概要
ヒット(安打)の一種で、打者の打球によって打者自身が本塁まで帰ること。
打球が大きな弧を描く大飛球になることから「弾」「アーチ」などで言い換えられる他、「一発」とも呼ばれる。そこからの連想で本塁打の数は「○発」「○号」と表記されることも多い。
ホームランの種類
安全進塁権によるもの
単に『ホームラン』と呼ぶときは、こちらをイメージする人が多いと思われる。
打者の打ったボールが、野手以外の何物にも触れることなく、野球場の外野フェンスに設置されている両翼のフェア地域とファウル地域との区切りを示す標識の間を通過してフィールドの外へ出た時点で成立し、4個の安全進塁権が認められ、ボールデッドの状態となる。
なので、フィールドの外の設備に当たってフィールド内へ戻ってきても、こちらのホームランになる。
ちなみに外野フェンスの頂上はフィールド内の扱いであり、野手が外野フェンスの上へ登って正規の捕球をしたと認められた場合はアウトになる。
また、4個の安全進塁権が与えられるホームランとするには、本塁の頂点から外野フェンスまでの最短距離が250フィート(76.2メートル)以上ある野球場でなければならないことが公認野球規則で規定されている。もっとも野球場の広さは一様ではないことが一般的なため、狭い球場で多く試合を行う場合はホームランが打ちやすいし、逆に広い球場では打ちにくい。特にプロ野球においては「○○(球場名)ならホームラン/外野フライ」「本拠地が○○ならホームランを30本打てる」という言い回しがよくなされる。
この安全進塁権による当該選手のホームランとして記録され、得点が認められるためには、歩いてでもいいから、走者となった打者が正規の走塁を行って一塁、二塁、三塁、本塁の順で触れなければならない。
ある塁を踏み忘れて次の塁に触れてしまった場合は、守備側チームからのアピールがあった時点でホームランが取り消され、踏み忘れる塁の前の塁までのヒットとなり、当該打者は当該塁の踏み忘れによるアウトとして処理される。
もし、何らかの事情で歩くこともできなくなった場合には代走を出すことができるが、得点は代走者に記録され、交代の選手がおらずに代走が出せない場合は没収試合となる。
4個の安全進塁権が認められるホームランの判定がされた時点で塁上に走者があるときは、塁上の走者にも安全進塁権が与えられ、本塁へ到達するのに必要な進塁ができる。
この時、塁上の走者も打者同様、塁を踏み忘れてしまうと当該走者がアウトとなる他、通常の走塁と同様に前の走者を追い越したと審判員に判定された時点でアウトとなる。
複数の走者がある場合において、塁の踏み忘れ、走者の追い越しが発生してアウトになったとき、1アウトまでの状態と2アウトでは処理の方法が違ってくる。
- 1アウトまでの状態
- 他の走者に4個の安全進塁権が残っているので、正規の走塁によって本塁に触れた走者全員の得点が記録される。
- 2アウトの状態
- 塁の踏み忘れにあっては当該走者の後の走者の得点が認められない他、打者走者が1塁を踏み忘れた場合はフォースの状態でのアウトとみなされて走者全員の得点が認められない。
- 追い越しによるものにあってはアウトが成立した時点において正規の形で本塁に触れていた走者全員の得点が記録される。
最終イニング、または延長イニングの裏の攻撃において、勝ち越しの1点が前を走る走者によるものであっても、安全進塁権の例外として正規の形で本塁に触れた打者走者を含む走者全員分の得点が認められて記録される。
ただし、本塁打が取り消された場合は通常のサヨナラ勝ちと同じ処理となるため、サヨナラ勝ちに必要な勝ち越し点の分のみが認められる。
このことについて、かつて1塁と2塁の間における走者追い越しによって満塁ホームランが取り消され、本来なら打者走者以外の打点3点が入るところを同点でのサヨナラ打のために3塁走者による1点しか認められなかったという事件もあった。
ドーム球場では、グランドルールとして、所定の範囲の天井に打球を当てた場合、こちらのホームランと認定される野球場がある。
なお、フェアの判定を受け、ボールインプレイの状態にある打球がフェンスを越えた場合はエンタイトルツーベースとなる。
こちらのホームランは打者にとって最高の打撃結果でしばしば「野球の華」と形容され、プロ初ホームランや節目の一発の際にはほぼ毎回祝福のコメントが出される。一方でホームランの多い長距離砲の選手の場合、守備走塁がおろそかになったり空振りを恐れないために三振やダブルプレーが増えることも少なくない。本来長距離砲ではない選手がホームラン狙いのバッティングをして逆に成績を下げてしまうこともある。
また、「ホームランバッターを多く並べる打線にすれば最強なのでは?」という疑問もよく出るが、ホームランを打った後は塁上にランナーがいなくなるため、短打や四死球でランナーを多く出す打線よりも投手にプレッシャーはかからないとする意見もある。2004年巨人の史上最強打線のように、走塁が弱点となり次打者につなぐという意識も薄れるためにホームランでしか点が取れないことも起こり得る。そうしたチームはここぞという場面で点が取れず接戦に弱い傾向にあるため、現在では「大味」「一発頼り」と揶揄されるなど、メリット一辺倒ではない諸刃の剣とも言える側面を持っている。
ホームランが多く飛び出す試合は「花火大会」とも呼ばれ、ホームランが飛び出すと実際に花火が打ち上げられることもある。
走塁によるもの
通常のヒットの延長線上にあるもので、いわゆるランニングホームランである。
記録は、安全進塁権によるものと同じに扱われる。
これが発生する可能性が高いのは、外野手が前進守備を採っていて、外野手を抜けるヒットとなった場合である。
なお、野手のエラーが記録された場合には、ヒットで出塁、エラーで進塁と記録されて成立しない他、第9イニング裏、または延長イニングの裏の攻撃において勝ち越しの1点が自らの本塁到達でない場合には、勝ち越しの1点を得点した時点で試合終了となって、こちらも記録が成立しない。
有名なホームランアーティスト
※ホームランは「アーチ」を描くので、「アーティスト」よりも「アーチスト」表記の方が使われやすい。
名前欄の太字は現役選手。
- ベーブ・ルース:ホームランを量産し(715本、大リーグ歴代3位)、野球の歴史を変えたプロ野球界の偉人。ちなみに投手としても97勝を挙げており、二刀流選手としては未だに史上最強の選手。
- 王貞治:NPB最多本塁打記録保持者(868本)。シーズン最多55本塁打は2013年に後述のバレンティンが破るまでは誰も超えることが出来ず語り継がれた記録であった。
- 野村克也:同時期に王がいなければ、最も偉大な打者であったろう大打者。通算657本塁打は王に次いで歴代2位。
- 清原和博:甲子園で歴代1位通算13本塁打で、高校野球史上もっとも偉大な打者。ちなみにKKコンビの桑田真澄は甲子園では5本塁打でこちらも3位。
- ランディ・バース:関西における生神様。日本プロ野球最高打率と、85年に54本塁打を記録した。
- タフィ・ローズ:中村紀洋とコンビで100本塁打を記録、2001年に55本塁打を記録した。
- アレックス・カブレラ:飛ばす事に関しては、プロ野球最強とも言われた。2002年に55本塁打を記録した。
- 北川博敏:2001年に3点ビハインドから代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打を放つ。
- 広永益隆:プロ野球通算34本塁打ながら、数々の珍記録を打ち立てた記録男(開幕戦プロ初打席で代打本塁打、プロ野球通算6万号、パ通算3万号、パ平成第1号、セパ両リーグで代打逆転サヨナラ本塁打、ロッテ18連敗決定サヨナラ本塁打など)。
- ウラディミール・バレンティン:2013年にそれまで王貞治が持つシーズン55本塁打の記録をついに打ち破り、シーズン60本塁打を達成した。
- 中村剛也:歴代3位の通算6度の本塁打王獲得者にして、歴代最多20本の満塁ホームラン記録保持者。
- 村上宗隆:2022年シーズンに元チームメイトのウラディミール・バレンティン氏(60本塁打)には及ばなかったが、王貞治氏、タフィ・ローズ氏、アレックス・カブレラ氏を超えるレギュラーシーズン56本塁打を記録。ホームランだけでなく打率や打点もトップに立ち、NPB史上8人目(13例目)・22歳での史上最年少&令和初となる三冠王に輝いた。
- アーロン・ジャッジ:2022年シーズンに、62本塁打を打ちア・リーグの本塁打王となった。一応、MLBでは彼よりもシーズン中に本塁打を多く打った選手はいるが、いずれもドーピング疑惑があることから、現在では同シーズンのジャッジの記録が事実上のシーズン最多記録として扱われている。
- 大谷翔平:2023年シーズンに本塁打を44本打って、ア・リーグ本塁打王に見事に輝いた。日本人選手のみならずアジア人選手としてもメジャー史上初の大快挙である。プロ専門家からは、「メジャー本塁打王こそが日本人選手及びアジア人選手が永遠に獲得不可能なタイトル」と長年にわたり言われ続けていたが、その不可能を大谷選手がまたしても覆してくれた。つまり、彼はメジャーの常識と歴史をまたしても塗り替えてしまったのである。
関連タグ
ランニングホームラン バントホームラン チョコバット ホームランバー
代打逆転サヨナラ満塁ホームラン:今まで8例ある最も劇的なホームラン。