概要
中国医学と共に世界三大伝統医学の一つであり、相互に影響し合って発展した。
トリ・ドーシャと呼ばれる3つの要素(体液、病素)のバランスが崩れると病気になると考えられており、これがアーユルヴェーダの根本理論である。
その名は寿命、生気、生命を意味するサンスクリット語の「アーユス」と学を意味する「ヴェーダ」の複合語である。医学のみならず、生活の知恵、生命科学、哲学の概念も含んでおり、病気の治療と予防だけでなく、より善い人生を目指すものである。
経歴
健康の維持・増進や若返り、さらには幸福な人生、不幸な人生とは何かまでを追求する。
文献の研究から、一つの体系としてまとめられたのは早くても紀元前5〜6世紀と考えられている。古代ペルシア、古代ギリシア、チベット医学など各地の医学に影響を与え、インド占星術、錬金術とも深い関わりがある。
体系化には宇宙の根本原理を追求した古層のウパニシャッド(奥義書、ヴェーダの関連書物)が重要な役割を果たし、バラモン教・六派哲学に数えられるサーンキヤ学派の二元論、ヴァイシェーシカ学派の自然哲学、ニヤーヤ学派の論理学も大いに利用された。
インドではイスラーム勢力の拡大以降、支配者層や都市部でユナニ医学が主流となり、その隆盛はテュルク系イスラーム王朝のムガル帝国(1526-1858年)時代に最高潮に達した。
一方アーユルヴェーダは衰退し、周辺部や貧しい人々の間に受け継がれた。20世紀初頭になるとイギリス帝国のインド支配に対抗するナショナリストや、欧米のオリエンタリストたちによってアーユルヴェーダは「インド伝統医学」として復興し、西洋近代医学に対抗して教育制度が整備された。
現代のインドにおいては政府にアユシュ省(インド伝統医療省)が設置されており、公認の医学体系の一部である。約600種類の薬草から医薬品や健康食品が製造されている。