ルドラ
るどら
「吼える」を意味する言葉を語源とする名を持つ風神。強風が吹き荒ぶ際の轟音、モンスーンを神格化した神。
また、暴風雨を司る武神の集団「マルト神群」の父親であり、彼の息子達は「ルドラ神群」とも呼ばれる。
ルドラは生物を殺傷する破壊力、万物を育てる豊穣の力という暴風雨が備える二面性を象徴する存在である。ルドラは人間や家畜、神々にすら死と病気の矢を放って苦しめ、盗人の神という荒ぶる側面を持ち、その一方で医薬を用いて疫病を追い払い、家畜の王として人々の生活を守る慈恵の神で、それゆえに牡牛をシンボルとする。
この二面性はルドラの最たる特徴であり、恐るべき神性のルドラは赤毛を三つ網にした血色の良いまたは暗褐色の肌をした牡豚に乗る男として、恵み深い神性のルドラは太陽の如く黄金に輝き美しい姿であると考えられた。さらに破壊と守護の性格は後代の三神一体構造の変革に際して近似した性格を持つアグニと結びつき、その座にルドラが取って代わるという結果に行きついている。
一方で、ルドラは他神と比較してもかなり非アーリア的な色が強い異質な存在でもある。
顕著な例として、通常の神は東の方角に居住するのに対しルドラは北の方角(ヒマラヤ)に住み、『シャタパタ・ブラーフマナ』ではソーマの奉献から除外されて、地に投げられた供物や傷んだ供犠、残り物のみを受け取るとされる。
以上の性格はルドラの像にも強く表れており、エローラ石窟寺院のルドラ像はバイラヴァの様な憤怒相と多腕、無数の人間を踏みしめる恐ろしい姿ながら、病気の治療に使う薬を意味する小箱を複数所持している。
『リグ・ヴェーダ』に収録された古い伝承ではアスラともされるが、後に完全にデーヴァとなった。また、同じアスラとして扱われるヴァルナの様にルドラは司法神としての性格を持ち、悪人を殺して有徳者を養う神としても信仰されていた。
シヴァとの関係
ルドラの異名の一つ「シヴァ(吉祥)」はやがて独立して一柱となり、ヒンドゥー教の主要な神となった。
ルドラがアグニと結びついていたことから、シヴァは神々の司祭という優位を引き継ぐことができ、ルドラ‐シヴァの備える苦行者階級の神としての面がそれを後押しした。
また、ルドラの“家畜の神”像はアーリア人以前の土着信仰における犠牲を求めて対価を約束する“獣の主”と結びつき、後代のシヴァが備える豊穣授与の機能はより強められたとされる。
そしてルドラはシヴァに吸収され、シャイヴァ派ではシヴァの破壊神としての相の名称になっている。
ルドラはシヴァと同一視されたが、彼と共にマルト神群を産んだ牝牛プリシュニーは特にパールヴァティと同一視されてはいない模様。
ただしマルト神群誕生譚の一つには、賢者ダクシャの娘ディティの子がインドラに引き裂かれて四十九の肉片にされた際に、パールヴァティの願いでシヴァがそれぞれの肉片を子供の姿に作り変え、パールヴァティがその養母になったという逸話が存在する。そして、シヴァによって作られた子供としてマルト神群は“ルドラの息子”の名と実体を得たといわれる。
プラーナ文献において、ルドラがブラフマーから生み出されるシーンが描かれている。ブラフマーは自身に続くプラジャーパティ(創造神)たちや高位の聖仙(リシ)といった他の超常的存在を創造する。
しかしブラフマーが創造した者たちは、生まれながらに執着から離れる等して、自分自身が創造を行うことには注意を払わない。
そこで創造を継続し、天地における様々な生類の誕生や生成を司る者としてルドラを生み出したり、既に居るルドラに対して促す、という筋書きである。
ルドラの誕生の要因としては「怒り」(ヴィシュヌ・プラーナ、ヴァーユ・プラーナ)または「苦行」(クールマ・プラーナ、スカンダ・プラーナ)の2パターンが存在している。
両者の複合形として怒りからシヴァが生まれたあと、苦行によってルドラ(に相当する姿)に変化するというパターン(シヴァ・プラーナ、リンガ・プラーナ)もある。
この神話の特筆すべき点として、ルドラが両性具有の存在として描写されるという要素がある。リンガ・プラーナでは「アルダナーリーシュヴァラ(半分が女性の主宰神)」と呼称される。
アルダーナリシュヴァラ伝承の中にはシヴァとパールヴァティーが抱擁して融合した、というものがあるが、ルドラ誕生神話においては逆に元々アルダナーリーシュヴァラである存在が男神と女神に分裂する。
クールマ・プラーナやスカンダ・プラーナ等ではブラフマーは女性の半身に「ダクシャの娘となれ」と命じ、(ダクシャの娘であり後にパールヴァティーに生まれ変わることになる)サティーの神話と接続される。
サティー神話ではバラバラにされた彼女の遺体はそれぞれ女神たちとして再生するが、リンガ・プラーナではそれに先立つようにアルダナーリーシュヴァラの女性の半身から、様々な女神が創造される。そこにはドゥルガーやカーリーのようなシヴァの妻の異相だけでなく、ラクシュミーやサラスヴァティーのような明らかに別存在である女神も含まれる。
アルダナーリーシュヴァラとしてのルドラの分裂を描くこの神話において、全ての女神はこの時に生まれ、他の全ての女性的なるものの創造もこれに続いて展開される。
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終ワル最新話まで読みました記念。 読み終わってすぐルドシって検索したら素敵なルドシ電シを描かれている神絵師がいらっしゃって感動のあまりパッションだけで書きました。 『互いの立場や環境の所為で法や社会的に認められる番の形に収まり、手と手を取って結ばれることはないのだけれど、お互いの目に映るお互いが最も美しく輝き、生きている限り心の奥底の一等席にはお互いが座っていて、どんなに離れていても切っても切れない業が首に纏わりついてる二人だけの関係を築いてるタイプのロマンチックなクソデカ感情』が性癖です。 そういう訳でインドゴロツキブロマンスに手を出してみました。ルドシ万歳。 そのうちポセ小次の純愛ホラーとか手を出してみたい。 シヴァの異名の中の月の冠を戴く者(チャンドラセカラ)とか半分が女性の王(アルダナーリーシュヴァラ)ともつれた髪を持つ者(ジャティン)とか踊りの王(ナタラージャ)とかにエモを感じ、神話的にルドラは荒っぽく、残酷な側面、シヴァが慈悲深く穏やかな側面をそれぞれ持ってるっていうところにクソデカ感情を見出し、世界の破壊が必要になった時にはシヴァが舞うターンダヴァとパールヴァティの踊るラースヤ、優美で繊細で穏やかな感情が特徴的な女性の舞踊によって、世界の破壊が遂行される。(wiki調べ)という伝説が好きだったのでこんな話しになりました。 ルビ機能はじめて使ったので、出来てるのかすごく不安。15,330文字pixiv小説作品- 裏切られて狂った私を助けてくれたのは、赤い悪魔でした。
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