表記揺れ: ギリシア語
概要
インド・ヨーロッパ語族ヘレニック語派に属する言語。ギリシャ、キプロスなどで公用語とされている。
現代語の中では中国語と並んで古くから用いられてきた事が確認されており、少なくとも3500年前のクレタ文明では粘土板にギリシャ語の文章が刻まれていたという。その後、古代ギリシャの都市国家群やマケドニア王国、東ローマ帝国等で公用語として用いられ続け現在に至る。その影響力はギリシャに留まらず古代ギリシャ哲学を導入したローマ帝国を経て全世界に及んでいる(そのためか、現代ギリシャ語における英語由来の外来語のうち約12%がギリシャ語由来の語彙だという現象まで起きている)。現在でも欧米で学術用語を創出する際にはラテン語とともにギリシャ語(主に古代アテネ周辺で用いられていた「古典ギリシャ語」)が用いられる事が多い。
このように、現在に至るまで古典ギリシャ語の影響力が存続している関係で、日本の語学書でも単に「ギリシャ語」とした場合には現代ギリシャ語ではなく古典ギリシャ語を取り扱っているという事がしばしば見受けられる。
現代ギリシャ語はオスマン帝国統治下に流入したオスマン語などの周辺言語の影響を受けて文法・語彙ともに変質している。そのためギリシャ王国がオスマン帝国から独立した際には標準ギリシャ語としてアテネ口語をベースとした「ディモティキ」と古典ギリシャ語に範を取って周辺言語の影響を廃した文語「カサレヴサ」の2つの言語が生まれ、長らく両言語間での覇権争いが繰り広げられていた。現在ではギリシャの公用語としては「ディモティキ」のみが採用されているものの、司法や宗教など権威ある場においては「カサレヴサ」が(日本語における古文以上に)広く用いられており両言語が併存しているとも言える。
表記法は9世紀頃にフェニキア文字をベースに作られたギリシャ文字が用いられている。それ以前は線文字B、キプロス文字といった古代文字が用いられていた事もある。
ギリシャ語に由来する言葉
単語 | 語源 |
---|---|
アイデア | プラトン哲学用語「ιδέα」から |
アイドル | ειδωλον(偶像や幻影の意)から |
アイリス/イリジウム | Ἶρις(虹の女神)にから |
アスパラガス | ασφαραγος(激しく裂ける物の意)から |
アネモネ | Άνεμος(風の意)から |
アポクリファ | απόκρυφος(隠されたものの意)から |
アルカディア(理想郷) | Ἀρκαδία(ギリシャの地方名)に由来 |
イージス艦 | Αιγίς(ギリシャ神話に登場する無敵の盾)に由来 |
エヴァンゲリオン | ευαγγελιον(福音書)に由来 |
エコー | Ἠχώ(ギリシャ神話の精霊エコー)に由来 |
エルキュール・ポアロ | (Ηρακλής(ギリシャ神話の英雄ヘラクレス)に由来 |
エレキ | elektron(琥珀)に由来 |
エリート | Ἠλύσιον(エリシオン。所謂極楽浄土)から |
エロ | Ἔρως(愛の神)から |
オデッセイ | Ὀδύσσεια(ギリシャ神話の叙事詩オデュッセイア)から |
オーシャン | Ωκεανός(海の神オケアノス)から |
カオス(混沌) | Χάος(混沌の神カオス)から |
カメレオン | χαμαιλεων(地上のライオンまたは小さなライオンの意) |
カリスマ | Χάρισμα(授かる)から |
ギガ | γίγας(巨人族の名前)から |
ギター | κιθάρα(弦楽器の一種)から |
グリフォン | γρύψ(掠め取るなどの意)からヒポグリフはἱππό(馬)との合成語 |
ケトス(英:海獣) | κῆτος(クジラ)から |
コスモ/コスモス | κόσμος(秩序)から |
サイレン | Σειρήν(怪物セイレーン)から |
サークル | κύκλος(丸、円)から。サイクロプスも語源は同じ。 |
〇〇サウルス | Σαύρα(トカゲの意)のラテン語形から。イクチオサウルスはΙΧΘΥΣ(魚)、ティラノサウルスはτυραννος(僭主転じて暴君)の合成語 |
サイコ | Ψυχή(魂またはギリシャ神話のプシュケー)に由来。サイコキネシスはこれにκίνησις(動き)、サイコパスはπάθος(一時的な感情)が合成された言葉。 |
シリウス | Σείριος(焼き焦がすもの)に由来 |
ジェイソン(人名) | Ἰάσων(アルゴナウタイの船長イアソン)に由来 |
シンボル | σύμβολον(一緒+投げるの合成語) |
タウラス(羅:牡牛座) | Ταύρος(牛)から。Μίνωςと合成してミノタウロス。また「牛殺し」を意味するギリシャ語からケンタウロスができたと考えられる |
タレント | Ταλέντο(才能)から |
チタン | Τιτάν(巨神族タイタン)から |
デーモン | δαίμων(精霊)から。元は悪霊という意味ではなく、霊的存在の総称であった |
デウス・エクス・マキナ | ἀπὸ μηχανῆς θεός(機械仕掛けの神)やラテン語訳 |
トラウマ | τραύμα(精神的外傷)から |
ドラマ | δράμα(行動する)から |
ドラゴン | δράκων(見るもの)から。ドラキュラもこの言葉から派生。 |
ドルフィン(英:イルカ) | Δελφοι(デルポイ)と同一語源。この町の守護神であるアポロンがイルカに変身したという伝承がある。 |
〇〇ドン(怪獣や恐竜の名前) | ギリシャ語でὀδούς(歯)から |
ナイキ | Νίκη(ギリシャ神話の勝利の女神)に由来 |
ナルシスト | Νάρκισσος(ギリシャ神話に登場する青年)に由来 |
ネオン | νέος(新しい)に由来 |
ハイドロ | ὕδωρ(水)から。Ὕδρα(ヒドラ)も同一語源 |
パイロキネシス | πυρ(火)+κίνησις(動き)の合成語 |
ハープ | Ἅρπυια(掠め取るもの=ハルピュイア)と同一の語源を持つという説がある |
パニック | Πάν(牧神アイギパーン)に由来 |
ヒーロー | Ἥρα(ギリシャ神話の女神ヘラ)に由来 |
ヒポポタマス(英:カバ) | ἱππό(馬)+ποταμός(河)の合成語。漢字表記と大して変わらない。 |
フェニックス | φοῖνιξ(赤紫)の意味。フェニキア人と同一起源 |
プログラム | πρόγραμμα(課題)の意味。 |
プロト | πρωτό(最初の)意味。 |
ヘリウム | Ἥλιος(ギリシャ神話の太陽神ヘリオス)に由来 |
ファントム | φᾰντᾰ́ζω(可視化の意)。ファンタジーも起源は同じ。 |
ポリス(英:警察) | πόλις(都市国家)に由来 |
聖闘士聖衣神話 | Κλωθώ(紡ぐもの、クローゼットの語源)+Μύθος(神話、英語でのミュートスと同源同義) |
マクロ | μακρός(長大な)に由来 |
マラソン | Μαραθών(アテネ北東にある村)で行われた戦いに由来 |
ミクロ | μικρός(最小の意)に由来 |
ミント | Μένθη(コキュートス川の精霊)に由来 |
ミュージック | Μοῦσα(芸術の女神ミューズ)に由来 |
ヨーロッパ | Εὐρώπη(ギリシャ神話に登場する王女エウロペ)に由来。 |
Ag(銀) | Ἀργυρός(銀)の略称 |
主な単語
生き物
意味 | 古代ギリシャ語 | 現代ギリシャ語 | 備考 |
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ウマ | ヒッポス / Hippos / Ἵππος | アロゴ / Alogo / Άλογο | |
ライオン | レオーン / Leon / Λέων | リオンダリ / Liondari / Λιοντάρι | |
オオカミ | リュコス / Lykos / Λύκος | リコス / Lykos / Λύκος | |
クジラ | パライナ / Phalaina / Φάλαινα | ファレナ / Falaina / Φάλαινα | |
カエル | バトラコス / Batrakhos / Βάτραχος | ヴァトラホス / Vatrachos / Βάτραχος | |
ヘビ | オピス / Ophis / Ὄφις | フィズィ / Fidi / Φίδι | |
サメ | カルカリアス / Karkharias / Καρχαρίας | カルハリアス / Karcharias / Καρχαρίας | |
クモ | アラクネー / Arakhne / Ἀράχνη | アラフニ / Arachni / Αράχνη |
関連タグ
ミラボレアス※テーマ曲の舞い降りる伝説のコーラス部分がギリシャ語で歌われている