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概要

メートル (Metre) とは、長さの量を表す単位の1つ。国際単位系における7つのSI基本単位の1つであり、MKS単位系でも基本単位として登場する。メートルの記号はmであると定められており、大文字のMはSI接頭辞のメガに使用されている事から誤りである。"Mètre" はフランス語に由来し、英語も "Metre" が正式であるとされている。ただしアメリカ合衆国及びフィリピンのみは "Meter" が公式のスペルとされ、 Metre は Meter の同義語と見なすか、測定機器のメーターを意味する言葉として使い分けている事例が見られる。日本語圏ではフランス語に由来するメートルという表記が唯一正しい。英語やドイツ語に由来するメーターや、漢字で米と書くのは、計量法上では禁止されている。


名称メートル (Metre)
記号m
単位系国際単位系
長さ
現行定義 (概略)が1間に進む長さの2億9979万2458分の1
現行定義の発行日2019年5月20日
依存するSI基本単位s
依存されるSI基本単位kgKcd
由来パリを経由し、北極点赤道をつなぐ子午線長の1000万分の1の長さ

定義

現行の定義

メートルの定義は国際度量衡委員会によって定められている。4年に一度国際度量衡総会が行われ、必要があれば定義の見直しと改定が行われる。最新の定義は2018年11月16日に行われた第26回国際度量衡総会によって決議され、2019年5月20日より発行される以下の定義である。


  • メートル、記号mは、長さのSI単位である。それはm s^-1と等しい表現で、秒の定義はΔνCsとし、真空中の光速度cを299792458と定める事で定義される。

メートルの定義は、少なくとも他のSI基本単位よりは簡単な表現で表されるが、各用語は以下のように対応している。

m s^-1と等しくメートルと時間の単位であるの割り算m/s、つまり秒速である。
秒の定義はΔνCsとし、別のSI基本単位である秒の定義を引用している。
真空中の光速度光速度とは光の速さの事。真空中の光速度は物理定数の1つでもある。
cメートルの定義を他の単位の定義に使用する際に使う記号。真空中の光速度の記号でもある。

つまり、厳密性を損なわずなるべく平易に言おうとすると、メートルの定義は以下のようになる。


  • メートルは世界共通に使われる長さの単位である。記号はmとする。時間の単位である秒とメートルを割り算した単位m/sをまず定義する。秒の定義は摂動の無い基底状態のセシウム133原子の超微細構造遷移周波数を用いる。詳しくは秒の定義を参照せよ。m/sの単位で真空中の光速度という物理定数の大きさをぴったり299792458とし、光が1秒間に進む長さの299792458分の1を1mとする。この定義を他で使う際の記号はcとする。

厳密性を省き、もっと簡単に言うとこのようになる。


  • 光が1秒間に進む長さの299792458分の1を1mとする。

光の速さはこの宇宙で最も速く、更に一般相対性理論から、その速さは光源相対的な位置や速度、波長に寄らず不変であると分かっている。一方で光速度自体は物質密度によって遅くなるため、物質密度がゼロの真空を仮定する。この為真空中の光速度を基準とするのは非常に都合がよく、代表的な物理定数の1つである。


なお、2002年に国際度量衡委員会は、メートルは固有長であるべきとの見解を示した。固有長とは、一般相対性理論でのローレンツ収縮を考慮しない、相対速度ゼロでの長さの事である。即ち、メートルが使えるのは、相対論効果が非常に小さく、実測での不確かさに十分埋もれる程度の環境であるという事となり、非常に高速で動いている環境では使えない事になる。


メートルの定義は、秒に依存して定義されている。逆に秒に依存して定義される基本単位にはキログラムケルビンカンデラがある。


前回の定義

前回の定義は、1983年の第17回国際度量衡総会によって決議された。その内容は現行の定義と実質的な内容に差はないが、文言が異なっていた。現行の定義はこの定義を書き換えたものに相当する。


  • メートルは、光が真空中を1秒の299792458分の1の時間で進む長さである。

現行の定義は、光が1秒間に進む長さの約3億分の1と表現しているのに対し、前回の定義は光が約3億分の1秒に進む長さと表現している為、その意味合い自体も少し異なる事になる。


歴史

長さの基本単位は古今東西様々なものが存在し、近代に入るまで世界共通の単位というものは存在しなかった。大航海時代に突入し地球全体での人類の交流が盛んになった事や、1543年にニコラウス・コペルニクスの研究が元となり発展した科学革命により、科学者は正確な長さの測定が要求された。それまで使われていた、単位は複数の単位が混在して変換も複雑なものが多く、十進法による単純な長さの変換が可能な物が存在しなかった。1789年に起きたフランス革命は、単位を一新する機会として見られ、他にも様々な単位の変更が見られた。


1668年にジョン・ウィルキンスは、恐らく最も古い世界共通の単位である普遍的測定単位 (Universal measure) を提唱した。ウィルキンスはクリストファー・レンの提案を受け、クリスティアーン・ホイヘンスが観察した、2秒周期の振り子の長さを標準の長さにする事を受け入れ、これを提唱した。これは現在の0.997mに相当する。この提案は、ジャン・リシェによりフランスパリ南アメリカ大陸にあるフランス領のカイエンヌで周期が0.3%異なる事が判明し、すぐに却下された。


シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴールが1790年に提唱した事で、フランスの憲法制定国民議会は普遍的な単位作製が議論された。この中で提案された長さの基準は次の3つである。


  1. 北緯45度にて0.5秒周期の振り子の長さ。
  2. 地球の赤道の長さの4000万分の1。
  3. 地球の子午線の長さの4000万分の1。

1791年に、フランスの科学アカデミーは子午線の長さを基準にする事を決定した。振り子の周期は標高や地下物質の密度などの局所的な重力の差によって変動する事、熱帯気候にあり、しかも多くはの上にある赤道の計測は困難である事が理由であった。ただし単位とする為には、当時知られていたものより更に精密な子午線長が必要となる。


1792年にはジャン=バティスト・ジョゼフ・ドランブルとピエール・メシャンが主導する三角測量による子午線長の計測が始まった。早くも1736年に地球規模の距離測定を行ったフランスの測量技術は世界をリードしていた事、またイギリスやアメリカの協力を得る事が出来なかった事から、これはフランス単独で行われた。パリを起点に北はダンケルク、南はスペインのバルセロナで測量が行われた。時はフランス革命の最中にある為、最新の測量機器は反革命分子のスパイ活動と間違わられ、投獄も数度あり、戦争による足止めもあった。結果、子午線長の測定には6年の歳月を要した。なおメシャンは、その後の更なる子午線長の測定の為にスペインのバレアレス諸島に赴いたが、1804年に黄熱病にかかり死亡した。


あまりにも測定に時間がかかった為、フランス政府は1795年に、暫定的に以下の定義を用いて新しい単位メートルを定めた。


  • メートルとは、パリを経由し、北極点と赤道を結ぶ子午線長の10^7分の1である。

この基準は、ニコラ=ルイ・ド・ラカーユによる古い子午線長による物である。メートルの由来は、1675年にティト・リビオ・ブラッティーニが自身の著書 "Misura Universale" の中で、普遍的測定単位を "μέτρον καθολικόν" と記した事に由来する。これは古代ギリシャ語のものさしや測る事を意味する "μέτρον" と古代インドの原語の "mita" に由来する造語である。これが1797年にフランス語に書き写された際 "Mètre" に変化した。


1798年にようやく子午線長の測定が終わり、1799年には3ピエ11.296リーニュが1メートルと定められた。これは1ヤードや2キュビットと言ったそれまで多用されていた単位と等しくなるよう意識して作られた。同時に長さの計測用として、純白金製の板状の原器が作られた。フランス国立中央文書館に保管された為、後にアルシーヴメートル原器 (Mètre des Archives) と呼ばれる事となる。


メートルという新しい単位の普及を目指し、1796年から1797年にかけてパリの街中には複製の原器が16基設置されたが、すぐには普及しなかった。そこで1873年にフランスはメートル以外の長さの単位の使用を法律で禁止し、罰金も科した。同時にロンドン万国博覧会やパリ万国博覧会を通じて、世界中にメートルの普及活動を行った結果、徐々にではあるが普及し始めた。1875年には世界で共通の単位を使用する事を目的とする国際条約が締結されたが、その名はメートル条約である。


しかしながら、地球の形状は、現実には山あり谷ありな上に、単純な球体や楕円球から見ても歪んでいる為、本来長さの基準には馴染まない物であった。メートルの厳密な長さを測定する為に、再び地球規模で測定をする莫大なコストをかけるのも現実的ではなかった。そこで1869年、それまであくまで計測用の副原器の立場であったアルシーヴメートル原器そのものが長さの基準となった。


  • メートルとは、アルシーヴメートル原器の長さである。

ただし、アルシーヴメートル原器は実際に使用されていた為に、僅かなゆがみや摩耗が生じている事が判明した。この為1872年、アルシーヴメートル原器を基準に、新たなメートル原器を30本作製する事が決まった。しかしながら、1875年のメートル条約締結には製造が間に合わず、1889年の第1回国際度量衡総会によって、正式にメートル原器が長さの基準となった。


  • メートルとは、氷が融解する温度における、国際メートル原器の2本の目盛りの間の長さである。

国際メートル原器は、最も正確に製造されたNo.6が指定されている。国際メートル原器は白金

910%、イリジウム10%の合金で、1889年から2019年までキログラムの基準で使用されていた国際キログラム原器と同じ組成である。メートル原器自体の長さは1.02mで作られ、中の目盛りの間が1mとなる。また、変形が最小になるようにX字の断面を持つ。なお、1927年の第7回国際度量衡総会にて、この定義は環境条件や変形に対するより厳密になるよう再定義された。


  • メートルとは、温度0℃、標準機圧の環境において、水平面上に間隔を0.571m開けて平行になるよう設置した、直径0.1m以上の円柱2本の上におかれた国際メートル原器の、原器に刻まれた2つの中心線の軸を挟む長さである。

しかしながら制定当時から、国際メートル原器には精度に関する物理的な限界が指摘され、更に経年劣化や紛失損傷のリスクも指摘された。実際、イギリスのポンド・ヤード原器は1834年に焼損している。


1873年、ジェームズ・クラーク・マクスウェルは、干渉法によって高精度で普遍的に測定可能な光の特定波長を長さの基準にすべきという発想を提唱していた。公式には1889年から1960年までは、長さの基準は国際メートル原器であったが、遅くとも1925年までには、干渉法による長さの測定が事実上の定義となっていた。


  • メートルとは、0℃1気圧の乾燥大気中におけるカドミウム赤線の波長の1553164.1倍である。

そして1960年の第11回国際度量衡総会で、国際メートル原器による長さの基準は正式に廃止され、以下の干渉法による定義が採用された。


  • メートルとは、クリプトン86の準位2p^10と5d^5との間の遷移に対応する光の真空中における波長の1650763.73倍である。

ただしクリプトンの基準は、レーザーの安定放出や測定方法の精度向上によって、クリプトンランプ自体の安定性の悪さが問題となった。そして1983年の第17回国際度量衡総会で、現行の定義とほぼ同じ以下の定義が採用された。これは秒が原子時計によって極めて正確に測定できるようになった事と対の関係になっている。


  • メートルは、光が真空中を1秒の299792458分の1の時間で進む長さである。

ただし、公式な定義はこれであるが、実際のメートルの測定にはこれは用いられていない。実験室では理想的な光源や真空が無い為、波長の不確かさ、媒体の影響による屈折率の不確かさ、レーザーカウント解像度の原因により、まだ精度の良い測定ができない為である。この為第17回国際度量衡総会では、以下の測定法を推奨し、現在でもこれが事実上の定義である。



この定義によるメートルの不確かさは、秒の不確かさより数桁劣っている。1999年にはこれを改善する為、非常に発光時間の短い超短光パルスレーザーによる光周波数コムがアメリカやドイツで実験された。これは幾つかの国で新たな基準として採用されている。この研究を行ったジョン・ホールとテオドール・ヘンシュは、2005年のノーベル物理学賞を授与されている。


メートルの大きさ

他のSI単位と同じく、メートルにもSI接頭辞を付けて大きさを表す事が出来る。


ただし、量子力学の範疇では、物理的に意味のある長さは1fm (10^-15m) が下限であり、それ以下の単位はプランク長 (1.616×10^-35m) が出てくるまでほとんど現れない。この範囲でよく登場する非SI単位はオングストローム (10^-10m・記号Å) やボーア半径 (0.5292×10^-10m・記号a0) がある。ミクロン (10^-6m・記号μ) はかつて多用されたが、その記号がSI接頭辞のマイクロと同じである上に1ミクロン=1μmな事、非SI単位である事から使用は推奨されておらず、使用が避けられるようになっている。またマイナーな単位として1fmと同じ大きさであるフェルミ (記号fm又はF) やユカワ (記号Y) が存在する。


また、大きな接頭辞はkmこそ多用されるものの、それ以上の長さでは天文単位 (正確に149597870700m・記号au)、光年 (正確に9460730472580800m・記号ly) 、パーセク (約3.086×10^16m・記号pc) が天文学において多用される。なお、通常の宇宙論の範囲では、観測可能な宇宙の直径は886.48Ym (930億光年) なので、ギリギリSI接頭辞の範囲内に収まる事になる。


なおこれらの非SI単位において、SI併用単位であるとされているのは天文単位のみである。1981年までは光年とパーセクもSI併用単位であった。ボーア半径はSI併用単位ではないが、参考として掲載されている。


接頭辞大きさ他単位での表現
1Ym10^24m約1億光年1.9Ym: おとめ座超銀河団の直径
1Zm10^21m約11万光年1.6Zm: 銀河系の直径
1Em10^18m約106光年1.6Em: ω星団の直径
1Pm10^15m約0.11光年7.5Pm: 太陽からオールトの雲の縁までの距離
1Tm10^12m約6.69天文単位1.23Tm: ベテルギウスの直径
1Gm10^9m1.39Gm: 太陽の直径
1Mm10^6m2.38Mm: 冥王星の直径
1km10^3m1.852km: 1海里
1hm10^2m1.46hm: ギザの大ピラミッド
1dam10^1m3.3dam: シロナガスクジラの全長
1dm10^-1m1.2dm: CDの直径
1cm10^-2m2cm: 一円玉の直径
1mm10^-3m5mm: アカアリの体長
1μm10^-6m7μm: 赤血球の直径
1nm10^-9m2nm: DNAの二重螺旋の直径
1pm10^-12m53pm: 水素原子の半径
1fm10^-15m0.88fm: 陽子の電荷半径
1am10^-18m1am: 重力波望遠鏡のLIGOの感度
1zm10^-21m0.1zm: 電子の半径の上限
1ym10^-24m2ym: 1MeVのニュートリノの反応断面積半径

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国際単位系

メートル キログラム アンペア ケルビン モル カンデラ

長さ 天文単位 光年 パーセク

物理 数学

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