ヒンドゥー教
ひんどぅーきょう
発祥 | 紀元前2300年~1800年(解釈によって諸説あり)/インド・ネパール |
---|---|
開祖 | バラモン教が発展する形で自然発生のためなし |
体系 | バラモン教から引き継がれた聖典ヴェーダや制度を中心とし、現地の土着信仰なども吸収した多神教 |
シンボル | オーム |
ヒンドゥー教は、キリスト教やイスラム教のような特定の開祖により開かれた信仰ではなく、原型であり古代ヒンドゥー教とも解釈されるバラモン教が、インダス文明の時代からインド及びその周辺に居住する民族の土着信仰と融合し、時代に従って変化して誕生したものとされる。成り立ちとしては、日本の神道に似ており、神道と同様にいつ始まったかについては見解が分かれている。
原型であるバラモン教は、西方からやってきたアーリア人たちの宗教が、さらに元々インドに住んでいた人々の信仰を吸収する形で生まれたとされる。ヴェーダ聖典に説かれる讃歌の詠唱や祭儀、高度な思弁が中心であったが、ヒンドゥー教へと発展を遂げる際にシヴァやヴィシュヌといった特定の神に献身的な信仰を捧げる面が強調されていく。
詳しくはインド神話を参照。
典型的な多神教であり、様々な神が互いに絡み合い、争い合う豊かな神話を持つ。一方で、シヴァ派やヴィシュヌ派など、特定の神を最高神として敬う宗派が存在しており、一神教のような側面も併せ持つ。スマールタ派のように、特定の神を崇める事を拒否し、全ての神を平等に敬う宗派もある。
ヴェーダ時代には扱いがさほど高くなったシヴァやヴィシュヌだが、現代では主要な神となっており、その化身や、彼らと関係の深い妃や家族への信仰も盛んになった。シヴァ派、ヴィシュヌ派は、現代のヒンドゥー教における二大派閥とされる。
四つのヴェーダ(リグ・ヴェーダ、ヤジュル・ヴェーダ、サーマ・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダ)をはじめとするヴェーダ聖典(ブラーフマナ、アーラニヤカ、ウパニシャッド)。
特に四ヴェーダは聖仙(リシ)が感得したとされシュルティ(天啓聖典)ともいう。
また、スムリティと呼ばれる古伝書(プラーナ文献、マハーバーラタ、ラーマーヤナなど)も聖典とされる。
マハーバーラタには宗派を超えて読まれる代表的聖典バガヴァッド・ギーターが収められている。
ヒンドゥー教社会は四つのヴァルナ(階級)に区分される。
祭司階級バラモン、貴族階級クシャトリア、商人階級ヴァイシャ、奴隷階級シュードラ。ヒンドゥー教徒でもこの四つに入らない人々がおり、彼らはアウトカースト、ダリットとも呼ばれる。四階級以外の人々への待遇の悪さはシュードラ以下の凄まじいものである。
ヴァルナはさらに細分化された個別の仕事を担当させられるジャーティ(出生)にわけられている。この制度を、英語ではカーストとも呼び、この単語は日本語にも導入されている。
これは単なる身分制度ではなく、宗教的に定められたものであり、ヒンドゥー教においては各人が自分の生まれた各カーストごとの仕事をするのは神が告げる義務である。代表的聖典『バガヴァッド・ギーター』(18章47節)では「自分のカーストの仕事が上手くできなくても、それは他人のカーストの仕事を上手くこなすより勝る」というメッセージがクリシュナの口から語られている。
生まれ変わり、輪廻転生を信じる。前世や来世は行動とその影響(カルマ)によって左右されるとされる。高い階級や恵まれた環境に生まれたのは前世での善行のおかげであり、低い階級や恵まれない環境に生まれたのは前世で悪行をしたせいであるとされ、これを終らせるためには輪廻の輪から脱出する必要がある。
ここまでは仏教と同じだが、仏教とヒンドゥーでは輪廻する主体が異なる。ヒンドゥー教ではアートマン(真の自己)が主体とされ、ブラフマン(宇宙の根本原理)と一体のものであるとされる。この梵我一如を悟ることで輪廻を超えることができる。
ただし仏教ではアートマンを認めておらず、輪廻の主体となるのは「識」や「自相続」と呼ばれるもので、それ自体にアートマンのような超越性はなく、不変不滅のアートマンと異なり(仏教における)輪廻の主体は業と行為によって変化し続けるとされる。