだった。
しかし、現実は非情である。いのりが最後に仕掛けたトリプルアクセルは、回転不足で失敗あつかいになってしまった。
ジュニアクラスの実力者である烏羽ダリアの考察によると、これによって序盤と終盤の両方で技が失敗したことになり、リズムゲームいうところの最大コンボ数が非常に少ない状態になってしまい、光はおろかノーミスクリアを達成していた鹿本と胡荒にさえ水をあけられる結果になったという。
そしてダリアはこうも解説する。
「後半に中途半端なトリプルアクセルを持ち込まなければ表彰台は逃さなかった」(大意)
あ゛ああ・・・ああ
うああ゛あ・・・
一番しかいやだった
一番がよかったよお
その日の晩、宿泊するホテルの寝室で、いのりは号泣した。
自分が劣等感を克服できたのも、師である明浦路司に出会えたのも、すべてフィギュアスケートのおかげだった。
自分にはフィギュアスケートしかなかった。それなのに、光にも勝てず、金メダルも獲れなかったのだ。
明浦路司「完敗だ」
一方の司も無念の感情を滾らせていた。
そして暴れる感情を抑えきれぬまま、降りしきる雨のなか会場近辺の川辺を走り周り、途中の橋の下で立ち止まり、弟子であるいのりに敗北の苦渋を味合わせてしまったことを悔やんでいた。
そんな彼を追跡してきた者がいた。いのりと司、2人の目標であった狼嵜光その人である。
そして、彼女は上記のセリフで司先生を罵り出したのである。
解説と結末
司先生の名誉のために述べておくと、そもそも業界基準では遅参もいいところの11歳でフィギュアスケートを始めたいのりが、僅か1年で全日本大会の4位に食い込むこと自体が異常である。そのことはscore12で司先生自身が「いのりの成長スピードは爆速」と名言しており、後のscore45にて元女子オリンピック金メダリストのライリー・フォックスですら認めている。
これは指導者である司先生自身にも言える。いくら気難しい加護羊の世話で経験があったとはいえ、対児童のスポーツ指導をここまで行うことができ、かつトリプルアクセル持ちの選手と正面から渡り合える選手へといのりを育て上げた司先生のメンタルマネジメント等の選手育成能力の才能こそ目を見張るものがある。
そう、いのりはもちろん司先生もまったくサボってなどいない。それどころかガッツリとリスクをとりながら快進撃を続けてきたのである。
(一部読者からはscore3でのいのりが受講開始して僅かの段階で名港杯制覇を掲げた司先生に「判断が早い」という声もチラホラ)
それにも関わらず、光は「まだまだ狂気が足りねえよ」「いのりちゃんが負けたのはアンタが覚悟完了してないせいだ、この臆病者」という趣旨のことを言ってきたのである。
しかし、司先生にとって光の言葉は受け入れがたいものであった。
かつて自分は、光の師でもある元男子オリンピック金メダリストの夜鷹純に憧れてフィギュアスケートの世界に飛び込み、光や夜鷹のいうところの「犠牲」を払ってきた。しかし、我武者羅にやってきたその結末は、20歳を超えてようやく出場したアイスダンスの全日本代表選手権で手痛く敗退してラストチャンスを失い、文字どおりの『全てを失ったスケーター』になってしまったのである。
司
「俺にとって犠牲なんて神聖なものじゃ全然ない」
「劣等感でなんにも見えてない奴が一番最初に手をつける簡単な自傷行為だ」
「価値を計れない馬鹿ほどガムシャラに払えばお釣りがくると思うんだよ」
光
「侮辱してるんですか?」
「私のコーチ(夜鷹純)を」
司
「違う」
「自分の昔の話だよ」
そして司は「絶対にいのりさんに自分と同じ道を歩ませない」と断言した。
しかし、それを光は貶んだ目で「子供を守る事が出来ない大人だって非難されるのが怖いだけのくせに」と一蹴する。
光
「あなたが夢を叶えられなかったのは」
「まだ捧げられる犠牲があったのに手放す勇気がなかったからじゃないんですか」
さすがにこんなあんまりな物言いに、さすがの司先生も「俺の波乱万丈の人生をバカにするなーッ!」と怒号する。
続けて「同じ犠牲でも人によって重みは全部違う」「貴方の価値観で人の大事なものを計るのは傲慢だよ!」と警告した。
光はその言葉を聞いたうえで「でも犠牲なしに強くなろうなんてムシがよすぎる」と感想し、司へ次のように告げた。
「1年後のジュニアでいのりちゃんがまた負けたら」
「私は夜鷹純を疑わない」
メタな話をすれば、ここでいのりが光に勝ってしまえば物語そのものが終了しかねないため、いのりの敗北自体はある程度は予見できたことではあった。
が、まさかラストでここまでギスギスバチバチな展開になると誰が予想したであろうか。
この一件によって、狼嵜光のバトルジャンキーさと、そのマインドが『メダリスト』の元ネタの一つである『アイドルマスター』のそれよりも(後にそれなりに葛藤している描写こそ描かれるが)『ブルーロック』さながらのエゴイストに近しいことが露呈することになった。
ついでに言えば、普段は周囲に優しい光ちゃんは、いのりに対してだけは『HUNTER×HUNTER』のヒソカさながらの妄想を滾らせていることを自ら暴露している。
あともう一歩でクレイジー路線というわけもである。 いのりちゃん逃げて、超逃げて
ノービスA編のクライマックスにて展開された明浦路司×狼嵜光の顛末がよりによってこれである。
驚愕を通り越して戦慄した読者も多かったろうと思われる。
その後
とはいえ、光は内心で不安だった。自分との最初の激突でボロ負けになった(※当社比)いのりが、戦意損失してもう自分に挑んできてくれないのではないか……。
その懸念は、score37でのジュニアGP強化合宿において払拭される。
2人の最初の激突である全日本ノービス大会から半年後の初夏、大阪関空アリーナに強化合宿のために集結した『狼嵜光世代』の面々であったが、そんな中で2人は再び邂逅した。
(あの日やり残したことは一つもなかった)
(今の私じゃ光ちゃんにリベンジできない)
(立ち止まっている自分が憎い)
(ジャンプが跳べない今が許せない)
再会の瞬間、いのりの視界のなかの光は悔しさで真っ黒に見えた。
―――そして、今の自分は成長痛からくるスランプで跳ぶことすらままならない。
お腹の中が熱くてグラグラしながら滂沱してしまったいのりは、堪らずその場を走り去った。
―――やった、いのりちゃんが私を見て悔しがってくれた。やっぱりあの子は私の強敵(ともだち)なんだ‼
こんなことを考えていたかは定かではないが、なんとこの様を間近で見た光は感激したのである。
当然ながら周囲はドン引きし、以降の合宿期間は終始緊張が漂うことになった。
score36はノービスA編の最終話であり、続くscore37はジュニアクラス編の開幕なった回であるが、2話連続で吹き荒れた最大瞬間風速に多くの読者がどよめくことになった。
関連タグ
光
(いのりちゃんには あと何が足りないんだろう)
(大丈夫。私 まだ待てる)
「お前さ」