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アポロン

あぽろん

ギリシャ神話の太陽神。本来は「豊穣の神」だが、のちに太陽神としての神格が付加された。月の女神アルテミスの双子の兄ないし弟でもある。
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誘導分岐


以下は記事なし。


概要

ギリシャ神話に登場する神の一柱である。ローマ神話では「アポロ」とも呼ばれる。詩歌・医術・芸術をつかさどる若い男神


のちに太陽神ヘリオスの神格を吸収して、太陽の神となる。なので太陽神と見做されたのは古代ギリシアでも後の方の時代になってから。

ゼウスレトの子で、女神アルテミスの双子の兄(弟)とされる。

予言の神としての側面も持ち、デルフォイ(デルポイ)の神殿で巫女たちを通して下したという神託は有名。この予言の権能もアポロンが元来備えていたものではなく、ピュトンを倒しデルフォイの守護神の立場を奪った際に身に付けたものとされる。自らの予言の力を人間に分け与えることもできる。

しかし後述のエピソードから分かるように、自身の恋の行方については全く予知できない。

なお、人間に授ける予言は「もって回った言い方をする」「誤解を招く言い方をする」「悪い予言を回避しようとすればするほどドツボにハマる」と云うものが少なからず有り、そのせいで「ロクシアス(「斜め上な御方」「ひねくれた御方」的な意味)」と云う異名を持つ。


また詩歌を愛する吟遊詩人とされ、ギリシャ青年の精神を代表する神とされる。

しかし出生は遊牧民系とギリシャ系とは異なる。ギリシャに入ってから人民と共に成長していったと言われる。(なお、「元々は非ギリシャ系の神」だけあって、トロイア戦争では、ギシリアの敵であるトロイアに味方したとされている)

息子には様々な神がおり、また親父からもらった竪琴で二代目吟遊詩人となったオルフェウスオルペウス)もアポロンの息子である。

更にアルテミスと並ぶ弓の使い手でもあり、対象に病を運ぶ矢や金の矢を武器にしている他、パリスの弓にアキレウスの弱点を射抜くバフを与えている。さらにさらにボクシングの創始者という説もあり、ギリシャ軍の築いた城壁を素手で軽々と粉砕したり、音楽を競って敗北したマルテュアースの皮を剥ぐなど腕力も高い中々にチートな神様でもある。


特に恋愛関係に関しては、父親の血をまともに継いだせいなのか、そこらじゅうで恋愛をめぐる揉め事を起こしている。また自身が関係ないことでも恋人を失うこともある。

何れにせよ自分本位な考えが多いためそうなることもある。まさに残念なイケメンの古典的な例である。


色恋沙汰

ゼウスは目を留めた女性をほぼ百発百中でモノにして、ことごとく子供を生ませている。対してアポロンは失恋するほうが圧倒的に多い。


ヘラという正妻を持つゼウスが、他の女性とは誑かそうが力ずくであろうが一度でも楽しめればよしという姿勢で臨んでいるのに対して、独身の青年神であるアポロンはステディな恋人としての関係を求めていることが一因かもしれない。永遠の青年神という立場上、恋が実って妻帯者となることはイメージに合わないと考えられた結果かもしれない(後述するが、アポロンには疫病神としての側面があり、関わった女性が破滅するのは仕方のない事なのかもしれないが、それにしたって女癖が悪すぎやしないだろうか)。

さらに姉or妹とされるアルテミスに対してシスコンのような振る舞いを見せることがある。


以下はその例である。


ダプネストーキング事件

河の神ペネイオスの娘、ダプネを追いまわした事件。

事の発端は、彼の母神レアを苦しめる大蛇ピュトンを倒した帰りに、偶然会った愛の神エロスに対して小さな弓と小馬鹿したことだった。

仮に自分の先輩格、しかも年上の神に向かってこの無礼である(エロスは美の女神アフロディーテの養子で10歳児くらいの姿をしているが、エロスは精神だけの状態で、地球誕生(ガイア)以前から存在しているという。一旦アフロディーテの腹に収まって出てくることで受肉した)。

当然怒ったエロスは、アポロンに一目惚れを引き起こす「金の矢」を放ち、さら近くにいたダプネに最初に見た人間を嫌うようになる「鉛の矢」を放つ。

アポロンはダプネに一目惚れして告白するが、ダプネはアポロンを固く拒絶。結果、アポロンはひたすらダプネを追い回し続け、ダプネも必死に逃げる羽目になる。

そして河辺の近くでとうとうダプネの体力は尽き、ダプネの悲痛な叫びを聞いたペネイオスは彼女を月桂樹に変えてしまう。

恋が実ることなく終わったアポロンは、ダプネだった月桂樹から月桂冠を作って自分の持物として身につけているのだとされる。


エロスのほうが悪いように思うが、元を糺せば完全に大伯父に敬意を払わなかったアポロンが悪い。


コロニス誤殺事件

アポロンはまた、テッサリア領主の娘コロニスとも恋仲になった。しかし、アポロンの伝令役を務めていた白い烏が、コロニスが別の男と付き合ってると報告した為、憤激したアポロンはテッサリアへと飛び、間男と思しき影に必殺の矢を打ち込んだ。

ところがそれは間男ではなくコロニスで、彼女はアポロンの子を身ごもっている事を告げた後に亡くなった。さすがのアポロンも激しく後悔し、コロニスの子を救い出した後に、ケンタウロスの賢人として名高いケイローンに養育を依頼した。この子供が後にへびつかい座として名を馳せる名医アスクレピオスである。

そしてアポロンは、己の迂闊ぶりを棚に上げて、嘘の報告をした白い烏を黒く染めた上に、言葉を取り上げて「カーカー」としか鳴けない様にした。別の伝承では、この烏は後にアポロンによって天に張り付けられてからす座となるが、その隣にコップ座を配置され、眼前に水があるのに飲めないようにされたという。

なお、このカラスは嘘つきではなく、早とちりをしてしまったという説がある。

またコロニスを殺害したのは兄を侮辱したことで激怒したアルテミスという説もある。


カサンドラ能力開発事件

トロイアの王女で予言の巫女であったカサンドラに恋をしたアポロンは、彼女に絶対当たる予知能力をあげるから、ぼくの恋人になってよ!と迫る。

これを受け入れたカサンドラは晴れてアポロンの恋人となるが、最初に見た予知はなんと「アポロンに散々弄ばれた挙句に捨てられる自分」というものだった。

この予言を見てしまったが故に、カサンドラはアポロンに別れを告げるも、当のアポロンはキレて「予言を誰も信じない」呪いを彼女にかける。

結果、彼女の予言は絶対に当たるが誰も信じない予言となってしまい、その末にトロイアはトロイア戦争にて滅亡を迎える。


甘言でかどわかした揚句、自分の性癖を棚上げにしてこの仕打ちである。


オリオン謀殺事件

アポロンが一番やらかした事件。

詳細は「アルテミス」の項を参照。

そんなことしてるから、自分の恋愛もうまくいか(ry


人間の恋仇に負ける事件

アポロンはダメな神様兄弟の孫でマルペッサという美女に恋したことがあるが、イダスという人間の男性もまた彼女を愛した。いろいろあって両者が対立するのだが、まともに争えば神と人間では不公平。そこで「ここはフェアに行こうじゃないか。本人の意志を尊重して、マルペッサ自身に選んでもらおう」という裁定をゼウスが下し(自分が当事者なら絶対にこんなことはしないだろう)、両者は合意。アポロンにしてみれば「神が人間の男などに負ける気がしない」という絶対の自信があったのだろうが、マルペッサの方は冷静で、「神であるアポロン様は不老不死だから、私が年を取って容色が衰えたら、きっと見向きもされなくなるだろう」と考えた。「同じ人間であるイダスなら、一緒に年を重ねてずっと連れ添ってくれるはず」と、賢明にもイダスの方を選んだのだった。数々の恋に破れてきたアポロンだが、このように人間の男と争って負けてしまったこともあるのだ。


アザミ誕生事件

ある時アポロンニンフのアカントスに恋をしたが、彼女は受け入れない。何度断られても執拗に言い寄るアポロンだったが、我慢ならなくなったアカントスはついに立ち向かい、爪で彼の顔を引っ掻いてしまう。

これに逆ギレしたアポロンは、彼女をその勝気な性格を象徴するような、トゲのある葉アザミに変えてしまったという。ストーカー行為をしておきながら、そのターゲットに反撃されると今度はこの仕打ちである。身勝手にも程があるとしか言いようがない。


ヒュアキントス殺人事件

実はこの男、女だけではなく少年を好んでいたという逸話もある。本当に節操ないなアンタ…。(古代ギリシャでは「少年愛」という恋愛関係があったのでなんらおかしい事でもない。)

美少年であるヒュアキントスを大層気に入っていた彼はそれはそれは仲良く遊ぶほどの仲であった。しかし、同じくヒュアキントスを好いていた西風の神ゼピュロスはそんな二人の関係が面白くなくてたまらず、風を操って円盤投げに使われる円盤の軌道を変えた。すると不幸にも円盤はヒュアキントスに激突し、ヒュアキントスは死んでしまった。アポロンは嘆き悲しみ、彼をヒヤシンスの花へと転生させた。

珍しく、アポロンにしては落ち度がないエピソードとなっている。



ひまわりになったニュンペー

アポロンは海神の娘クリュティエと恋仲だった最中に、ペルシャ王女レウコトエに一目惚れしてしまう。アポロンは彼女の母親に化けて「母娘の内密の話」ということで侍女たちを退けて彼女の部屋に入り込むという姑息な手段を使って思いを遂げた。

これを知って嫉妬に狂ったクリュティエはレウコトエの父親に彼女の不身持ちをことさらに悪し様に告げ口する。激怒した父親は問答無用で娘を生き埋めにして処刑してしまった。

これでアポロンの気持ちが自分に向くと思ったクリュティエだが、当のアポロンはレウコトエの死を嘆き悲しむばかりで見向きもされず、彼女の死体が転生した樹木を大事そうに抱えて何処かへ去っていった。

それでも必死で「私の事を見て!私の事を見てよ!愛してよ…」と言わんばかりに天上を駆ける太陽の馬車を見上げ続けたがそんな悲痛な叫びが通じる事は一切なく、太陽を見続けた状態のまま、一輪の花に姿を変えてしまったという。

なお、この花の種類は作中では触れられていない。後世ではひまわりヘリオトロープだろうと言われているが、そもそもこの二種は新大陸で発見されたものであり、当時のギリシャ人には知られていなかった。ギリシャに生育するキンセンカとする説が有力なようだ。

クリュティエのやり方がアレで、レウコトエの父親の残酷さも大概だとはいえ、動機自体は浮気で捨てられそうになったという極めて真っ当なものであり、アポロンが女絡みで失敗する理由がなんとなく理解できる逸話となっている。


ちなみに、この逸話は元来ヘリオスのものだが、太陽神としてアポロンと同一視されるに至ってアポロンの逸話に数えられるようになった。アポロンの話としても納得できてしまうのが酷い。元々は浮気現場を目撃されたアフロディーテがヘリオスに施した復讐という説もあるが……。


息子達

彼の息子はディオニュソスの信者にズタズタにされたオルフェウスを除くと

世界の理を覆しかけたためハデスゼウスに殺される(アスクレピオス

世界中を破壊しかけたためゼウスに殺される(パエトン

と殆どがゼウスの手によって処罰されている。

マルペッサの例もあるがゼウスからはアレス以上(ここ重要)の問題児だったらしい。

しかしながら、アポロンは息子達には愛情を注いで大事にしていた。


予言の神として

古代ギリシアにおけるアポロンの重要な権能の1つが「予言」だったのだが……そこは「斜め上な御方(ロクシアス)」の別名を持つ神様。

人間達に授ける予言の中には「嘘は言っていないが、信じたらロクな結果にならない」ものも色々と有る。

以下にその一例をあげる。

  • ある国の王がペルシアと戦争しようとして、勝利出来るかを訊きに来る。→「戦争を始めたなら、偉大な国を滅ぼす事になるだろう」→ペルシアとの戦争の結果、滅んだのは、その王の国。
  • オイディプスに授けた予言。「自分は本当は誰の子供なのか?」と云う問いに対して「故郷に帰ってはならない。もし、故郷に帰れば、お前は父親を殺して母親を娶るという鬼畜の所業をする羽目になるだろう」という嘘ではないし、一見、問いの答では無いように見えて、実は問いと密接な関係が有るが、事実の一部を故意に隠しているとしか思えない予言を授ける。その予言を信じたオイディプスは、予言の結末を回避しようとすればするほど、自分でも気付かないまま、どんどんドツボにハマっていき……。

ただし、デルフォイのアポロン神殿に来る途中に野盗に襲撃された際に同行者を見捨てて自分だけ逃げた男に対して「帰れ。友を見捨てるような者に予言を授ける事は出来ない」と言って追い返したエピソードも有る。


語源

 アポロンは、アッティカイオニアホメーロスのギリシア語ではἈπόλλων(属格はἈπόλλωνος)、アポッローンと綴られる。ドーリス語形ではἈπέλλων、アペッローンアルカディアキプロス方言ではἈπείλων、アペイローン、アイオリア語形ではἌπλουν、アプルーンとなり、ラテン語ではApollō、アポッローになる。

 アポロンの名は──関連する、より古い「パイアーン」という神名とは異なり──線文字B(ミュケーナイギリシア語)の文章には見出されない。可能性のあるものとして、クノッソスのE842号粘土板には、前後に欠落部分のある形で、「pe-rjo-」という言葉が発見されている。

 名前の語源は、不確かなままになっている。古アッティカ方言のἈπόλλωνという綴りは、西暦の始まりまでにほとんどすべての異形に取って代わったが、しかしドーリス型のアペッロン(Ἀπέλλων)は、より初期のἈπέλjωνという形から発した、よりアルカイックな形である。恐らくドーリスの月のアペッライオス(Ἀπελλαῖος)、そして家族祭アペッライ(ἀπελλαῖα)への若者の参加においての供物アペッライアと同根と考えられる。いくらかの研究者によれば、ドーリスの言葉アペッラ(ἀπέλλα)に由来し、元来は「壁」、「動物のための柵」を意味し、のちには「広場に限られた集まり」を差すようになったという。アペッラはスパルタにおける大衆の集まりの名前で、「民会」を差す語に対応する。ロバート・スティーヴン・ボール・ベーケスは、「アペッライ」という名詞と神名の関連を否定し、ギリシア以前の、Apalyunという言葉を原型として提案している。

 いくつかの民間語源の例が、古代の作家たちから証言されている。そうして、ギリシア人たちはアポロンの名を、しばしばギリシア語の動詞アポッリュミ(ἀπόλλυμι)、「破壊する」と結びつけた。プラトンは『クラテュロス』の中で、神の名前をアポリュシス(ἀπόλυσις)、「買い戻す、身請けする」と、またアポルーシス(ἀπόλουσις)、「浄化」、そしてハプルーン(ἁπλοῦν)、「単純」、中でもテッサリア語形のアプルーン(Ἄπλουν)、およびアエイバロン(Ἀειβάλλων)、「絶えず射かけるもの」と関連づけた。ヘシュキオスはアポロンの名をドーリス語のアペッラ(ἀπέλλα)、「集まり」と結びつけ、アポロンが政治生活の神であるとし、また彼はセーコス(σηκός)、「囲い」と結びつけ、アポロンが家畜の群れと牧者たちの神であるとしている。古代マケドニア語ではペッラ(πέλλα)は「」を意味し、ペッラ(古代マケドニア王国の首都)、ペッレーネー(Πελλήνη)といったいくつかの地名はこの語から発している。

 名前について、いくつかの非ギリシア語源説が提出されている。ヒッタイトの形アパリウナス(dx-ap-pa-li-u-na-aš)がマナパ・タルフンタ書簡に確認され、恐らくフルリ人の(そして確実に、エトルリア人の)疫病の神アプルーに関係している。アプルーはまた、バビロニア太陽神シャマシュの縁戚であるネルガルの添え名の一つで、アッカド語で「エンリルの息子」を意味する語、「アプルー・エンリル」から発していると考えられる。疫病の神としてのアポロンの役割は、トロイアのアポロンの司祭クリューセースによる、ギリシア人たちに対して疫病を送り込むことを求めてアポロン・スミンテウス(Ἀπόλλων Σμινθεύς, 「ネズミなるアポロン」)に捧げた祈祷の中に明示されている(疫病の神が治療の神に変じたことの背景は、病魔を祓うためには、疫病を司る神を宥めねばならないと考えられたことが推測される)。

 ヒッタイトの碑文には、初期の形態Apeljōnという形が表されている。その形は、キプロスのἈπείλωνと、ドーリスのἈπέλλωνという形との比較から推論された。リュディアの神格Qλdãnsは、初期の/kʷalyán-/という形の口蓋音化、後中音消失で、そしてリュディア以前の、yのdへの音変化が反映されたものだという。前ドーリスのἈπέλjωνおよびヒッタイトアパリウナスという音の中に見受けられる唇音のpの代わりに、唇軟口蓋音が用いられていることに注意すべきだろう。

 アパリウナスに示されるルウィ語の語源説は、アポロンを「罠のもの」、「猟人」の含意を持つものとしている。


起源

 ギリシアデルフォイデーロスにおけるアポロン崇拝の中心地は、紀元前8世紀にまで遡ることができる。デーロスの神所は元来、アポロンの双子の姉妹アルテミスにあてられていた。デルフォイでは、アポロンはピュトーの殺害者として崇敬された。ギリシア人にとって、アポロンは全ての神々の役割を一柱で兼任し、それは複数の神々に起源を持ち、複数の権能を得たことに発するかもしれない。アルカイック時代のギリシアでは、彼は予言者であり、より古い時代には「治療」と結びつけられた託宣の神だった。古典時代のギリシアでは、彼は光と音楽の神であり、また民間信仰の中では、退魔という強力な役割を担っていた。ヴァルター・ブルケルトはアポロン崇拝の前史として三つの構成要素を見て取っており、それを彼は「ドーリス=北西ギリシアの要素、クレタミノアの要素、シュリアヒッタイト要素」と表している。

 東方におけるその始まりから、アポロンは「徴しと兆し」(σημεῖα καὶ τέρατα)を見極め、そして日々の前兆を読み解く技をもたらす存在だったという。この霊感・神託の信仰は、恐らくアナトリアから導入された。儀式偏重主義は、最初からアポロンについて回っている。ギリシア人は法律尊重、神々の秩序の管理、そして節制と調和のための要求を作り出した。アポロンは輝ける青春、理想的な美術哲学、節制、霊的な生活を司る神にして、音楽と聖なる掟、秩序の守護者となった。古いアナトリアの神の改良と、その知的な領域への上昇は、ギリシア人の功績の一つとみなされるかもしれない。

治療者、悪からの保護者としての神

 アポロンの「治療者」としての機能は、パイアーン(Παιών-Παιήων)と結びついている。パイアーンは『イーリアス』における神々の医師であり、より原始的な宗教から採り入れられた神格と考えられている。パイアーンは恐らくミュケーナイのpa-ja-wo-neと関連しているが、確実ではない。パイアーンは独立した宗教を持っていないが、しかし病気を癒すとされた魔術師たちに歌われる、聖なる魔法の歌を擬人化した存在である。ギリシア人たちは、後になってパイアーン(παιάν)の歌の本来の意味を知った。魔術師たちは「先読みの医師たち(ἰατρομάντεις)」と呼ばれ、彼らは陶酔状態で予言を行い、それはまさしく託宣所でアポロン神が用いるものだった。

『イーリアス』において、アポロンは神々の下の治療者であり、しかし彼はまたを彼のによってもたらす、ヴェーダの疫病の神ルドラと同じ存在になっている。彼は疫病をアカイア人たちにもたらしている。病をもたらす神は、それを防ぐこともできる。病気が止まると、彼らは浄化の儀式を執り行い、彼に牛100頭の生け贄を奉じている。僧たちが誓いを充たすと、彼らは祈りをささげ、彼ら自身の神、パイアーンの名を呼んでいる。

 治療者としてのアポロンの知られた名は、パイオーン(παιών、文字通り「治療者」「支援者」)、エピクーリオス(ἐπικούριος、「救いの」)、ウーリオス(οὔλιος、「有害な」「不吉な」)、ロイミオス(λοίμιος、「疫病の」)などがある。古典時代民間信仰における彼の強い権能とは厄払いであり、そこからアポトロパイオス(ἀποτρόπαιος、「悪を退ける」)、アレクシカコス(ἀλεξίκακος、「悪を防ぐ」)と呼ばれていた。後代の筆記者たちは、「パイアーン」と綴ることが多くなり、それは単に癒しの神としての機能におけるアポロンの添え名になった。

 ホメーロスはパイアーンを神として、そして厄除けへの感謝または凱旋の双方を司る歌として歌っている。そのような歌は本来アポロンに宛てられたもので、以後は他の神々にも向けられるようになった。ディオニューソスヘーリオスとしてのアポロンアポロンの息子で治療者アスクレーピオスなど。紀元前4世紀ごろ、パイアーンは単に賛美歌の決まり文句になっていた。その目的は、病と不運からの保護を願うものか、もしくはそのような魔除けが与えられた後、感謝を捧げるものになった。こうして、アポロンは音楽の神としても考えられるようになった。ピュートーンの殺戮者としてのアポロンの役割は、彼を戦いと勝利にも結びつけた。そのようにして、ローマの慣習では、行軍中や、戦場へ入る前の軍にパイアーンの賛歌が歌われ、また艦隊が浜辺を去り、勝利を勝ち取った後などにも歌われるようになった。

ドーリア起源

 ドーリス人、そして彼らのアペッライの祭りの始まりとのつながりは、北西ギリシアにおけるアペッライオスの月によって補強される。この家族祭はアポロン(ドーリス語形ではἈπέλλων)に向けられている。アペッライオスは彼らの儀式の月で、アペッロオンは「偉大なるクーロス(μέγιστος κοῦρος)」だった。しかし、それは単にドーリス語形の、古代マケドニア語の「ペッラ」、「石」と関連する名を説明するにすぎない。岩石は、神の崇拝、中でもデルフォイオンファロス)における託宣所において重要な役割を果たしている。

「ホメーロス風賛歌」は、アポロンを北方の侵入者と表している。彼の到来は「暗黒時代」に起こり、ミュケーナイ文明の崩壊後に続いたものだったことは間違いなく、そして彼のガイア(母なる大地)との争いが、その娘である蛇ピュートーンの虐殺の伝説によって表されている。

 大地の神は霊的な世界に権勢を及ぼし、彼女こそが神託の背後にある神と信じられていた。より古い民譚では、二匹のドラゴンについて、恐らく故意に一つにして言及している。語り手は、雌のドラゴンはデルフュネー(Δελφύνη、δελφύς、「子宮」より)、そして雄のドラゴンはテュフォーン(Τυφῶν、「燻す」)、ティターノマキアーにおけるゼウスの大敵とピュトンを混同して言及している。ピュトンは、ミノアの宗教では寺院の善きダイモーンとして出現するが、しかし彼女はドラゴンとして、東洋北欧の民話に現れるような形で描かれている。

 アポロンと彼の姉妹アルテミスは、彼らの矢をもって死を送り込む存在でもある。この概念は、病と死が超自然的な存在、もしくはゲルマン北欧の神話共通の魔術師たちが、不可視の射撃によって送って来るものだった。ギリシア神話におけるアルテミスはニンフたちのヘーゲモン(ἡγεμών、「指導者」)でもあり、そしてニンフたちは北欧神話におけるエルフと同様の役割を担っている。「エルフの一撃」は本来、エルフに帰せられる病や死を差したが、のちには人を害する魔女たちに使われる石の鏃、そして治療の儀式も意味するようになったと確認されている。

 ヴェーダルドラアポロンと同じ機能を持っている。この恐ろしい神は「射手」と呼ばれ、その弓矢はシヴァの持ち物でもある。ルドラは彼の弓矢によって病を送り込むが、彼は人々をその脅威から解放する能力も持ち、そして彼の代替シヴァは治療者で内科医の神でもある。しかし、アポロンのインド・ヨーロッパ的な構成要素は、彼の前兆の解釈と悪魔祓い、そして託宣の神としての強い結びつきを説明してはいない。

ミノアの起源

 予言の崇拝はデルフォイに、ミュケーナイ時代から存在したと考えられている。歴史に残る時代には、デルフォイの僧侶たちは「ラブリュアダイ」(「諸刃の斧の男たち」)と呼ばれており、それはミノアの起源を指し示している。諸刃の斧ラブリュスは、クレタ島ラビュリントスの象徴だった。ホメーロス風賛歌は、アポロンがイルカとして現れ、クレタ島の僧侶を、明らかに彼らが自分たちの宗教的な慣例を移植した場所、デルフォイへと運んだことを付け足している。アポロン・デルフィニオスもしくはデルフィディオスとは、クレタ島やその諸島において特に崇拝された海神だった。アポロンの姉妹アルテミスはギリシアの狩猟の女神で、ミノアの「動物たちの女主人」ブリトマルティス(ディクテュンナ)と同一視された。彼女の最初期の描写では、彼女は、その持ち物として弓矢を持つ狩猟の男神、「動物たちの主人」と結びつけられている。彼の本来の神名は定かではないが、処女の「動物たちの女主人」が近くに立っており、彼女の兄弟となっている、より大衆に広まっているアポロンに吸収されていったと考えられる。デルフォイの古い託宣所は、そこに寺院での霊感を受けて行う一種の予言が存在していた確証はないものの、より土着の聖職者の伝統と結びついていたと考えられる。いくつかの研究者は、ピューティアーが数世紀もの間、地元の伝統によって、一貫した手続きの中での儀式を続けてきたと結論している。この関係で、神話における占い師で、アナトリアに起源を持つシビュラは、彼女の陶酔的な手法とともに、予言それ自体とは無関係であるように見える。しかしギリシアの伝統は、上記の存在と、月桂樹の葉を噛んで食べる存在について言及しており、最近の研究によっても確認されていると考えられている。プラトンはデルフォイとドドナの巫女たちを熱狂した女たちを、マンティス(μάντις、「預言者」)というギリシア語と結びつけて、マニア(μανία、「熱狂」)に憑かれた者と表現している。その唇から神の言葉を発する、シビュラのように狂乱した女たちは、紀元前2000年には近東マリシリア)に記録されている。クレタ島は紀元前2000年にはマリとの接触を持っているものの、陶酔的な予言の手法がミノア、ミュケーナイ時代に存在していたという確固たる証拠はない。恐らく、この手法は後にアナトリアから導入され、デルフォイ土着の、そしてギリシアのいくつかの地域では休眠状態にあった既存の予言者崇拝が再建されたと考えられている。


アナトリアの起源

 学問の領域では長い間、アポロンが非ギリシアに起源を持つと考えられてきた。アポロンの母レートーリュディアに起源を持ち、彼女は小アジアの沿岸部分で崇拝されていた。霊感を受けた予言者の崇拝は恐らく、シビュラの起源であり、最も古い予言者の寺院のいくつかが存在しているアナトリアからギリシアへと導入された。前兆、徴、浄化、悪魔祓いは古いアッシリアバビロニアの碑文に登場し、それらの儀礼はヒッタイトの帝国の中に広まっていた。ヒッタイトの碑文では、王がバビロニアの巫女たちを確実な「浄化」のために招いたことが語られている。

 同じ話が、プルタルコスによって言及されている。彼はクレタ島予言者エピメニデースが、アテーナイをアルクメニオダイによってもたらされた汚染の後に浄化し、予言者の生け贄の知識と葬列の慣例の改革が、ソローンのアテーナイ国家の改革を手助けしたと記している。この物語は、エピメニデースが恐らくアジアシャーマン的な宗教の継承者であり、ホメーロス風賛歌とともに、歴史に残る時期まで、クレタ島が根強く宗教を引き継いでいたことを示している。ギリシアにおいては休眠状態だったこれらの儀式が、アナトリアへとギリシア人たちが移住した際、再び導入されたと考えられている。

 ホメーロスはアポロンを、トロイア戦争中、アカイア人たちと争うトロイア側として描いている。アポロンは恐るべき神であり、ギリシア人には他の神々よりも崇拝されない存在として描かれている。この神は小アジアのウィルサ(トロイ)の守護神アッパリウナスと関係すると考えられるが、この言葉は完全ではない。西アナトリアの起源は、並行して存在したアルティムス(アルテミス)およびQλdãnsの崇拝によっても補強されている。その名前は、現存しているリュディア後の文章の中にあるヒッタイトの、そしてドーリス語形と同根と考えられている。しかし、最近の研究は、Qλdãnsとアポロンとの同一視に疑いを投げかけている。

 ギリシア人たちは彼にアギュイエウス(ἀγυιεύς)という名を、公共空間と家屋を司る、厄払いの守り神としての名として添え、そして彼の象徴は細く削られた石、もしくは円柱だった。しかし、一般にギリシア人の祭りは満月の時に祝われ、アポロンの祭りは全て月の第七日に祝われており、この画然性はバビロニアの起源を指し示している。

 後期青銅器時代(紀元前1700年から1200年)、ヒッタイトフルリ人のアプルーという疫病の神が、疫病の続く年に祈られていた。ここに我々は、本来は疫病を送り込む神が、病を終わらせるために祈られたという状況を見て取ることができる。アプルーは「~の息子」を意味し、それはバビロニア太陽神シャマシュに連なる神ネルガルに添えられた称号である。ホメーロスはアポロンを、自らの矢をもって死と病を送り出し、しかしそれを癒すこともでき、魔法の業を持つ、ギリシアの他の神々とは異なる恐ろしい神として説明している。『イーリアス』では、彼の神官がアポロン・スミンテウス、野ネズミ(から)の守護者としての、より古い農業に関する役割を保つ、ネズミの神に対して祈りを捧げている。これらの機能は、ミュケーナイに起源を持つと考えられる、癒す神パイアーンの機能も含めて、アポロン崇拝の中に融合している。


象徴

道具は芸術の神としての側面から竪琴、上述のダフネのエピソードから月桂冠となっている。


一方で聖獣は鹿カラス白鳥雄鶏。このうち、鹿アルテミス白鳥アフロディーテ雄鶏ヘルメスの聖獣でもある。彼らの内、蛇や鷹そしてカラスには固有のエピソードがあり、蛇は息子のアスクレピオスの使い、鷹はパルナッソス山で命を絶った戦士ダイダリオンを変化させた姿だというエピソードから。カラスは言わずもがなであろう。

また、上述の逸話からもわかる通り、何かと植物に縁のある神でもあり、その殆どが相手への未練から植物を創造するというものである。


モチーフにしたキャラクター

いわゆる怪人ヴィランに属する。アポロンをモチーフにしたせいか、GOD秘密警察第一室長の肩書きをもっていたり、主人公のライバルだったりと特別な立ち位置にいる。分かりやすい部分だと盾が太陽をかたどっている。





関連タグ

アポロ(表記ゆれ)


ギリシャ神話 ローマ神話  男神 太陽

出光興産出光昭和シェル

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